2007年度税制改正では、減価償却制度の抜本的見直しが実現する可能性が大きい。経済産業省が公表した2007年度税制改正に関する同省意見では、わが国経済産業の競争力・成長力を強化する観点から、生産手段の新陳代謝の加速化のため、減価償却制度の抜本的見直しを要望した。同制度の見直しは、政府税制調査会でも当面の課題として審議対象となっていることから、来年度税制改正の焦点の一つとなりそうだ。
減価償却制度は、期間損益を適正に計算する観点から償却資産の取得価額を使用期間にわたって費用配分するものだが、主要国の中で、取得価額の100%を償却できないのは日本だけである。また、日本の現行制度は、主要国と比べて法定耐用年数が長い設備が多い上、法定耐用年数経過時点においても90%しか償却できず、技術革新等の変化に対応できないという不満が産業界には強い。
現行の償却可能限度額は取得価額の95%と、5%の簿価が残っていることにより、設備廃棄の際に大きな除却損や処分費用が発生してしまうため、設備更新の足かせとなる。除却時の価値はほとんど残っておらず、むしろ処分費用を要しているのが実態だ。また、主要製造業種の約8割の設備で、日本が主要国中もっとも長い耐用年数となっており、わが国企業は、コスト回収面で国際的に不利との指摘がある。
そこで、経産省は、減価償却制度について、1)「償却可能限度額(95%)」を撤廃し、全額償却可能とするとともに、償却年数を諸外国に劣らないものに見直す、2)企業にとって使いやすい制度に改める、3)地方税についても、減価償却制度の抜本的見直しに合わせ、固定資産税の課税評価額の見直し等を行う、との改正要望を示している。
経産省では、こうした抜本的見直しにより、設備投資の費用を早期に回収(償却)できるようになることから、最先端設備の導入など新規設備投資の増大につながり、設備投資増加効果(初年度)約7000億円、需要創出効果(次年度)約1兆1000億円との経済効果を試算している。また、見直しによる減税は、費用(損金)計上の前倒し効果により生じるものであり、損金に落とされる費用の総額は変わらないと指摘している。