総務省の「家計調査」によると、勤労世帯のうち住宅ローン保有世帯の割合は2005年に33%に達し、近年高い水準で推移している。また、家計部門全体でみると、住宅ローン総額は約183兆円(住宅ローン保有1世帯あたり1600万円)、負債に占める割合は約48%となっており、その割合も近年高まりつつある。そこで、住宅ローン保有世帯の動向を分析したのは内閣府のレポートである。
それによると、住宅ローン保有世帯の所得(住宅ローンを支払う前の可処分所得)、消費支出における減少幅は、ともに非保有世帯と比べるとおおむね大きいものとなっている。特に消費支出の落込みが大きいが、これは、近年可処分所得対比でみて比率を高めている住宅ローンを家計が固定費として認識しているため、住宅ローンを支払った後の可処分所得をもとに消費水準を決定しているものとみている。
消費支出と所得の関係を消費性向(消費支出/住宅ローンを支払う前の可処分所得)の動きで確認してみると、住宅ローン非保有世帯は2000年ごろから上昇に転じているのに対し、保有世帯の消費性向はほぼ横ばいの動きとなっており、住宅ローン保有世帯が消費支出を抑制しているようにみえるが、住宅ローンを支払った後の可処分所得をベースとした消費性向で比較してみると、非保有世帯とほぼ同様の動きとなる。
ただし消費性向の上昇は、一方で貯蓄を抑制していることになり、住宅ローン保有世帯は、一定の消費水準を維持するためにある程度貯蓄を抑制している可能性が考えられる。ここでは、こうした貯蓄の抑制が長期間継続されると貯蓄の増加ベースと比較して負債の増加ベースが速まることを懸念している。実際に、住宅ローン保有世帯の貯蓄と負債の関係をみてみると、年々負債の超過幅が拡大している。
住宅ローンの返済は、家計のバランスシートから考えれば、負債の減少を通して貯蓄を高めているとも言えるが、実際には流動的な金融資産の増加は伴っていない。こうした意味では、今後住宅ローン保有世帯が老後への備えなどを目的に、消費の抑制を通して流動的な金融資産を保有するという行動が考えられることから、レポートは、今後の住宅ローン保有世帯が貯蓄や消費などに与える影響には注意を要するとみている。