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税務関連情報 (2007/07/02)

「同族会社等の行為計算の否認等」で注目判決

 国税庁はこのほど、同族会社とその株主である被相続人との間で締結した不動産売買契約について、相続税法64条(同族会社等の行為または計算の否認等)を適用したことが適法とされた大阪地裁判決(2006年10月25日、棄却・確定)を紹介した。この裁判例は、同族会社の行為計算の否認は、その行為計算が純粋な経済行為として不自然なものと認めるか否かを基準として判断すべきだと判示している。

 課税庁が否認したのは、被相続人Aが、生前に自分が代表者の同族会社B社との間で、B社所有の不動産を購入する旨の不動産売買契約書を結んだことだ。同契約では、不動産の譲渡価額は約16億5千万円とされ(時価は1億円余)、その支払は、AがB社の取引銀行からの借入金約16億5千万円を承継することにより充当するとされた。この不動産売買契約の価額は時価の約13倍に相当する金額となる。

 そこで課税庁は、この金額は通常の経済取引であれば考えられない不自然、不合理な取引であって、Aの相続に係る相続税の負担を不当に減少させる結果となるものとして、相続税法64条1項を適用して、相続人であるCに対し更正処分等を行ったものだ。これに対し、Cはこれを不服として争ったわけだ。

 大阪地裁の判決では、同族会社の行為計算が相続税等の負担を不当に減少させる結果となると認められるかどうかは、経済的、実質的見地において不自然、不合理なものかどうかを基準に判断すべきだとした上で、通常の経済取引であれば時価を基準として決定されると考えられるが、この契約では、時価ではなく、銀行の借入金残高を基準として代金額が決定されたと指摘した。

 その結果、時価の約13倍の金額を売買価額として定めたことで、Cらの相続税負担が相当減少することになったものと認められるとして、B社とAとの間で締結された契約は、経済的、実質的見地において不自然、不合理なものというほかなく、A社の株主であるCらの相続税の負担を不当に減少させる結果をもたらすものであることは明らかとして、訴えを棄却している。