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税務関連情報 (2007/12/07)

「ふるさと納税」は地方を豊かにするか?

 来年度税制改正は、消費税問題は見送られ、来年は総選挙の可能性があることから、大幅な増減税を伴う改正は行われないとの見方が強まっている。そうしたなか、地方の格差是正のために、現住所以外の自治体に納税できる「ふるさと納税」制度の創設が検討されるが、その「ふるさと納税」の効果について疑問を呈するのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの主任研究員・山本将利氏のコラムだ。

 総務省の「ふるさと納税研究会報告書」は、納税者の選択で自分の住む地域以外の地方自治体に個人住民税の一部を寄附できる「ふるさと納税」として、個人住民税所得割の1割を上限として5000円を超える寄附金相当額を個人住民税から税額控除する制度を提示した。「ふるさと」はどこでもよく、比較的少額の寄附を行う納税者に配慮し、適用下限額を現行の10万円から大幅に引き下げて5000円とする案だ。

 コラムは、このような内容で、わざわざ制度をつくる必要があるのか、と疑義を呈する。なぜなら、「ふるさと」が自由であれば、現在1800市町村あることから323万8200通りの税額のやり取りが起こり得る可能性があり、自治体間の手続きが煩雑になる。寄附金による税額控除方式は手続きが難しいと考えられ、手続きのためにシステム構築等を行うことにも多くのコストがかかることが想像できる、などの理由を挙げている。

 さらに、格差是正は期待できないことを挙げる。例えば、年収500万円のサラリーマンで住民税は約15万円(扶養家族3人、社会保険料等を考慮)だが、その上限の1割をふるさと納税しても1万5000円に過ぎない。出生地以外に住む人全員が住民税の1割を納税しても2%の変化にとどまる、との全国知事会の地方税制小委員会による試算を示している。地域間の財政力・税収格差の是正に対する効果は限定的である感も否めない。

 コラムは、このような煩雑な手続きを行ってまで「ふるさと納税」制度をつくって実施するよりも、税源移譲により地方に税収を確保できる方策を実行することが必要ではないだろうかとの考えを示している。