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経営関連情報 (2006/08/25)

企業成長に働くメカニズムとは?

 企業成長にはどのようなメカニズムが働いているのか。また、成功企業は、どのような成長の過程を経てきているのだろうか。こうした企業成長の条件を探るため、中小企業のデータベース(各年約50万社)を用い、企業規模(総資産)の変動に関する分析を行ったのは富士通総研の齊藤有希子研究員の研究レポートである。同レポートの特徴は、既存研究で見落とされがちな「履歴効果」に注目した点にある。

 企業成長の「履歴効果」とは、過去にどのように成長してきたかという成長の履歴が、今後の成長にどのような影響を及ぼすかという過去依存性である。分析の結果、1)企業成長には「履歴効果」が存在する、2)多くの企業では、前期に規模拡大したほど、さらに規模拡大する確率が高くなり、また、過去に規模拡大を続けるほど、履歴効果が強く働いて、規模拡大する確率が高くなることを確認している。

 一方、規模の小さな企業では、前期に規模拡大したほど、さらに規模拡大しにくくなり、続けて規模拡大することが困難なことも確認された。これらの結果から、レポートは、企業成長の履歴効果は企業内部の「調整コスト」により生じているのではなく、「レピュテーション(世評・評判)」などの企業外部の要因により引き起こされている可能性が高いとの考えを示している。

 履歴効果が「レピュテーション」により生じていると仮定すると、企業成長には、企業外部との関係(金融機関や企業間の取引関係)が重要だが、規模の閾値(総資産1億円程度)未満の企業では、このような外部との関係が確立されていない。したがってレポートは、中小企業の公的支援として、総資産1億円以下の企業に対して、金融機関との関係や企業間の取引関係の構築のサポートを行うことが有効だとの考えだ。

 同研究レポートの全文は↓
 http://www.fri.fujitsu.com/jp/modules/COMMON_LIST_VIEW/uploads/11531/no271.pdf