国民生活金融公庫(現・日本政策金融公庫)総合研究所が1991年度から毎年実施している新規開業実態調査をみると、開業費用は減少傾向にある。ところが、新規開業に関する先行研究によると、開業を成功させることは開業費用が少ないほど難しい。同総研はこのほど、少額で開業する企業の実態を把握し課題や成功のポイントを整理し、「500万円未満の少額開業の実態と成功のポイント」と題した論文を発表した。
同論文によると、少額企業の属性について、(1)開業時の従業者規模は小さい、(2)立地の影響をあまり受けない業種が多い、(3)自宅を事業所として利用する企業が多い、(4)経営者が役員や管理職だった企業は少ない、という4つの特徴を、また、開業準備の状況では、(1)開業費用は運転資金の割合が高い、(2)金融機関に借入を申し込んだ企業は少ない、(3)開業の準備期間は少ない、(4)開業準備は不十分だったと自己評価、といった特徴を挙げた。
こうした特徴から少額開業には、(1)資金面での開業のハードルが低い、(2)開業の準備に費やす労力が少なくてすむ、(3)固定的な費用が少なく損益分岐点は低い、という3つのメリットがある一方で、(1)開業計画を評価してもらう機会が少なく準備が不十分になり勝ち、(2)活用できる経営資源が乏しい、という2つのデメリットを挙げている。
このうち、固定的な費用が少なく損益分岐点は低いというメリットと、活用できる経営資源が乏しいというデメリットは、企業の業績に対して相反する結果をもたらすものであると指摘。そこで、少額開業のパフォーマンスをみてみると、少額開業は相対的に目標月商達成率が低く、赤字である割合も高いなど、デメリットの影響が強く出ているようだと分析している。
したがって、少額開業を成功させるためには、経営資源が少なくても成果を上げられる工夫をすることが重要であり、魅力のある商品やサービスを生み出す、外部の経営資源を利用する、コストのかからないビジネスモデルをつくる、といった取組みが求められる。また、少額開業に対する支援としては、開業に関する情報提供や開業計画に対するアドバイス、公的融資を通じた資金調達などが有用との考えを示している。