平成14年4月18日 |
制 定 |
変更 平成14年9月4日
税理士会会員の業務の広告に関する運用指針
はじめに
平成12年3月31日に閣議決定された「規制緩和推進3か年計画(再改訂)」は、「業務独占資格等の横断的見直し」の項目中に「広告規制の在り方見直し」を掲げ、「法律又はそれぞれの資格者団体の会則により広告規制の行われている各資格(司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士)について、広告規制の自由化を検討する。広告規制の在り方の見直しに当たっては、サービスの利用者の適切な選択に資するという観点から、むしろ積極的に進めるべき広報・情報開示の具体的な基準づくりを行うことに努める。」と記載していた。
さらに、平成13年3月30日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画」では、「資格制度に係る個別的措置事項(業務独占資格制度)」の項目中に「広告規制の在り方見直し」を掲げ、「法律又はそれぞれの資格者団体の会則により広告規制の行われている各資格(司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士及び行政書士)について、広告規制が見直されるよう必要な措置を講じる。」とし、平成13年度中に結論を出すこととされた。
また、平成13年12月18日に閣議決定された「特殊法人等整理合理化計画」においても、日本税理士会連合会に対して、「公正有効な競争の確保等の観点から、単位会を含め、報酬規定を会則記載事項から削除するとともに、独占禁止法上問題となるおそれのある会則等による広告規制を廃止する。」ことを求めている。
一方、公正取引委員会は、平成13年10月24日付で、「資格者団体の活動についての独占禁止法上の考え方」を公表し、資格者団体が独占禁止法を遵守するための指針として、特に独占禁止法第8条(事業者団体の禁止行為)の適用に関するガイドラインを定めた。
日本税理士会連合会は、昭和58年4月20日付で、会長から各税理士会に対する示達として、「税理士の広告に関する取扱いについて」を発しており、各税理士会においてはこの示達をもとに会則・規則等を整備してきたところである。この示達は、必ずしも税理士の業務広告を制限するものではなく、税理士に求められる信用及び品位を保持する観点から取扱いの指針を示したものであった。
しかし、時代の変遷を経て税理士の業務の態様も大きく変わってきていることもあり、また、政府の規制改革推進政策の趣旨を斟酌し、税理士法第1条「税理士の使命」の理念を尊重したところで、この際、「○○税理士会綱紀規則(準則)」(以下、「綱紀規則」という。)の一部を改正し、税理士会会員の業務の広告は原則自由であることを明らかにするとともに、「○○税理士会会員の業務の広告に関する細則(準則)」(以下、「細則」という。)を制定することとした。
これに伴い、昭和58年4月20日付日連第36号(登第12号)「税理士の広告に関する取扱いについて」示達は以後廃止する。
以下に、「細則」の条項に沿って、税理士会会員の業務の広告に関する基本的な考え方を記す。
1.「細則」の趣旨について(「細則」第1条)
閣議決定による規制改革推進政策における、業務独占資格の見直しの基準には、一貫して、「公正有効な競争の確保や合理性の観点から、広告規制の在り方を見直す」ことが掲げられてきた。これは、公正有効な競争の促進を通じて、資格者の提供するサービスの質と適正な報酬水準が保たれることを期待するという観点から、広告は原則自由にすべきであるという考え方であり、「綱紀規則」及び「細則」はこれに基づいている。
したがって、「綱紀規則」第18条第1項は、「会員は、自己の業務について、本会の定めに反する場合を除き、広告することができる。」と規定し、会員は、自己の業務について、原則として自由に広告することができることを明らかにしている。
しかし、虚偽・誇大広告など、利用者の判断を誤らせるような広告が許されないことは当然であり、また、「税理士の業務」(税理士法第2条及び第2条の2に定める「税理士の業務」をいう。以下同じ。)において特有な社会的規制は必要であると考える。そこで、「細則」において、「禁止される広告」「表示できない広告事項」「有価物等の供与の禁止」等の規定を定め、原則自由の例外としてのネガティブリスト(制限事項)を設けることとした。
2.業務の広告について(「細則」第2条)
(1)広告の定義(第1項)
「規制緩和推進3か年計画(再改訂)」(平成12年3月31日閣議決定)のベースとなった、「規制改革についての第2次見解」(平成11年12月14日、規制改革委員会)は、「広告は、利用者が自己責任において資格者を選択するに当たっての資格者に関する情報提供として考えるべきであり、虚偽・誇大広告以外は規制する必要はない・・・<以下、略>」と記述し、資格者は積極的に広告をすることによって、利用者の利便に資するべきであるという考え方を示している。さらに、「広告規制については、広告(Marketing Promotion)と広報・情報開示の概念を明確に分け、サービス利用者の適切な選択に資するという観点から、その在り方を見直し、むしろ積極的に進めるべき広報・情報開示の具体的な基準づくりを進めるべきである。」と指摘している。
従来、税理士は自己の業務に関する情報を必ずしも積極的には開示してこなかった傾向があり、そのため依頼者の側からみると、情報が不足しているために依頼する税理士の選択が困難となっている場合もあったように思われる。今後は、会員が自己又は自己の業務に関する情報を適正に開示することによって、依頼者の利便に資することが期待される。
そこで、「細則」第2条第1項において、「広告とは、納税者の利便に資するため、会員が自己又は自己の業務に関する情報を開示する行為をいう。」と定義した。
(広告の主体)「細則」における広告の主体は、税理士たる会員及び税理士法人たる会員である。したがって、税理士及び税理士法人以外の第三者が行う広告は「細則」の適用外である。なお、第三者の抵触広告に対する関与の禁止については「細則」第6条に規定がある。
ただし、形式的には第三者が広告主となっている場合であっても、その広告の全体を観察した場合に明らかに会員がする広告であると認められる場合には、会員が行う広告として「細則」が適用される。
(広告の目的)「細則」では「情報を開示する行為」をもって広告と定義したので、その行為の目的を問わず情報開示行為はすべて広告となる。したがって、必ずしも業務拡大や顧客獲得を目的としないものであっても、自己又は自己の業務に関して行う情報開示行為であれば、「細則」上の広告に該当することになる。
(広告の媒体及び方法)「細則」は、広告の媒体や方法について特段の定めをしていない。したがって、新聞・雑誌・書籍・テレビ・ラジオ・ホームページ等のほか、名刺・ハガキ・便箋・封筒・チラシ・リーフレット・名簿・ポスター・看板・ノベルティ(無料で配布する広告商品)等のあらゆる媒体による情報開示はすべて広告に該当する。また、広告の方法としては、郵便・宅配便・電話・電報・ファクス・電子メール・インターネット等の方法のほか、戸別訪問や街頭又は会合等において直接広告物等を配布すること及び面談やスピーチをすること等の行為についてもすべて「細則」が適用される。
(2)「税理士の使命」の理念の尊重(第2項)
「細則」第2条第2項において、「会員は、広告するに当たっては、税理士の使命の理念を尊重するよう努めなければならない。」と規定し、広告する場合にも税理士法第1条「税理士の使命」の理念を尊重することを求めることとした。
税理士の業務は、専門家の立場で申告納税制度を支える公共的な使命を前提としており、職業としての適正な報酬を得ることはあっても、単に営利を追求するだけの事業とは一線を画するべきである。業務広告は、ともすると業務拡大や顧客獲得を目的として行われることも多いので、その場合でも税理士の使命の理念の尊重を優先すべきであることを明確にしたものである。したがって、ネガティブリストに違反するか否かについての疑義が生じた場合等には、税理士の使命の理念に照らして判断される。
3.禁止される広告について(「細則」第3条)
「綱紀規則」第18条では、会員の行う広告は、定めに反しない限り、原則として自由に行うことができる。この場合でも、「細則」第2条第2項において税理士法第1条「税理士の使命」の理念を尊重することを確認した。
「細則」第3条の各号は、会員が行う広告に関し、現時点で、弊害のおそれがあるものに限り、納税者に対しその規制の必要性を合理的に説明できるものとして禁止される広告を列挙した。なお、同条各号に該当する広告であれば、広告事項、媒体、目的、方法等の如何を問わず禁止される。
(1)事実に合致していない広告
広告の記述内容が客観的で確実な資料に基づくことを求めるものである。「細則」第10条第3項において、事実に合致していることの証明責任は広告をした会員が負担することを定めており、その証明ができない場合には、事実に合致していない広告とみなされる。
例えば次のような広告がこれに該当する。
‡@ 虚偽の表示
例 経歴等を偽った表示
例 実在しない人物、団体等の推薦文
‡A 実体が伴わない団体や組織の表示
例 実体が伴わないにもかかわらず、「○○税理士グループ」、「○○研究会」等の団体名を表示することは許されない。
(2)、(3)誤導又は誤認のおそれのある広告、誇大又は過度な期待を抱かせる広告
一般の納税者に対し、誤った認識を持たせ、その判断を誤らせるおそれのある広告をいう。「誤導」と「誤認」とを強いて区別する実益はない。これらは客観的事実に合致していない広告同様、禁止すべき合理的理由がある。
広告は、自己の優れた点を強調するあまり、過度な期待が実現すると納税者が思い込むような内容を含むことになりがちである。そのうえ、自己の顧客や委嘱者となるように誘導する目的をもって行われることが多く、納税者の判断を誤まらせ、期待を裏切る結果となるおそれがあることから、このような広告を防止するために明示的に禁止したもので、例えば次のような広告がこれに該当する。
業務の報酬や内容についての曖昧かつ不正確な表現
例 割安な報酬で引き受けます。(廃止された最高報酬限度額と比較し、いかにも安価であるような誤解を与える広告も誤導的である。ただし、報酬金額を明示することを禁止するものではない。)
例 巧みに節税します。
例 最高の税務知識を提供します。
例 たちどころに解決します。
例 税務調査省略になります。
例 ○○税理士会会長経験による豊富な人脈・情報
(4)特定の会員又は会員事務所と比較した広告
比較広告は、一見、客観的で信用性が高い印象を与えるが、比較する対象の選択、比較の仕方次第では、実際以上に優れているかのように見せかけることも可能であり、また、その内容も主観的かつ独善的になりがちである。したがって納税者の判断、評価を誤らせるおそれがあり、広告された場合の弊害は大きい。また、他の特定の会員又は会員の事務所と比較した広告は、比較対象者を誹謗・中傷するおそれがあり、品位に欠ける広告であるともいえる。
例 ○○事務所・税理士法人より豊富なスタッフ
例 △△を宣伝文句にしている○○事務所・税理士法人とは異なり、当事務所・税理士法人は△△で優れています。
(5)法令又は日本税理士会連合会若しくは本会の会則及び規則に違反する広告
会員が業務に関する広告をする場合は「細則」の各条項のほか、広告に関するすべての事項につき、法令及び日本税理士会連合会若しくは所属税理士会の会則・規則等に準拠していなければならない。
法令及び会則・規則等に違反するおそれがある場合の典型例としては非税理士(税理士法第52条に違反する者)との提携広告があげられる。非税理士との提携は税理士法違反(税理士法第39条、日本税理士会連合会会則第61条等)になるので、留意しなければならない。
その他国家公務員法、不当景品類及び不当表示防止法、消費者保護法等に違反する広告、または名誉・信用毀損、著作権・商標権侵害等に該当する広告はできない。
例 ‡梶宦宸ヘ、当社専属の△△税理士・税理士法人により税理士業務を提供します。
例 元国税○○の税理士ならではの豊富な人脈・情報
(6)税理士の品位又は信用を損なうおそれのある広告
税理士法第37条(信用失墜行為の禁止)により、会員は信用又は品位を保持する義務があるが、広告を行う場合にも当然これが適用される。したがって、広告事項・方法・媒体等の如何を問わず、税理士又は税理士法人の信用又は品位を損なうおそれのある広告は禁止される。
例えば、次のような広告がこれに該当する。
‡@ 違法・脱法行為をほのめかす表現
例 税の抜け道、抜け穴教えます。
例 究極の節税テクニック
例 元大物OB税理士
‡A 広告の方法及び表示形態並びに場所等が「細則」第3条第6号の適用上問題となる場合があり、奇異、低俗、派手すぎるもの、見る人に不快感を与えるもの等は、会員の品位又は信用を損なうおそれのある広告として許されない。例えば、葬儀場において広告すること等が禁止される。なお、個別具体例は今後発生する事例等を参考にして、紹介していくこととする。
4.表示できない広告事項について(「細則」第4条)
「細則」第4条は、同第3条の一般的禁止事項に該当するもののうち、広告事項に関して、典型的な事項を具体的に列挙して明確化したものである。
したがって、本条各号は例示であり、ここに列挙されていない広告事項であっても第3条各号の一つにでも該当する場合は当然禁止される。
(1) 税務行政庁在職時の具体的役職名
税理士法第42条は、税務行政庁出身の税理士が在職中の地位を利用して税理士業務を行うことを原則として防止する観点から、業務制限を課しているものである。一方で、一部の納税者の側に、権限のある役職を退官した者に対して邪まな「期待」が膨らんでいる証左がいまだに存在する限り、この事象を抑制する行為は、納税義務の適正な実現のためにも必要な措置である。
税務行政庁在職時の具体的役職名を表示することは、税務における紛争が発生した場合等に特に有利な解決を図る等の期待をさせたり、税務官公署に対する影響力について納税者に対し、過大な期待を抱かせる虞があるので、禁止することとする。
具体的役職名とは、管轄地域名を冠した官公署名と役職名の併記をいう。
例えば次のような広告がこれに該当する。
例 元○○国税局長・元○○税務署長
例 元○○県税事務所長・元○○市役所税務課長
なお、「元税務署長」、「元国税職員」、「元県税事務所長」等の税務行政庁の一般的役職名は、事実に合致していれば用いてもよい。但し、一般的役職名に加え、「広い人脈を持っています」等、前職名を誇示し誤解を与えるような文言を用いることは、納税者に過度な期待を抱かせることとなり、表示することはできない。
(2) 委嘱者の氏名又は名称
委嘱者に関する事項は、「税理士の業務」の守秘義務にかかわることであり、本来は広告に表示することはできない。
しかし、会員がどのような顧客を持っているのかは納税者の関心事であることから、委嘱者の利益を損なわない範囲において、かつ、委嘱者から書面による同意を得られた場合には表示可能とする。
(3)、(4)現在取扱い又は委嘱されている事案、過去に取扱い又は委嘱された事案
上記の(3)と(4)についても、守秘義務との関係から本来は広告に表示することはできない。しかし、会員が現在又は過去にどのような事案を扱っているのかは納税者の関心事であることから、委嘱者の利益を損なわない範囲において、かつ、委嘱者から文書による同意を得られた場合には表示可能とする。
5.有価物等の供与の禁止について(「細則」第5条)
社会的儀礼の範囲を越えた有価物(例えば商品券、贈答品等)を広告対象者に供与して宣伝することを禁じたもので、このような行為は税理士又は税理士法人の社会的信用や品位を失墜させる行為の代表例であることから、これを明らかにしたものである。
なお、社会的儀礼の範囲内での有価物等の供与とは、例えば、お歳暮として事務所名が入ったカレンダーを送ること、事務所の開設記念としてテレホンカード等を配布することが含まれる。
6.第三者の抵触広告行為に対する関与の禁止について(「細則」第6条)
第三者が行う会員の業務に関する広告行為(「細則」は適用できない)で、「細則」に反するものに対し、金銭その他の利益を供与する等の関与を禁止し、「細則」の実効性を確保したものである。第三者の広告行為が「細則」に反することを会員が知っている場合には、当該会員に対し、「細則」第6条が適用される。
7.広告する税理士等の表示について(「細則」第7条)
会員が行う広告は納税者に対する情報開示であるので、その実施に当たっては、責任者である税理士又は税理士法人の氏名又は名称を表示し、その広告の責任の所在を明らかにする必要がある。また、「細則」に違反する広告が行われた場合には、税理士会の責任においてこれを排除する際に必要な措置でもある。
なお、広告行為が印刷物や画像等によらない場合(ラジオ、電話、面談、スピーチ等)であっても、印刷物等と同様に、広告主の氏名又は名称及び本会の会員である旨を明らかにする必要がある。
ただし、社会的儀礼の範囲内と認められる行為及び事務所の所在地を案内するための行為は、広告を行うことが主たる目的であるとは考えられないため、「細則」第7条の適用を除外することとした。また、同様の趣旨により第8条及び第9条においても除外することとした。
例えば、次のような行為は社会的儀礼の範囲内と認められる。
‡@ 名刺、便箋、封筒、慶弔の花輪等に「税理士○○○○」又は「税理士法人○○○○」と表示すること
‡A 年賀状、暑中見舞い等の挨拶状を出すこと
‡B 友人、親戚の結婚式や祝賀会に「税理士○○○○」又は「税理士法人○○○○」として祝電を打つこと
‡C 選挙ポスターや選挙広報に税理士名や経歴等を記載すること
‡D 著作物の著者紹介欄に、経歴、事務所の住所・電話番号等の連絡先を記載すること
‡E 新聞、雑誌のコメント記事又は投稿欄に顔写真、経歴と共に税理士名を記載すること
また、例えば、次のようなものは事務所所在地案内等の広告であると認められる。
‡@ 事務所の道案内のための看板
‡A 街頭における地図看板に事務所の場所を示すこと
8.広告であることの表示について(「細則」第8条)
広告が原則自由化されれば、郵便、電子メール、ファクス、宅配等により広告物が不特定あるいは多数の人々に直接配布されるようになることも考えられる。面識のない税理士又は税理士法人から送付された文書等は、受け取る者に唐突な印象や無用な心配を与えかねない。したがって、これを防ぎ、受け取る者に拒否する自由を保障するために、例えば封筒の表及び文書の冒頭に「広告資料」、「事務所案内」などと明記し、配布された文書等が広告物であることが一見して判るように表示することを求めたものである。
なお、特定商取引に関する法律施行規則の一部改正(平成14年2月1日施行)により、電子メールについて「!広告!」と表示することが義務付けられた。
9.保存義務について(「細則」第9条)
会員が行う業務広告は納税者の利便に資するための情報開示であるので、その内容については広告主としての責任を明確にする必要がある。そのため、広告物は一定期間保存することを求めることとした。
さらに、「細則」第10条では、税理士会の責任において違法広告の排除等の是正措置を講ずることとしているが、この措置の実効性を担保するため、広告物等に関する記録(電磁的方法による記録を含む。)の現存が必要であり、広告終了後に期間を定めて保存を義務化した。第10条の調査協力義務とともに違反広告取締りの実効性を確保したものである。なお、保存期間については、不法行為の損害賠償請求権の消滅時効(民法第724条)の規定を参酌し、3年間とした。
広告物等の保存は、以下によるものとする。
‡@ 広告物等は現物そのものを保存することを原則とする。
a.事務所案内、事務所報、案内チラシ等当該税理士の広告のみを紙に印刷した広告物は、同一物を保存する。
b.電話帳広告、雑誌広告、新聞紙広告等当該税理士の広告以外のものもふくまれている紙に印刷した広告物は、当該広告物が掲載掲示されている頁とその電話帳、雑誌、新聞紙等を特定できる頁を保存すれば足りる。
c.立て看板、広告幕、広告板、広告塔など物理的に保存に適しないものは、現物の状況が判るような写真に保存すれば足りる。
‡A 広告物の発送等広告方法に関する記録
事務所報、事務所案内等を広告として実際に使用した場合は、その時期、送付先、送付方法について記録しておく必要がある。
送付方法についての記録とは、郵便、電子メール、直接配布、業者依頼配布等の区別について記録することである。
立て看板、広告板などの屋外広告物については、掲示した場所と周囲の状況、掲示期間、大きさ等を記録する。
‡B インターネットによる広告の保存
インターネットのホームページを利用した広告の場合は、その内容が頻繁に書き換えられるのが通常であるから、書き換えるたびに書き換え前のデータを保存しておく必要がある。
‡C ラジオ、電話、面談、スピーチ等による広告の場合
その広告内容、実施した時期、方法、対象者等を記録しておく必要がある。
10.違反行為の排除について(「細則」第10条)
(1)違反広告の調査(第1項、第2項)
税理士法第49条第6項で税理士会の目的は会員の義務の遵守及び税理士業務の改善進歩に資するため支部及び会員に対する指導,監督に関する事務を行うことであると規定しており、違反広告に対しても、指導監督の必要があれば、本会は調査することができ、また、会員は調査に協力しなければならない事を確認的に掲げたものである。
(2)真実性の証明責任(第3項、第4項)
広告について事実に合致しているか否かに疑義が生じた場合に、広告した会員に証明責任を負担させることとし、証明ができなかったときには、「細則」第3条第1号で禁止された違反広告とみなすことができることとした。
(3)違反行為に対する措置(第5項、第6項、第7項)
第5項において、本会は、「細則」に違反した会員に対し、違反行為の中止,排除,改善その他の措置を命じ、再発防止のための会則上の処分を含む必要な措置をとらなければならないこととした。
「違反行為の中止」とは、現在継続している違反行為自体をやめさせることをいい、「違反行為の排除」とは、既に配布した広告の回収など違反広告の原状回復をいう。「違反広告の改善」とは、現在継続している広告の内容を改めることをいう。「再発防止のための必要な措置」とは、例えば違反をした会員から違反を行わない旨の誓約書の提出を求めるなど再発防止のため本会が必要と認める一切の措置をいう。
税理士会が上記の命令又は措置を取る場合は当該命令、措置が会員にとって不利益処分であるので、手続の公正を期するため当該会員に対して事前に弁明の機会を与えなければならない。
第6項は、会員が中止命令または排除命令を受けたにもかかわらず中止または排除をしないとき、または、中止、排除をしようにも事実上不可能であるときに、当該広告よる被害発生が予想され放置できないような事態が生じた時には、その被害発生を予防するため、命令、その他措置を行った事実と理由の要旨を公表することができるとし、公表することによって被害発生防止を図ることができることを明確にしたものである。
第7項において、会員が広告を行う場所は、所属税理士会の区域内に限られているわけではない。しかし、所属税理士会の区域外において広告が行われる場合、その広告が「細則」に違反していても所属税理士会ではこれを察知できないことも考えられる。そこで、違反広告を察知した他の税理士会が当該広告をおこなった会員の所属税税理士会に対して通知を行うことができるとして、「細則」の実効性を高めることとした。