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税務関連情報 (2003/12/08)
年金制度抜本改革のなかで決まる定率減税の存亡

 政府税調は先月27日に来年度税制改正に向けた中間報告をまとめたが、急浮上していた定率減税の廃止・縮小は盛り込まれなかった。しかし、財務省がまとめた「中間報告に盛り込まれていない意見」のなかには、「定率減税は、基礎年金の国庫負担分見直し財源の議論とは関係なく、直ちに廃止すべきだ」との意見が見える。

 定率減税は、景気対策のため1999年度に負担軽減措置法によって実施されたものだが、法律では期限がなく永久に続くことになっている。所得税額の20%相当額(最大25万円)を一律に控除しており、不況の影響で昇給がままならない給与所得者のふところを幾分か潤してきた。税金に関心の薄いサラリーマンには、この定率減税がいつまでも続くものと勘違いしている人も多い。

 ところが実際はいつ廃止されても仕方がないのである。いわば既得権化された感がある定率減税に存亡の危機が訪れている。そこには厳しい国家財政事情がある。廃止すれば国税で2億5000億円の財源が確保できる。基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるために必要な2兆7000億円の相当部分を賄える。

 政府税調はもともと定率減税は廃止すべきだとの立場にある。それは、厳しい財政事情が予想される少子・高齢化社会に対応した税制を再構築するなかで、所得税の基幹税としての機能の回復に取り組んでいく必要があるとの考えからである。中期的に所得控除を再編・縮小していこうとすることもその一環である。

 年金制度の抜本改革や経済社会の活性化を実現するための構造改革に伴う財源は国民の一人ひとりが“広く薄く”負担していくべきだという基本方針が、いよいよ現実のものとなろうとしている。定率減税の廃止は、そのような基本路線の必然的な帰結でしかない。年金制度の抜本改革が迫っており、先延ばしされてきた国庫負担割合引上げの財源の議論が本格化するなかで定率減税の存亡が決まるようだ。