従来、小企業の事業承継といえば親族、とりわけ男の子どもへの承継が主流だったが、近年、経営者に求められる能力は高度化しており、子どもだからといって後継者としてふさわしいとは限らなくなってきている。こうしたことから、従業員への事業承継が次第に注目されるようになってきた。小企業における従業員への事業承継の現実と課題を探ったのは、国民生活金融公庫総合研究所の調査リポートである。
レポートによると、従業員に事業を譲渡する経営者のメリットとして、一つは後継者を能力本位で選べること、二つ目は、過去のしがらみにとらわれないで事業に取り組めること、三つ目は、経営者になる可能性をつくることで従業員へインセンティブを与えられることの3つを挙げている。しかし、譲渡する経営者にメリットがあったとしても、承継する従業員にメリットがなければ、従業員への承継は成立しない。
従業員にとって事業を承継する最大のメリットは、すでに基盤が整っている経営資源を引き継げることだ。独立開業する場合には、様々な経営資源を新たに調達しなければならないが、事業承継ではその必要がない。もう一つのメリットは、前経営者から経営に関するアドバイスが得られること。事業承継したばかりの時期は、経営者としての判断に自信を持てないことも多いが、そうしたときの前経営者のアドバイスは心強い。
一方でデメリットもある。 (1)不要な経営資源も引き継がなければならないこともある、(2)ほかの従業員との関係が難しくなる、(3)株式取得の負担が重いことの3点を挙げている。そこでレポートは、従業員への承継を円滑に進めるために克服すべき課題として、(1)関係者のコンセンサスを得る、(2)後継者を育成する、(3)承継させる経営資源を整理する、(4)株式を計画的に取得させる、という4つを示している。
同レポートの全文は↓
http://www.kokukin.go.jp/pfcj/pdf/smallbusiness13_01.pdf