将来的な消費税率引上げは避けられない状況にあるが、ニッセイ基礎研究所がこのほど発表した「消費税の引上げによる世帯負担額の試算」と題したレポートによると、今後、年金保険料の引上げに加えて、消費税率の引上げが実施されれば、低所得者層ほど相対的に負担の増加幅が大きくなる可能性があると指摘。消費税率引上げに向けては、このような逆進性を緩和するような配慮を求めた。
同試算では、年収500万円の標準的な「夫婦と子ども2人の4人世帯」における2007年と比べた2011年における負担額は、厚生年金保険料引上げにより社会保険料負担は3.4万円の増加となるが、所得税と住民税は、社会保険料控除の拡大によりそれぞれ▲0.2万円、▲0.3万円の減少になる。また、税率2%の引上げによる消費税の負担増加額は、約4.2万円になると推計。これらを合計した公的負担の増加額は7.2万円となる。
同様に、年収1000万円の世帯では、所得税は▲1.3万円、住民税は▲0.5万円の減少だが、社会保険料負担は6.3万円の増加、消費税は7.3万円の負担増となって、公的負担の増加額は11.9万円となる。2011年における公的負担率は、500万円世帯では20.1%で2007年から約1.4ポイント上昇だが、1000万円世帯25.9%で同約1.2ポイントの上昇にとどまり、年収が高くなるにつれて、負担率の上昇幅が小さくなっていく傾向がみられる。
これは、消費税率の引上げが実施されれば、低所得者層になるほど、相対的に負担の増加幅が大きくなる可能性を示唆するものだと指摘。レポートは、消費税率の引上げに向けては、このような逆進性を緩和するための軽減税率の導入と併せて、所得税など他の税制も考慮した制度設計を求め、さらには、社会保険料負担をも一体的に捉えたうえでの、家計の公的負担が累進的か逆進的かの判断も必要との考えを示している。
同レポートの全文は↓
http://www.nli-research.co.jp/report/econo_report/2007/ke0708.pdf