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税務関連情報 (2006/03/03)

荒川選手の金メダルに対する報奨金は非課税

 前半はメダルが取れずに重苦しい空気が立ち込めたトリノ冬季五輪も、荒川静香選手がフィギュアスケートで金メダルを獲得したことで日本選手団の不振も吹っ飛んでしまった。殊勲の荒川選手には、オリンピック委員会(JOC)から報奨金300万円が贈られるが、この報奨金の税務上の取扱いは、所得税法の特例で非課税とされる。ただし、JOC以外のスケート連盟や所属会社などからの報奨金は課税される。

 JOCの報奨金支給は、各国の制度に追随して1992年のアルベール冬季五輪からはじまった。当時決められた金300万円、銀200万円、銅100万円という報奨金の額は14年後の今も変わっていない。ただ、当初はいくつメダルをとっても報奨金は1個分だけだったが、長野五輪からは獲得した全てのメダルに対して贈られることになり、金1銅1の清水宏保選手は400万円を手にしている。

 ところで、JOCからの報奨金が初めから非課税だったわけではない。1992年のバルセロナオリンピックにおいて、女子水泳200メートル平泳ぎで当時14歳の岩崎恭子選手が見事に金メダルを獲得したが、その報奨金300万円は一時所得として課税された。税額は、一時所得は所得の2分の1が課税されるので諸控除を引いて9万円程度と思われるが、中学生にも課税するのかと問題となり、1994年から非課税となった。

 ただし、非課税となるのはJOCからの報奨金のみで、連盟や協会からの報奨金は一時所得として課税される。また、社員として所属する企業からの報奨金は給与所得の対象となる。支給した企業側は損金算入できるが、報奨金を贈られた社員が役員であれば、「規則的に継続して支給される定期の給与」以外の給与として役員賞与となる可能性が高く、会社側も損金算入できないことになる。

 蛇足ながら、トリノ五輪を前にJOC総務委員会総会が承認した2005年度予算案でのメダリストへの報奨金は約2000万円だったそうだ。これは、長野五輪があった1997年度予算の半分、ソルトレークシティ五輪のあった2001年度予算と比べても1000万円少ないとのこと。JOCの役員は、今回のトリノ五輪の日本選手団の不振をかなり冷静に予感していた数字といえなくもない。