総務省が、フリーターやパートなど短期就労者に対する個人住民税の徴収を強化することを明らかにして注目を集めている。現行制度では、1月1日時点で就労していなければ納税義務があっても把握されないため、企業に対し、退職時に居住していた市町村に給与支払報告書の提出を義務付ける方針だ。改正案を来年度税制改正に盛り込み、2006年1月から適用し、2007年度から実際に課税する。
フリーターなどの1年未満の短期就労者に対する住民税課税を徹底する方針を打ち出した背景には、財政難の地方自治体が収入増を図ることもあるが、個人所得課税が強化されるなかで、制度の不備によって納税を見逃していることへの給与所得者などからの不平・不満を解消することが狙いだ。近年の生活意識の変化などからアルバイトやパート、派遣労働者などに就く若者が急増しており、非正規労働者はいまや417万人にのぼる。
もはや無視できない数字となっており、長期雇用を前提とした現行制度は改めざるを得ない状況にある。政府税制調査会の石弘光会長は「これまで漏れていたものを、課税の公平のために改めるのだから、課税の強化でも何でもない。ある意味で怠慢だったものを本格的に戻すというふうに考えている」と語る。結果として課税の不公平がただされることに賛意を示しており、改正は確実とみられている。
源泉徴収義務者である企業への事務負担増が懸念されるが、それも税務署に提出する源泉徴収票は市町村に提出する給与支払報告書と複写式になっており、それを市町村に提出すれば済む。要は、1月1日時点で働いていない短期就労者でも前年に給与を支払った実績があれば報告書を提出すればいいわけで、それほど負担増にはならないとみられている。
一方、課税最低限に達せずに源泉徴収されて、申告すれば税金が戻る短期就労者も少なくないと推測される。短期就労者に対する住民税課税の見直しを機に、パート・アルバイトとはいえ、今まで以上に税金に関心を持つことが求められるようだ。