今年4月からペイオフが全面解禁される。それに伴う預金の流出などによって金融機関の経営体力が低下し、地域経済への悪影響が表面化することを懸念して、無利息ながら全額保護される決済用預金の導入が進んでいる。帝国データバンクが実施したペイオフ全面解禁に伴う企業の動向調査結果(有効回答数9636社)によると、地域金融機関の決済用預金を約3社に1社が利用・利用予定であることがわかった。
大手銀行において決済用預金を「すでに利用している」と回答した企業は、取引がない企業を除く8359社中1156社で全体の13.8%だった。また、地銀・第二地銀・信金・信組などの地域金融機関では、取引がない企業を除く8715社中2124社で同24.4%だった。さらに、「利用する予定がある」との回答企業を含めると、大手銀行では22.8%、地域金融機関では32.5%と約3社に1社を占めた。
決済用預金を導入済みの金融機関が、2004年12月時点で全体の47.2%(金融庁資料)と半数に満たないことを考えると、実際の割合は調査結果の倍以上にのぼることが推測される。なお、「利用を検討中」とした企業も大手銀行、地域金融機関それぞれ20%以上あり、これらを含めると、大手銀行では45.7%と半数に迫り、地域金融機関では54.0%と過半数を超えた。特に地域金融機関で信用の回復が遅れていることを裏付けている。
決済用預金が預金移動の抑制策となるかどうかについては、「抑制策となる」との回答企業が21.9%ともっとも多かったものの、「抑制策とはならない」も18.0%ある。その差は3.9ポイントに過ぎず、導入効果については賛否が分かれる結果となった。また、「決済用預金の有無は預金移動に影響を与えない」とした企業が16.2%あり、金融機関の信頼性が最も重要になるとの見解が多くみられた。
今回のペイオフ全面解禁は低金利下での実施となるため、「預金金利が上昇すれば選別が起こる」との声があるように、今後、景気回復によって金利が上昇した場合には、決済用預金の利用減少とそれに伴う金融機関の選別が行われる可能性が高い。帝国データバンクでは、「ペイオフ解禁後は、現状の経済動向と先行き見通し、各金融機関の経営体力の変化などに、一層の注目が集まっていく」との見方を示している。