景気回復を背景に税収が大幅に伸びているが、これまでは、財政再建のためには消費税率の引上げを中心とした増税は避けられないとの見方が大勢を占めていた。ところが、18日に開かれた経済財政諮問会議に内閣府が提出した「日本経済の進路と戦略(参考試算)」によると、増税なしでも2011年度に国・地方のプライマリー収支が黒字化する可能性が出てきた。分析するのは、みずほ総研のレポートである。
「進路と戦略」によれば、成長力強化策の効果から全要素生産性(TFP)上昇率、女性・高齢者などの労働参加率が高まり、世界経済も堅調に推移する「新成長経済移行シナリオ」では、2011年度にプライマリーバランスが黒字化する。1年前に公表された「中期展望」における中期財政試算と比べると、「進路と戦略」のほうが改善ペースが早い。これは、足元の堅調な景気動向を反映して、税収予測が改善したことが背景にある。
レポートは、「進路と戦略」の税収予測に関して、税収の対GDP比を利用して検討した結果、その予測値は必ずしも楽観的ではないとみている。レポートの試算では、税収の対GDP比の歴史的な水準を前提に考えると、政策効果が十分に発現されず世界経済も減速する「成長制約ケース」でも、プライマリー黒字が達成可能な税収が確保される。このため、「進路と成長」の税収予測自体は慎重に行われたと判断している。
これまでは、2009年度の消費税率引上げは不可避との見方が大勢を占めていたが、「進路と戦略」の財政推計によって、今後は増税なしでも2011年度のプライマリー収支の黒字化が達成可能ということがコンセンサスとなったとみている。
短期的課題として残るのは、予定されている歳出削減(▲11.4兆円~▲14.3兆円)を着実に進めることである。「進路と戦略」における財政試算は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」で示された歳出削減の実施が前提になっている。レポートは、増税なしの財政再建を進めるためには歳出削減の手綱を緩めないことが不可欠だとして、こうした歳出削減を現実のものとする政治的推進力を期待している。
同レポートの詳細は↓
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/japan-insight/NKI070125.pdf