9月11日の総選挙では郵政民営化への是非が最大争点となっている。だが、郵政民営化がどのような意味を持つのかは必ずしも理解されていない。そこで紹介するのは、三菱総研の「『郵政民営化』の持つ意味」と題した緊急レポートである。レポートは、郵政民営化よりも重要な問題があるとの意見も聞かれるが、郵政民営化は、構造改革実現のために必要なものであって構造改革そのものであると主張する。
レポートは、構造改革を簡潔に定義すれば、経済の供給構造をより効率化し、資源配分を最適な状態に近づけることによって、経済の活力を取り戻すための改革であるとする。その実現ために郵政民営化が必要な理由として、まず資金フロー改革を挙げる。経済が活力を本質的に回復するためには、資金をより成長性の高い民間に流し、経済の供給構造を効率化しなければならない。郵政民営化には、市場メカニズムをフル活用してわが国の資金フローを最適な形にするポテンシャルを持つという。
次に、郵政民営化は財政再建の出発点だとする。直接的な意味では、現状では国の債務そのものである郵貯・簡保資金を、民営化を通じ、国のバランスシートから明示的に切り離していく必要がある。間接的な意味では、民営化後の新会社は経営効率を上げざるをえず、貸出先の査定厳格化を通じて特殊法人や地方自治体の経営効率向上を誘発する。郵政改革は、これらを通じた国の財政改革だと説明する。
また、民間で可能なサービスは、非効率が生じやすい公的部門から切り離し、競争を促進しなければならない。民間の事業拡大機会が拡大すると同時に、公的部門のスリム化(小さな政府の実現)を通じた財政負担の軽減にも資する。数ある公的法人のうち、最大のものが郵政公社であること、基本的に民間で可能な業務を行っていることを考えれば、郵政民営化は必須である、と指摘する。
このように、郵政民営化とは、まさに財政改革そのものであり、社会保障改革もつまるところ、財政そのものの問題である。財政改革は構造改革なしには実現不可能であり、年金問題は財政問題の解決なしには本質的に解決しない。こうした面からレポートは、各政党の政策を冷静かつ客観的にみていく必要がある、と結んでいる。
レポートの全文は↓
http://www.mri.co.jp/REPORT/ECONOMY/2005/dc05082302.pdf