ゼイタックス

経営関連情報 (2007/06/18)

変化する長期金利上昇の影響

 長期金利が昨年8月以来の1.9%台に達し、企業収益を中心に経済活動に及ぼす影響が注目される。第一生命経済研究所が14日に発表したレポート「変化する長期金利上昇の影響」によると、2006年度のバランスシートを前提に長期金利が+1%ポイント上昇すれば、法人企業の経常利益は▲3.5%減少する。2005年度の影響も▲3.5%となることからすれば、長期金利の上昇が法人企業全体の経常利益に及ぼす影響は変化していない。

 しかし、企業規模別にみれば、06年度に利益を拡大させた大企業と有利子負債を減らした中小製造業への影響は縮小している。一方、中小非製造業では、06年度の経常利益が▲1.1%減少するなかでの有利子負債が+15.6%拡大したことから影響は拡大している。したがって、長期金利の上昇は企業規模間の収益格差をさらに拡大させる可能性がある。業種別では、不動産や情報通信、サービスといった産業で長期金利上昇の影響が拡大している。

 また、制度部門別への影響をみれば、長期金利の+1%ポイントの上昇は、金融機関及び家計の純利子収入をそれぞれ+1.3%、+6.8兆円増加させる一方で、非金融法人及び政府の純利子支払いをそれぞれ+2.2兆円、+4.4兆円増加させる。長期金利の上昇は、非金融法人部門だけでなく、金融機関や政府、家計の利子収支を通じても日本経済に様々な影響を及ぼす。

 近年ではマネーのグローバル化により先進国における長期金利の連動性が高まっている。先進国の金利上昇を通じて長期金利が上昇しやすくなっていることからすれば、長期金利を見る上では、自国の金融政策のみならず、海外の金融政策やインフレ動向にも注視する必要がある。レポートは、長期金利上昇の悪影響を増幅させないためにも、日銀の金融政策には慎重な配慮が必要と指摘している。

 同レポートの全文は↓
 http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/news_index.html