国税の電子申告や地方税の電子申告などの利用がなかなか進まない。総務省によると、国の行政機関においてオンライン化の対象となっている行政手続き、延べ1万4205件のうち、2004年度時点ですでに96%がオンラインによる申請・届出が可能となっている。一方、利用状況は、年間利用件数10万件を超える主要手続き166件のうち、ネットからの利用率1%未満が8割を超し、うち半数近くは利用がゼロだったという。
このような状況に、電子政府・電子自治体利用促進の鍵は「ヘビーユーザーである企業の行政手続きをいかに電子化していくか」にあると主張するのは、三菱総研・主席研究員の村上文洋氏のコラムである。氏は、次世代電子商取引推進協議会が昨年12月に発表した「退職手続きに係わるニーズ調査」を示して、毎回大変な苦労を要している企業の行政手続きこそ電子化を推進すべきだと指摘する。
同調査結果によると、企業の行政手続き担当者1050人に、退職時に限らず、従業員関係の行政手続きで大変だと感じるものを挙げてもらったところ、実に6~7割の人が「年末調整・源泉徴収票関係」と「給与支払報告書の提出(対税務署・市区町村)」と回答する興味ぶかい結果が出た。また、雇用保険関係の手続きについても約半数の企業が負担を感じていることがわかった。
負担を感じる理由は、1)全従業員それぞれの書類作成・提出が毎年必要、2)必要な情報について、企業内では電子化されているのに、わざわざ紙の書類を作成しなければならない、3)紙の書類の作成にあたり、提出先ごとに書類の様式が異なり、頻繁に改訂があることから、毎回すべての提出先から書類を入手して作業を行わなければならない、4)全従業員の居住地ごとに書類の入手・作成・発送を行う必要があることなどだ。
村上氏は、数年に一度行うかどうかわからない個人の行政手続きよりも、毎回大変な労力を要しているこのような企業の行政手続きこそ、電子化を推進すべきだと指摘。そのほうが、電子申請・届出の利用率も向上するし、企業や行政の効率化・迅速化・コスト削減にもつながる。また、効率化によって生じた余剰人員を行政窓口などに配置すれば、パソコンが苦手なお年寄りなどへの行政サービスの向上にもつながるとみている。
次世代電子商取引推進協議会の調査は↓
http://www.ecom.jp/press/2005_007.html