企業の合併・吸収(M&A)は中小企業にも馴染み深いものになりつつある昨今、世界的金融危機の影響で経営環境が悪化するなか、マーケットの縮小傾向に耐えられず、やむなく合併の道を選ぶ企業も少なくない。このような合併に伴い発生するのが「抱合わせ株式」の会計処理だ。抱合わせ株式とは、合併法人(存続会社)が合併前から保有する被合併法人(消滅会社)の株式をいう。
合併にあたり抱合わせ株式に合併新株を割り当てることについては会社法上明文の規定はないが、抱合わせ株式に合併新株を割り当てた場合、その合併新株は自己株式となる。会社法施行に伴う会計基準適用前は、抱合わせ株式の簿価を自己株式の簿価として引き継ぐ例が多くみられたが、会計基準適用後は、自己株式の数のみの増加として処理することとされているので、留意が必要だ。
この抱合わせ株式については、税法上、やや特殊な取扱いとなるので注意が必要となる。法人税法では、たとえ合併にあたって抱合わせ株式に新株を割り当てなかった場合も、割当てがあったものとして処理される。いずれにしても、合併にあたり割り当てられた株式(割当てがあったものとされた場合も含む)の時価や交付された金銭の額が、資本金等の金額のうち持分対応額を超える部分はみなし配当として課税関係が生じる。
ただし、税法上の一定要件を満たした適格合併の場合は、合併法人が抱合わせ株式に対して新株の交付を行わなかった場合、合併法人は被合併法人から株式の割当てを受けたものとして、みなし配当及び株式の譲渡損益の計算をすることになっている。そして、合併法人はその抱合わせ株式を自己株式として取得した上で、その自己株式を資本積立金額で消去することになっている。