2003年05月16日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(52)
『所得税における水平的公平性について』(13)
★税務行政の現状はどうなっているのか
いよいよ「クロヨン」の実証分析に入る。業種間の水平的公平性のうち、クロヨンと称される所得捕捉率の格差の問題は、言い換えれば税務執行の問題である。まず、所得捕捉率の格差が生じる原因となる、脱税とそれを是正・防止する税務行政の現状はどうなっているのだろうか。
源泉徴収制度ですべての収入を把握される給与所得者に対し、申告納税を行う事業所得者には、租税回避や脱税を行う機会が生ずるのは確かである。税務当局は、提出された申告書のうち、その内容に疑いがあるものなどについては実地調査や簡易な接触による税務調査を行う。簡易な接触とは、実地調査するまでには至らない、電話での問い合わせや来署依頼で処理するものをいう。
最近3年間(1999~2001年度)の所得税の税務調査状況によると、納税申告者のうち、簡易な接触も含めた税務調査を受ける調査率は約8%、その申告漏れを指摘される発見率は約70~80%となっている。税務調査の対象は、納税申告者だけでなく、統計上現れない還付申告者や無申告者も含まれるため、正確な調査率はさらに低くなる。このような低水準の調査率を考えると、脱税へのインセンティブが働くことは否定できないだろう。
脱税の生じやすい業種として、源泉となる利益の大きい好況業種、個人にサービスを提供する業種や現金取引の業種が指摘されている。最近の調査結果では、貸金業・風俗業・病院・パチンコなどの業種が常に上位に入っている。しかし、当然の話だが、これらの業種全般において脱税が行われているわけではない。また、申告漏れのなかには、意図的な脱税だけでなく、非意図的な申告ミスや、必要経費等の判断の難しさからくる税務署との見解の相違も含まれる。
(続く)
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