今年5月中旬以降、長期金利(10年物国債)は上昇し、約3年半ぶりに1.8%台で推移している。長期金利の上昇は、財政赤字の拡大や回復局面にある景気を冷やすのではないかとの懸念の声もある。そこで、内閣府が今回の金利上昇が景気の実勢に見合ったものであるかどうかを検証した結果、景気を冷やすとの懸念はやや過剰な反応といえるとの見方を示している。
内閣府の検証は、景気動向を示す代理変数として株価(日経平均株価)を用い、1997年以降の長期金利と景気の相関係数を求めるもの。長期金利の上昇が株価動向に示される経済の実勢に見合っている場合には、高い正の相関係数を得られるものと考えられる。
その結果、0.8前後と高い相関係数を得られたことから、今回の金利上昇は、株価との関係からみて、景気回復に見合ったものとの見方である。ちなみに、1999年後半から2000年前半の相関関係は弱いが、これは、ITバブル下で株価が大きく上昇する一方で、金利はゼロ金利政策の長期化観測などを背景に安定して推移したためとみている。
なお、民間シンクタンクのニッセイ基礎研究所でも、量的緩和解除時のショックを避けるためにはむしろ緩やかな長期金利の上昇を放置したほうがいい、との考えを示している。ただ、景気に対して先行性があるとされている株価の前年比の上昇率が最近低下してきていることから、景気回復力が先行き低下していくことを示唆している可能性があり、今後の動きに注意を促している。