年金制度の抜本改革がわが国にとって最重要課題であるなか、2004年の公的年金改革はマクロ経済スライドの導入により一応の財政的な安定性を確保したが、その弊害も大きい。そこで、社会経済生産性本部の「年金研究会」は、国民にわかりやすく安心できる年金制度確立のため、「所得比例年金」への一本化と、基礎年金を廃止し、税を財源とする「最低保障年金」の導入を柱とする公的年金制度の新しいモデルを提案した。
2004年の公的年金改革では、大枠は現行制度を維持するが、報酬比例部分は、保険料上限固定方式を導入し、マクロ経済スライドにより給付を削減する。最終保険料率は18.30%に固定、給付水準は基準ケースで所得代替率50.2%を維持する。給付水準が自動的に調整されるため、長期的な財政は安定するが、空洞化問題が未解決のまま、基礎年金にまで及ぶ給付の引下げ、税と保険の役割が不明確、など問題点が多い。
生産性本部が提案する「所得比例年金」は、15歳から65歳までの就業している居住者が加入する単一制度。厚生年金、共済年金、国民年金は、所得比例年金に一本化する。原則、所得に応じて保険料を負担し、65歳から加入期間に応じた所得比例年金を受け取る。基礎年金は廃止し、低所得者層には税を財源とした最低保障年金を給付する。最低保障年金は、単身世帯が7万円、夫婦世帯が2人で13.3万円とする。
この所得比例年金では、税の役割、保険の役割が明確になり、税は最低保障部分にのみ投入され、ナショナル・ミニマムの保障という位置付けができる。また、労働に対しても中立的になる。一方で、現行制度の一元化が必要であり、所得に応じた負担・給付のためには、所得履歴の管理と正確な所得捕捉が不可欠だが、今回の提案ではその解決策は示されていない。大前提を欠いた改革案では“絵に描いた餅”に過ぎない。
次回はぜひとも、正確な所得捕捉の精度を高める工夫―納税者番号制度の導入の是非になるだろうが―まで踏み込んだ提言を期待したい。
生産性本部の提案の詳細は以下から↓
http://www.jpc-sed.or.jp/contents/whatsnew-top3.html