訴訟上の和解に基づいて支払われた和解金から弁護士費用を控除した残額の所得の性格が争われた事件で大分地裁(一志泰滋裁判長)は7月6日、和解金の実質が不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金であると指摘した上で、損害賠償金は非課税所得に該当するものの、遅延損害金は非課税所得に該当しないと認定して、納税者の主張を一部認容する判決を下した。
この事件は、納税者Aが商品先物取引会社に対して不法行為による損害を受けたとして損害賠償請求を提起した結果、控訴審で和解が成立、和解金の支払いを受けたことが発端になったもの。この和解金に対して所轄税務署が必要経費(弁護士費用)を控除した残額を雑所得と認定して総所得金額・納付税額を算定した上で、更正処分・過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため、Aがその取消しを求めて提訴していた事案だ。
税務署側は、非永住者以外の居住者の担税力を増加させる経済的利得はすべて所得を構成し、別途非課税とする所得を列挙して課税対象から除外しているのであるから、和解金は所得にあたると主張。一方、A側は商品先物取引会社に預けた委託証拠金の返還を受けることができなくなったため、その分と同額の損害賠償金として支払われたものであり、何ら純資産の増加を伴わないのであるから、所得にはあたらないと主張していた。
これに対して大分地裁の判決は、和解金の実質が不法行為に基づく損害賠償金及び遅延損害金であると認定した上で、損害賠償金は収益補償ではないから非課税所得に該当するが、遅延損害金は履行遅滞という債務不履行に伴う損害賠償金のため非課税所得には該当しないと判示。その結果、遅延損害金を雑所得として所得金額を計算し直した上で、裁判所の認定額を超える税務署の処分の取消しを命じる判決を言い渡している。