役員賞与の損金算入が検討される契機となりそうな会計基準の見直し案が明らかになった。企業会計基準委員会は7日、公開草案第9号「役員賞与に関する会計基準(案)」を公表し、役員賞与は発生した会計期間の費用として処理する、との今後の会計処理の方針を示した。同会計基準は、会社法施行期日以後終了する事業年度に係る株主総会で決議される役員賞与から適用される予定。
従来、わが国において、役員報酬は発生時に費用として会計処理し、役員賞与は利益処分によって、未処分利益の減少とする会計処理を行うことが一般的だった。しかし、2003年4月施行の商法等一部改正を機とした見直しを経て、今年7月に公布された会社法の考え方を受けて今回の会計処理の統一を図った。会社法では、役員賞与は役員報酬とともに職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として整理された。
会計基準委は、役員賞与が発生した会計期間の費用として処理することが適切な理由として、1)役員賞与と役員報酬の類似性、2)役員賞与と役員報酬の支給手続きを挙げている。役員賞与は、職務執行の対価として支給される役員報酬とは性格が異なるとの見解もあるが、会社の利益は職務執行の成果であり、この利益をあげた功労に報いるために支給される役員賞与もやはり職務執行の対価であるとの考えである。
また、役員賞与と役員報酬は職務執行の対価として支給されるが、職務対価としての性格は、本来、支給手続きの相違により影響を受けるものではない。さらに、会社法施行後は、両者は職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として整理され、役員賞与と役員報酬の支給手続きは同じ条文で示されていることから、従来以上に役員賞与は費用として処理することが適切であるとの考えである。
このように、来春予定の会社法施行以後、役員賞与は会計処理上は費用として認識されることになるが、これによって、これまで役員賞与はあくまで利益処分であるから損金不算入としてきた税務上の考え方にどのような影響を与えるのかに注目が集まる。まずは、議論の俎上にのぼることを期待したい。
役員賞与に関する会計基準(案)は↓
http://www.asb.or.jp/j_ed/yakuin/yakuin.pdf