国税庁は、岡山大学が事前紹介した職務発明等に係る報奨金の所得税の取扱いについて文書回答したことを明らかにした。同大学では、知的財産権にかかる職務発明等をした職員を対象に、1)知的財産権を承継し、出願したとき、2)法令で定められた権利の設定登録を受けたとき、3)承継した知的財産権を運用または処分して収入を得たときに、それぞれ出願補償金、登録補償金、実施補償金を支給している。
大学からの照会の内容は、まず、大学が発明者に支払う出願補償金(一出願に対して1000円ないし3000円)については「特許を受ける権利」等の知的財産権を大学に承継する際に一時に支払を受けるものだから、譲渡所得に該当する。その譲渡所得は、所得税法に規定する「自己の研究の成果である特許権」の譲渡に準じ、長期譲渡所得に該当するというもの。
つぎに、登録補償金(一権利に対し3000円ないし9000円)及び実施補償金(収益に応じた金額)については、権利の移転によって一時に実現したものでないため、税務上は譲渡所得に該当せず、以下の理由から、給与所得にも該当せず、雑所得に該当する、との所得税の取扱いの見解を示した。
1)職務発明の場合は特許法や実用新案法などに定められた相当の対価請求権に基づいて支払われるものであること
2)「特許を受ける権利」等の知的財産を大学に移転した後に大学がその権利を独占的に利用して得た利益の実績に基づいて算定され、使用料と同様の性格を有していること
3)発明職員が退職した場合や死亡した場合でもその発明者や相続人に継続して支払われること
源泉徴収については、出願補償金は譲渡所得に該当し源泉徴収の必要はないこと、また、登録補償金及び実施補償金については、経済的には、工業所有権の使用料的なものと考えられるが、発明者が特許等の工業所有権を有しない状態のもとで支払われる金銭であり、使用料とはいえないので、源泉徴収を要しない、との見解を照会した。
国税庁は、これらの岡山大学からの事前紹介に対し、「照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えない」と回答、岡山大学の職務発明等に係る報奨金の所得税の取扱いを認めている。