世界に例をみない速度で進行しているわが国の高齢化は、わが国経済・産業にとどまらず、高齢者が居住・活動する地域社会にも大きな影響を与える。地域社会では、これまで地域インフラとしての機能を発揮してきた商店街に対し、一層の機能強化が求められる。そこで、大阪府立産業開発研究所は、大阪府・東京都・愛知県内の商店街を対象に「高齢社会に対応した商店街づくりに関するアンケート調査」を実施した。
調査結果(有効回答数324商店街)によると、高齢者対応の必要性に関しては、「非常に強く感じる」(18%)と「やや強く感じる」(42%)を合わせ6割の商店街がその必要性を感じている。しかし、現在の高齢者支援活動の実施状況をみると、もっとも多く取り組まれている「買い上げ商品の配達」も30%にとどまっており、やや低調といえる。ほかでは「電話・FAXでの受注・配達」(23%)、「施設の段差解消」(21%)など。
商店街が高齢者支援活動に取り組まない理由(複数回答)としては、「組合員の意識が不十分」が全体の38%を占めたほか、「人手不足」(37%)や「資金不足」(34%)、「効果が不明」(32%)などが3割を超えた。都府県別にみると、「資金不足」や「効果が不明」、「やり方がわからない」が大阪府と愛知県で多く、東京都では少ない。大阪府商店街の新しいものへの取組意欲や情報収集力の減退が一因と分析している。
やや低調な商店街の高齢者支援活動だが、各地でその活動が行われつつある。大阪府寝屋川市の全商店街とNPOが参加する「地域通貨げんき」を利用した「地域住民間の助け合い支援事業」、東京都品川区の中延商店街振興組合でのNPO法人バリアフリー協会との連携による「街のコンシェルジェ事業」のほか、「よろず相談所事業」や「ランチ宅配等の地域支援事業」、「シルバーカード事業」など、各地で支援活動が始まっている。
ただ、商店街活動の実施において、「常に目標を設定している」とか「事業実施後に、常に事業評価を行う」といった「マネジメント・サイクル」を実施している商店街は4割程度にとどまる。また、地域の自治会や老人クラブ、NPOとともに活発な活動を行っている商店街はさらに少ない。高齢者支援活動の円滑な実施のためには、マネジメント・サイクルの実践、地域の各団体との連携強化が求められる。
同アンケート調査結果の要旨は↓
http://www.pref.osaka.jp/aid/chosa/05-101/05-101-gaiyo.pdf