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経営関連情報 (2004/05/14)

企業成長に欠かせない中小企業の事業承継

 後継者問題に悩む中小企業は多い。少子高齢化が進展するなかでの事業承継はなかなかスムーズにいかない面があるが、事業を引き継いだ経営者ほど新規事業に取り組む割合が高いなど、企業成長にとって事業承継はプラスの面が少なくない。中小企業と事業承継を2003年度中小企業白書から眺めてみたい。

 総務省の「就業構造基本調査」によると、自営業主においては年々高齢化が進んできている。年齢構成をみると、79年には22.9%と約2割強だった「60歳代以上」の自営業主の割合は、年々増えつづけ2002年には43.3%と倍増している。特に「70歳代以上」の割合は79年の6.3%から17.5%まで膨れ上がっている。

 一方、経営者に関しては、高齢な者が経営者の企業ほど成長率が低いというデータがある。経済産業省の「企業活動基本調査」(98年)によって経営者の年齢と従業者成長率の関係をみると、「30歳代以下」で14.5%の従業者成長率は、年齢が上がるにつれ低下し、「60歳代」では▲1.0%とマイナス成長率になり、「70歳代以上」では▲4.3%となっている。企業を成長させようとするのであれば、若い者を経営者にするほうがいい。

 ただし、事業承継直後には、企業のパフォーマンスの悪化がみられる。東京商工リサーチの「後継者教育に関する実態調査」によって事業承継後の経過期間と従業員数成長率の関係をみると、「1年目」の▲0.069から「3年目」の▲0.044まで3年間は従業員数成長率がマイナスとなる。経営者と既存の企業組織との「すり合わせ」が完了して経営が安定するまでに、約3年間の期間が必要になっている。

 とはいえ、事業を承継したばかりの経営者は新しい取組みを開始する割合が高い。上記の後継者教育調査によって承継の有無と取組みを開始した企業の割合をみると、例えば「販路の拡大」では「承継があった企業」の65.4%に対し「承継がなかった企業」は46.7%と18.7ポイントも差がある。そのほか「社内体制の改編」や「社内への経営情報の開示」、「新商品・新サービスの開発」など多くの取組みで総じて「承継があった企業」のほうが新しい取組みへの開始割合が高くなっている。