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経営関連情報 (2004/01/16)
「内需拡大の切り札」住宅産業への期待

 わが国では、世帯数に対して住宅の数は十分足りており、近年、住宅着工は減少傾向にある。しかし、多くの国民が住宅に不満を抱いている。ということは、住宅に巨大な潜在需要があることを意味している。「内需拡大の切り札」として住宅産業への期待を語るのは東レ経営研究所のチーフ・エコノミスト増田貴司氏のレポートだ。

 国土交通省の調査(住宅に対する満足度の日英比較)によると、現在の住宅に不満との回答割合は、わが国の持家世帯では43%借家世帯では57%だが、英国では、持家世帯で3%、借家世帯でも14%とはるかに低い。レポートでは、消費者が求めているのは住宅というハード面の充実だけでなく、人々が自らの望む生活を営むのに相応しい住環境を手にできているかという観点からの不満ではないかと分析する。

 そこで、住宅産業に対し、「量から質への転換」を図るため顧客ニーズを正確に把握し、それに応えてCS(顧客満足度)向上を図ることを求めている。顧客ニーズを考える場合、避けては通れない課題がある。それは、中古住宅市場の活性化と新たな住替えシステムの構築である。かつてのような新築住宅供給中心のビジネスではなく、気軽に住替えができるシステムを提案していくことである。

 価値ある住宅ストックが流通していく仕組みができれば、意に反して狭い賃貸住宅に住むファミリー世帯と、子供が離れても広い家に住みつづける高齢者世帯との住居のミスマッチは解消され、日本人の暮らしは豊かになる。すでに住宅政策面では、中古住宅市場の活性化に向けた施策が打たれ、住宅メーカーでも「ストック重視」「中古住宅の流通促進」の取組みが目立ち始めた。

 今後、需要拡大が見込まれるのは、住宅そのものを売るビジネスではなく、住生活に関したソリューションを売るビジネスである。住宅産業が消費者の豊かな住生活を創出する新産業に生まれ変われば、日本経済全体に大きな需要が生み出される、というのがこのレポートの期待するところである。