2005年に入り、多くの金融機関では、収益源の確保・拡大のため、貸出に対する取組姿勢を強化している。特に中小企業向け融資に関する取組みを強化している点が、ここ数年の違いとして注目される。農林中金総研は、90年代末以降の中小企業向け融資に対する金融機関の取組みが、どのように変化してきたかを整理した分析レポートを発表した。
レポートによると、バブル崩壊以降、民間金融機関が中小企業向け融資への取組み姿勢を一斉に手控えた結果、「商工ローン」の中小企業向け無担保ローンが増加し、その高金利貸出や強引な取立てが社会問題化した。その原因は銀行による“貸し渋り”との批判が高まった。一方、銀行は、個別審査が基本だった中小企業向け融資を、財務データや経営者個人の属性等をもとに定型的に審査する自動審査システムの導入を進めた。
99年には大手銀行に先駆けて東京都民銀行が自動審査システムによる中小企業向け無担保ローンを開始したほか、00年ごろには大手銀行や一部の地銀も同ローンの取扱いが始まった。01年ごろになると、その「中小企業向けローン」の拡大のため、銀行とノンバンクとの提携が始まる。経営者個人への審査ノウハウを持つノンバンクと組むことで、個人事業主等小規模事業者への融資拡大が図れている。
02年以降は、大手各行が、支店長の決済上限額の拡大や後方事務を集中的に行う部署の新設など、「中小企業向けローン」の推進体制が整備されていく。05年に入ると、さらに金融機関の取組みが強化された。例えば、大手行は、これまで手薄だった地方の中小企業に対し、FAXやインターネットを使い、自動審査による迅速対応と優遇金利を武器に積極的なアプローチを展開している。
一方、地域金融機関では、財務状況のよい取引先に大幅な優遇金利を提示するなどで対抗、地方の中小企業をめぐる大手行と地域金融機関の貸出競争が活発化している。このように、90年代末以降、中小企業向け融資は、審査の定型化・自動化が進み、「中小企業向けローン」を核に中小企業向け融資を積極的に進めている。さらに、リスクの高い層への融資拡大を狙ったノンバンクとの提携も加速しており、今後の動きが注目される。
同レポートの全文は↓
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0603mov.pdf