儲かってもばれそうもなければ黙っていようと考えるのは世の常? 外国為替証拠金取引(FX)は、一般の株式売買と違って、取引記録が税務当局に提出されないケースがあることから、申告しない個人投資家が多かったようだ。国税庁の発表によると、今年6月までの1年間にFX取引に係る実地調査を1030件行った結果、総額224億円の申告漏れ所得金額が見つかり、重加算税などを含め55億円を追徴したことが明らかになった。
調査件数のうち申告漏れがあった件数は明らかにされていないが、調査件数をもとにした単純計算では、1件あたりの申告漏れ額は2176万円と高額であり、同時期における所得税の実地調査(特別調査・一般調査)で把握された1件あたり申告漏れ額846万円の2.6倍となる。また、1件あたりの追徴税額は533万円で、同じく所得税の実地調査(同)1件あたりの追徴税額158万円の3.4倍にのぼった。
FX取引は、業者に預けた保証金の数倍から数十倍の外国為替取引ができるので、少額の資産で多額の利益を得る可能性もある。FX取引による利益は、一定のFX取引(東京金融先物取引所を通じた取引)を除き、店頭取引業者を通じた取引により生じた所得は雑所得として申告する必要があるが、店頭取引業者は顧客の取引記録の税務署への提出義務がないので、税務当局も個人投資家の所得を把握しにくい状況にあった。
FX取引は、インターネットでも手軽に取引できるため、今回の調査でも、パソコンを駆使して、20社以上の仲介業者とFX取引を行い、4年間で約2億4900万円の所得を得ながら、無申告だった男性Aのケースが明らかになっている。調査によって、Aの所有する複数のパソコンを確認し、FX取引履歴、ネットバンクなどの取引明細、本人作成の損益計算書などが把握され、また、金融機関に対する反面調査によって判明したものだ。