国税は、金銭で一時に納付することが原則だが、相続税額(贈与税額)が10万円を超え、納期限までに金銭で納付することが困難な場合は、その金額を限度に、申請書を提出の上、担保を提供することにより、年賦で納めることができる。これを延納という。延納できる期間や延納にかかる利子税の割合は、相続財産に占める不動産等の割合に応じて5~20年、1.2~6.0%と定められている(延納贈与税は5年、6.6%)。
この延納の申請件数は、バブル崩壊後の急激な地価の下落と軌を一にして減少してきた。地価上昇が期待できず値下がりが確実な状況では、相続した土地を担保として延納するよりも、相続時点で売却して金銭で納付したほうが有利だからだ。国税庁がこのほどまとめた2005年度の相続税の延納処理状況によると、今年3月までの1年間の延納申請件数は5763件、金額にして1553億円だった。
申請件数はピーク時1991年度(4万7360件)の約12%に、金額も同じくピーク時1991年(2兆4214億円)の約6%まで減少した。申請件数の減少に伴い処理もはかどっている。2005年度は、前年度からの繰越し1801件を含め処理すべき件数が7567件だったが、許可5626件、取下げ等477件、却下63件の計6166件を処理。年度末の処理未済件数は1398件と、ピークの1991年度末(1万6331件)の約9%に減少した。
ところで、1日発表された2006年分の路線価は前年に比べ0.9%増と14年ぶりに上昇したが、延納申請はピークの1991年度以降一貫して減少している。2005年度の申請件数5763件も前年度に比べ約18%の減少だった。地価はここ数年下げ止まり感をみせているが、まだ下落は底を打ったとはみられていないようだ。今回の路線価の上昇にしても東京など都市部の上昇が地方圏の下落を補った格好だ。当分延納は減少が続きそうだ。