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税務関連情報 (2004/11/12)

国税職員の努力はすでに限界との悲痛な声~国税労組

 国税労働組合総連合(国税労組)は、税務行政の第一線で働く国税職員約4万人で構成する労働組合である。その国税労組は、毎年、適正・公平な税務行政の執行と歳入の確保を図る観点から「税制に関する提言」をまとめ公表している。税務執行のプロが内部からみた制度上・執行上の問題点が浮き彫りになるだけに、納税者側からの要望とは一味違った興味深い点が少なくない。

 まず、執行上の問題点として挙げるのは国税職員の定員不足。毎年の提言に必ず盛り込まれる事項だ。近年は納税者が増加する一方で、厳しい国家財政事情からの定員の純減が続いており、税法の適正・公平な執行の困難性がより増していることを認めている。国税職員自らが、法人や個人事業者の所得金額の補足率が給与所所得者と比べ不十分なことを肯定しているのだ。

 さらに、補足率が不均衡となる原因の一つとして、納税者数に対する実地調査件数の割合である「実調率」の低下を挙げる。税務の職場を取り巻く環境は、電子商取引の拡大や取引規模の大型化、取引内容の複雑・多様化、国際取引の増大などによって厳しさを増している。加えて、連年改正され複雑難解になっていく税法や不況による滞納税額の高止まり、消費税の事業者免税点の引下げなどによる申告者数の増加が厳しさを強めている。

 こうしたなかで、国税職員は、機械化等による事務の省力化、自己研鑽や職場研修、自書申告・自主納税の育成指導の推進、さらには連日の超過勤務などによって限られた人員で、でき得る努力は行ってきたが、これらの努力もすでに限界に達したと悲痛な声をあげている。国税職員の定員を増やすことが重要だが、現実は定員増どころか毎年の定員削減が常態化している。

 そこで、限られた人員で公平・公正な税務執行を実現するためには、例えば、脱税者に対する罰則規定の強化や複雑な税制の簡素化、登記資料の通知義務の創設や法定資料の提出範囲の拡大などによって資料情報事務を適正化するなど様々な提言がみられる。だが、最重要な提言は「納税者番号制度の早期導入」だろう。適正な課税を確保するためには、もうこれしかないということが50ページに迫る提言の結論にも思えるが…。