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税務関連情報 (2004/09/13)

定率減税縮小は家計の所得環境が改善後にすべき

 もうすぐ来年度税制改正に向けた議論が本格化するが、定率減税の縮小・廃止が実現するかが最大の焦点となりそうだ。同制度の減税規模は、マクロベースでは年間約3.5兆円にも及ぶ。これまで長期に経済が停滞するなか、家計の税負担の軽減を通じて、消費を下支えしてきたが、ただちに減税規模を縮小・廃止できるほどに経済・消費は改善してきたのだろうか、と疑問を呈するのはニッセイ基礎研究所の篠原哲氏のコラムである。

 それによると、景気が回復するなか、回復の遅れが懸念されていた民間消費も緩やかながら増加の傾向にあるが、一方で家計の所得環境は依然として厳しい状況が続いている。8月に公表された4~6月期の名目雇用者報酬は前年同期比で▲0.9%と4半期連続で減少。増加が期待された今夏のボーナスも6月▲4.7%、7月▲0.6%の減少となっており(毎月勤労統計)、企業収益の改善が、家計の所得に波及する動きはいまだ不明確だ。

 加えて、配偶者特別控除の廃止や厚生年金保険料の引上げなど、負担増を伴う制度改正がすでに決定されている。これらの影響が、家計の可処分所得の減少という形でこれから表面化してくる。これらの税負担増と、仮に来年1月から定率減税の規模が半減されるものとした場合の負担増を試算して合計すると、年収600万円の妻子ども2人の標準世帯では約5万円、年収1千万円の世帯では約12万円の負担増となる。

 このようなことから、今年度後半から実施される家計の税・社会保険料負担増を伴う制度改正が消費に及ぼす影響を見極めないうちに、定率減税を縮小・廃止し、家計にさらに負担を求めることは、消費マインドを冷やし、消費を停滞させるというリスクをより高めることになる。定率減税の縮小を実施するのは、家計の所得環境が明確な改善に転じた後でもいいのではないだろうか、というのが篠原氏の主張である。

 詳細は、http://www.nli-research.co.jp/