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税務関連情報 (2005/07/04)

いよいよ浮上したゴルフ会員権の損益通算廃止

 以前からささやかれていたゴルフ会員権の譲渡損益と他の所得との損益通算を廃止する可能性が現実味を帯びてきた。政府税制調査会が先月21日に公表した個人所得課税に関する論点整理(報告書)のなかで、「土地・株式に係る譲渡所得はすでに分離課税とされているが、その他の資産の譲渡益についても、同様の取扱いとすることを検討する必要がある」と、ゴルフ会員権の損益通算を示唆している。

 政府税調は、譲渡所得は譲渡のタイミングを恣意的に選べることから損益通算による租税回避に利用されやすいことや、所有期間5年超の長期譲渡所得の譲渡益は2分の1課税となる一方、譲渡損はその全額を総合課税とされる他の所得から差し引ける点で不均衡な制度となっていると指摘。ゴルフ会員権や高額な貴金属、骨董品などの譲渡所得を総合課税から分離課税とする方向で検討する。

 実現すれば、その売却損益を給与など他の所得と損益通算することはできなくなる。分離課税となれば、所得税・住民税を合わせて20%の税率を適用する案が有力で、これまで総合課税で最高50%の累進税率で課税されていたことからすれば、高所得者が譲渡益を出した場合、税金はいまより少なくて済む。しかし、問題は多額の含み損を抱えたゴルフ会員権の保有者である。

 周知のように、バブル崩壊後のゴルフ会員権の価格下落はすさまじく、最近でこそ落ち着いてきたものの、5年前以上に購入した会員権のほとんどが含み損を抱えているといわれている。会員権の譲渡所得が分離課税に移行すれば、これらの会員権保有者が売却損を出しても、現行のように他の所得と損益通算して税負担を軽くする道が閉ざされることになる。肝心の具体的な見直し時期は今のところ明らかではない。

 個人所得課税改革は中長期的な課題とされ、石弘光税調会長も「4~5年かけて行う」と発言している。しかし、なかには来年度税制改正に盛り込む項目もあり、何よりも思い出されるのは、2004年度税制改正で1月にさかのぼって廃止された土地・建物の分離譲渡所得の損益通算の廃止である。手をこまねいているしかなかった悪夢が再現する可能性は誰も否定できない。その可能性を十分に留意する必要があろう。