一昨年に社会問題となった耐震強度偽装事件(姉歯事件)を受けて、今年6月20日に改正建築基準法が施行され、住宅を建てる際の建築確認審査が厳格化された。以降、建築着工が大きく減少している。建築基準法改正の影響を分析した日本総研のレポートは、今後、1)住宅投資の影響、2)企業の建設投資の減少、3)個人消費の減少、という3ルートを通じて、わが国経済にマイナスの影響を与えると予測している。
国土交通省の発表によると、9月の住宅着工戸数は前年同月比▲44.0%と、7月(同▲23.4%)、8月(同▲43.3%)の大幅減少に続き3ヵ月連続の前年割れとなった。7~9月期でみると、着工戸数はトレンドから約12万戸下振れている。レポートは、この結果、7~9月期の実質住宅投資は前期比年率▲22.1%となり、これによって7~9月期の実質GDP成長率(前期比年率)を0.8%下押ししたと試算している。
また、9月の建築着工床面積(民間非居住)は、前年同月比▲54.2%と、7月(同▲21.3%)、8月(同▲42.4%)の大幅減少に続き、3ヵ月連続のマイナスとなった。レポートは、法改正によって約500万平方メートル分の建築着工が落ち込んだと計算。着工してからの工事期間を12ヵ月と仮定して建設投資額を推計し、7~9月期の実質建設投資は前期比年率▲2.2%となったと見込み、建設投資の減少傾向は2008年中ごろまで続くと試算している。
さらに、7月に始まった住宅着工の落込みにより、冬場以降の耐久財消費にマイナス影響を与える公算が大きく、また、建設業就業者の所得悪化というルートを通じて、個人消費の減少をもたらすとみている。以上を総じてレポートは、建築基準法改正に伴う混乱が長引くことになれば、上記の3ルートを通じたマイナス影響が深刻化することになり、景気の低迷を招くリスクもあるとの懸念を示している。
同レポート(日本総研リサーチ・アイ)の全文は↓
http://www.jri.co.jp/thinktank/research/eye/2007/1031.pdf