増税基調一色となった政府税制調査会の答申の目玉はなんといっても定率減税の廃止である。定率減税は、2006年からの半減はすでに決まっており、2007年(地方税は同年6月)から全廃となる。現在の減税規模3兆3千億円がそのまま国民の負担増となる。これに関して、石弘光税調会長は、答申を小泉首相に提出後の記者会見で「定率減税の廃止は、期限付きの減税を廃止することで通常の増税ではない」と語っている。
所得税の20%(上限25万円)と個人住民税の15%(同4万円)を減額している定率減税は、深刻な景気低迷の打開策の一つとして1999年に緊急避難的に実施された。その間、20兆円近くの財政赤字を国債に頼ってきた。これはある意味で「すべからく後世代の負担にしているわけだから、我々現世代が後世代に負担を押し付けて、この減税の恩恵をいつまでも享受できないだろう」(石会長)というのが廃止の理由のひとつだ。
答申では、「経済状況が導入当時に比べ改善しているなか、見合いの財源なしに(巨額の減税を)将来世代の税負担により毎年継続されてきている」として、「経済状況を見極め、廃止すべきだ」と提言された。景気対策として導入され、抜本改革までの時限的な減税であり、廃止の条件がすべてそろったのだから、「定率減税やむなし」ということで意見は一致したとされている。
また、定率減税は“恒久的”減税ではなかったのかという意見に対して石会長は、「本当に減税を恒久にするなら、累進税率を緩和するか、課税最低限を引き上げる。これは全く臨時異例的だから(減税の方法に)税額控除を使った」と説明している。ともかくも、定率減税の廃止によって、年収700万円の標準的な4人世帯の負担増は2年で8万2千円になるという(ニッセイ基礎研究所試算)。痛みに見合う財政再建の実現を願うばかりだ。