国民年金の受給権者が死亡した場合に、その死亡した人に支給すべき年金給付で未支給の年金があるときには、その人の配偶者や子ども、父母などで、その人の亡くなった当時その人と生計を同じくしていた人が、「自己の名」で、その未支給の年金の支給を請求することができる。この未支給の国民年金を配偶者等が請求できる権利を「未支給年金請求権」というが、この権利は相続税の課税対象となる財産には含まれない。
未支給年金請求権については、その死亡した受給権者の遺族が、その未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象とはならない。税法上、遺族が支給を受けたその未支給の年金は、その遺族の一時所得に該当する。国民年金法に基づく未支給年金請求権の相続性については、最高裁判決(1995年11月7日)において、その相続性が否定されている。
すなわち、国民年金法は、未支給年金の支給請求ができる人の範囲及び順位について民法の規定する相続人の範囲及び順位決定の原則とは異なった定め方をしており、これは、民法の相続とは別の被保険者の収入に依拠していた遺族の生活保障を目的とした立場から未支給の年金給付の支給を一定の遺族に対して認めたものと解されているものだから、未支給年金請求権が相続税の課税対象となると解することはできないと判断している。
また、未支給年金請求権は、国民年金法の規定に基づき一方的に付与されることから契約に基づかない権利(請求権)だが、相続税法に規定する「これに係る一時金」には、継続受取人が受給を受けるべき「定期金が特別にまたは選択的に一時金とされる場合の一時金のみが含まれる」とされている趣旨からすると、上記の未支給年金は、定期金ではなく最初から一時金を支給するもののため、みなし相続財産にも該当しないとしている。
したがって、未支給年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、その未支給の年金を自己の固有の権利として請求するものであり、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはならないこととされる。