税 務 関 連 情 報 |
2002年03月20日-001
「二元的所得税」論浮上だが、実現に疑問符も
中長期的な税制改正の議論の中で、所得を給与などの勤労所得と利子・配当・株式譲渡益などの資産所得に大別し、前者に累進税率を適用する一方で、後者には勤労所得よりも低い均一の税率を適用するという「二元的所得税」論が浮上している。その目的として、株式の売却損などが生じた場合、資産所得の中での損益通算を認めることで、個人の金融資産への投資を促す経済活性化と、所得税制の簡素化につながることが挙げられている。
所得税制の簡素化という面からいけば、現行では利子、配当、不動産、給与など10種類に分類され、異なる所得金額の計算方法をとる所得税制を、勤労所得と資産所得に大別できれば、官民双方にとってメリットは大きいことは間違いない。これまで、異なる所得間ではできなかった損益通算を認めるということも投資促進を促すだろう。ただ、勤労所得と資産所得を現実的にどのように区分するのかという疑問がある。
また、議論するに当たり持ち出されるスウェーデンなどの北欧諸国が「二元的所得税」を採用した背景の税収構造がわが国と違いすぎることもある。高福祉国家である北欧諸国の場合は、必要な税収の30%前後を個人所得税で賄っており、勤労所得に対しては税率を変えずに資本所得だけ税を下げたという指摘がある。わが国は所得税減税を重ねた結果、税収に占める個人所得税は18.8%に過ぎない。一方、資産課税は10.5%を占めるが、このような税収構造の中で資産所得を優遇することができるのか疑問符がつく。
政府税制調査会や金融税制に関する研究会(金融庁)では、今後本格的な検討を開始するという。貯蓄優遇から投資優遇への転換という小泉内閣の構造改革にも合致するが、わが国の税収構造など多くの課題も含めその成行きが注目される。
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