全国税理士の総本山である日本税理士会連合会(日税連)はこのほど、2006年度税制改正で物議をかもしている同族会社に支給する役員賞与の見直しに反対を表明、不透明な税制改正手続きの是正を要望した。役員賞与の見直しは、同族会社のオーナー社長に対して支給される給与のうち、給与所得控除に相当する部分の金額は、その法人の損金の額に算入しない(法人所得に加算)というもの。
この改正は、(株式の90%以上を同族関係者で持つ)実質的な一人会社の法人段階と個人段階を通じた課税ベースを、個人会社の課税ベースとイコールにすることによって、法人成りによる節税メリットを抑制する趣旨であるという。5月施行予定の会社法では、最低資本金基準が撤廃され、個人事業者の法人設立が容易になることから、節税目的の法人成りを防ぐことが目的といわれている。
しかしながら、と日税連は反論する。法人形態であるものについて個人所得税との調整を図ることは、法人税・所得税の課税体系をゆがめることになり、また、この税負担の調整は、特定の同族会社のみに適用され、他の会社との間に不公平が生じることになる。さらに、既存の会社については、唐突に負担を強いるものであるとして、今回の役員賞与見直し案に反対を表明している。
日税連は、同改正案が昨年末に与党税制改正大綱で急浮上したことに対し、「このような納税者に重大な影響を及ぼす改正については、政府税制調査会等で十分に議論されるべきだ」と苦言を呈し、税制改正手続きの透明性を高め、国民の理解が得られるような改正を行うことを強く要望した。確かに、政府税調の議論のなかでは姿をみせず、まったく議論のないまま成立してしまう事態は異常である。せめて1年待てないものか…。