3月から「犯罪収益移転防止法」が全面的に施行され、税理士には、顧客と一定の取引を行う際、顧客の本人確認や本人確認記録の作成・保存、取引記録の作成・保存の義務が課せられている。これは、犯罪による収益の移転(マネー・ロンダリング)防止を図ることやテロ行為などへの資金の供与防止を確保するためのもので、金融機関をはじめ税理士、公認会計士、司法書士など12事業者に義務づけられる。
法律が適用される特定業務は、税理士が顧客のために行う、(1)宅地または建物の売買に関する行為または手続き、(2)会社の設立または合併等に関する行為または手続き、(3)200万円を超える現金・預金・有価証券その他の財産の管理・処分、のいずれかの行為の代理または代行に限定されている。例えば、顧客を代理して不動産の売買を行ったり、顧客の相続財産を管理する業務などが該当する。
これらの業務を行う場合には、税理士は顧客の本人確認を行うことが求められる。顧客が個人の場合は、運転免許証や健康保険証、パスポートなどの提示を受けて、顧客の氏名・住所・生年月日を確認する。また、顧客が法人の場合は、登記事項証明書や印鑑登録証明書などの提示を受けて、法人の名称、本店または主たる事務所の確認を行うとともに、取引担当者についても氏名・住居・生年月日を確認する必要がある。
税理士が本人確認を行った場合には、本人確認を行った者及び本人確認記録作成者の氏名等、本人確認書類の提示を受けた日付、本人確認を行った取引の種類、本人確認を行った方法などの記録を作成しなければならない。さらに、特定受任行為の代理等を行ったときには、その記録を作成しなければならず、これらの本人確認記録及び取引記録は、文書やコンピュータのワード文書などで作成して、7年間保存しなければならない。