個人消費が着実な増加を続けている。2002年初からはじまった今回の景気回復は、2006年4月でバブル期と並ぶ4年3ヵ月と息の長いものになっているが、その背景としては、海外景気の拡大や企業部門の構造調整圧力の後退とともに、個人消費が底堅い動きを続けてきたことが見逃せない。そのような近年における個人消費の底堅さとその背景を分析したのは日本銀行のレポートである。
レポートは、近年の個人消費の特徴として、1)企業の人件費抑制姿勢から所得がかなり抑制されたにもかかわらず、消費は底堅く推移してきた、2)そうした傾向は、特に高齢者(シニア層)で顕著、3)財・サービス別にみると、耐久財消費やサービス消費が相対的に好調なこと、などを挙げた。また、最近では、雇用者所得の改善のもとで、若年層も含めて、消費の改善に広がりが出てきたことも重要な変化だと指摘した。
消費の底堅さの背景としては、まず基調的な要因として、1)高齢化などの人口動態の影響、2)消費者意識の変化と企業努力、3)介護保険制度導入の影響、を挙げている。これらに加え、局面ごとには、4)消費の慣性効果、5)マインドの改善や資産効果、6)実際の雇用者所得の改善なども、消費の押上げ要因として比較的強く働いたとの見方を示している。
このように、個人消費は、過去数年にわたってある程度構造的・基調的な要因によって下支えされてきたと同時に、最近では、所得や資産の増加にも裏付けられた、より前向きなものに変わってきている。最近の消費が、人口構成の高齢化に加え、雇用者所得の増加、株価上昇による資産効果、所得の先行き見通しの改善など、よりしっかりとした回復基盤を持つものになってきていると分析している。
先行きについては、雇用所得の増加が続くとみるほか、将来の所得に関する家計の自信も次第に強まっていくと予想。また、企業部門の好調が続けば、株価などを通じた家計への好影響も引き続き期待しうるとする。この間、高齢化のトレンドは、これまで同様、消費性向を押し上げる方向に働くとみられ、こうしたもとで、個人消費は、消費性向の緩やかな上昇を伴いつつ、当面、堅調な増加を続けていく可能性が高いと結論している。
同レポートの全文は↓
http://www.boj.or.jp/ronbun/05/data/ron0603a.pdf