税 務 関 連 情 報

2003年10月20日-001
タンス株を悪用した節税法を野放しでいいのか!!

 いま証券関係者の間でタンス株を使った節税方法が話題となっている。今年から株式譲渡益が申告分離課税に一本化され、投資家が申告する手間を考慮して特定口座制度が設けられた。同制度の源泉徴収口座を利用すれば申告が不要となる。この特定口座について、今年の税制改正でいわゆるタンス株の受入れが可能となったことが節税法の発端である。タンス株とは、基本的には本券を自分で持っている上場株式等をいう。

 問題なのは、このタンス株を特定口座に受け入れる際の取得価格を決める方法にみなし取得価格も認めてしまったことにある。みなし取得価格とは、2001年9月30日以前に取得した上場株式を2003年1月1日から2010年12月31日までの間に譲渡した場合は、2001年10月1日の終値の80%を取得価格とすることができる特例である。この特例は実際の取得費が分かっている場合でも選択できるのだ。

 本来は2001年10月1日以降に取得した上場株式には適用できないみなし取得価格をタンス株にも認めてしまったことが“諸悪の根源”なのだ。具体な節税法は、時価が2001年10月1日時点の価格(みなし取得価格)よりも下落した株式を購入し、いったん現物の株式として持った後で、タンス株として特定口座に入れる。その後売却すれば、みなし取得価格と売却額との差額が売却損となる。いわば「架空の売却損」である。

 一方、今年1月1日以後に上場株式を譲渡したことで生じた損失金額のうち、その年に控除し切れない金額は翌年以後3年間にわたって繰越控除できることになっている。みなし取得価格から80、90%下落している株式は珍しくないから、意図的に売却損を作ればほとんどの投資家が課税を逃れることが可能になる。法律の隙間を突いた合法的な節税策ではあるが、節税のためにしか利用しない株式売買を野放しにしておいていいのだろうか。

 実をいえば、先週発行された週刊ダイヤモンド(10月18日号)が「株式売却益の税金を今後5年間タダにする方法」として紹介しているのだが、文中に国税庁の見解も示し「巨額な節税以外は黙認される見通し」として節税方法を薦めている。法律の不備とはいえ、課税を逃れることに巨額も少額もあるものか。社会的に責任ある週刊誌なら、節税法の紹介に得意になる前に、国税当局に法の不備を早急に穴埋めするように求めるべきである。もっとも、これだけ喧伝すれば、国税当局も何らかの対応を迫られることになるか…。

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