わが国の人口は2005年に減少に転じたが、総人口の減少に先立ち、地方では人口が減り始めていた。都道府県別にみると、すでに31自治体において人口が減少に転じている。こうした人口の減少、すなわち納税者数の減少が地方財政をさらに厳しくする要因となる可能性があるとして、人口減少が地方財政に与える影響を分析したのは、みずほ総研(金子しのぶ研究員)のレポートである。
レポートによると、人口減の影響を受けにくい税目として固定資産税があるが、個人住民税は納税者の絶対数の減少により大きく影響を受ける。法人に課される税や地方消費税も影響を受けるが、その程度は個人住民税よりは小さい。また、今後の人口減のなかでは、地域間の税収格差も問題となるが、地域的な偏在性が少ない税目としては地方消費税が優れ、法人に課される税は、法人の所在地の偏りから地域格差が大きく表れやすい。
こうした分析を踏まえ、今後の地方税のあり方として、課税する地域の範囲を広域化することによって、税収が大きく不足する自治体を支援できる体制を整えることが有効な選択肢となるとの考えだ。税目によっては、都道府県や市町村といった法律上の公共団体の枠を超えて対応したほうが、効果的・安定的に税収を確保できるとみている。広域的な課税では、ドイツの共同税や東京都の都区財政調整制度などが参考となる。
もっとも、一定の地方税収を確保する前提として、まず地方税の総額を拡充する国から地方への大規模な税源移譲を行うことが重要となる。2006年度税制改正で実現した所得税から個人住民税への税源移譲に加え、消費税の地方への配分の拡大なども検討の余地がある。そのうえで、各自治体における財政需要や財政状況の違いを反映した税率設定を可能にする仕組みを強化することが望ましいとしている。
レポートの詳細は↓
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/report/report06-0330.pdf