今年10月1日から施行される経営承継円滑化法は、来年度改正で創設される事業承継税制と、遺留分に係る民法特例及び金融支援によって、中小企業の事業承継を支援するものだが、先般、中小企業庁が自民党に提出した同法の政令案によって、民法特例の施行日は2009年3月1日となることが明らかになった。同特例の施行日は、制度の周知等に時間が必要なことから、円滑化法施行の日から1年を超えない範囲とされていた。
民法の特例は、(1)生前贈与株式を遺留分の対象から除外する、(2)生前贈与株式の評価額をあらかじめ固定する。一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員と合意し、その合意が事業承継の円滑化を図るために行われたことについて経済産業相の確認、家庭裁判所の許可を受けたときに、特例の適用を受けられる。また、従来の遺留分放棄は、当事者全員が個別に申立てを行うことが必要だったが、後継者が単独で申立てができる。
そのほか政令案では、円滑化法の対象となる中小企業について、既存の中小企業支援法と同様、労働集約性や資本効率等を踏まえ、一部の業種について、中小企業の範囲を中小企業基本法上の中小企業より拡大することも明らかにされた。例えばサービス業は、中小企業基本法上の中小企業の定義では「資本金5000万円以下または従業員数100人以下」とされるが、政令により従業員数要件が「200人以下」に拡大される。
一方、省令案では、民法特例を利用できる中小企業の要件として、3年以上事業を行っていることを規定。また金融支援についても、(1)親族外承継も金融支援の対象となることを明確化すること等を規定、(2)日本政策金融公庫等が中小企業者の代表者に貸し付けることができる資金として、株式や事業用資産の買取資金、相続税納税資金、遺留分減殺請求への対応資金等を規定している。