国税庁が10日に発表した2008事務年度分の相続税調査事績によると、今年6月までの1年間に2006年分及び2007年分の申告事案を中心に1万4110件の調査を実施し、うち85.1%にあたる1万2008件から総額4095億円の申告漏れ課税価格を把握した。前年度に比べ、調査件数は1.9%増、申告漏れ件数は1.0%増、申告漏れ課税価格は0.6%減少し、1件あたりの申告漏れ課税価格では1.6%減の3410万円となった。
加算税131億円を含めた追徴税額は931億円(対前年度比1.1%減)で、申告漏れ1件あたりでは775万円(同2.1%減)となる。仮装・隠ぺいなど意図的な不正を行ったとして重加算税を賦課された件数は、申告漏れ件数の17.1%にあたる2052件(同7.2%増)で、その不正申告漏れ課税価格は781億円(同0.2%減)にのぼった。申告漏れのあった相続財産の金額の内訳は、「現金・預貯金等」が1380億円で33.6%を占め最多。
調査事例をみると、資料情報から、被相続人A(自営業)の相続財産の申告漏れが疑われたことから、調査した結果、死亡前にAから財産管理を頼まれた相続人は、自宅周辺の金融機関は税務当局に把握されやすいと考え、死亡前の数年間にAの自宅周辺に預け入れられていた12億円を超える預貯金を解約して現金に換えて自宅や工場等の複数の金庫に隠匿し、申告から除外していたものがある。重加算税を含め6億円強が追徴されている。
一方、海外の相続財産が増加傾向にあることから、国税当局では国際税務専門官等を中心に海外資産の実態把握や的確な調査を実施。同事務年度は475件(対前事務年度比16.7%増)の調査を実施した結果、377件(同12.9%増)から前事務年度から14.5%増の353億円と過去最高の申告漏れ課税価格を把握した。1件当たりの申告漏れは9362万円(同1.5%増)と、全体の申告漏れ課税価格の平均3410万円の2.7倍にのぼる。
また、資料情報等から申告納税義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案に係る調査は、555件(対前事務年度比10.1%増)に対して行われ、このうち申告漏れ等があった件数は調査全体の84.1%にあたる467件(同11.2%増)で、その申告漏れ課税価格は661億円(同2.5%増)にのぼった。1件あたりの申告漏れ課税価格は881万円(同17.0%減)だった。