政府税制調査会は、2010年度税制改正において、脱税に対する懲役刑の上限を現行の5年から10年に引き上げるなど、租税罰則を強化する方針だ。最近の査察での告発件数は、おおむね年間150~160件前後で推移し、1件あたりの脱税額は1億5千万円程度だが、近年は上昇傾向にある。また、最近は、大口の無申告事案や源泉所得税の不納付事案、消費税の不正還付事案が増加している。罰則強化は悪質な脱税を防ぐことが狙いだ。
実現すると1981年以来約30年ぶりの租税罰則の見直しとなる。政府税調が示した租税罰則の見直し案によると、現行の脱税犯の罰則は、5年以下の懲役もしくは500万円(情状により脱税額)以下の罰金または併科だが、懲役刑の上限を10年に引き上げ(直接税及び間接税等)、罰金刑の上限(定額部分)を、直接税及び消費税については1000万円に、消費税を除く間接税については100万円にそれぞれ引き上げる。
また、単純無申告罪(申告書不提出)は、現行1年以下の懲役または20万円以下の罰金だが、罰金刑の上限を50万円に引き上げるとともに、脱税を目的に故意に納税申告書を法定申告期限までに提出しなかった罪(無申告脱税犯)を創設し、懲役刑は5年以下、罰金刑については、直接税及び消費税については500万円(情状により脱税額)以下とし、消費税を除く間接税等については50万円(同)以下とする。
そのほか、源泉所得税不納付罪は、現行3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金または併科だが、脱税犯との均衡を踏まえ懲役刑・罰金刑を引き上げる。不正還付の未遂は、現行では自己名義によるものは不処罰、他人名義によるものは詐欺未遂罪として処罰しているが、この詐欺未遂罪とのバランス等を考慮し、消費税の不正還付の未遂(または不正な還付請求行為)を処罰する規定を創設する、などの改正案が示されている。