介護サービスは、2000年の介護保険法施行で市場規模は拡大したが、安易にビジネスチャンスと捉えて新規参入した企業も多く、サービスの質やノウハウでの課題が表面化している。帝国データバンクがこのほど発表した「老人福祉事業者・医療機関の倒産動向調査」結果によると、老人福祉事業者の倒産件数は2006年度以降急増し、2008年度には過去最高となる26件が発生。2005年度(6件)以降の3年間で4.3倍に急増している。
同調査は、2001年度から2008年度における老人福祉事業者と医療機関の倒産動向について調査・分析したもの。老人福祉事業者については、介護保険法施行以降、新規参入企業が相次いだが、徐々に同業者間の競争が激化。2006年4月の改正介護保険法の施行で、介護報酬の引下げや、施設サービスにおける居住費用・食費が介護保険給付対象から除外されるなど、さらに業界環境が厳しくなったことが、倒産急増の要因とみられる。
一方、医療機関(病院・診療所・歯科医院)の倒産件数は、2008年度は前年に引き続き40件で過去最高となった。病院の経営環境は診療報酬の引下げや医師不足、患者の選択意識の高まりなどから、依然として厳しい状況が続くが、倒産件数は2006年度(12件)をピークに2008年度は7件と減少傾向にある。「診療所」(08年度20件)と「歯科医院」(同13件)の倒産件数増加は、施設数の増加に伴う競争激化が要因と考えれている。
倒産態様動向をみると、老人福祉事業者は、調査対象期間に発生した76件のうち82.9%(63件)が「破産」を選択。設立間もなくて事業規模が小さく、再建に向けた収益確保が難しい企業が多いこともあり、再建型の民事再生法を選択できる条件に適った企業が少ないことがうかがえる。また、医療機関の民事再生法の構成比は、「病院」が56.7%、「診療所」が17.4%、「歯科医院」が18.2%と、病院が突出して高くなっている。
診療所や歯科医院は、事業規模が小さく(個人経営が多い)、設備・人材面などが必ずしも十分とはいえず、資金調達が難しいほか、事業価値を見出すスポンサーが現れにくく、事業の立て直しが困難で破産を選択せざるを得ないのが現状といえる。
同倒産動向調査結果の詳細は↓
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p090504.pdf