ゼイタックス

税務関連情報 (2004/12/15)

定率減税の縮小・廃止には具体的条件を明記すべき

 定率減税の縮小・廃止が来年度税制改正に盛り込まれる公算が強くなってきて、各方面から注文が相次いでいる。そのひとつ、第一生命経済研究所の主席エコノミスト・飯塚尚己氏の分析レポートでは、定率減税の縮小・廃止は時期尚早であり、実施するなら具体的な条件を明記すべきだと主張。条件として、増税路線への本格転換は直金の名目GDP成長率が4%以上を実現後と提案している。

 氏は、財政再建を進めるためには、定率減税の廃止や消費税率引上げがいずれは実施しなければならない課題だと認めている。ただ、定率減税の縮小は時期尚早だという。その理由として、1)家計を取り巻く経済環境は減税実施当時と比べてもさして改善していない、2)資産デフレ・デフレの悪影響は解消されていない、3)現時点での増税論議は個人消費の失速と景気後退の確率を高める、との3つの理由を挙げている。

 特に、景気動向については政府税調の「定率減税が実施された1999年当時と比べ、著しく好転している」との見解を真っ向から否定している。レポートでは、わが国の家計を取り巻く雇用所得環境について、就業者数や失業率、現金給与総額、消費支出、可処分所得などの数字を示し、減税検討当時の98年度と04年度を比較して、ほとんど改善されていないと分析している。

 また、定率減税の縮小・廃止にあたっては「直前の景気動向を見極める」との条件がつく可能性が大だが、仮についたとしても、それが不確定なものであれば先行きの所得減少懸念は払拭されず、個人消費の抑制は免れえないと指摘する。こうした消費者に与える悪影響を最小限に抑えるためには、減税縮小にあたっての条件をより具体的に打ち出すことを求めている。

 その具体的な条件として、家計の実質所得や失業率などが景気悪化前の96年度水準を回復することをひとつの案として提示。また、消費税率引上げを含めた本格的な増税路線への転換のために条件としては、直近の名目成長率が4%以上になるといった案も考えられるとしている。要するに、曖昧な政治判断などではなく、増税路線を受け入れる誰もが納得しやすい形で実施すべきだということだろう。