東京国税局はこのほど、不妊治療助成金は、医療費控除の対象となる医療費から差し引くことを、東京都からの事前照会に答える形で明らかにした。少子化が社会問題となる一方で、子どもがなかなかできずに医学的な治療を受けている人も少なくない。不妊治療の受診者は約29万人いると推定されているが、その治療費は1回平均30万~40万円と高額なうえ、医療保険対象外であることから負担は大きい。
このため、厚生労働省は次世代育成支援策の一環として、2004年度から新たに「特定不妊治療費助成事業」を実施し、各自治体を通して不妊治療を助成している。実施時期や助成金額は各自治体によって違いがあるが、例えば、東京都の場合、2004年7月から、合計所得金額が650万円未満の夫婦が、体外受精や顕微受精などの不妊治療にかけた医療費に対し、1年度あたり10万円を限度として、2年度分に限り助成している。
ところで、医療費控除の計算は、最高200万円を限度として、その年中に支払った医療費の金額から「保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額」を差し引き、そこから「年間合計所得金額の5%(10万円を超える場合は10万円)を超える金額」が所得控除される。
所得税基本通達によると、上記の「補てんされる部分の金額」には、健康保険法の規定により支給を受ける療養費、出産育児一時金、高額療養費などのように医療費の支出の事由を給付原因として支給を受けるものが含まれることとされている。不妊治療助成金についての東京国税局の見解は、不妊治療助成金もこれに含まれると考えられることから、医療費控除の対象となる医療費から差し引かれることになるというものだ。