現在、厚生労働省は、一定の年収や休日の確保などを条件に、労働基準法の週40時間の労働時間規制を除外するという、日本版ホワイトカラー・エグゼンプションの「自律的労働時間制」の導入を検討している。労働者が自らの判断で労働時間を管理するため、残業代は支払われなくなる。労働運動総合研究所は、同制度が導入されると、年収400万円以上のホワイトカラー一人あたり年間114万円の損失になるとの試算を発表した。
試算にあたって、対象労働者の年収については、日本経団連が昨年6月に発表した「ホワイトカラー・エグゼンプションに関する提言」で労使委員会の決議を要件としつつ提示した「年収400万円以上」に着目し、条件のひとつである年収要件を年収400万円以上のホワイトカラー労働者に設定。対象者の仕事量や労働時間などについては、変わらないと仮定した。
また、対象労働者数については、国税庁の「民間給与実態調査」によると2005年に年収が400万円を超える労働者は2031万人であり、ここから、厚生労働省の「裁量労働制の施行状況等に関する調査」と総務省の「労働力調査」に基づき、管理職らを除き、労働時間の適用が除外される対象労働者(ホワイトカラー)数を1013万人と割り出している。
一方で、厚労省の「毎月勤労統計」や総務省の「労働力調査」などから1人平均の年間残業時間を156時間、不払残業時間を240時間と推定し、対象労働者の年収総額から賞与分を除いて、残業代と不払残業代を算出した。その結果、対象労働者の損失は、残業代約4兆6000億円、不払残業代約7兆円の合計11兆6000億円となった。一人あたりで年間114万円を受け取れなくなってしまう計算となる。
労働総研では、「制度の導入は、ホワイトカラー労働者に無制限な長時間労働と賃金の大幅削減を同時に強行する可能性が高い。法認化は、過労死や過労自殺、精神破壊、疾病を激増させる危険性が極めて大きい」とみており、同制度の導入に強く反発している。