ゼイタックス

税務関連情報 (2004/04/12)

金融所得の一体課税は納税者番号制度が不可欠

 金融所得の一体課税へ向けた議論が本格化している。わが国の金融資産約1400兆円の54%と半分以上を占める預貯金を、株式などのリスク商品に投資しやすい環境作りの一環だ。現行税制では税率も納税方法も違う預貯金や株式、投資信託、債権などをひとまとめにして、このなかでの損益を通算できるようにする。そのためには、さまざまな金融所得から生じる利益や損失を適切に名寄せすることが不可欠になる。

 金融所得の一体課税を行い、損益通算の範囲を拡大していけば、正確な金融所得の把握のために、何らかの番号制度の導入が必要だとの考えは衆目一致している。それができないと、投資家は都合のいい損失だけを申告することになり、公平な課税を著しく損なうことになりかねない。そこで、浮上したのが納税者番号制度の導入だ。ただし、一体課税を希望する投資家だけに適用する方針だ。

 これは、納税者番号制度に対する国民の間の根強い反発に考慮したもので、番号制度はまず選択制で導入する。金融所得の一体課税を議論している政府税調・金融小委員会の奥野小委員長も、「番号制度の議論は、損益通算範囲の拡大に伴い税制執行面での対応という観点から行ったもので、一般的な納税者番号制度を導入すべきかとの観点からではない」とわざわざ断っている。

 だから、注目される付番方式についても、「年金番号」や「住基コード」に特にこだわる必要はないとの考えでもある。政府税調では6月にまとめる報告書にこれらの方針を盛り込む予定で、早ければ2005年度の税制改正での成立を目指している。

 実現までにはまだ紆余曲折が予想されるが、最も注目されるのは、形はともあれ納税者番号制度が導入されることだ。国民年金の未納付対策や年金一元化などの議論のなかで、所得補足の必要性が求められている。金融所得の一体課税の議論を契機に、一般的な納税者番号制度の議論が本格化する可能性も大いにある。