国税庁はこのほど、退職した税務職員(国税OB税理士)に対する顧問先のあっ旋状況を公表した。それによると、昨年7月に退職した国税局長2名、国税不服審判所長1名、税務署長186名など指定官職331名に対し、1人あたり平均11.9社の顧問先企業をあっ旋したことがわかった。その平均月額報酬等の金額は73.4万円で、単純平均すると1社から約6万円の月額顧問料をもらっていることになる。
前年と比べると、平均あっ旋企業数で0.4件減、平均月額報酬等の額で3.3万円減とともに減少した。年々あっ旋企業数は減少傾向にあるが、一般の税理士からみれば恵まれた状況にあることは変わりない。国税当局は、税務署長などの指定官職に対し、組織活性化を目的に早期退職勧奨をしている。定年2年前の58歳で退官してもらう代わりに生活保障という名目で顧問先として民間企業をあっ旋しているわけだ。
確かに、長年の国税勤務で培われた国税OBの税務に対する知識・処理能力が民間企業に役立つ面は否定できないが、あっ旋の実態は、すでに顧問税理士がいる企業があっ旋される、いわゆる“二階立て”“三階立て”と称されるものが多いといわれている。一般の納税者からみれば、なかなか理解できず、やはり国税OBの税理士は税務調査などで有利なのか、と誤解される一因ともなっている。
国税退職職員の顧問先あっ旋については、以前は国税局の人事課だけでなく各税務署の副署長など幹部クラスもかかわってきたが、2002年からは国税局の人事課のみであっ旋を行うこととされている。また、納税者から誤解を招かないように退職職員の氏名・退職時官職の公表を行っている。行政の透明性を高めるということだろうが、いらぬ誤解を生じさせないためにも、いっそのことあっ旋そのものを止められないのだろうか。