税 務 関 連 情 報 |
2002年05月10日-001
今後の税制改革は失望に終わる公算大との分析レポート
「今後の税制改革によって、株式市場や債券市場が大幅な影響を受ける可能性は低く、期待は失望に終わる公算が大きい」とは、米国最大の証券会社モルガン・スタンレーの分析レポートである。レポートでは、失望に終わる理由として、日本の税制改革は総論賛成各論反対の典型であり、どのような目的のために何がなされるべきか、といった点については意見に大きな食い違いがあることを挙げている。また、議論に曖昧な点があることも理由のひとつに挙げている。1つは概念的なもの、もう1つは意思決定プロセスに関するものだ。
まず、議論を複雑にしているのは、日本が何十年にわたり税制の理想として掲げてきた「公平・中立・簡素」という基本3原則で、どれも実践的ではなかったと指摘。「公平」は、その意味において意見が一致していない。「中立」は、本来の経済効率といった意味が失われ、当てにならない概念となっている。最後の「簡素」も同じぐらい当てにならないものであり、税制そのものは簡素には程遠い。基本概念がこのように曖昧である以上、改革における明確さや進展を期待するのは了見違いではないかと、いささか厳しい意見だ。
他方で、税制改革の早期実行を一層困難にしている要因のひとつに政治的駆け引きを挙げている。従来から、政府税調を無視して自民党税調が税務政策を一手に握ってきたが、自民党は、未だに税務政策を政治支援の足固め材料と考えている。この構図は、経済財政諮問会議の役割によってさらに膨らんでいる。諮問会議が税制も経済の基本政策の一部とみなしている。その結果、自民党税調と政府税調の3者間での主導権争いが始まっており、小泉首相がより積極的なリーダーシップを発揮しない限り、混乱が生ずる可能性が高い。
したがって、「意思決定の曖昧さが、前述の基本概念の曖昧さを増幅することになり、結果として、税制改革案はチャンポンになる可能性が最も高い」と分析。「今後の税制改革によって、株式市場や債券市場が大幅な影響を受ける可能性は低い」というのがレポートの結論である。
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