基礎年金制度の改革に向けて、現行の保険料方式から「全額税方式」へ切り替える案が提起されている。25日に開かれた政府の経済財政諮問会議に民間議員から提出された基礎年金制度改革への提言では、1)国庫負担を1/2として、現行の保険料方式を維持、2)国庫負担を2/2(全額税方式)へ切り替える、という2つの選択肢が示され、保険料方式では消費税率1%、全額税方式では同5~7%の引上げが必要になるという。
現行の基礎年金の保険料を維持する考え方では、現在国が負担している基礎年金の財源の1/3(約7.4兆円)を2009年度までに1/2に引き上げる方針だが、その追加的に必要とされる国庫負担は約2.5兆円で、消費税率1%に相当する。ただし、現状のまま単に国庫負担を引き上げるだけでは、従来からの未納問題や年金事務の信頼性・効率性の問題の解決にはつながらず、世代内・世代間格差の改善も限定的となる。
一方、全額税方式に切り替えれば、上記の問題解決が期待できるが、追加的に必要とされる国庫負担は、現行の基礎年金給付額を賄う場合で約12兆円、消費税率で5%相当となる。さらに、これまで保険料を払っていない人も含めすべての65歳以上の人に基礎年金(月額6.6万円)を一律に給付する場合は、約16.3兆円、消費税率7%に相当する財源が必要になるとの試算が示されている。
全額税方式に切り替えた場合は、さらに移行措置を含めて困難な問題がある。例えば、主に60歳以上のすでに保険料を完納していた人は、60歳以降の消費税負担分が「追加的な負担」となる。他方、制度移行時に50歳の人で、移行前に保険料が未納だった場合は、現行の25年納付を要件とすると75歳まで年金支給されない。また、保険料未納であっても65歳から満額支給となると、保険料を払い続けてきた人との公平が確保されない。
今回の民間議員の提言では、このように基礎年金の基本方向として提起した2つの選択肢を活用して、広く国民的議論を進めることや超党派での合意形成を求めている。ただ、いずれの選択を行うにせよ、安定性の強化のためには国庫負担引上げは必要な措置であるため、規定方針どおり、安定財源を確保する税制の抜本改革を行った上で、2009年度の2分の1への引上げを実現すべきだとの考えを示している。
経済財政諮問会議における民間議員の提出資料は↓
http://www.keizai-shimon.go.jp/minutes/2007/1025/item1.pdf