政府は18日、ガソリン価格の高騰が一定期間続いた場合にガソリン税の上乗せ課税を一時的に引き下げるトリガー制度を、東日本大震災の被災地が復興するまで凍結することを決めた。制度が発動されれば少なくとも約4500億円の税収減になるため、制度を凍結して震災復興の財源確保を優先させることにしたもの。19日に政府が閣議決定した臨時特例に関する法律案要綱に盛り込まれている。
野田佳彦財務相、玄葉光一郎国家戦略担当相、与謝野馨経済財政担当相が、18日午前に開いた政府税制調査会幹部会で凍結を決めた。会談後、玄葉氏は記者団に「(制度が発動されれば)減収に加え、(ガソリン価格が大きく変動することで)東北のガソリン需給が混乱するおそれもある」と説明した。凍結時期は「被災地が復興するまで」としているが、復興には長い期間が必要とされるため、このまま廃止される可能性もある。
トリガー条項は、民主党の2009年衆院選マニフェストで掲げた「暫定税率廃止によるガソリン価格引下げ」が実現できなかった代わりに導入された。ガソリンの全国平均小売価格が3ヵ月連続で1リットル=160円を上回った場合、ガソリン税(同53.8円)のうち、元々「暫定税率」として上乗せされていた25.1円の課税を停止し、価格を引き下げる内容。直近の全国平均小売価格は同150円に近づいており、発動が現実味を帯びてきていた。
また、「ガソリン・軽油の価格上昇時に国民生活の負担を軽減すべく導入したものである。しかし、このたびの東日本大震災により、被災地を中心に燃料不足が大問題となっている中、トリガー条項を発動すると、日本中でガソリン・軽油価格を引き下げることになり、逆に燃料受給を逼迫させ、被災地の復旧・復興の妨げにならないか強く懸念する」として、民主党各部門合同会議で取り上げられたもののまとまらず、政府に一任されていた。
なお、東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律案要綱においては、消費税等関係のなかで「揮発油税及び地方揮発油税に係る『トリガー条項』について、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止することとする」とされた。