規制緩和の一環として、税理士や公認会計士、弁護士、社会保険労務士など士業を労働者派遣の対象とすることが検討されている。検討を進めている構造改革特別区域推進本部(本部長:小泉首相)は、2005年度中に結論を出す予定だ。背景には、企業再生やM&Aが増加するなかで、期間限定で弁護士や公認会計士、税理士などの専門家の知識を必要とする企業側のニーズがあり、経済団体からの強い要望があった。
推進本部では、各士業の所管官庁や業界団体からのヒアリングなどを踏まえ、その可否を検討してきたが、公認会計士については、公認会計士法第2条第2項に掲げるコンサルタント業務については独占業務ではなく、誰にでも提供可能な業務なので容認する。ただ、監査証明業務については、非資格者である企業に雇用されて、その指揮命令のもとで行うことはできないことから、認めない方向にある。
税理士については、派遣事業者が税理士を労働派遣することを認めると、実質的に派遣元事業者が派遣税理士を通じて派遣先企業の税理士業務を行うことになり、税理士と税理士法人以外の税理士業務を禁じた税理士法に抵触する。ただ、派遣先が税理士事務所や税理士法人の場合では、労働者派遣事業者と派遣税理士の間の雇用関係に基づく指導監督権限が税理士業務に及ばないことを担保することを前提に可能性が検討されている。
しかし、これにも、税理士や税理士法人に派遣された税理士は「補助税理士」として登録しなければならないという問題がある。開業税理士として登録している税理士は「補助税理士」として登録しなおさなければならず、また、自分で顧問先を持っている場合は、派遣後は補助税理士ではその業務を行えない。派遣先が所属会と異なれば、入会・退会手続きも必要になり、事務手続きが煩雑になるなど課題は多い。
このように、一筋縄ではいかない税理士の労働者派遣だが、2005年度中の結論ということで、期限の3月末まではもうすぐ。フタを開けてみれば今までと何ら変わらなかったという可能性も高いが、推進本部の結論いかんでは、今後、税理士業界内部での法整備が必要となる事態も考えられる。規制緩和も難しいものである。ともあれ、一般企業への税理士派遣は実現しないようだ。