金融庁金融研究研修センターはこのほど、わが国金融・資本市場の競争力強化のため、金融に関する幅広い知識を有するプロフェッショナルの育成・確保が重要との観点から、「金融専門人材について(基本的コンセプト)」をとりまとめ公表した。そのなかで、人材の育成・確保に関し、例えば「金融士(仮称)」といった資格を創設し、活用していくことが有効との考えを示した。
金融士の資格は、わが国金融界においてビジネスやコンプライアンスのレベルアップを図るためのものであり、医師や弁護士のように法律で業務独占規定を設ける国家資格とすることまでは必要ないとの、資格の位置づけについての考えも示した。ただし、この資格が有効に機能するためには、国民から認知・信頼されることが不可欠であり、何らかの公的関与は当然必要としている。
また、資格制度を前提とした金融専門人材のキャリアパスとして、大学生・大学院生や専門職大学院生、金融庁管理職・職員、弁護士、公認会計士等を想定。資質(知識・経験)として、(1)法律(会社法、金融商品取引法等)、(2)財務会計(会計基準)、(3)コーポレート・ファイナンス、(4)金融工学、(5)経営学、(6)統計学、(7)金融論、経済理論、(8)コンプライアンス・職業倫理、(9)英語の分野についての習得を求めている。
これらの科目について基礎部分は必須となるが、特に法律・会計基準については、抽象的・学問的な理解にとどまることなく、実務家として身に付けておくべき制度的制約に関する知識レベルまで基礎として習得する必要があるとしている。英語についても、わが国金融のグローバル化にとって依然として非常に大きなハードルの一つとなっていることを踏まえ、単なる読み書きのレベルを超えた能力の習得を求めている。
さらに、資格取得のためには、金融法務やリスク管理、財務諸表分析、ファイナンスなどの専門科目の資格試験をクリアーし、数年間の実務経験を経て金融士となるとの案を示している。金融庁は、金融専門人材の基本的なコンセプトについての考え方を広く示した上で、幅広くコメントを集め、今年夏ごろを目途に最終的な論点整理に向けてさらなる検討を進めていくとの考えだ。
「金融専門人材について(基本的コンセプト)」の詳細は↓
http://www.fsa.go.jp/news/19/sonota/20080430.pdf