税 務 関 連 情 報 |
2002年06月05日-001
低所得層の労働意欲を高める勤労所得税額控除
わが国の課税最低限が国際的に高いといわれることに対する反証に使われるもののひとつがアメリカの勤労所得税額控除(EITC)である。低所得者向けの所得税還付制度であることから、実質的な課税最低限は日本と変わらないとの反論になる。勤労所得税額控除は、低所得層の意欲を高め貧困の解消に資するために、一定の所得までは勤労所得に一種の「補助金」を与える制度だ。アメリカで1975年に導入されて以来、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、イギリス、オランダなど他のOECD諸国でも導入されている。
この制度の仕組みには、勤労所得の増加に応じて控除額がだんだん増えていく逓増領域、控除額が定額となる定額領域、控除額がだんだん減少していく低減領域がある。例えば、2001年では、2人以上の子供がいる世帯では、年間勤労所得が1万20ドル以下であれば控除額は勤労所得の40%、それ以上1万3,090ドルまでは控除額が定額の4,008ドル、それ以上3万2,121ドルまでは追加的に21.06%の率で減額される。
したがって、勤労所得の増加に対して控除額が増額または定額となる逓増領域や定額領域では、労働による稼得所得以上に手取り所得が増加するわけだから、労働意欲が高まることになる。ただし、低減領域では、限界的な所得増加分が急減することになり、労働意欲が阻害される可能性を残している。
(内閣府「世界経済の潮流」から)
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