政府は、財政再建に向けて2010年代初頭における国・地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス)黒字化の目標を掲げている。13日に開かれた経済財政諮問会議では、民間議員が、欧州委員会が欧州各国での財政健全化を分析した事例をもとに「財政健全化の4つの経験則」を提言し、増税だけに頼った財政再建は経済成長率を低下させることから、人件費や社会保障などの歳出削減が不可欠との考えを示した。
経験則1では、経済活力を持続させ、財政収支の改善を継続させるためにも、歳出削減を行い、「小さな政府」を目指すことが重要だとして、「歳出削減なくして増税なし」との言葉を掲げている。欧州委員会の分析では、増税だけで財政収支を改善した事例では成長率が平均1.9%ポイント低下した一方、増税4割・歳出削減6割の比率で財政収支を改善した事例では成長率が平均1.8%ポイント上昇したことを紹介した。
また、経験則2では、歳出削減においては、公共投資や政府消費などの裁量的支出だけでなく、人件費や社会保障など制度改革に踏み込んだ削減を行うことが重要だとして、「制度改革を伴う歳出削減」を掲げた。社会保障移転や人件費など制度変更を伴う義務的経費の削減に意欲的に取り組んだ改革事例において、財政収支の継続的改善、実質GDP成長率の上昇に成功しているとのアレシナ米ハーバード大学教授の分析を示している。
経験則3では「国民からの信頼」を掲げ、政府の財政健全化の取組みの真剣さが、国民や市場から信頼されることが、経済活力との両立のために重要だと指摘。国民の信頼を確保する上では、行政の規律向上や予算の厳格化などが不可欠とした。経験則4では、わが国の90年代の収支悪化ではデフレの長期化により税収が落ち込んだことを踏まえ、財政収支を改善するためには「デフレの克服」が急務だと提言している。