裁判員制度が今年5月にスタートしたが、少数の従業員でやり繰りしている中小企業で実際に従業員や経営者自身が裁判員に選ばれると業務への影響は大企業に比べ大きいと思われる。大阪市信用金庫が大阪府下一円の取引先企業を対象に実施した「中小企業における裁判員制度への対応等に関する調査」では、中小企業経営者の間では裁判員制度について自社に関わる現実的な問題との認識が低いことがうかがえる結果となった。
調査結果(有効回答数1296社)によると、自社の従業員や経営者自身が裁判員に選任される可能性は、「十分あると考えている」とする経営者は7.1%に過ぎず、「あり得ることだが、低いと考えている」とする経営者が59.6%でもっとも多い。また、「あり得ないと考えている」と回答した経営者が33.3%あり、この3分の1にあたる経営者は自社には関係ないことと捉えているようだ。
実際に経営者自身が裁判員に選任された場合の対応については、「万難を排し必ず務めを果たす」との経営者は17.5%にとどまり、「仕事の都合により何ともいえない」とする経営者が54.0%と過半に及び、「仕事を離れられず辞退を申し出る可能性が高い」とする経営者が28.5%と3割近くある。中小企業は少人数でやり繰りしているが、特に経営者は代わりがきかないため、総じて裁判員の務めに対し積極的にはなれないようだ。
裁判員の選任に対する本音は、「正直に言うと困る」と答えた経営者が50.5%と5割を超え、また、「問題点もあり何とも言えない」とする経営者も44.8%にのぼった。これらの選任を歓迎しない経営者の理由(複数回答)は、「欠員により裁判当日の業務に支障が生じる」が83.1%でもっとも多く、また、「犯行内容に触れる精神的負担等により当日外も業務に支障が生じる恐れがある」との理由も50.2%と過半となった。
以上のように、裁判員の選任に対しては及び腰の経営者が多いが、裁判員制度では裁判員は原則として辞退することはできず、例外的に法律や政令で辞退事由が幾つか定められている。そのなかに「事業上の重要な用務を自分で処理しないと著しい損害が生じるおそれがある」との項目があるが、この事由により経営者が辞退を申し出ても個別の事情で判断され、実際に認められるかどうかは微妙と思われる。
同調査結果の詳細は↓
http://www.osaka-shishin.co.jp/houjin/keiei/pdf/2009/2009-07-29.pdf