不正軽油とは、主にディーゼル車の燃料として使用される軽油に、脱税を目的で軽油引取税が課税されない重油などを混ぜ、軽油と偽って軽油引取税を含めた価格で販売しているもの。不正軽油は悪質な脱税行為のうえ、ディーゼル車の排気ガス中の有害物質を増加させ、環境に悪影響を与えることからも、全国の都道府県が撲滅作戦を展開中だが、密造する者が後を絶たない。
そのような状況に業を煮やした総務省は、2004年度税制改正で軽油引取税を改正し違反者には罰則強化で臨むことになった。まず、不正軽油を製造した者に対する罰則を、改正前の1年以下の懲役または50万円以下の罰金から「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金またはその併科」と大幅に引き上げた。不正経由と知っていて運搬・保管・取得・処分の仲介などをした者に対する罰則も創設する。
さらに、上記の不正に法人の代表者や代理人、従業員などが関わった場合は、その法人に対して、製造では「3億円以下の罰金刑」、運搬等では「1億円以下の罰金刑」を科すことになった。また、軽油引取税に係る脱税に関する罪についての罰金刑を200万円以下から500万円以下に引き上げ、軽油引取税の徴収不能額等の還付を受けた軽油引取税の特別徴収義務者に対する罰則を創設する。
このような大幅な罰則強化が、不正軽油撲滅にどれぐらい効を奏すか注目されるところだ。また、不正軽油を使用していないか、路上や工事現場などでディーゼル車や建設機械の燃料を抜き取りチェックする調査でも、昨年4月から硫黄分50ppmの軽油が全国的に導入されたことから、識別剤(クマリン)を除去した不正軽油の発見が容易になっている。不正軽油密造業者の外堀は埋められつつあるといえようか。