企業収益の改善傾向が続いている。2006年7~9月期の法人企業統計季報(財務省)によると、全産業の経常収益は前年同期比で15.5%増と伸び率が拡大した。また、売上高経常利益率も改善傾向をたどっており、製造業、非製造業ともにバブル期を超える水準に達している。こうしたなか、人件費などの諸費用の増加傾向が続いている。今景気回復期における変動費や人件費の動向などを考察したのは、内閣府のレポートだ。
それによると、まず変動比率(変動費/売上高)は、2004年以降に原油価格の高騰などを背景として製造業を中心に上昇ペースが加速している。しかし、原油価格(WTI)は昨年の夏場のピークから足元まで比較的落ち着いた推移が続いていることから、収益圧迫の緩和となる。先行きについても、海外経済の底堅い推移が見込まれるなど、需給面から考えると、原油など素材価格の大幅な下落は考えにくいとみている。
一方、人件費の増加ペースを過去の回復局面と比較してみると、今回の回復局面では、しばらく厳しい削減を行っていたことが、法人企業統計季報から確認できる。また、相対的に賃金水準の低いパートなどの非正規雇用者を活用することなどにより、人件費の抑制を行ってきたと推察。2006年7~9月期ではキャッシュフローの順調な伸びが続くなか、ようやく2002年初の水準に戻りつつあるとみている。
以上のような変動費や人件費の増加は、企業部門にとっては収益に対する押し下げ要因となるが、今のところ増収により、こうした費用の増加分を十分に吸収しており、懸念するような状況ではないと分析している。先行きは変動費や人件費などの増加を伴いつつ、高水準の収益を維持するために、売上高の拡大ペースがさらに重要となる、というのがレポートが示す見解だ。