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経営関連情報 (2006/02/10)

事業承継の際に活用できる新会社法の定め

 今年5月施行予定の新会社法は中小企業の実態を踏まえた会社制度と位置づけられる。このため、既存の中小企業が活用できるポイントは多いが、そのひとつに事業承継の際の活用がある。現行法では、第三者が会社株式を取得して会社経営に悪影響を及ぼすことを防ぐために、株式に譲渡制限をつけることができるが、相続や合併による株式の取得は譲渡制限の対象外であるため、会社が望まない第三者の株式取得を防ぐことは難しい。

 相続などで、後継者以外に会社経営に一切関与したことがない者が相続すると、会社経営が混乱するおそれがある。そこで、そのような事態を防止するため会社法では、相続人に株式の売渡しを請求できる制度や、株主の議決権を制限した株式を発行したり、株主ごとに議決権を定めることで、会社の意思に反する第三者が株式を取得した場合の、会社経営への悪影響を抑えることができるようになる。

 まず、株式の売渡請求権とは、定款で定めることにより、相続があったことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議によって、株式の取得者に対し売渡しを請求することができる制度である。売渡しの際の株式の価格は、当事者間で協議して決めることになるが、協議が整わないときは裁判所に価格決定の申立てをすることができる。注意点は、会社の株式取得の財源は、剰余金分配可能額の範囲内に限られることだ。

 次に、相続に先立って、後継者以外の者に相続される株式を議決権制限株式にしておく方法もある。現行法では、議決権制限株式は発行済株式総数の2分の1までに制限されているが、会社法ではこのような制限がなくなる。また、会社法では、議決権について株式の種類ごとにではなく、株主ごとに属人的な定めができる。つまり、特定の者の議決権を制限することで、議決権制限株式と同様の効果が得られるわけだ。