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事業承継は税制の軽減よりも後継者確保の政策を!

税務関連情報 - 2008年02月22日

 2009年度税制改正において事業承継税制の抜本改革が予定されるなど、中小企業の事業承継に対する支援が注目を集めているが、信金中央金庫総研がこのほど発表した「中小企業における事業承継問題の現状と留意点」と題したレポートでは、中小企業の事業承継にあたって相続税が深刻な問題となるのは少ないことから、相続税の軽減よりも、後継者を確保するための政策のほうが、事業承継問題の解決に資すると主張している。

 レポートによると、2007年版中小企業白書では、経営者が予想する相続税負担額は17.9%の株式会社で5000万円以上との結果だが、実際の課税状況では、相続人に相続税が課税された被相続人の割合は2005年で4.2%に過ぎず、被相続人1人あたりの相続税額も2562万円。さらに、同年に相続人に相続税が課された被相続人数4万5152人のうち、相続財産に同族会社の株式等が含まれていたのは9139人、全体のわずか0.8%である。

 このように、実際の相続税課税状況と、中小企業経営者の予想との乖離は極めて大きいが、中小企業の事業承継に際して、相続税が深刻な問題となるケースは、現実にはごく一部にとどまっている。一方で、政府が掲げる事業承継税制は、非上場株式等に係る相続税の軽減割合を現行の10%の減額から80%の納税猶予とするものだが、相続税を軽減することで、廃業の抑制や事業承継の促進に資するのかと疑問を呈している。

 レポートは、中小企業における事業承継問題の本質は後継者を確保することができないことにあると指摘。少子化の進展を背景に、今後、さらに子が親の事業を継ぐケースは減少することが予想されることから、主に子が事業を継ぐことを想定した相続税の軽減よりも、子以外の第三者への事業承継を円滑化するための方策のほうが、より事業承継問題の解決に資するのではないだろうかと主張している。

 同レポートの全文は↓
 http://www.scbri.jp/PDFsangyoukigyou/scb79h19F10.pdf