税 務 関 連 情 報

2003年07月28日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(63)

『納税者番号制度』(4)

★納税者番号制度を巡る状況変化

 納税者番号制度の導入を考える場合、最大の問題点となるプライバシーの保護に関する問題を除けば、日常生活での番号利用の一般化や基礎年金番号・住民票コードなどの行政による全国一連の番号の整備、国際化・電子化の進展などから、以前のような抵抗感は和らぎ、少なくとも導入の是非を議論する必要性があることに異議を唱える人は少なくなっているだろうと思われる。

 我々の日常生活においては、クレジットカードや銀行カードなど様々な場面で各種のカードが普及し、これに伴い番号の利用が一般的なものとなっている。誰もが番号で管理されているなどという意識は持たないだろう。情報化・電子化の進展もこれらの変化を後押しした結果、国民一人ひとりへの番号付与が国による一元管理につながるといった抵抗感は、一部の強硬な反対者を除けば、以前に比べると相当少なくなっている。

 もっとも、現状は、個別の取引などに対応した個別のカード・番号の利用が一般的となっているのにとどまり、納税者番号のような単一の番号が日常的に活用される状況にはなっていないことも事実である。しかし一方で、国民の利便性や行政の合理化のための全国一連の番号の整備が行われている。公的年金番号の一本化に伴う基礎年金番号が1997年1月、住民票コードを付番した住基ネットが2002年8月からともにスタートしている。

 また、国際化・電子化の進展が、租税回避を防ぐために納税者番号制度の導入を検討する必要性を高めている。経済取引の国際化・電子化の急速な発展の結果、より多くの資金が素早く動くことが可能になり、取引の範囲も広域化していることから、個人や企業の金融取引に係る所得を的確に捉えることがより困難になる恐れがある。また、租税回避のための取引(タックス・シェルター)が増加することも懸念される。

 所得の捕捉を行って適正・公平な課税を確保するためには、これらの金融商品に対し広く資料情報の提出を求める必要がある。資料情報制度を大幅に拡充していく場合には、大量の資料情報を効率的に突き合せて整理し、活用を図っていく上で、どうしても納税者番号制度の導入を検討する必要性が出てくるのである。

(続く)

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