小泉首相が財政再建の議論に関連して、道路特定財源の一般化の検討を指示したことから、政府税制調査会の2006年度税制改正に向けた議論のなかで本格化する。道路特定財源は、使途が道路整備に限られていることから、一般会計に組み入れて社会保障費など使い道を自由にし財政再建に役立てたい考えだ。だが、問題は、現在道路特定財源は本則税率を上回る暫定税率が適用されていることである。
道路特定財源の税収は、揮発油税や自動車重量税、石油ガス税、軽油引取税、自動車取得税など合計で5兆7336億円にのぼる。このうち、石油ガス税をのぞいてすべての税目に暫定税率が適用されている。例えば、税収が3兆円近い揮発油税は本則税率24.3円/リットルが暫定税率48.6円/リットルだ。一般財源化を機に本則税率に戻せば税収はほぼ半減する。財政再建のためには、暫定税率を維持したまま一般財源化したい。
ところが、そもそも使途が道路整備に限られる道路特定財源は、受益者負担という考え方から、道路の主な利用者である自動車の所有者や使用者が負担している。その使途を一般化するのであれば、受益者負担という前提が崩れ、本則税率に戻すべきだという意見により説得力があるのもうなずける。加えて、道路公団民営化が象徴するように、今後道路整備に対する資金需要が減少すれば暫定税率の必要性が薄れよう。
このように、道路特定財源の暫定税率をめぐる議論は一筋縄ではないが、そのような折、環境省から暫定税率維持を擁護する報告があった。同省の試算では、暫定税率を廃止すると、ガソリンや軽油の消費が増え、自動車の二酸化炭素(CO2)排出量の増加が2012年時点で年間最大2200万トンにのぼり、京都議定書目標達成計画において示された自動車の燃費改善によるCO2の削減見込量2100万トンを上回るという。
道路特定財源を暫定税率から本則税率に変更することは、長期的には、効率的な自動車技術開発に伴うCO2排出量の削減努力を無にする可能性がある、と環境省は指摘する。これまで受益者負担で道路整備に限定していた特定財源の使途を一般化するのであれば、本則税率に戻すべきだという意見ももっともだが、財政再建や地球温暖化防止も重要課題だ。道路特定財源をめぐる議論は難航必至といえよう。
環境省の試算は「環境税を巡る諸論点」の23Pから↓
http://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y162-21/mat01.pdf