税 務 関 連 情 報

2002年05月13日-001
「長者番付」は必要か?政府税調で議論

 所得税額1,000万円を超える高額納税者の氏名、住所、所得税額を公示する、いわゆる「長者番付」は5月16日から5月31日まで全国税務署に掲示されるが、この公示制度の存否をめぐって、5月10日に開かれた政府税制調査会の基礎問題小委員会で議論がなされた。プライバシーの観点から廃止を求める意見と納税者の申告内容を第三者がチェックするけん制効果から必要との意見もあり、賛否両論で結論はつかなかったが、引き続き検討される模様だ。

 申告書の公示制度は、所得税以外に法人税(所得4,000万円超)、相続税(課税価格4,000万円超、遺産総額1億円超)、贈与税(課税価格4,000万円超)についてある。この制度は、高額所得者等の所得金額を公示することで、第三者によるチェックというけん制効果を狙うものとして、1950年(昭和25年)に申告書閲覧制度に代えて導入されたものだ。特に所得税については、毎年マスコミが芸能人やスポーツ選手、文化人などの“稼ぎぶり”を報道することから、国民の関心が高い制度となっている。公示対象者は平成12年分で納税人員727万3,506人のわずか1.1%に当たる約8万人だ。

 この公示制度については、第三者によるチェックという制度本来の意義が薄れているとの理由から廃止すべきだという意見が元々あったが、政府税調が改めて議論した背景には、昨年末に脱税事件で逮捕された元国税局長のOB税理士が公示逃れのために所得を少なく申告していたこともある。同税理士は、年間所得が2億円前後ありながら、高額納税者として税務署に公示されないように、毎年の所得を3,500万円前後で申告していたという。

 このような公示逃れは何も同税理士に限ったことではない。色々な理由で所得が多いことを第三者に知られたくない人々が、所得を少なく申告して、後で修正申告することで公示から逃れているケースは少なくない。これでは、第三者によるチェックは十分に機能しない。また、公示されることで、私生活のうえで余分な営業攻勢や寄附金要請を受けるなどのプライバシー上の問題も指摘されている。確かに、芸能人等の番付に国民の関心は高いだろうが、この関心はほとんどが“野次馬的”なもので、あまり必要性があるとはいえまい。そろそろ、その存否も含め制度そのものを見直す時期に来ていることは確かだ。

 

 

ホームへ戻る