経 営 関 連 情 報

2003年06月27日-005
EU統合の社会的課題「ヨーロッパ泥棒事情」

 ビジネスなどでヨーロッパに行く機会は多いが、日本人は海外旅行で泥棒被害に遭いやすいといわれる。治安のいいわが国と同じ感覚で行動すれば、海外の泥棒にとって日本人はすきだらけと映る。EU統合の陰に隠れて、今ヨーロッパでは犯罪の増加が社会問題化している。そのようなヨーロッパの泥棒事情を紹介するのはベネルックス三井物産社長の山本明夫氏である(三井物産戦略研究所の公表記事)。

 まずはマフィア組織の大きな収益源のひとつである自動車強盗だ。山本氏自身も、ショットガンを構えた二人組みの覆面強盗に待ち伏せされた経験があるという。自動車強盗は、車の所有者や行動パターンなどを綿密に調べる調査班、実行に移す強奪班、盗難車を届ける輸送班、売りさばく売却班、スペア・パーツを供給するアフター・サービス班とそれぞれ役割分担されている大規模な組織犯罪なのだ。

 傑作なのは、職人魂溢れるプロの知能犯によるニセ警察官事件。特に日本人旅行者が何人も被害に遭っている。まず狙った獲物に浮浪者が近付き、麻薬売買か偽造紙幣交換を持ちかける。すぐに二人組みの警察官が駆けつけて浮浪者を取り押さえるが、麻薬組織や偽造紙幣団の一味との嫌疑をかけられた旅行者は、その場でパスポートや財布の検査を受ける。もちろん無罪放免となるが、ホテルに帰って財布を確かめると、紙幣の半分以上がなくなっていることに気づくという筋書きだ。

 このようなお金や車だけの被害で済めばいいが、スペインで被害が続出している有無を言わせぬ暴力での強盗もある。そのほか、犯罪の種類を挙げればきりがないという。ヨーロッパはここ10年間で人・物・金の自由移動を促進する制限撤廃策を次々に実施してきたが、治安の悪化や犯罪増加が原因となって外国人排斥、EU統合を逆戻りさせる懸念が生ずるという社会的課題が無視し得ない状況にある、と山本氏は指摘する。

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