自宅など手元に保管している株券、いわゆるタンス株を特定口座へ持ち込める期限は今年12月末までだ。2003年1月から株式譲渡益が申告分離課税に一本化されたことから、投資家の確定申告への手間などを省くために特定口座制度が設けられた。特定口座内での売買は、年間の売買損益を証券会社等が計算し、譲渡益があれば源泉徴収もしてくれることから申告不要となる制度だ。
2003年度税制改正では、2003年4月から今年12月末日まではその特定口座へタンス株も持ち込めることになった。その大きなメリットは、持ち込む株式の取得価額に「みなし取得価額」を認めていることだ。みなし取得価額とは、2001年9月30日以前に取得した株式を2003年1月1日から2010年12月31日までの間に譲渡した場合は、2001年10月1日の終値の80%を取得価額とすることもできる特例だ。
タンス株は相続で得たものなど保管期間が長いものが多い。本来は取得価額も低く売却益が大きくなるところを、みなし取得価額で売却益をかなり抑えられる。一方で、タンス株は取得時期にかかわらずみなし取得価額を認めてしまったため、一部の投資家が、下落した株式を購入してタンス株として持った後で特定口座に入れることで売却損をつくるという不公正な節税に利用している、との指摘もあった。
いずれにせよ、特定口座への持込みは12月末までだと思われていた矢先、自民党税制調査会が持込期限を延長する方向で検討していることがわかった(12月9日日経朝刊)。背景に株券不発行制度がある。タンス株のままでは、取引ができなかったり最悪の場合は株主としての権利を失うおそれがある。その周知のために持込期限を延長する必要があるとの判断だ。ただし、その際には、みなし取得価額は認めないことになりそうだ。