長らく低迷していた景況に明るい兆しが見え始めたが、これまで業績不振や資金繰りなどの都合で役員報酬が未払いとなっているケースや、定時株主総会で役員報酬を減額した企業も多い。そこで、業績が回復してきたので、未払いとなっていた役員報酬や減額分を一括支給しようと考える企業もあろう。
未払分の一括支給については、あらかじめ株主総会で定められた支給基準に基づいて毎月定期的に一定額を支給されてきた役員報酬の未払分であるから、後日、支払いが可能になった時点で一括支給しても役員賞与とはならない。通常は未払計上した時点で損金処理し、あとはその未払金を支払うだけである。ただし、賃金台帳を整理しておくことや未払金の記帳処理をしておくことは必要だ。
よく似たようなケースで、業績不振のために役員報酬を減額することを株主総会で決め、後にその減額分を遡及して一括支給する場合は、通常、役員賞与とみなされ損金算入されないので気をつけなければならない。業績不振を理由とする役員報酬の減額分を定時株主総会などの決議を経ないで増額し、一括支給する場合は、臨時的な給与として扱われ損金算入できないことになる。
ただし、定時株主総会で役員報酬の支給限度額を増額改定することを決議した場合は、その事業年度の期首に遡及して適用される期間に係る報酬の増額分として一括支給される金額に限り、役員報酬とされ、損金算入することができる。例えば、3月決算の企業が6月後半の定時株主総会で増額改定を決議したケースでは、前に遡って4~6月の増額分を一括支給してもいいわけだ。