わが国の消費者物価(生鮮食品を除く)の下落幅は、2003年以降縮小し、2004年は▲0.1%とほぼ横ばいになった。このようなデフレ緩和の動きは、デフレの“象徴的存在”だった衣料品においても顕著にみられる。そこで、衣料品価格の変遷の分析を通じて、最近のデフレ緩和の背景とその実態についての一側面を考察したのは、日本総研のレポートである。
レポートによると、衣料品の「価格破壊」の背景には、中国をはじめとしたアジアでの生産拡大などを通じて大幅なコスト削減を図った企業の動きが存在する。このような企業サイドの需要創出策としての価格引下げ努力が、家計の低価格志向を刺激し、99年から2000年ごろにかけて、景気回復局面においても低価格志向が強まるという特異な現象をもたらしたとみている。
2002年以降、物価水準が大きく低下し、家計の低価格志向が薄れるなか、「価格破壊」のトレンドは、企業が脱低価格戦略を模索しはじめたことによって歯止めがかかった。もっとも、家計に低価格志向の強い品目が残存するとともに、企業にはなお低価格戦略を維持する動きもみられ、高付加価値品と低価格品が並存する価格の「二極化」が進展する。
このように、「価格破壊」から「二極化」に至る動きを分析した結果、1)低価格志向が強い品目が存在するなか、価格の「二極化」は持続していること、2)企業の戦略が、家計の価格志向を左右し、「二極化」の進展についても企業の低価格が明らかになった。
以上のことは、少なくとも衣料品市場から判断する限り、デフレは緩和に向かっているものの、かつてのようにインフレ期待が高まっているわけではないことを示唆する。このことが他の商品についてもいえるとすれば、引き続き家計の価格に対する厳しい目が残るもと、企業は自ずと値上げが受け入れられるという甘い期待を抱くことなく、商品ごとに高付加価値路線か低価格路線かの戦略の明確化が求められると指摘している。
レポートの詳細は↓
http://www.jri.co.jp/press/2004/0307.pdf