ゼイタックス

経営関連情報 (2005/08/19)

銀行122行の6割が不動産業向け貸出しを増加

 全国の約9割の銀行で建設業向け貸出金残高を減らしたのに対し、不動産業向けは6割の銀行で貸出金残高を増やしたことが東京商工リサーチの調査でわかった。個人の住宅需要が堅調なことや大都市を中心とした地価の下げ止まり・回復基調が要因とみられている。同調査は、業種別貸出状況が確認できた銀行122行を対象に、2005年3月期連結決算期ベースの建設業・不動産業向けの国内貸出金残高を調べたもの。

 不動産業向け貸出残高の前年同期比では、122行の63.9%にあたる78行で貸出残高を増やし、増加行が6割を占めた。増加額トップは「住友信託銀行」の3193億3800万円増、次に「東京三菱銀行」の2522億1000万円増。増加額が100億円以上となったのは28行だった。増加率では、「山形しあわせ銀行」が35.6%増、「住友信託銀行」が34.4%の順。増加率が10%を上回ったのは26行にのぼった。

 一方、建設業向け貸出残高の前年同期比では、122行のうち86.8%にあたる106行で貸出残高を減らした。減少額トップは「みずほ銀行」の2054億700万円減、次いで「UFJ銀行」の1591億8500万円減。減少額が100億円以上となったのは33行だった。減少率では、「UFJ信託銀行」の34.1%減、「中央三井信託銀行」の22.6%減など。減少率が10%を上回ったのは30行にのぼった。

 不動産業向け貸出しは、大手銀行13行の合計残高が前年同期比7.0%減となったことが影響して、122行合計でみると減少している。銀行の総貸出金残高は減少が続いているが、不動産業向けと建設業向けのように、業種により貸出状況に温度差が出てきている。

 ただし、これまで不良債権処理に追われてきた銀行は、審査を厳格化したうえに融資手法を多様化させるなどしてリスク分散し、また、特定企業・産業へ貸出しが集中化することには概して慎重である。このため、東京商工リサーチでは「銀行貸出しは徐々に減少幅が縮小していくものの、急激には伸びない」とみている。