企業は社会的存在としてまた地域社会との共存といった面などから、時には寄附金を支出することも少なくないが、寄附金の支出には税務上留意すべきことがある。寄附金は、一般の寄附金、指定寄附金等及び特定公益増進法人等に対する寄附金の3つに大別できる。このうち、一般の寄附金については、法人税法上、会社の支出した寄附金のうち、ある一定限度を超えた部分は損金としないという規定がある。
この損金算入限度額の計算は、「(資本等の金額×事業年度の月数×2.5/1000+事業年度の所得金額×2.5/100)×1/2」の算式で求める。このように、ただでさえ損金算入限度額に制限が設けられている寄附金だが、特に留意しなければならない点は、税務上、寄附金の支出の有無は「現金主義」によって判断されるということである。つまり、寄附金が損金となるためには、実際に支出されていなければならないということだ。
例えば、法人が寄附金を支出することを決め、これを未払寄附金として損金経理しても、税務上は実際に支出を行っていない限り、寄附金の損金算入限度額計算の対象とはならない。しかし、費用計上されていない段階で、仮払金処理により寄附金を支出したケースでは、上記のように寄附金は「現金主義」により認識されるため、仮払金処理分についても、寄附金の損金算入限度額計算の基礎に含めて処理することになる。
また、指定寄附金及び国・地方公共団体に対する寄附金については、その支出した金額が一般の寄附金の限度額に関係なく、別枠で全額損金となる。なお、公益増進法人等に対する寄附金も、一般の寄付金と区分されて損金となるが、この場合は、一般の損金算入限度額と同額までという制限がある(所得金額に乗じる割合は5/100)。このように、寄附金といっても、その種類によって違いがあることに留意する必要がある。