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施行7ヵ月で21件にとどまる緊急保証利用後倒産

経営関連情報 - 2009年06月26日

 帝国データバンクが発表した「緊急保証制度導入後の倒産動向調査」結果によると、2008年10月31日に中小企業の資金繰り対策としてスタートした「緊急保証制度」利用後倒産は、施行7ヵ月目の2009年5月までで21件にとどまった。単純比較はできないが、今回と同じく経済危機対策として1998年10月1日に導入された「特別保証制度」利用後倒産の7ヵ月合計341件を大きく下回った。

 この要因は、「特別保証」は“ネガティブリスト方式”と呼ばれる審査が行われ、特定事項に該当しなければ事実上ほぼ無審査で保証を受けられたのに対し、「緊急保証」は売上高や利益率等の数値基準を設け、より厳格に審査されるようになったことにある。「特別保証」では、保証承諾を受けた事業者のなかにはすでに破綻状態の企業が多数含まれていた可能性が高く、「特別保証」利用後倒産の多発につながったとみられる。

 一方、制度導入前後の倒産発生状況をみると、「特別保証」は制度開始翌月の98年11月には、それまで前年同月比二ケタ台で推移していた状況から、倒産件数は急減した。他方、今回は「緊急保証」導入後も倒産増加が続いている。主な要因は、(1)制度創設直後の保証承諾件数、金額ともに「特別保証」を下回り、倒産抑制効果の浸透が遅れたこと、(2)今回は未曾有の経済危機で実体経済の悪化度合いが大きく異なることなどにある。

 以上、「緊急保証」利用後倒産は、今のところ月に数件の発生にとどまっている。保証制度を使って当座の資金繰りをつけた企業は多く、危機回避のために一定の役割を果たしているのも事実だが、「緊急保証」によって企業の収益構造が改善したわけではない。現在のような厳しい経済状況が続けば、本業不振から調達した資金もやがて底をつき、元金返済が始まるタイミングで制度利用後倒産が増加に転じる可能性もあると予測している。

 同倒産動向調査結果の詳細は↓
 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p090601.pdf