中小企業金融公庫がまとめた「大都市に立地する中小企業の事業展開」と題したレポートでは、東京・大阪の大都市における中小企業の地域資源を活用した事業展開の具体的な取組みを分析し、大都市立地型中小企業の事業展開と活用する外部資源の特徴を踏まえ、有効なビジネススタイルを示している。カギとなるのは、大都市に集積する「暗黙知・潜在情報」を事業展開に活用することだ。
レポートは、まず大都市ならではの地域資源を活用して新たな事業展開やビジネスモデルの構築に取り組む中小企業22社を分析。これに基づき、大都市立地型中小企業の事業展開の特徴を4分類し、これらの事業展開において活用される集積を、1)「市場・顧客としてのヒトや企業等の集積」、2)「事業展開をサポートする外部資源としてのヒトや企業の集積」に整理している。
大都市立地型中小企業では、こうした集積するヒトや企業等を通して、「潜在的なニーズ・課題・消費性向・趣味・嗜好」、「俗人的な知識・ノウハウ・経験・アイデア・技能や企画・構成・設計・提案・能力」といった「暗黙知・潜在情報」を活用していると指摘する。大都市には集積するヒトや企業等に付随して「暗黙知・潜在情報」の集積が存在しており、こうした「暗黙知・潜在情報」を独自の事業展開に活用している。
交通インフラの整備やIT化の進展などに伴って、「形式知・顕在情報」については今や大都市以外でも入手・活用できる状況だが、「暗黙知・潜在情報」については、ヒトや企業等に付随するため、その集積するところに集積することとなって、普及・広域化や一般化することなく、特に企画・研究開発・デザイン・設計や高精度・高品質な加工といった高付加価値な事業展開において重要・有効な“地域資源”と評価している。
以上を踏まえ、有効なビジネスモデルとして、1)新たなビジネスモデルの構築(再構築)、2)研究開発型、特注品特化型の事業展開、3)ファッション性の高い製品・サービスの取扱いの3つを提示。これらの取扱い製品・サービスは、市場規模が小さく、個別性・特殊性が強く、価格・コストよりも品質・技能が重視されることから、高コストの大都市でも十分競争力が確保され、他地域企業との差別化ができると評価している。
同レポートの全文(89P)は↓
http://www.jasme.go.jp/jpn/result/c2_0604.pdf