2003年10月15日-004
厚労省案では年金財政悪化の懸念大とのレポート
来年の年金制度改革に向けての議論が賑やかになってきた。厚生労働省の改革案(坂口試案)では、保険料の上限を2022年以降20%に固定し、支え手(被保険者)数の減少に応じて、年金支給額も減少させるマイクロスライド方式を提案している。この厚労省案に懸念を示したのはニッセイ基礎研究所のレポートである。厚労省提案の保険料固定方式では、人口や経済のリスクに対処できず、問題を後世代に先送りすることは、現行の給付水準維持方式とほとんど変わらないと指摘している。
レポートでは、特定の前提(シナリオ)による予測ではなく、前提となる人口・経済(物価・賃金上昇率)・運用利回りなどの数値を確率的に変動させる手法(モンテカルロ・シミュレーション)を使って財政分析した。その結果、1)保険料固定方式によっても、積立金がゼロになるなど、財政悪化のリスクが無視できない、2)年金給付に名目価値・物価水準・代替率50%など下限を設けると、スライドの効果を失わせる、の2点が判明したとしている。
そこでレポートは、1)給付に、名目価値・物価などによるスライドの下限を外し、長寿化の影響も直ちに反映すべき、2)代替率に50%の下限を設ける坂口試案は、上記の場合だけ検討に値する、3)リスク分散の観点から、積立方式の年金制度を、従来とは別建て(民営)で導入すべき、4)過去勤務債務分は新方式の年金制度とは別に処理すべきなどの提案を行っている。
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