税 務 関 連 情 報

2003年10月01日-002
移転価格での事前確認に関する初の報告書公表

 移転価格税制は移転価格操作を防止するための税制。例えば、本社が海外子会社に輸出する製品や部品などの価格(移転価格)を高めに設定して、子会社の利益を少なくするといった租税回避を防ぐための税制である。事前確認(APA)制度は、その移転価格の妥当性をあらかじめ国税当局との間で事前に確認する制度。国税庁はこのほど、この事前確認に関する最初の報告書(APAレポート)を公表した。

 APAは、1987年、世界に先駆けてわが国で導入された。これは、移転価格税制の導入時において、移転価格課税を受けた後に、相手国との相互協議を通じて解決するというメカニズムがあったものの、独立企業間価格の算定という困難な問題に対し、納税者があらかじめ移転価格算定手法について確認を与えることにより、予測可能性を確保し、併せて移転価格税制の適正・円滑な執行を目指したもの。

 その後は国際的にもその有効性が認識され、各国でも同制度を導入し、現在では国内手続きの枠を越えて二国間あるいは多国間の相互協議を前提とする手続きに拡大している。移転価格課税は高額に及ぶことが多く、また、移転価格調査期間や解決のための相互協議に通常長期間を要することから、国外関連取引がある納税者は、APAを利用することで、こうした移転価格課税リスクを事前に回避することができる。

 報告書によると、APA導入以降2002年までの16年間の発生件数は302件で、うち85%にあたる258件が二国間・多国間APA、残りの44件が一国のみのAPAである。二国間・多国間APAの発生件数は1994年ごろから増加し、2000年以降は制度開始から12年間の平均(年間10件)の4倍以上となっており、毎年40件を超えている(2002年は47件)。なお、一国のみのAPAは、日本国内で税務当局に確認を求めるもので、外国税務当局に課税されるリスクは回避できない。

 経済のグローバル化が進み海外進出が珍しいことではない今日、移転価格税制やAPAは中小企業にとっても無縁のものではない。今回公表されたAPAレポートを一読することも有意義と思われる。↓
http://www.nta.go.jp/category/press/press/2001/01.htm

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