農林漁業金融公庫が、全国の食品製造業・卸売業・小売業・飲食店を対象に実施した「食品産業からの農業参入に関する調査」結果(有効回答数2663社)によると、農業分野に「参入している」食品産業は7.7%、「計画している」(3.5%)を含めると11.2%と1割超となった。業種別にみると、「農産保存食品製造業」が40社で最多、以下、「青果卸売業」(34社)、「食肉加工製造業」(30社)、「酒類製造業」(27社)などの順だった。
参入・予定の産業分野(有効回答数278社)は、「土地利用型(水稲、稲作など)」が66.9%、「施設利用型(施設野菜、畜産など)」が40.6%。参入分野の割合を参入業者数が多かった業種ごとにみると、米や野菜等を主な原料とする「農産保存食品製造業」や「酒類製造業」、野菜や果物等を主な原料とする「菓子製造業」は「土地利用型」への、畜産物を主な原料とする「食肉加工製造業」は「施設利用型」への参入が大部分を占める。
農業参入にあたり問題になる(なった)こと(複数回答)は、「人材の確保」(参入前49.1%、参入後50.0%)がもっとも多く、 次いで「技術習得」(同37.1%、38.1%)、「採算性の判断が困難」(同29.0%、33.9%)などが挙げられた。業種別にみると、稲作や野菜作への参入が多いと思われる「酒類製造業」は土地利用型特有の「農地確保」や「制度・手続き」が、「食肉加工品製造業」では、畜産業特有の「地元との調整」が多い。
なお、農業分野に参入しない理由(複数回答)については、「外部調達のほうがコストが安い」が35.2%ともっとも多く、次いで「農業のことが分からない」(28.5%)、「不採算」(11.7%)、「技術的に不安」(8.9%)が挙げられた。ただ、自ら農業に参入・予定していなくても、「農業者との提携」を実践・予定しているとの回答もあり、原材料を安定的に確保しようとする動きがうかがえる。