個別労働紛争処理制度は、個々の労働者と事業主の紛争を、裁判に持ち込まず紛争当事者間で自主的かつ迅速な解決を図る制度。厚生労働省が25日に発表した2005年度における同制度の施行状況によると、民事上の個別労働紛争に係る相談件数が17万件を超え、過去最高となった。同制度は2001年10月発足以降依然として増加を続けているが、この背景には、個人での紛争解決を迫られるパートや派遣労働者の増加などがある。
全国約300ヵ所に設けられた総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談は、2005年度1年間で前年度比10.2%増の90万7869件だった。このうち、労働関係法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げなどのいわゆる民事上の個別労働紛争に関するものは同10.2%増の17万6429件と過去最高となった。内容は、「解雇」が26.1%でもっとも多く、「労働条件の引下げ」(14.0%)、「いじめ・嫌がらせ」(8.9%)と続く。
また、自主的な紛争解決が難しい場合は、弁護士などの有識者で構成された紛争調整委員会にあっせんを申請できるが、2005年度のあっせん申請受理件数は前年度比14.5%増の6888件だった。処理状況をみると、「合意が成立」したものは2961件、申請者の都合による「申請取下げ」が450件、紛争当事者の一方が手続きに参加しないなどの理由による「あっせんの打ち切り」が3406件となっている。
処理期間は、「1ヵ月以内」が63.5%、「1ヵ月超2ヵ月以内」が27.9%とおおむね迅速に処理されている。申請者は、労働者が6775件と大半を占めるが、事業主からの申請も106件、労使双方からの申請も7件あった。労働者のうち60.0%は正社員だが、パート・アルバイトや派遣労働者も32.7%を占める。事業所の規模は、「10~49人」(32.4%)、「10人未満」(21.7%)、「100~299人」(10.9%)の順となっている。
あっせん例をみると、採用内定取消に係るものがある。申請者は、採用内定を受けた後就職に向けた準備を進めていた段階で突然内定取消の連絡を受け、その理由についても納得できないことから、損害賠償を求め、あっせん申請を行ったもの。その結果、事業主が内定の取消についての非を認め、それを踏まえて和解金を支払うことで双方の合意が成立している。
2005年度個別労働紛争解決制度施行状況の詳細は↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/05/h0525-1.html