日本経団連の21世紀政策研究所はこのほど、「抜本的税制改革~安心社会の建設と経済活性化の両立を」と題した報告書を公表し、当面の改革として、2011年度までに消費税率を8%に引き上げることなどを提言した。報告書は、税・財政・社会保障を一体で改革することを強調し、税率引上げの1%分は年金財源、1%分は医療・介護・少子化対策費と、低所得者向け対策の給付付き税額控除の財源に充てることを提案している。
軽減税率は設けず、低所得者向け対策は、軽減税率の代わりに消費税増収額の10~20%分(消費税軽減税率を設けた場合の税負担軽減分)を活用し、給付付き税額控除制度の導入により対応する。また、地方消費税を1%分引き上げ、一部の財源は地方法人税の軽減に振り向ける。この結果、地方税の比重が拡充されるが、税源移譲の一環とする。そのほか、インボイス制度を導入し、透明性を高め、消費税制度の信頼を向上させる。
消費税率引上げ以外では、現在国と地方を合わせて40.69%である法人実効税率を10%程度引き下げて、先進諸国並みの30%とすることを目標とする。この引下げは、他の先進諸国と比べて著しく高い地方法人二税(法人住民税、法人事業税)の改廃によって実現する。ただし、2011年度までの基礎的財政収支黒字化を優先し、2011年度までは、法人実効税率の引下げを機動的に実現するための環境整備を図るものとするとしている。
また、所得税は、最近の格差問題や貧困問題に対処するため、所得再分配機能の再構築を図ることを提言。具体的には、所得控除に代え「税額控除」を導入し、税収中立原則の下で、負担調整の改革を行う。その際、課税最低限以下の者等を対象に、給付付き税額控除の導入を図り、社会保障負担の緩和、勤労インセンティブの向上、ワーキングプアへの対応を図り、併せて消費税の低所得者向け対策とすることを提案している。