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経営関連情報 (2006/07/19)

関西の「雇用改善」は本物か?~日本政策投資銀行

 戦後最長の「いざなぎ景気(1965/11~70/7の57ヵ月)」超えが視野に入りつつある。大阪にある政府関係機関の雇用情勢判断も今年の春先から次々と上方修正され、雇用に関する悲観論は影を潜めたかにみえる。しかし、「関西の『雇用改善』は本物か?」との疑問を呈し、関西再生の試金石は、「職学一致」を確立できるか、関西域内で雇用を図っていけるかにあるとの考えを示すのは、日本政策投資銀行のレポートである。

 レポートは、就業者数、雇用人員判断指数といった「量」の改善は「質」の改善とは別問題だと指摘する。昨年の夏以降、関西の就業者数は増加傾向にあるが、労働者1人あたりの平均労働時間はそうしたプラス要因を打ち消すほどに減少している。結果として、就業者数と平均労働時間の積で定義した労働投入量は足元減少に転じている。原因は短時間労働者(週間終業時間35時間未満)の増加にある。

 しかし、これらの労働者は転職・追加就業希望が相対的に強いことを考えると、足元の量の「改善」は手放しで喜べない。これと表裏一体の関係にあるが、最近では臨時雇・日雇労働者に代表される非正規雇用の動きを年齢別にみると、ニート現象が問題視されている若年層での比率が高く、しかも近年その比率は上昇傾向にある。これらを総合的に勘案し、量的には改善している関西の雇用情勢も質的改善には至っていないと結論する。

 働き口に代表される地域の魅力は中長期的に流出入人口の働きにも影響を与える。京阪神は大学などの高等教育機関が多いことから、15~24歳人口の流入は多いという強みを持っているが、卒業後の定着が少ないという弱みも併せ持っている。近年では、高等教育修了者の有力な受け皿である大企業雇用の回復力が弱いため、雇用の質的改善の遅れと相まって若年人口の域外流出がさらに加速することが懸念される。

 こうしたことから、レポートは、良質な教育インフラを活かしつつ「職学一致」を確立できるか、関西域内で雇用を図っていけるかが、関西再生の試金石であると考えている。

 同レポートの全文は↓
 http://www.dbj.go.jp/kansai/report/pdf/060713.pdf