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信託を活用した中小企業の事業承継で中間整理公表

税務関連情報 - 2008年09月05日

 2007年に施行された改正信託法により、事業承継に活用可能なスキームが創設され、そのメリットについて数多くの指摘がなされている。しかし、(1)多くの中小企業経営者にとって、信託を活用した事業承継への取組みに馴染みがない、(2)会社法や民法等との関係が十分に整理されていないため、リーガルリスクを懸念して、信託銀行が商品展開に慎重なことから、事業承継に活用されている事例はそれほど多くないのが実情だ。

 そこで、中小企業庁が設置した「信託を活用した事業承継円滑化に関する研究会」は、事業承継の円滑化のために活用可能な信託スキームについて、そのメリット及び活用ニーズを具体的に整理するとともに、会社法及び民法等との関係について検討を行ってきたが、このほど、その検討結果の中間整理として、既存の法体系に抵触することのない信託スキームについての一つの考え方を提示した。

 中間整理は、信託活用の具体的手法として、(1)遺言代用信託を利用した自益信託スキーム、(2)他益信託を利用したスキームを例示した。(1)は、経営者(委託者)がその生前に、自社株式を対象に信託を設定し、信託契約において、自らを当初受益者とし、経営者死亡時に後継者が受益権を取得する旨を定めるものだ。後継者は、相続開始と同時に受益者となることから、経営上の空白期間が生じないなど、遺言と比較してメリットがある。

 (2)は、経営者がその生前に、自社株式を対象に信託を設定し、信託契約において、後継者を受益者と定めるものだ。経営者が議決権行使の指図権を保持することで、経営者は、引き続き経営権を維持しつつ、自社株式の財産的部分のみを後継者に取得させることができる。同様の効果を有する種類株式の発行と比較して手続きが容易であり、また、拒否権付株式は、積極的に会社の意思決定を行えないという、制度上の限界がある。

 同研究会は、信託の利用促進を通じて、事業承継の円滑化を図るため、信託を活用した事業承継スキームへの事業承継税制(非上場株式等に係る課税価格の80%の相続税の納税猶予制度)の適用の可能性について、論点を精査しつつ、引き続き検討していくとしている。

 同中間整理の詳細は↓
 http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/shoukei/download/080901shokei_chun.pdf