税務関係書類の電子保存については、コスト削減の観点からその適用範囲を契約書や領収書など手書きの帳簿などにも広げてほしいという強い要望が、かねてから経済界から出されている。官民における電子化推進を進めるIT戦略本部では、新たに電子保存を求める統一的な法律である「e-文書法」を2004年度中に国会に提出することを目指しているが、そのなかで、特に重要な文書以外は電子保存を認める考えだ。
現行法では、最初から電子的に作成された帳簿書類はそのまま電子保存ができるが、契約相手方が作成した「紙」による見積書・契約書・領収書などには同法は適用されない。原本が紙の書類は、元の書類を改ざんしてスキャナで読み取るなどされた場合には、改ざんを発見することが極めて難しいため、脱税を助長するおそれがあるからだ。そこで、改ざんなどを防ぐための保存要件を定めたうえで可能な限り適用範囲を拡大する方針だ。
基本的には、1)税金を算出するためのもっとも基本的な書類である決算関係書類・帳簿、2)個々の取引の実態や金銭の授受を証明するためのもっとも基本的な書類である契約書及び領収書以外のすべての書類については、真実性や可視性を確保できることを要件に、電子的な保存を認めることになる。ただし、契約書や領収書については取引金額3万円未満の少額のものは例外的にスキャナ保存を認める方向にある。
なお、保存要件については、税務署長への事前承認を前提に、紙と同程度の小さな文字、色を再現するスキャナの一定水準の解像度・カラー画像、イメージ化した時刻を第三者が証明するタイムスタンプの付与、改ざんなどの内容を事後に確認できるヴァージョン管理、改ざん可能期間を制限するため文章の作成・取得から一定期間内のイメージ化などが挙げられている。