2500万円(住宅取得資金は3500万円)まで非課税となる相続時精算課税制度が創設されたことで、住宅取得の親からの援助額が増えたとのデータがあるが(3月8日付既報)、同制度は一般的に賃貸住宅などの収益型財産を生前贈与したほうが有利だといわれている。家賃収入が見込める賃貸住宅(建物)などを親が取得して、この建物をそのまま子供に贈与するわけだ。
なぜ有利なのかといえば、建物の贈与であれば、現金の贈与と違って、評価額は固定資産税評価額によって算出され、時価の約70%程度の低い評価額となり、借家権がつけばさらに30%程度減額される。例えば、時価5000万円の賃貸住宅であれば、税務上の評価額がほぼ2500万円弱まで低くなり、2500万円の非課税枠で生前贈与できる計算となる。
もっとも、賃貸住宅の贈与は、その住宅を親が取得する際に借り入れた金額とともに贈与した場合は「負担付贈与」とみなされて、建物は時価評価されるので注意が必要だ。そこをクリアーできれば、賃貸住宅の贈与は、現金での贈与に比べいかに有利かがお分かりいただけたろう。そのうえ、家賃収入という“収益力”まで子供に移転できるのである。有効な生前贈与の活用策として検討してみる価値がありそうだ。
なお、賃貸住宅の場合は、賃貸人から入居時に「敷金」を預かる慣行がある地域が少なくない。敷金は将来返還することが予定されているものであるから債務とされ、通常、賃貸住宅の贈与は、その債務も引き継ぐとみなされる。ところが、税務上、そのような債務がある賃貸住宅の贈与は「負担付贈与」に該当し、その建物は時価評価される。この件に関しては次回のニュースでお知らせしたい。