国税当局は近年、滞納の未然防止等に向けて、納付しやすい環境整備、納付手段のさらなる多様化としてのコンビニ納付やインターネットバンキング方式(ペイジー)の利用拡大に力を入れている。さらに、ペイジーの利用率向上のため、今年9月から法人向け電子振替納税ともいえる「ダイレクト納税」を開始する予定だが、国税庁はこのほど、その金融機関を対象としたダイレクト納付利用届出書の受付を開始したことを明らかにした。
ダイレクト納付とは、事前に金融機関と税務署の双方に届出等をしておけば、e-Taxを利用して電子申告等の送信をした後に、届出をした預貯金口座から、ワンクリックで即時または期日を指定して納付することができる電子納税の新たな納付手段である。ダイレクト納付は、税務署や金融機関に足を運ぶことなく、自宅やオフィスから納付することができるようになるのを始め、多くのメリットがある。
例えば、電子申告等の送信後、ワンクリックで納付手続きが完了するため、納付手続きが簡単なこと、インターネットバンキングの契約が不要、インターネットバンキングを利用した場合と違って利用手数料等がかからない、パスワードや本人によるログインが不要でインターネットバンキングを経由せず、納税者本人がネット環境を有していなくても税理士の代理送信による納付も可能となるなど、多くのメリットがある。
簡単に言えば、公共料金の自動引落とし(振替)に近いイメージであり、同様の仕組みとして振替納税があるが、振替納税は申告所得税と個人消費税のみが対象なのに対し、ダイレクト納付はe-Taxで電子申告が可能な源泉所得税や法人税などすべての税目が対象となる。納付情報登録を行えば、それ以外の全税目の納税が可能であり、また、本税に加えて附帯税(加算税や延滞税など)についても、利用が可能となる。
注意が必要なのは、税務署に届出書を提出してから利用可能となるまで1ヵ月程度かかることや、ダイレクト納付できるのは、e-Taxの利用可能時間内(通常は平日の午前8時30分から午後9時まで)で、かつ利用する金融機関のオンラインサービス提供時間内に限られることだ。また、ダイレクト納付では領収書が発行されないので、領収書が必要な場合は、従来どおり納付書により金融機関や税務署の窓口で納付する必要がある。