個人事業主は、その必要な知識・技能をどこで磨いて独立に至ったのか。800人の個人事業主(サービス業)を対象に独立に関する実態調査を実施したのはリクルートワークス研究所である。調査結果によると、現在の事業に関連した仕事の経験の有無については、「あり」との回答が74%だった。個人事業主の7割強が、必要な知識・技能を前職で磨いたということになる。
職域別にみると、「システム開発・保守」では「仕事経験あり」が95%だが、「営業販売」では半数弱の46%。さらに、「仕事経験あり」の割合が全体平均より5ポイント以上多い「設計(機械・建築)」(88%)、「システム開発・保守」、「経営管理職」(85%)の3職域ではその経験年数が長く、5年以上に多く分布していた。一方、「仕事経験なし」の回答割合は5%から54%までばらつきがあるが、すべての職域で出現している。
前職が強く影響すると思われる、「設計(機械・建築)」、「システム開発・保守」、「経営管理職」の3職域では、前職のもっとも長い就業形態は「正社員・公務員」だった。例えば、「システム開発・保守」は、「正社員・公務員(管理職以外)」に就いていた割合が69%と、全体平均56%より13ポイント高く、「正社員・公務員の管理職」も21%と全体平均14%より7ポイント高い。
また、これら3業種とはまったく逆の、前職以外で知識や技能を培っている「独力型」パターンでの知識・技能習得方法は、「独学」が圧倒的に多く44%となっている。「仕事経験なし」で独立する傾向の強い上位3つの職域は、「営業販売」(経験なし割合54%)、「保険代理」(同35%)、「専門職」(同33%)だった。
「保険代理」は、保険業界では代理店研修制度が一般的であることから、圧倒的に「研修制度を活用して知識・技能を修得した」(79%)という回答が多い。一方、「営業販売」や「専門職」は多様な習得方法が選択されている。傾向として、「知人から」や「業務を通じて」というように、実社会のなかで習得するケースが多い。これらは、学校を通じた技能の習得という社会的な枠組みがない職域における習得スタイルといえよう。