財政再建、社会保障制度の再構築のために国民の負担増は避けられない状況にあるが、その大前提として徹底した歳出改革が不可欠なのは論をまたない。だが、この徹底した歳出改革に対する要望は “お題目的”なものになりがちだ。そこで紹介するのは、「行革なくして増税なし」と題した日本総研の高橋進氏のコラムである。氏は、ここでより踏み込んだ歳出改革の問題点・課題を提示している。
コラムは、国民の負担増の弊害(経済の再デフレ化など)を避けるため、まず政府自らが身を切り効率化を図ることが不可欠だとして、行政改革を最優先する。なかでも30兆円を超える公務員の人件費削減に注目、特に地方公務員の給与について、民間企業の賃金動向を踏まえた見直しを求める。その際、過大計上された投資的経費が財源として地方公務員の給与に充当されているとの財務省の指摘を踏まえ、財政規律の見直しを求めている。
同時に、人件費削減に際しては公的部門全体の視点が必要なことを強調する。政府の定員や給与を減らしても、特殊法人など周辺組織が肥大化したままでは「小さな政府」は実現しないからだ。公的部門全体を改革する必要があり、独立行政法人や地方公営企業・公社などの人件費にもメスを入れることを求めている。
近年の行革プロセスにおいて人件費は削減されたものの、いわば官業がアウトソーシングされる形で人的なつながりや補助金が拡大し、実質的に大きな政府が維持されているとの批判がある。したがって、実効性のある公務員人件費削減を実現するためにも、表面的な公務員数や給与水準を見直すだけでなく、広義の公的部門全体の業務のあり方を見直していくことが必要だと指摘している。
その切り札として期待するのが「市場化テスト」である。公共サービスの担い手を官民の競争で決める市場化テストが普及すれば、民業の拡大につながるだけでなく、国と地方を問わず広義の公的部門で官業の見直しが進み、自ずと公務員人件費の削減も可能になる。公務員数の数合わせではない、真の意味での骨太の行革が実現するかどうかは、市場化テストの成果にかかっている、と高橋氏は主張するのだ。
同コラムの全文は↓
http://www.jri.co.jp/thinktank/research/opinion/2005/0613.html