対米ドル円レートは昨年暮れ頃から円高が進み、一時は101円台になった後一転して円安に戻すなど、このところ為替動向に注目が集まっている。円高はわが国の輸出競争力を低下させると考えられるところから、その大きさを検討したのは内閣府の分析レポートである。まず、実質実効為替レートの動きをみると、対米ドル円レートほどには円高となっていないことがわかる。
実質実効為替レートとは、内外物価上昇率の差を考慮するとともに円と主要な他通貨間のそれぞれの為替レートを、日本と当該相手国・地域間の貿易ウエイトで加重平均した指数である。それが、対米ドル円レートほど円高にならない理由としては、対ユーロ、韓国ウォンなどで円安になったこと、また緩やかなデフレ状態にあるわが国と比べて貿易ウエイトが大きい米国・中国・ユーロエリアなどで物価上昇率が高いことが挙げられる。
つまり、対米ドル円レートでは円高になっているが、他通貨の円安とインフレ格差がこれをある程度相殺するため、実質実効ベースではそれほど円高が進まないとみられている。また、実際の輸出における取引通貨をみると、対米貿易のうち円建ての比率は12.9%、EU向け輸出では29.3%、アジア向けでも52.8%に過ぎず(2004年下期実績)、このため対米ドル円レートの変動が輸出競争力に及ぼす影響は実際にはもう少し緩やかな可能性があるとみている。
そこで、対ドル、対ユーロ、対アジアの名目レート変動が円建て部分にしか影響しないことを勘案して実質実効レートを算出してみると、実質実効為替レートは2004年5月から2005年1月に4.0%ポイント上昇したが、寄与度分解してみると、名目レートの円高によるものが4.6%ポイント、それを打ち消すインフレ格差が0.6%ポイントであることがわかる。
さらに円建て比率を勘案した“修正実質実効レート”の上昇率は3.5%ポイントまで下がり、わが国の輸出競争力は表面上の対ドルレートの円高化よりも緩やかであることがわかるとしている。