年金記録が宙に浮いた支払漏れ問題を契機に、個人を識別するための統一番号制度導入の動きが改めて高まりつつある。IT社会の共通基盤として「国民識別ID番号制度」の創設を提言する社会経済生産性本部が実施した「社会保障番号の制定に関するアンケート調査」では、個人情報の漏えい・流出などのリスク回避を条件に、徴税や社会保障等を目的とした社会保障番号制度の検討を「進めるべき」との回答が5割を超えた。
調査結果(有効回答数1915人)によると、社保番号制度の検討を進める上で回避すべきリスク(複数選択)については、「情報の漏えいや流出などの防御、個人情報の保護」(77.7%)、「セキュリティの担保」(60.8%)など、管理サイドのセキュリティ強化を求める声が多い。次いで「国家による国民の監視・管理につながらないこと」(50.4%)、「国民の手続きが面倒にならないこと」(47.7%)などが続いた。
社保番号制度についての考えは、「上記の問題点をクリアできれば進めるべき」との回答が52.4%、「賛成、進めるべき」が6.4%と、6割近くが前向きな考えとなった。一方、「メリットは感じるが、リスクが大きいので、もう少し様子をみるべき」が26.4%、「メリットも感じられないし、リスクが大きいので進めるべきでない」が5.1%と、3割強が制度の導入には慎重もしくは反対の考えを示している。
制度導入により想定されるメリット(複数選択)は、「年金の支払記録漏れなど行政のミス・不正の解消」(43.1%)、それによる「行政コストの削減」(43.0%)、「行政サービス手続きを忘れても、行政側から連絡が届くような仕組み」(39.9%)などの順。「事業所得者・給与所得者の納税の不公平の解消」は27.6%、「金融所得・固定資産の確実な捕捉」は16.2%、「メリットにかかわらず進めるべきではない」は6.3%に過ぎなかった。
なお、各種番号制度の理解度について、「非常に関心がある」、「関心がある」との回答が多いのは、「IC運転免許証」(56.1%)や「ICパスポート」(50.3%)などで、日常的に使用されている制度の理解度は高い。逆に「あまり関心がない」、「まったく関心がない」との回答が多いのは、「住民票コード」(60.9%)、「納税者番号」(53.4%)、「基礎年金番号」(46.5%)で、国民に対する普及啓発活動のさらなる展開が必要なようだ。
同アンケート調査結果の詳細は↓
http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/isd/activity000822/attached4.pdf