2007年度税制改正においては、中小企業の事業承継の円滑化に向けて、1)相続時精算課税制度の自社株式特例の創設、2)種類株式の評価方法の明確化が手当される。相続時精算課税制度については、早期の計画的な事業承継を促進するため、現行制度では対象とならない60歳以上の中小オーナー経営者が、後継者である子ども(代表者となる場合等に限る)に自社株式を贈与する場合の特例を創設する。
具体的には、受贈者が、2007年1月1日から2008年12月31日までの間に取引相場のない株式等の贈与を受ける場合には、一定要件を満たすときに限り、60歳以上の親からの贈与についても精算課税制度を適用し、非課税枠を500万円上乗せして3000万円とする。一定要件は、発行済株式等の総額が20億円未満の会社が対象で、受贈者が代表者かつ株式等50%超を保有となることなどだが、特例選択後4年経過時点で判断する。
一方、種類株式については、1)配当優先の無議決権株式、2)社債類似株式、3)拒否権付株式という、事業承継において活用が期待される典型的な3類型の評価方法を明確化する。配当優先の無議決権株式は、普通株式と同様に評価することが原則だが、相続時の納税者の選択により、相続人全体の相続税評価総額が不変という前提で、議決権がない点を考慮し、普通株式評価額から5%を評価減することも可能とする。
社債類似株式については、1)優先配当、2)無議決権、3)一定期間後に発行会社が発行価額で取得、4)残余財産分配は発行価額を上限、5)普通株式への転換権なし、との条件を満たす社債に類似した特色を持つ種類株式は、社債に準じた評価(発行価額と配当に基づく評価)を行う。また、拒否権付株式(普通株式+拒否権)については、普通株式と同様に評価する。
なお、非上場株式に係る事業承継税制については、2007年度税制改正大綱における検討事項として、既存の特例措置も含め、幅広く検討することとされた。この背景には、事業用資産に係る相続税の評価は、現行制度では非上場株式の10%軽減や事業用宅地の80%軽減措置などがあるが、特に高収益の中小企業の株式は高く評価される傾向にあり、親族内で事業を承継する場合の大きな障害との指摘が強いことがある。