公的年金制度の持続可能性が懸念されているなか、基礎年金の財源を全額税負担とする「基礎年金の税方式化」を巡る議論が活発になっている。税方式へ移行することで様々なメリットがある一方で課題も少なくない。公的年金制度の改革は、我々ひとり一人に関わる重要な問題だ。そこで、基礎年金の税方式化がどのようなものなのかを理解するため、みずほ総研が発表したレポート(堀江奈保子氏)を紹介したい。
現行の基礎年金は、一部保険料が含まれているため、社会保険方式に分類される。ところが、約3分の1が保険料未納者であり、免除者と合わせると半数以上が保険料を払っていない。また、社会保険方式は、無年金者や低年金者を発生させ、さらに、負担が現役世代に偏るため、少子高齢化が進むと財政がひっ迫する。こうした社会保険方式の不備を解消する手段として、財源を全額税方式とする案を主張する意見が増えてきた。
税方式に移行すると、個人の保険料拠出を必要とせず、国内居住年数等を給付要件として一律給付する方法となる。財源については主に消費税を充てる意見が多いが、その場合、当面8~9%の消費税率の引上げが必要になる。消費税を増税しても、その分、保険料負担が減少するため、全体としての国民負担額は変わらない。しかし、現在、保険料を負担していない層は負担増となる。特に低所得者への一定の配慮も検討課題となる。
基礎年金の税方式移行時には、(1)過去に負担した保険料の取扱い、(2)過去の保険料未納期間の取扱い、(3)高齢者の所得や資産に応じた給付制限など、様々な検討課題がある。様々な意見があるなか、今後は、現行の社会保険方式か税方式か、国民が判断するための材料として、政府による将来の税負担と給付水準の具体的な見通し、制度移行時の経過措置など詳細な改革案の提示が待たれるところだ、とレポートは結んでいる。
同レポートの全文は↓
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/research/r080401social.pdf