所得税法では、永住者に対してはすべての所得が課税対象となるが、非永住者に対しては、国内の所得(国内源泉所得税)のすべてと国外の所得(国外源泉所得税)のうち国内で支払われたもの及び国内に送金されたものが課税対象となる。つまり、非永住者が国外で得た所得のうち、国外で支払われた所得は課税されない。例えば、国外に所有している不動産の家賃が国外の銀行口座に振り込まれた場合は課税されない。
この非永住者制度は、日本国籍がある者でも国内に永住する意思がないことを示せば適用されることから、同制度を利用した祖税回避に批判が高まっていた。そこで、2006年度税制改正では、同制度の対象者を、居住者のうち、日本国籍を有しておらず、かつ、過去10年間のうち5年以下の期間、国内に住所等がある個人とされる。この改正は、2006年4月1日以後の非永住者の判定について適用される。
これまでの非永住者の定義は、国内に永住する意思がなく、かつ、国内に住所がある期間が、現在まで引き続いて5年以下の者とされ、日本人を中心に2万人くらいが制度の適用を受けているといわれている。なかには、制度の恩恵を引き続き受けるため、5年が経過する直前でいったん帰国して再来日する者がみられ、こうした“黒い目の非永住者”とも呼ばれる者の租税回避が問題視されていたわけだ。
というのも、非永住者制度の本来の趣旨は、わが国に居住する外国人の国際的な二重課税を防ぐことにあるからだ。だから、今回の改正では、日本国籍がある者が除かれ、さらに居住期間も、過去10年間に合計して5年以上日本に滞在していれば非永住者とはみなされないことになる。なお、住民税については、非永住者・永住者に関係なく、1月1日現在、居住者として日本に住んでいれば課税される。