経 営 関 連 情 報 |
2003年06月11日-003
資産としての土地所有から収益性重視へと変化
地価が12年連続で下落しているなかで、土地を所有しているだけで将来的に利益が得られるという土地神話は崩壊した。国土交通省が6月9日に公表した2002年度「土地白書」は、土地は、「うまく利用することによってのみ価値が生み出せるものとなってきている」ということを、企業も個人も認識しつつあり、わが国の土地市場は実需中心の市場へと構造的に変化してきていることを指摘した。
わが国の企業は、長い間、土地所有に対する強い意欲があったが、バブル崩壊後、地価の下落が続くなかで、土地が資産として有利だという意識が低下し、収益性を重視する方向への変化がみられる。国交省の企業行動調査によると、今後の土地所有の有利性については、10年前の1993年度には66.7%を占めていた「所有が有利」との回答が2002年度には36.3%まで低下する一方、29.4%だった「借地・賃借が有利」が49.2%まで上昇している。
地価の下落によって、土地を所有している企業にとっては、バランスシートの悪化を招くとともに、土地の担保価値の減少によって資金調達が困難になる。このため、企業は、資本市場から直接資金の提供が受けやすくなるように、不採算資産の売却を進めたり、土地購入に慎重になる傾向がある。しかし一方で市価の下落は、事業コストの削減やより良い立地・条件での事業活動が可能となるなど、プラスに働く面もある。
また、2003年の地価公示では、10%近く地価が上昇した地点も出るなど、収益性が高い土地を対象に取引が活発化していることがうかがえる。国民経済計算における制度部門別土地投資規模をみると、企業部門では200年・2001年と純購入(購入が売却を上回る)に転じた。企業による土地売却が思うように進んでいない状況がみられる一方で、収益性が高い土地を中心に、企業が利用するための土地を購入する動きもうかがえる。
このような土地市場・経済状況のなかで企業は、賃借を主とするなど土地に係るコストをなるべく抑え、また、資産価値の変動に係るリスクを小さくして、事業収益性を向上させる経営に変化しつつある。このような状況を背景に、リスクを分散させる不動産の証券化や、期間を限定して賃借する定期借地権などの利用が広がりつつあるとの考えを示している。
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