社会人として第一歩を踏み出した新入社員も5月に入り、仕事や職場環境になじみ、少しは余裕も出てきたことと思われる。そこで、学んでいただきたいのは税金の基礎知識である。初めて手にした給料の明細書に、諸手当や保険料などと並んで所得税という項目がある。会社員の場合は、自分の会社が所得税を計算し給料から差し引いて税務署へ納めてくれる。この仕組みを「所得税の源泉徴収制度」という。
このように、会社員の場合は、税金の計算をすべて会社が本人の代わりにやってくれるため、初めのうちこそ給料から引かれた税金を意識するが、そのうち源泉徴収の常態になれて税金に対する関心も希薄になるというのが実態なのだ。給与所得者の所得税は、給料やボーナスの収入金額から「給与所得控除額」や基礎控除、扶養控除などの「所得控除」を差し引き、これに税率をかけて算出するが、こうした仕組みを知らない人が多い。
また、毎月の給料やボーナスが支払われるときに源泉徴収された所得税の1年間の合計額と、その年の給与総額に対する年税額とは普通一致しない。それは、結婚や出産などで年の途中で扶養親族の数が変わることがあることや、生命保険料控除や配偶者特別控除などは、毎月の給料やボーナスの源泉徴収時には考慮されていないことなどが原因だ。そのため、その年の最後に過不足額の調整をするが、これが年末調整である。
このような1年間の給与所得に対する所得税の計算を本人に代わって会社が全部してくれるため、会社員の多くが税に無関心になってしまう。給料が右肩上がりの時代はそれでもよかったかもしれないが、今は破綻の危機に瀕した国家財政を再建するため、国民の一人ひとりが負担増を受け入れなければならない時代である。毎年の税制改正で所得税の諸控除が見直され、年々負担する所得税が増えていく。
このような時代にも、従順な羊となってその負担増を黙って受け入れていくこともひとつの生き方だが、それでは社会人としてあまりにも寂しすぎる。税にもっと関心を持ち、税の使い道にも注視していくことが求められるのではないだろうか。その第一歩が、自分の納める所得税がどのようにして計算されるのかを知ることである。経営者や幹部の方々には、新入社員にぜひ税の基礎知識を学ばせてほしいと思う。
お勧めテキストは国税庁の「給与所得と税」↓
http://www.nta.go.jp/category/mizikana/campaign/h17/4022/01.htm