ドイツは2006年から2008年にかけて付加価値税や所得税、法人税の見直しを行った。今後わが国においても消費税を含む税制の抜本改革が重要な課題となっており、その先行事例として「ドイツ税制改革」が注目されている。そうしたなか、参議院はこのほど、「ドイツ税制改革」について、ドイツ連邦財務省から意見を聴取することができた財政金融委員会調査室の伊田賢司氏の海外調査報告を公表した。
同報告書によると、今回のドイツの一連の税制抜本改革は、(1)付加価値税率(VAT)を16%から19%に引上げ(07年1月施行)、(2)所得税の最高税率を42%から45%に引上げ(〃)、(3)法人実効税率を38.36%から29.83%に引下げ、課税ベースの拡大等(08年1月施行)、(4)非課税とされてきた株式譲渡益課税について、配当や利子とともに源泉分離課税(26.375%)を導入(09年1月施行)などが主な内容となっている。
VATの引上げが成功した理由については、経済状況が好転していた時期に引き上げたことから経済への影響は軽微だったことや、VAT税収の3分の1を失業保険の引下げに充当したことにより、被用者負担が軽減されたこと、3%のVATの引上げ自体が大きなものとはいえないこと、選挙直後に連立与党内においてVAT引上げのコンセンサスが得られたこと、などの要因がドイツ連邦財務省から示されたという。
消費税の引上げに当たっては、低所得者の税負担率が相対的に重くなるいわゆる「逆進性」が問題視されるが、ドイツ連邦財務省からは、食品等に対する軽減税率の適用や家賃等に対する非課税措置がVATの仕組みのなかで措置されていること、また、所得税や社会保障等においても様々な配慮をしていることから、逆進性の対応について、国民の理解は得られているとの認識が示されている。
一方、法人実効税率の引下げについては、法人税率を25%から15%へ引き下げることなどによって、法人実効税率は38.36%から29.83%(法人税15%、営業税・連帯附加税を含めた税率)へと低下し、わが国の水準(40.69%)よりも大きく下回ることになった。税率の引下げとともに、課税ベースの拡大が行われたことで、結果的にほぼ税収中立(減収額の6分の5を補てん)となっている。
同海外調査報告の全文は↓
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/pdf/20090601012.pdf