住宅取得資金の贈与を受けた場合の税制措置は、「住宅取得資金等の贈与の特例」と「相続時精算課税制度」の両特例が代表的だが、利用者は贈与の額によってこれらの優遇措置を使い分けている傾向がみられるようだ。これは、不動産流通経営協会が今年3月までの1年間に住宅を購入した世帯(東京・神奈川・埼玉・千葉の首都圏1都3県)を対象に実施した「不動産流通業に関する消費者動向調査」で判明したもの。
調査結果(有効回答数961世帯)によると、「住宅取得資金等の贈与の特例」を利用した世帯では、贈与額「550万円以下」の割合が45.4%でもっとも高く、「550万~1千万円」が16.5%、「1千万円超」が19.6%だった。同特例は、親または祖父母から贈与を受けた住宅取得資金等のうち1500万円までの部分は5分5乗方式で税額を計算する。贈与税の1年間の基礎控除110万円を5年分前取りできるので550万円まで税金がかからない。
一方、「相続時精算課税制度」を利用した世帯では、贈与額「1千万円超」が44.4%を占めてもっとも高く、「550万円以下」は8.3%、「550万~1千万円」は30.6%だった。同制度は、基本的には65歳以上の親から20歳以上の子への生前贈与を優遇するものだが、住宅取得資金の贈与の場合は、非課税枠は通常より1000万円多い3500万円であり、親の年齢制限もなく、より優遇している。
これらの特例を利用した理由は、「住宅取得資金等の贈与の特例」では、「贈与金額が550万円以内だったから」が68.0%を占めて、2位の「将来の相続税のことを考えずに手軽に利用できる」(27.8%)を大きく引き離してトップだった。一方、「相続時精算課税制度」では、「非課税枠が大きく、一度にまとまった金額がもらえる」が72.2%にのぼった。このように、贈与の額によって税の優遇措置を使い分ける傾向がうかがえる結果となった。