日銀が発表した「貸出・資金吸収動向」によると、2006年6月中の国内銀行貸出(除く特殊要因)は前年比2.6%の高い伸びとなった。銀行貸出(同)は、2005年8月に前年比プラスに浮上し、全体の残高でも2006年2月からプラスが続いている。今回はプラス幅の拡大ペースが、過去の増加局面の伸び率のスピードに比べてもやや速いという感があるとして、その背景を分析するのは第一生命経済研究所のレポートである。
レポートによると、銀行貸出の伸びが加速している背景には、銀行の不良債権処理コストがますます少なくなり、前向きな融資拡大に熱心になっている事情もある。貸出債権の償却要因を含んだ特殊要因の貸出残高を確認すると、ひところは10兆円を超える残高で推移していたのが、2006年6月はわずか3兆円まで減っている。また、国内銀行貸出残高の伸び率の業種別寄与度は、都銀の積極化が大きいことを確認している。
貸出を増やした主体については、3月末までの日銀の「貸出先別貸出」によると、大・中堅企業よりも中小企業のほうが伸び率の拡大が目立っていた。しかも、その資金使途は設備資金というよりも運転資金の拡大である。日銀短観では企業の設備投資需要の高まりが確認されたが、資金需要ということでは、企業活動において、仕入額、人件費などの金額が膨らみ、それに応じて企業が運転資金需要を増やしたとみている。
業種別にみた貸出残高の伸び率は、3月末では「貸金業・投資業」が前年比18.7%、「証券・保険業」が同13.1%、「物品賃貸業」が同7.3%、「個人」が同4.0%、「不動産業」が同3.7%と高い伸び率となっている。寄与度でみた場合に変化が大きいのは、「貸金業・投資業」だ。貸金業はノンバンクであり、物品賃貸業の伸び率と符合する。投資業には、不動産ファンド向けが含まれ、こちらも不動産業向け融資と同調した動きにみえる。
最近の不動産業については、事業者の物件の手当てが活発化しているという特徴がある。中小規模の不動産業の仕入意欲の高さは、バブル期以来の強さになっており、今のうちに優良物件を手当てしておこうという強いマインドを示している。ここにきて、国内貸出残高が伸び率を高めている背後には、そうした資産取引に対する姿勢の強さもある、とレポートはみている。
同レポートの全文は↓
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/kuma/pdf/k_0607c.pdf