定率減税の全廃やIT投資促進税制の廃止などに目を奪われがちの政府税制調査会の答申だが、実務家の間で注目されているものに無申告加算税の引上げがある。答申は、納税環境整備の一環として、「近年のインターネット取引の急増等を背景に無申告事例が多発している状況等にかんがみ、申告秩序維持の観点からその割合を見直す必要がある」との問題提起をしている。
無申告の場合は、原則として、申告書を期限後に提出したときや税務調査などで無申告が判明したときにかかり、現在は納付税額の15%相当額がペナルティとして課される。税務調査前に納税者が自主的に申告したときは、その納付税額の5%相当額に軽減される。また、無申告が仮装・隠ぺいなど意図的な不正による場合は、重加算税として納付税額の40%相当額が課されることになっている。
政府税調は無申告加算税を引き上げる背景としてインターネット取引を行っている事業者に無申告が多いと指摘。今年10月に国税庁が発表したインターネット取引を行っている個人事業者を対象とした税務調査結果では、ネット上の売上は国税当局に把握されまいと考えて全く申告していなかった納税者が多いことが明らかになっている。把握された申告漏れも、一般調査での平均899万円を大幅に上回る1112万円だった。
確かに、インターネット取引は無申告でもわかるまいと思いがちだが、無申告はインターネット取引に限らない。年々増加する何百万という納税者に対し増員ままならない税務職員という構図が、国税当局の調査能力への過小評価と相まって、業種に関係なく無申告者を増やしているのだ。だから、今回の無申告に対するペナルティ強化は、このような無申告者に対する税務調査強化という警告でもある。
政府税調の答申では無申告加算税の引上げの具体的な数字は記されていないが、現行の税率15%を20~30%に引き上げるとみられている。申告すべき利益があるときは自主的に申告したほうが無難である。今後増税路線が続くなか、負担増を求める国民への配慮から税を逃れる者へのペナルティは厳しくなる方向にある。その第一歩が無申告加算税の引上げであると肝に銘じるべきなのだ。