ゼイタックス

税務関連情報 (2004/07/14)

倒産で無価値化した株式も損益通算の対象に

 株式を発行した会社が倒産して、個人が保有していたその株式が無価値化した場合の損失は、現行制度においては所得の処分にあたるという考え方から、税制上の損失として取り扱っていない。つまり、所得の計算上、損益通算の対象とはならない。それが、金融所得課税の一体化に向けた議論のなかで、株式譲渡損失と同様の取扱い、損益通算の対象とする方向で検討されている。

 上場株式については、倒産して紙くずになる前に市場で売却するチャンスがあり、市場で売却できれば事実上倒産しても売却損を実現させ、譲渡益から控除することができる。だから、倒産して無価値化する前に投資家は対処できるはずだから、税制上で救済する必要はない、というのが現行の基本的な所得税の考え方である。

 しかし、機関投資家と違って一般の個人投資家は株式市場の情報を常に十分に把握しているとは限らない。また、倒産で無価値化した損失も、譲渡損失と同様に株式投資から生じた損失であり、「貯蓄から投資へ」の政策的要請の下、こうした投資家の利便性に配慮し、譲渡の場合とのバランスを踏まえ、株式譲渡損失と同様に損益通算の対象にしようということである。

 ただし、会社が倒産してしまえば、市場での株式の譲渡という取引が存在せず、調書が出るわけでもないのだから、株主や取得価額が正しいかどうかを税務当局がチェックするための何らかの仕組みが必要になる。納税者の申告する損益の適正性を担保するものとして、ここでも何らかの番号制度の導入の必要性を示唆している。損益通算の適用を受けようとする人だけに適用する選択制ということになろう。