国税は金銭による納付が原則だが、相続税については、財産課税という性格上、延納によっても金銭納付が難しい理由がある場合は、一定の相続財産による物納が認められている。国税庁が1日に公表した2005年度相続税の物納申請状況等によると、今年3月までの1年間の物納申請件数は1733件、金額では817億円で、前年より件数で43.5%減、金額で36.6%減となり、ともにここ10年間ではもっとも低い数字となった。
物納申請件数は、バブル崩壊後の1990年度以降、地価の下落や土地取引の停滞などを反映して著しく増加した。それまで年間500件前後に過ぎなかったものが、92年度には1万2千件台まで急増したが、99年度以降は減少しており、2005年度で7年連続の減少となった。2005年度の申請件数はピーク時92年度(1万2778件)の約14%、金額では同じくピーク時92年度(1兆5645億円)の約5%まで減少している。
一方、2005年度の処理対象件数は前年度から引き継いだ処理未済5968件と同年度の申請1733件を合計した7741件だったが、うち3920件を処理した。前年度に比べ26.2%の減少だったが、申請件数の大幅減少から、年度末での処理未済件数は、前年度より36.6%減の3781件、金額では31.7%減の3262億円となった。2005年度の処理の内訳は、約70%にあたる2730件が許可されており、物納財産として不適格として21件が却下され、残りの1169件は納税者自らが物納申請を取り下げている。
なお、2006年度税制改正においては、不動産や自社株式の物納に係る許可基準の緩和や、これまで不明確だった物納不適格財産が政令で限定列挙され、明確化された。改正後は、不適格要件に該当しなければすべて物納可能となった。しかし、1日公表された2006年分の路線価は14年ぶりにプラスに転じるなど、地価に上昇傾向が見られることから、物納申請の減少も加速するとみられている。