経済社会のボーダレス化の進展に伴い、国際的な課税問題は企業のみならず個人の富裕層にも広がりを見せている。国税庁はこのほど、今年6月までの1年間(2007事務年度)に海外取引を行っている者を対象に前年度比20%増の3103件の調査を実施し、60%増の総額約703億円、34%増の1件平均2267万円の申告漏れ所得を把握したと発表した。この金額は、実地調査(特別・一般調査)での1件平均965万円の2.3倍にのぼる。
海外取引調査3103件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の33%を占める1037件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同21%の665件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同11%の338件となっている。
そのほか、金銭授受や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので上記の取引に該当しない「その他」が全体の35%を占める1063件だった。これらの海外取引調査の結果、1件あたりの申告漏れ所得が2267万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で2087万円、「輸出入」で1094万円、「役務提供」で1729万円、「その他」で3346万円が、それぞれ把握された。なお、全体の18%程度が無申告だった。
調査事例をみると、勤務医Aのケースでは、国外送金等資料で把握した取引について説明を求めたところ、相続で取得した外国法人の株式に係る配当金の一部を取り寄せいていることが分かった。また、その外国法人はAの親族が経営しており、他の取引も想定し関係資料等を念査した結果、配当金のほかに、その外国法人への貸付及び海外金融機関の預金に係る受取利息も把握され、計1億2000万円の所得が無申告だったことが判明している。