いよいよ財政再建に向けた議論が本格的にスタートした。政府税制調査会と財政制度審議会は2月28日、時間をずらして会合を開催したものの、いずれも「財政悪化の要因分析」について議論した。石弘光政府税調会長は、総会後の記者会見で「風頼みの政策運営、要するに景気を刺激して自然増収で税収を確保して、それで財政再建につなげるのは、極めて狭まった」と語り、将来の増税の必要性を示唆した。
両会合に提出された資料によると、国の財政悪化を招いた要因について、1990~2006年度の普通国債残高が375.5兆円増加した要因を分析。減税や景気低迷による税収の減収分が158.8兆円ともっとも大きく、歳出増加分の129.1兆円を上回ったとしている。歳出の増加分の内訳は、社会保障費88.3兆円や公共事業59.8兆円となっており、その間の歳出削減が19兆円あったが、財政悪化の拡大を止められなかったことを示した。
また、2001~2006年度の当初予算の推移をみると、社会保障関係費は3.0兆円増加、伸び率17.2%増となる一方、その他の経費が5.3兆円減少、同▲17.1%で、一般歳出は2.3兆円減少。厳しい歳出改革を行ってもなお社会保障関係費は大幅に増加していることになる。このことから、石会長は、少子高齢化により自動的に増大する社会保障関係費が財政再建に立ちふさがると指摘している。
今後、政府税調は、財制審が3月後半を目途にまとめる財政の長期試算に基づき、歳入不足を税と社会保険料のどちらで賄うのかを議論していく。さらに、税で賄う場合も、消費税や所得税、法人税、資産課税などのバランスを考えたうえで、特定の税の議論に踏み込む考えだ。こうした議論をもとに、政府税調は、今秋に中期的な税制改正の方向を示す「中期答申」を公表する予定となっている。