税 務 関 連 情 報

2003年08月22日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(67=終)

“怒れ全国のサラリーマン”

 納税者番号制度を導入する最大の目的は、税務行政の効率化と課税の公平化である。これには誰も異論がないところだが、こと実現へ向けての議論となるとプライバシー問題をはじめ国民総背番号、国家による個人情報の一元管理への怖れなどが大きな障害となって前へ進まない。それは、議論が表層にとどまっているからであるが、その表層から誰も踏み込もうとしない。

 責任は政府・政治家・官僚にあることは間違いない。例えば、プライバシーをあまりにも“聖域化”してしまった結果、プライバシーそのものがどのようなものかを検証しないで、プライバシーを前提とした議論を進めることに誰も異議を唱えない。この聖域を踏み越えない限りは、口当たりのよいプライバシー保護という名の下の反対論に勢いを与えるばかりだ。

 「公平な課税」、つまり納税者番号制度の導入と「個人のプライバシー保護」とは完全には相容れないものなのだ。だから、現実的な妥協点を探る必要があるが、税制が政治的な結末である限り、納税者番号制度導入の議論は遅々として進まないだろう。政治は、各種利害団体の利益調整に明け暮れているのだから、「課税の公平化」がどれほどの優先順位であるのか心もとないところがある。

 それは全国のサラリーマンの責任でもある。サラリーマンは政治団体を持たない“弱い存在”なので、政治的には全く考慮されないのである。弱い存在になってしまった責任の一端はサラリーマン自身にもある。源泉徴収制度で骨抜きにされたという面はあるにしろ、あまりにも税金に無関心で過ごしすぎたのではないか。納税者のなかでは最大勢力であるはずのサラリーマンが沈黙していたのである。

 いままでは、所得捕捉率の不公平も酒を飲む上での単なる愚痴で我慢できた。しかし、これからは財政再建という至上命令から否応なしに税負担増を求められる。それでもサラリーマンは“沈黙する羊”であり続けるのだろうか。それではあまりにも情けないではないか。だから、本連載は“怒れ全国のサラリーマン”と呼びかけるのである。

 怒るサラリーマンの第一歩は、課税の不公平に腹を立て、どうすれば不公平が解消できるのかを考えることである。プライバシーなるものが何なのかを、他人の意見に惑わされずに自分自身で考えて判断するのだ。そして、課税の公平とプライバシーのどちらを優先するのかを決断するのだ。それが本連載の願いである。

 当初は数回で終わる予定だったが、とんでもなく長い連載となってしまった。ここまでお付き合いいただき申し訳ない。あっちこっちを寄り道しながらの長い道のりだったが、一旦終了し、再出発を図りたい。

(終わり)

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