GDP(国内総生産)は1年または四半期に国内全体で新たに生産された財やサービスの付加価値額を合計したもの。18日に発表された今年第1四半期(1~3月)の1次速報値では、実質GDP成長率は前期比1.4%(年率換算5.6%)、前年同期比でも5.4%の高い伸び率となった。5四半期連続のプラス成長であり、日本経済は回復期に入ったといえる。
ところが、景気回復の実感はない。この数字と実感のギャップが何に起因するのかを分析したのは東京リサーチインターナショナル参与の真野輝彦氏のコラムである。氏は第一に、商売は名目値の世界であり、モノが売れるようになっても、価格が下がると売上は伸びないからだと指摘する。名目値とは、その時々の市場価格で生産額を表したもの。
確かにこの4四半期のGDPデフレータ(名目GDPを実質GDPで割ることにより事後的に得られる物価指数)は2.5%のマイナスである。しかし、名目GDPをみると、そのマイナスを跳ね返して4四半期連続プラス成長となっていることも十分認識されなければならない。直近の企業物価・消費者物価はいずれも前月比プラス0.2となっている。
原油価格が40ドルの大台に乗せるなど原料価格や海運コストの高騰は、やがて川下に波及する。このことがグリーンスパン米連銀議長が金利引上げを指向する背景だ。タイムラグはあろうが、日本にも影響が出てくる。その状況への準備が必要な局面に入っているとの認識が必要だとしている。
第二の要因として、いわゆる勝ち組みと負け組みの差がますます大きくなり、勝ち組み業界でも格差が目立っていることを挙げている。ここでも株価は負け組みの波を跳ね返して上昇している。5四半期連続の実質成長は、公共投資が減少する環境下で実現されており、成長は民間主導なのである。高度成長期のように政府政策で景気回復する時代ではないことを再確認し、それぞれが自力で対応しなければならない、との真野氏のコラムだ。