重加算税は、納税者が事実の仮装や隠ぺいにより過少申告した場合に、過少申告加算税に代えて、増加した税額の35%相当額を課すものだが、事前に仮装等だった事実を税務当局に知らせていれば、重加算税の課税要件はなくなるのか。国税不服審判所は、仮装等を明らかにした時点で仮装・隠ぺいの事実はなくなるとの納税者の主張に対し、仮装等を知らせたとしても、重加算税の課税要件には何ら影響しないと裁決している。
この事案は、納税者の所得税の申告について、税務署が賃貸不動産の譲渡を自己の居住用不動産の譲渡とするなどの隠ぺい・仮装の行為があったとして重加算税の賦課決定処分を行ったのに対し、納税者が、事前に税務署の相談担当職員に、その不動産に自分たちは居住していなかったことなどを明らかにしていることから、隠ぺい・仮装の事実はなくなったとして、税務署の処分の取消しを求めたものだ。
つまり、納税者は、この譲渡所得に関する相談の際に、相談担当者に対して、自己の居住用と偽った住居には自分も親族も居住していなかったこと、また、居住用財産の特例を適用するために自分や妻の住民登録をこの住居の住所地に異動したことなどの事実を説明しているのであるから、国税通則法に規定する「隠ぺいまたは仮装」の事実はその時点でなくなったものであると主張していた。
これに対して国税不服審判所は、重加算税については「隠ぺいし、または仮装し、その隠ぺいまたは仮装したところに基づき納税申告書を提出した」という国税通則法所定の課税要件を充足することにより成立するのであり、たとえ納税申告書の提出時点において、納税者が税務署に対し、その隠ぺい・仮装の事実を知らせていたとしても、重加算税の課税要件に何ら影響を与えるものではないと指摘、納税者の主張を退けている。