日本企業の2004年度の対中直接投資額は4900億円に達し、史上最高額を記録した。しかし、中国経済の裏側では、その歪みにともなうさまざまなリスクが随所で顕在化しており、経営者の多くは現在、あらためて中国リスクを吟味するようになっている。みずほ総研が5月に製造業を対象に実施した「日本企業のアジアビジネスに関するアンケート調査」では、転換期を迎える日本企業の中国戦略が浮かび上がった。
調査結果(有効回答数1351社)によると、60.5%の企業がアジアビジネスに取り組んでいることがわかった。具体的な内容は、「輸入」(34.4%)、「輸出」(32.1%)、「現地にビジネス拠点を設けている」(30.2%)、「技術取引を行っている」(6.8%)などだ。ビジネス拠点の地域は、69.4%の企業が「中国」と回答し、「ASEAN」(39.5%)や「NIES」(31.4%)を大きく上回った。
輸出入や拠点の設置などなんらかのアジアビジネスを行っている企業における自社製品の2~3年先の需要見通しについて、「高い需要の伸びが見込まれる」との回答は、「中国」(39.4%)、「ASEAN」(14.4%)、「NIES」(10.4%)の順で寄せられた。しかし、2004年調査との比較では、中国のみが回答率を減少させ、これまでみられた中国に対する強気の見通しにかげりがでていることがうかがえる結果となった。
また、国際ビジネス展開上今後もっとも力を入れていく予定の地域は、「中国」(44.0%)が他の地域よりも高い支持率を集めたものの、過去の回答率と比べると、初めて前年を下回る一方で、「ASEAN」への関心が回復している。その理由についても、ASEANは「技術者・熟練労働力の確保」など7項目で改善がみられたものの、中国は2項目にとどまり、日本企業の中国に対する視線は以前に比べ厳しくなっているといえる。
中国における現地法人の今後の戦略では、これまで中国拠点でもっとも回答率が高かった「新たに拠点を設ける」が後退し、「調達・販売先の見直しによる現地体制の増強」、「ライン合理化による現地体制の増強」が上位回答に浮上した。日本企業の中国戦略は、新たな拠点設置を優先、拡大一辺倒をめざすことから、現状のオペレーションを見直しながら収益性を改善し、中国ビジネスを深化させる方向に変化していると指摘している。
同みずほレポートは↓
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/report/report05-0824a.pdf