東京国税局はこのほど、乳がんの治療に伴い乳房を失った患者に対して行う乳房再建手術の一つである「CAL組織増大術」による手術費用は、医療費控除の対象となる医療費と判断することを明らかにした。これは、高度美容外科医療を行う医療法人の事前照会に対し文書回答したもの。「CAL組織増大術」は、患者自身の脂肪を吸引し、そのうち脂肪由来肝細胞を抽出した後で再び患者に移植することで乳房を再生するというもの。
医療法人は、事前照会において、同手術の標準的費用が片側で147万円であるとした上で、手術は医師によって行われることや、乳がんの治療においては、一般に腫瘍箇所の除去とともに乳房の切除が行われるので、乳房の概観を復元させることは乳房を原状に回復させる行為であること、また、その手術は、乳房を失った患者に対する乳房再建手術であることから、乳がん(病気)の治療の一部と考えられるとした。
さらに、女性にとって乳房を失うことは日常生活において支障が生じる場合があり、患者にとっては心理的にも大きな負担となると指摘。乳房再建手術は、乳がん治療の一環として一般的に行われているもので、いわゆる豊胸手術のように美容目的で行われるものとは性格が異なることから、この手術は、医療費に該当しないと所得税法が定める「容姿を美化し、または容ぼうを変ええるための費用」には該当しないとの考えを示した。
こうしたことから、この手術は、乳がんの治療に伴い乳房を失った患者に対して行われる乳房再建手術であり、その費用は医師による診療等の対価で通常必要と認められ、その病状に応じて一般的に支出する水準を著しく超えない部分の金額と考えられることから、医療費控除の対象となる医療費に該当するとの見解を示した。この事前照会に対し、東京局がこの手術費用は医療費控除の対象となることを認めたわけだ。