税 務 関 連 情 報

2003年07月14日-003
相続税の基礎控除の引下げはルール違反?

 政府税調の中期答申は「相続税の課税ベースの拡大」も打ち出した。具体的には、現在相続税の課税対象額から差し引ける基礎控除額(5000万円+1000万円×法定相続人数)を引き下げることが検討される。基礎控除は、バブル期の地価の高騰で膨らんだ相続税負担を軽減するために引き上げられてきた。地価の下落が続く現在もそのままであることから、相続税の課税対象となるのは相続件数の5%前後に過ぎない。時代の変化に合わせて見直そうという考えは理解できる。

 しかし、タイミングが悪すぎないか。今年から生前贈与を促進するために相続時精算課税制度が創設された。これは、贈与時に贈与財産に対する贈与税を支払い、その後の相続時にその贈与財産を含めたところで相続税額を計算し直す制度である。すでに支払った贈与税額は相続税額から控除するが、控除しきれない場合は還付を受ける。このような仕組みであるから、生前贈与をする場合、当然、相続時点での基礎控除額を念頭に入れる。その前提条件を不利にしてしまうというのはルール違反ではないのか。

 加えて、一般的な負担増を伴う税制改正の適用時期は遡及しないことが原則だが、この基礎控除の引下げは今年の生前贈与の特例にも影響する可能性が大いにある。基礎控除を見直すのは数年先になるだろうが、その間の生前贈与は、相続が発生しない限り、基礎控除の引下げが遡及して影響する。こんなルール違反はあるまい。将来の相続で100までは税金がかからないことを前提に生前贈与を行うのに、その100を例えば50にしてしまおうというのだから―。財政再建のための負担増は仕方がないが、納税者が納得のいく方法で行われることを望みたい。

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