藤原道長、織田信長、夏目漱石、北原白秋―これらの歴史上の人物が共通に悩んでいた病気、それは、いまや日本の国民病といわれている糖尿病である。厚生労働省の統計によると、糖尿病有病者(強く疑われる人や可能性を否定できない人を含む)は2002年で1620万人と5年間で250万人も増加。50歳を超えると4人に1人以上が糖尿病だという。その「しのびよる糖尿病」の撃退を願うのは三菱総研・中島俊一氏のコラムである。
コラムによると、糖尿病は、本質的には血液中のブドウ糖量が慢性的に多くなることを主な特徴とする代謝疾患だと定義。糖尿病の恐ろしいところは、体全体にその影響が出てくる点だ。糖尿病学会のデータによると、糖尿病に起因して、網膜症による中途失明が年間3500人以上、腎症による新規血液透析が年間1万3000人以上、足壊疽による切断は年間3000人以上、それ以外にも心筋梗塞や脳梗塞発症の原因との報告もなされている。
糖尿病を予防することは、ある意味では簡単であり、食事を必要量以下に抑え適度な運動を続ける、すなわち生活習慣を改善すること、これだけだ。まさに糖尿病が生活習慣病と呼ばれる所以でもある。海外の大規模な疫学調査でも、生活習慣を改善して体重を5%減らすことなどで、糖尿病発症のリスクが確実に減少することが明らかになっている。
適正なエネルギー摂取量は、職業や身体状況で違いがあるが、男性で1400~1800キロカロリー、女性で1200~1600キロカロリーの範囲にある。運動量については、歩行運動では1日1万歩くらい(30分の歩行を2回)が適当とされており、激しい運動が必要なわけではない。「ぜひ、毎日少しだけ歩く距離を長くして、食べ物のカロリー計算を習慣づけることによって、しのびよる糖尿病を撃退してほしい」というコラムの趣旨である。