2003年1月からの株式譲渡益の申告分離課税への一本化にあたり、個人投資家の申告事務の負担軽減に配慮して導入されたのが「特定口座」である。証券会社に源泉徴収ありの口座(源泉徴収選択口座)を開設すると、その口座内で売買した株式の所得税は証券会社が計算し納めてくれるので確定申告は不要となる。確定申告が必要のない会社員や家庭の主婦にとっては助かる制度だ。
しかし、申告は不要だからといって安心していると損をしてしまうケースもある。例えば、昨年1月以後に上場株式等を譲渡したことで生じた損失金額のうち、その年に控除し切れない金額は翌年以降3年間に限り繰り越すことができるが、この制度の適用を受けるためには確定申告が必要だ。
また、源泉徴収選択口座と一般口座で株の売買を行い、源泉徴収選択口座で利益が、一般口座で損失が出た場合は、確定申告をすることによって源泉徴収された所得税が戻ってくる。ほかに収入がない人で、源泉徴収選択口座内の利益が年間38万円以下のケースでも、確定申告すれば源泉徴収された所得税が還付される。このように、確定申告すれば有利となるケースもあるので、昨年1年間の株式の売買を再度見直すべきだ。
ところで、特定口座内の株式売買で生じた所得を申告する場合に注意しなければいけない点は、その所得も含めて扶養控除等の対象となるかどうか判定されることだ。特定口座内での所得を加えたことで扶養控除の対象要件から外れ、トータルでは損をしてしまったなどという事態にならないように、事前に試算してみることも必要だ。