国税庁の発表によると、今年6月までの1年間(2008事務年度)における資本金1億円以上の大企業(調査課所管法人)に対する調査は、前年度に比べ1.6%減の3952件実施され、うち3419件(前年度比横ばい)から前年度比34.3%減の5571億円の申告漏れ所得を見つけ、加算税162億円を含む1421億円(同30.2%減)が追徴された。1件あたりの申告漏れ所得金額も同33.3%減の1億4097万円と大幅に減少した。
申告漏れ所得の大幅な減少は景気悪化による法人所得の落込みなどが要因とみられている。また、故意に仮装・隠ぺいなどにより不正計算があった件数は、調査件数全体の20.1%(前年度比2.2ポイント増)の793件(同10.1%増)で、その不正脱漏所得金額は15.0%減の506億円だった。不正1件あたりの不正脱漏所得金額は22.9%減の6377万円となり、大幅に減少したとはいえ、不正の大口化は相変わらず続いているようだ。
一方、大企業の海外取引に係る調査では、前年度比2.6%増の893件から同55.5%減の1860億円の申告漏れ所得が把握された。このうち、移転価格税制を適用して追徴課税した件数は同16.5%減の111件と4年連続で100件を突破したが、その申告漏れ所得は84.1%減の270億円と大幅に減少した。なお、海外子会社との取引価格をあらかじめ国税当局に確認する事前確認を申し出たのは111件で、70件が承認され288件が繰り越された。
海外取引に係る調査事例では、交際費を業務委託費に仮装して交際費課税を免れていたものがある。多額の手数料が支払われている海外プラント工事に着目して調査を実施したところ、情報提供業務を委託していた外国法人のA社から受注工事に関連した要求を受け、これを断る見返りとして金員の支払いを行うこととし、架空の業務委託費として支出して、交際費課税を免れていた事実を把握している。