相続時精算課税制度では一般的に賃貸アパートなどの収益型財産を贈与したほうが有利といわれる。それは、建物の贈与なら固定資産税評価額などで評価され、現金などに比べ税務上の評価額がかなり低くなるからだ。ただし、賃貸アパート建築のための借入金などとともに贈与すると、負担付贈与とされて建物は時価評価されることになり、期待された効果が見込めない場合もある。
負担付贈与とは、第三者に対して債務を支払うことを条件にした財産の贈与をいう。その場合の財産の評価は、その贈与財産の通常の取引価額に相当する金額、つまり時価評価することとされている。子供が借入金も引き受けて親から賃貸アパートの贈与を受けると、その建物は時価評価となるが、賃貸アパートの場合、「敷金」という債務を引き継いだときも同様に負担付贈与とみなされる。
例えば、父親から賃貸アパート(建物)の贈与を受けた子供が、相続時精算課税制度を選択した。一般的に賃貸アパートは、賃借人から入居時に敷金を預かることが多いが、この敷金は将来返還することが予定されていることから債務とされる。通常、賃貸アパートの贈与は、その債務も引き継ぐものとされている。したがって、この贈与は負担付贈与とみなされる可能性が高い。
そこで、負担付贈与とされないためには、賃貸アパートの贈与とともに、父親が賃借人から預かった敷金に相当する現金の贈与を同時に行うことだ。そうすれば、債務(敷金)を引き継がせる意図が親子間になく、実質的な負担はないと税務当局に認めさせることができる。なお、この敷金については、名目のいかんにかかわらず、契約終了時に返還を予定しているものすべてをいうこととされている。