原油価格は高騰を続けている。WTI(アメリカの市況動向を示す代表銘柄)、ドバイともに原油価格は7月初旬に既往最高を記録した後は高い水準にある。原油輸入価格は2005年6月時点で、価格が上昇し始めた2002年初頭から2倍程度まで上昇している。そこで内閣府は1日、これまで分析が少ないと思われる非製造業について、原油価格高騰の影響を分析したレポートを公表した。
レポートは、産業関連表(2000年)を用いて、原油価格が65%上昇したときに(2002年5月から2005年5月までの上昇率)、100%価格転嫁された場合の理論的な物価上昇率を試算した。その結果、電力・ガス、輸送、漁業で理論値が高くなっている。これらの業種においては、原油自体というよりも原油を主原料とする石油製品の投入係数(生産額に占める石油製品の額の割合)が高いことが特徴だ。
これらの業種において、同期間の実際の物価の変化をみると、電力・ガスでは、燃料費調整制度による価格転嫁があるものの、規制緩和による競争圧力の高まりを背景とした料金値下げの影響が大きく、例えば、東京地区の電力をみると値下げ効果が大きく、料金は下落している。
一方、運輸のなかでも、航空や水運においては、需要が拡大しても供給が非弾力的であることなどから、比較的価格転嫁しやすいものの、新規参入コストが相対的に低い道路輸送については転嫁がまったく進んでいないなど業種間のばらつきがみられる。漁業においても、石油製品(重油)の投入係数が高いにもかかわらず、輸入水産物との競合もあり、魚価はむしろ低下している。
原油価格上昇の経済への影響については、マクロ全体としては、過去の石油危機と比較すれば、GDP1単位の生産に必要な原油量が低下していることから、これまでのところ限定的だが、上記のように業種別には影響が異なっている。レポートは、「今後とも原油価格の動向や各産業への収益等への影響については注視する必要がある」との考えを示している。