IT化によって企業事務の効率化が進む一方で、コンピュータなどを長時間使うことでの労働者側の健康面の影響が懸念される。厚生労働省が8月30日に公表した「2003年技術革新と労働に関する実態調査」では、仕事でパソコンや携帯情報端末などを使うVDT作業で、身体的な疲労を感じている人の割合が8割近くにのぼった。一方で、企業側の認識が低いことも判明し、今後の管理対策が課題となっている。
労働者を対象とした調査結果(有効回答数:従業員10人以上の民間企業の労働者約1万人)によると、仕事でコンピュータ機器を使っている労働者の割合は86.2%で、1日の平均作業時間は、「2時間以上4時間未満」が25.1%でもっとも多く、「6時間以上」が20.6%など、6割以上(62.6%)が「2時間以上」作業している。
この結果、精神的なストレスや疲労を感じている人は34.8%だったが、身体的な疲労・症状を感じている人は78.0%にのぼり、その内容(複数回答)は、「目の疲れ・痛み」(91.6%)がもっとも多く、次いで「首や肩のこり・痛み」(70.4%)、「腰の疲れ・痛み」(26.6%)が続いた。年齢別では、コンピュータを使う作業時間が多い「20歳以下」の80.9%が疲労感を感じており、年齢が高いほど割合は少なくなっている。
一方、企業調査結果(有効回答数:従業員10人以上の民間企業約9500社)では、96.3%の企業がコンピュータ機器を使用しており、それに伴い「目の疲れを訴えるものが増えた」と考えている企業は26.8%、「肩こりなどの身体的な疲労を訴えるものが増えた」は19.4%、「精神的ストレスを訴えるものが増えた」は6.5%に過ぎず、労働者調査と大きな開きがあった。健康診断の実施も遅れており、企業の管理体制の改善が早急に求められている。