景況感の急速な悪化とともに、これまで人手不足に悩む事業主が多かった中小企業の雇用環境においても、一転して人手過剰に転じつつある。厳しさを増す現在の局面を雇用の面から概観するのは信金中央金庫のレポートである。同金庫の「全国中小企業景気動向調査」によると、08年10~12月期の人手過不足判断DI(「過剰」-「不足」)は▲1.0と、前期の▲3.3と比べて人手不足感が弱まった。
さらに、来期09年1~3月期見通しはプラス1.5と、景況感の急速な悪化とともに“人手過剰”に転じる見通しだ。10~12月期の人手過不足判断DIの内訳をみると、製造業が前期比6.4ポイントプラスの4.1と、すでに“人手過剰”に転じている。特に、輸出主力型の製造業に限ってみれば、前期比26.9ポイントプラスの23.3と、「人手過剰」感を急速に強めており、今後の動向を注視する必要があるとしている。
また、地域別には、DIの水準にばらつきはあるものの、一様に“人手過剰”への転換が加速している。従業員規模別では、規模の大きい企業ほど人手過剰感が高まっており、100人以上の企業のDIは、08年10~12月期実績で18.1と、すでに“人手過剰”の回答割合が多数を占めた。一方、小さい企業ほど、まだ“人手不足”超で推移しているものの、その水準は0に近く、転換期を迎えつつあるともみられる。
世界的金融危機の影響を受けて経済社会全般に人手過剰感が広がるなか、これまで日本経済をけん引してきた大手製造業は生産調整を強め、大企業の雇用動向が急激に変化している。レポートは、大企業で雇用調整の動きが強まれば、中小企業にとっては優れた人材を確保するチャンスと捉えることもできると指摘。優秀な人材獲得の好機として採用に動き出した中小企業も少なからず現れ始めており、今後の動向に注目している。