2003年度税制改正において相続時精算課税制度が導入されて2年が経過した。親から子への生前贈与を一般の贈与よりも優遇し、最終的に相続時に精算する制度である。高齢化の進展から親の死亡年齢、子が相続する年齢が高まっていることから、同制度を活用すれば、資産移転が早まり、ひいては経済活性化に資するとの狙いがある。その利用状況や効果などを分析したのは三井トラスト・ホールディングスのレポートだ。
それによると、金融・実物合わせた総資産の46%を60歳以上の世代が保有している(総務省「全国消費実態調査報告」)が、高齢化の進展によって、相続タイミングのミスマッチが生じている。つまり、住宅ローンや教育費といった固定的支出負担がもっとも大きい40歳代がタイミングよく相続を受けるということにはならないのだ。そこで、相続時精算課税制度を活用すれば、柔軟な資産移転が可能になる。
財務省が公表した実態調査によると、2003年分の相続時精算課税の贈与者・受贈者数は述べ8万3千人(うち住宅取得目的は2万9千人)だった。受贈者の年齢は、「50歳以上」が約35%(同約9%)でもっとも多く、次いで「40~49歳」が約31%(同約25%)、「30~39歳」が約29%(同約53%)と続く。特に、住宅取得目的は、30歳代で過半数を占めるなど、中堅層での利用が高い。
不動産流通協会の消費動向調査(2004年度)によると、住宅購入資金の調達での「親族からの贈与」の利用平均額は、02年調査で619万円、03年調査で699万円だったものが、04年調査時(調査対象は03年度住宅購入世帯)には1034万円と大幅に拡大しており、相続時精算課税制度の利用が着実に広がっていることがうかがえる。
相続時精算課税制度は、従来の税負担が重い贈与税に比べ、生前贈与・相続のタイミングの選択に関して中立的だ。相続タイミングのミスマッチを解消し、固定的支出負担のもっとも大きい中堅世代の活力を高めるのに一定の効果が得られている、とレポートはみている。今後、生前贈与に対する抵抗感が薄れることで、制度の利用は着実に広がるものと予測している。