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特殊支配同族会社課税の基準所得の計算方法に注意

税務関連情報 - 2009年07月24日

 2006年度税制改正で導入された特殊支配同族会社の業務主宰役員給与の損金不算入措置は、いわゆる実質一人会社のオーナー給与の給与所得控除相当額を損金不算入とするものだが、基準所得金額が1600万円以下など一定要件を満たせば、実質一人会社規制の対象外とされている。そこで、多くの同族会社では、基準所得金額を1600万円以内におさめるように調整しているが、思わぬ落とし穴もあるので注意したい。

 実質的な一人会社(特殊支配同族会社)とは、オーナー及びその同族関係者等が株式等の90%以上を保有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占めている同族会社である。ただし、基準所得金額が年1600万円以下の事業年度と、同1600万円を超えても3000万円までは、基準期間(前3年以内に開始した事業年度)におけるオーナーの平均給与の占める割合が50%以下であれば、実質一人会社規制の対象外とされている。

 ここで注意したいのは、基準所得金額の計算の元となる法人所得が、業務主催役員への役員給与を支払う前段階の所得であることだ。つまり、損金処理をしていた社長の給与と法人所得とを合わせた金額の過去3事業年度平均が「基準所得金額」になる。通常の法人税額計算上の法人所得は、定期同額給与など一定の給与を支払った後の所得となるため、こちらの法人所得と勘違いしていると“調整”の意味がなくなってしまう。

 他方、うまく基準所得金額を「1600万円以内」に抑えたつもりでも、他の費目として処理していたものが調査などで給与扱いとされて、1600万円を超えてしまう場合もある。実態が役員への経済的利益とみなされる福利厚生費や広告宣伝費などには注意が必要だ。また、基準所得金額の計算では、欠損金額も一要素となることから、赤字法人であっても過去の給与所得が多ければ、課税対象となる可能性があることにも留意したい。