2008年度の地方税法改正において、個人住民税における公的年金の特別徴収制度が導入された。公的年金における税等のいわゆる天引きは、国民年金法に基づく老齢基礎年金等(「老齢等年金給付」)から特別徴収(天引き)される。制度が適用されるのは、2009年10月支給分の老齢等年金給付が最初となる。総務省によると、個人住民税では500万人程度が特別徴収の対象となるという。
個人住民税の公的年金等からの特別徴収は、もともと、全国市長会などから「所得税や介護保険料などと同様の制度を創設してほしい」(2005年6月)との要望が出ていたもので、2008年度の地方税制改正に盛り込まれ、2009年度から導入されることが決まった。年金受給者にとっては納税の手間が省けるとともに、課税庁側にとっても徴収漏れや滞納を防止し、徴収率を向上させる新たな手段になるものと期待されている。
特別徴収の対象となるのは、個人住民税の納税義務者のうち、前年中に公的年金等の支払いを受けた人で、その年度の初日に老齢基礎年金等の支払いを受けている65歳以上の納税者となる。ただし、給付額が年額18万円未満である場合や、その年度の特別徴収税額が老齢等年金給付額の年額を超える場合は対象とはならない。特別徴収された個人住民税は、特別徴収義務者となる年金保険者が市町村に納入する。
個人住民税の公的年金等からの天引きは、納税者の負担の軽減はあるものの、社会保険庁等の公的機関が天引きを実施することから、基本的に未納防止が制度導入の大きな目的と思われる。今年4月から国民健康保険料(税)や後期高齢者医療制度の保険料の年金天引きが始まり、そこに個人住民税の天引きが加われば、受け取る年金額が大きく減るだけに、年金受給者への十分な広報・説明が求められよう。