社会経済生産性本部が、法人企業統計(財務省)などのデータをもとに、1980年代以降の全要素生産性(技術進歩)上昇率について、国内産業別・企業規模別の比較を行った結果、日本の技術進歩は90年代の低迷を脱却し、回復傾向が鮮明となった。全要素生産性とは、一般に広義の技術進歩指標と考えられているもので、全要素生産性上昇率を「技術進歩率」として計測を行った。
直近5年間(1999~2003年)における広義の技術進歩率(全要素生産性平均上昇率)は、全産業ベースで1.75%だった。これは、90年代後半(1996~2000年/0.64%)を1.11ポイント上回る水準。全要素生産性上昇率は90年代の低迷から脱して回復傾向が鮮明となっており、現在の景気回復を裏付けるものとなっている。
ただ、「電気機械」(11.17%)や「輸送用機械」(3.75%)といった製造業を中心に高い伸びを示す一方、「建設業」(▲1.88%)や「繊維」(▲1.04%)などで依然としてマイナスが続いており、産業によって明暗が分かれている。
直近5年間の全要素生産性を企業規模別にみると、大企業(3.13%)が全体を押し上げる形となっている。大企業では、90年代後半を1.37ポイント上回る水準となり、回復傾向が鮮明となっている。一方、中小企業は、直近5年間でも1.00%にとどまるなど、回復の足取りが依然として重いままとなっている。そのため、企業規模による格差が、90年代以降拡大している。
近年の景気回復と同様、全要素生産性の向上(広義の技術進歩)も緩やかに改善してきているとみられ、全体的に明るい兆しが見え始めている。ただ、産業や企業規模で格差が拡大していることから、いわば「勝ち組」と「負け組」に分かれてきている。現状は、産業や企業規模によって明暗が混在する、いわばまだら模様となっている。なお、全要素生産性と労働生産性の推移は強い相関関係にあり、労働生産性も回復傾向にある。
「全要素生産性の産業別・企業規模別比較」の詳細は↓
http://www.jpc-sed.or.jp/contents/whatsnew-20051018-1.html