経 営 関 連 情 報 |
2002年05月20日-003
「地価の底入れ」実現には諸施策の一斉フル活用が必要
景気の低迷が続くなか、地価の下落が続いている。足元では、下落し過ぎた地価が実体経済に負の影響を及ぼしている。UFJ総合研究所は、5月16日に発表した「地価下落が実体経済に与える影響」についての分析レポートで、「地価の底入れ」を実現するためには、現時点で考え得る施策を個々別々に実施していくのではなく、一斉にフル活用していく必要があると提案している。「地価の底入れ」とは、不動産への買いが増大し価格が反転すること。
レポートの推計よると、地価下落による家計部門を通じた影響をみると、個人消費は所得要因、金融資産要因による影響が大きく、地価要因による影響は限定的という結果になった。しかしながら、地価の下落によって91年以降家計の保有する土地資産額は大幅に減少しており、家計におけるバランスシートの悪化が消費マインド面の悪化につながり、間接的に消費を押し下げている。一方、企業部門では、地価の下落が設備投資の抑制に働いている。地価の上昇期より、下降期のほうが実体経済への影響が大きい。地価の下落による設備投資押し下げ効果は、91~2001年平均で、製造業が▲5.0%、非製造業が▲9.0%となった。特に関西は、地価の下落が全国以上に激しくその傾向が出ている可能性が高いと分析している。
今後の地価動向については、供給サイド、需要サイドいずれからみても厳しく、商業地・住宅地ともに地価は下落基調で推移すると予測。実際に、関西の市街地価格指数の動向を2005年まで試算してみても、その傾向は確認でき、関西では少なくとも2005年にかけて地価の下落が実体経済に負の影響を与えつづけると予測している。
需要者がフローの収益をストックの減価が上回るリスクと感じている限り、地価の下落は続く。そこで、一向に兆しが見えてこない「地価の底入れ」の実現のために諸施策のフル活用を提案するわけだ。具体的には、1)都市部における容積率の緩和などによる良質な不動産の大量供給や、2)不動産関連税制の改正による需要者の投資意欲を喚起すること、3)正確で確実な採算水準の把握を可能にする地価情報システムの確立、4)家計における住宅ローン控除適用範囲の拡大、5)譲渡損失の繰越控除期間の拡大など、投資リスクの軽減を図る施策の迅速かつ同時併行での展開が重要と結論している。
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