8月9日付けの当ニュースでは中小公庫の経営情報から、「社内管理体制の整備」によって経営改善に成功した企業を紹介したが、引き続き「現場改善による在庫削減・生産性向上」から経営改善に成功した事例を紹介する。事例企業は、主にシステムキッチンの部材加工・組立加工を手がける製造業者B社。生産から販売までグループで一貫した供給体制を築き、自社ブランドのほか、一部大手メーカーへのOEM提供も行っている。
B社は、ここ数年はOEM供給先からの強いコストダウン要請などを背景に事業環境は厳しさを増し、収益力は低下、赤字に転落する事態となった。B社では、中小公庫が経営改善に取り組む企業への提案支援を行っていることを聞き、同改善提案を受けて取組みを実施することとした。具体的には、同公庫から提案を受けた「赤札作成」を次のプロセスにより実施した。
1)長期間動いていないものなど不要品の基準を設定し、約1週間かけて工場内の不要品に赤テープ(赤札)を巻いた、2)その不要品について、各持ち場の従業員全員で処分を行った、3)不要品処分によって確保できた工場内の通路には、黄色のラインを引き、今後の散乱防止もにらみ、通路と作業場などの境界を明確にした、4)原材料置き場については、モノの位置を明確化するようにラベルを貼っていった。
これらの取組みには約6ヵ月を要したが、その成果は歴然と現れた。例えば、不要品処分で余裕ができたスペースに、ネックとなっていた塗装工程の能力増強を目的に温風乾燥室を新設。従来自然乾燥で一昼夜を要していた乾燥時間が2~3時間で済み、約40%もリードタイムが短縮した。このほか、「材料を探すムダ」や「動線をふさぐ通路での運搬のムダ」がなくなり、大幅に生産性が向上、外注内製化にも取り組んだ。
これらの取組みの結果、B社では、600万円の在庫削減を実現し、財務面を大幅に改善させた。また、正確な在庫高が把握できるようになり、タイムリーな材料調達が可能になったほか、外注内製化にも取り組んできたことから、原価低減による収支改善効果も出始めている。B社の経営改善は、従業員がまず改善の手応え、成功体験を得たことが要因。これによって従業員が自信をつけ、次の改善につながる好循環を生み出した。