改正高年齢者雇用安定法が成立して、定年年齢が2006年4月から段階的に引き上げられ、最終的に2013年4月から65歳となる。年金支給開始年齢まで働きつづけられるように、企業は定年年齢を引き上げるか継続雇用制度を導入しなければならなくなる。65歳定年制の義務化は企業に大きな影響を及ぼすが、税制にも少なからぬ影響がでそうだ。そのひとつが事業所税の課税標準や免税点である。
事業所税は、東京23区や大阪市・名古屋市などの政令指定都市、首都圏・近畿圏の既成年区域などが、都市整備財源の一部に充てるために一定規模以上の企業に課税する市町村目的税である。事業所の床面積を課税標準とする「資産割」と従業者の給与総額を課税標準とする「従業者割」があるが、障害者及び役員以外で60歳以上の者は従業者から除かれている。税率は、床面積1平方メートルあたり600円、従業者の給与総額の0.25%だ。
また、資産割では床面積の合計が1000平方メートル未満の事業所が、従業者割では従業者数が100人未満の事業所が、課税対象から除かれる。この免税点の従業者割においても、60歳以上の者は従業者数から除かれているのだ。例えば、従業者数105人のうち60歳以上の社員が6人いる企業は従業者数が99人なので非課税となる。60歳以上の社員が4人しかいない場合は、免税点を超えるが、101人分の給与総額にのみ課税されるわけだ。
ともあれ、現行の事業所税では60歳以上の高年齢者を雇用していれば、税制上優遇されているが、65歳定年制義務化の段階的な実施によって、優遇措置の60歳以上という年齢基準も見直さざるを得ない状況にある。今年の税制改正で公的年金等控除の見直しや老年者控除の廃止が決まったが、高齢化社会を向かえて、これまで税制上での老人の目安“60歳”も引き上げられる方向にあるようだ。