国税庁は、酒類業者に対し、公正なルールに則していない取引があった場合には合理的な価格設定を行うように指導するなどしているが、同庁が昨年6月までの1年間(2004事務年度)に実施した酒類の取引状況等実態調査では、調査対象の95%の酒類販売場において総販売原価を下回る価格で販売するなど、利益を度外視した価格設定がみられた。同庁は、これらの酒類販売場に対し改善指導を行っている。
国税庁は、2004事務年度に約21万場の酒類販売場のうち、チラシなどの情報から取引に問題があると考えられた1340場を一般調査した。その結果、全体の95.0%にあたる1273場において「総販売原価を下回る価格で販売するなど合理的な価格設定がされていない」ことがわかった。一般的には酒類の販売価格は、仕入価格(製造原価)、販売費及び一般管理費などに利潤を加えたものとなるはずとされている。
例えばA社は、2005年1月のビールや発泡酒の仕入価格の上昇に伴い、いったん販売価格を値上げしたが、近隣競合店であるディスカウントストアや大手総合スーパーが販売価格を値上げしなかったことから売上が大幅にダウンした。そこでA社は仕入コストなどを度外視した販売価格に値下げした結果、ビール、発泡酒の全製品について総販売価格原価割れとなり、そのほとんどが仕入等価格割れ販売となっていた。
これらの問題があった酒類販売場に対し国税庁は、こうした原価割れ販売を続けると、事業者が将来にわたって健全な経営を維持することが難しいとの観点から、合理的な価格設定を行うよう指導している。そこには、合理的な価格設定を無視した原価割れの商品を、顧客誘引のためのおとり商品として使うことは、致酔性などの酒類の特性を考えると弊害が大きいとの判断がある。