今年5月に施行された新会社法において株式会社は柔軟な運営が可能になり、中小企業の実態に適合しやすいものに改められた。その反面、有限会社制度が廃止されるなど、中小企業経営に様々な影響を及ぼす制度改革といえる。そこで、大阪府下一円の中小企業経営者を対象に、新会社法による主な改正点への対応などについてアンケート調査を7月上旬に実施したのは大阪市信用金庫である。
調査結果によると、最長10年まで延長が認められた株式会社の取締役の任期については、株式会社の経営者(782人)のうち、「延ばす」との回答は22.4%だった。これに対し「現状どおり」が24.4%と2ポイント多い。取締役の任期延長が負担軽減につながることは間違いないが、取締役が長期固定化することに懸念を感じる経営者が多いようだ。ただ、「未定」と答え判断しかねている経営者が53.2%と過半になっている。
取締役の人数も3名以上から最低1名でもいいことになり、名目的な取締役を置く必要がなくなった。これによって、迅速な意思決定や報酬等コスト削減などが可能になったが、実際に取締役を「減らす」との経営者は14.5%にとどまった。これに対し「現状どおり」が34.4%と20ポイント近く多い。代表者が1人で取締役を務めることは、会社の信用力を低下させると考えられることから、現状では少数にとどまっているようだ。
取締役とともに決算書の作成を行う会計参与(公認会計士・税理士)制度が導入されたが、「設置する」との経営者はわずか4.6%に過ぎず、「現状どおり」が43.6%と大勢を占めた。確かに、会計参与の設置により、外部からの自社会計に対する信用力は高まるものの、会計参与が会計に直接タッチするうえ、報酬など高額の費用が発生することを敬遠する経営者が多いとみられている。
なお、有限会社の経営者(246人)のうち、株式会社に「移行する」との回答は9.8%と1割弱に過ぎず、「現状どおり」が59.3%と約6割に達した。現状では、株式会社に移行するメリットや魅力を感じる有限会社経営者は少ないようだ。また、最低資本金制度が廃止され株式会社の設立が容易になったが、個人事業主(141人)のうち、「設立する」との回答は15.2%にとどまり、「現状どおり」が52.4%と過半に及んだ。
同調査結果の詳細は↓
http://www.osaka-shishin.co.jp/houjin/keiei/pdf/2006/2006-07-26.pdf