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株主重視偏重から“広義のステークホルダー”重視へ

経営関連情報 - 2009年08月12日

 日本能率協会が、今年1~6月に選任された上場企業の取締役・執行役員を対象に実施した「新任役員の素顔に関する調査」では、米国流の利益追求主義を排する公益資本主義の考え方に「共感できる」との回答が8割と多数を占めた。公益主義とは、会社は株主のものという考え方に対し、「会社は社会の公器」という理念に基づき、「企業が市場で競争をしながら社会への貢献を企業存続の大きな目的とする」という考えである。

 調査結果(有効回答数:取締役184人、執行役員115人)によると、公益主義に共感できるという回答が多数を占めたことは、誰の利益を重視するかという質問で、「株主」重視という回答が19.0%と、1998年の同調査以来、過去最低値を記録したことからも読み取れる。2005年比では「株主」重視が37.4%から18.4ポイント減少し、代わって「従業員」重視が31.8%から19.8ポイント上昇の51.6%と過半を占めた。

 また、現在の会社の取組み姿勢を、対立する概念(キーワード)で捉えクローズアップさせたところ、「無駄の削減(コストの削減)」(91.9%)、「正規社員の活用」(88.5%)、「従業員重視」(64.7%)といった日本的経営の特徴ともいえる項目のウエイトが高くなった。経済危機後の経営方針でも、「日本的な経営(関係重視)」(75.0%)重視が「米国的な経営(市場重視)」(24.5%)重視よりも約3倍上回り、日本的経営が見直されている。

 一方、国内景気の状況を天気に例えると、新任取締役の景況感はより厳しい認識が浸透し、「どしゃぶり」が33.7%でもっとも多く、昨年(3.4%)に比べ10倍の伸び率となった。景気回復の時期は、「1年後くらい」が31.5%、「2年後くらい」が34.8%となり、「年末までには回復」(2.2%)を合わせ7割近くが「2年まで」と予測。“失われた10年”のときよりも早く回復すると前向きな予測が多い。

 景気回復の切り札としては、「米国経済の建直し」(31.5%)を筆頭に、「新エネルギー・環境技術開発の推進」(17.4%)、「新規雇用の創出」(9.2%)が上位3となり、「政権交代」を挙げる人はわずか4.9%だった。なお、自社の業績回復は、「2、3年は厳しい」が56.0%、「1年は厳しい」が29.9%と、3年までの回復を目途にしている回答が8割以上を占めている。

 同調査結果の詳細は↓
 http://www.jma.or.jp/news_cms/upload/release/release20090804_f00053.pdf