製販直結等流通経路の短縮化のなかで卸売業はその存在意義を問われ、再編統合や淘汰の波にさらされている。特に、生産者・卸売業者と小売業者の間に立つ消費財卸売業者においては、再編統合や淘汰が著しく、同業者との差別化が求められる。そこで、「中小消費財卸売業者」が、いかにして差別化・高附加価値化を実現すべきかを分析・考察したのは「中小卸売業における新たな事業展開」と題した中小企業金融公庫のレポートだ。
レポートは、まず卸売業を概観して、1)2002年の事業所数は1991年対比で▲20.3%、同年間消費販売額は▲27.9%とともに大幅に減少、2)小売業を販売先とする卸売業では品揃えの多様化、物流の強化を狙い企業規模の拡大を続けている、3)大手卸売業者と中小卸売業者との業況の格差が拡大し、中小卸売業者のなかでも、事業環境の変化への対応の成否で格差が広がっている、と分析している。
また、小売業を概観して、1)製造業と小売業の直結、流通経路の中抜き・短縮化が進展、2)専門店・中心店・その他の小売店を中心に廃業・店舗の閉鎖・統合から事業所数・年間販売額が減少する一方、専門スーパー、コンビニ等では双方とも増加、3)市場ニーズの多様化・細分化からドラッグストア、ワンプライスショップ等小売業態の多様化が進展し、それに伴い商品仕入や物流の強化・効率化が図られていると分析している。
次にレポートは、事業環境が著しく変化するなかで、企業間連携を活用して事業基盤の強化を実現している15社の中小消費卸売業者の具体的な取組みについて分析。その結果、事例企業の取組みをみると、「事業領域の拡大」及び「事業の深耕・効率化」といった事業展開を「垂直展開」及び「水平展開・卸売機能内展開」によりバランスよく行われていることがわかると指摘している。
こうした分析・考察を踏まえ、円滑な連携が行われるための課題として、1)連携の目的と戦略的方向性が明確なこと、2)連携企業間に強い信頼関係を醸成・構築すること、3)単なるコスト削減や効率化ではなく、附加価値創造を目指していること、4)リテールサポート、物流等の効率化には、情報ネットワークの整備が不可欠、5)人材育成と教育投資による専門能力の向上、の5つを挙げている。
同レポートの全文(72ページ)は↓
http://www.jasme.go.jp/jpn/result/c2_0505.pdf