2月の最高裁判決を受けて、国税庁は、贈与・相続で取得した資産を譲渡した場合、贈与等の際に支払われる不動産登記費用や名義書換手数料などを取得費に含めて計算することに取扱いを改めた。これに伴い、贈与等された資産が建物である場合の取得費から控除される償却費の計算方法が、業務用資産と非業務用資産では異なってくる。過去の分について更正の請求等で還付を求めるときは注意が必要だ。
建物が不動産所得や事業所得などの業務用資産の場合は、償却費の計算に変更はないので、相続等によって取得した資産を譲渡した場合の取得費は、登記費用等について償却費累計額を控除しないで計算する。不動産所得や事業所得などの金額の計算上、登記費用等についての償却費を必要経費に算入することはない。つまり、取得に要した金額から控除する償却費累積額は変わらないが、登記費用等の加算分だけ取得費が増えるわけだ。
一方、住宅などの非業務用資産の場合は、減価の額は償却費の計算方法に準じて計算されるが、資産の取得に要した金額等について減価の額を計算することとされている。非業務用資産の減価の額の計算にあたっては、贈与者の所有していた期間と受贈者が譲渡するまで所有していた期間を分けて、それぞれの償却費相当額を計算し、この合計額を減価の額として取得に要した金額から控除することになる。
したがって、贈与等により取得した資産を譲渡した場合の取得費は、登記費用等についての減価の額も控除することになる。具体的には、受贈者の所有期間の償却費相当額は、贈与者の取得に要した金額に受贈者が支払った登記費用等を加えて、これを基に算出する。この償却費相当額と、贈与者の取得から贈与までの償却費相当額を合計したものが減価の額とすることになる。変更前よりも償却費は大きくなるが、登記費用等を含めた取得費から減価の額を控除するので、取得費は増えることになる。