中小企業が厳しい競争環境を生き残るためには、独自の存在意義、すなわち企業価値を持つことが重要となる。商工中金が実施した「中小企業の企業価値と組織戦略に関する調査」結果(有効回答数約2100社)によると、企業は誰のものか(3つまで回答)は、「株主」(77.9%)と「社員」(77.8%)のものという回答がほぼ並んだ。以下、「経営者」(48.4%)、「顧客(ユーザー、消費者)」(23.1%)、「地域社会」(14.8%)と続いた。
会社は誰のものと考えるかによって企業価値は様々である。中小企業経営者に企業価値とは何かについてヒアリングしたところ、「会社が経営者と従業員の生活の一部である以上、永続することに価値がある」、「いかに多くのユーザーに使ってもらうかが大切であり、技術や利益それだけで独立の価値はない」、「企業価値は顧客満足度やブランド力、社会からの信頼」などを挙げており、さらに「社長個人の資質、行動も大切」だとしている。
企業価値を高める方策(複数回答)については、「利益の増大」(73.0%)がもっとも多く、「顧客満足度の向上」(57.4%)、「社会からの信頼の向上」(34.8%)、「負債の削減」(24.3%)と続く。利益拡大は重視しているが、「販売シェア拡大」(15.6%)や「事業規模拡大」(15.0%)などの量的拡大より、CS(顧客満足)やCRS(企業の社会的責任)の視点に立った質的改善が価値を高めるとする回答が目立った。
ヒアリング調査では、「利益の増額」や「安定して事業を行うだけの規模とシェア」は大切としながらも、そのためには「他社との差別化」が必要で、「他社に真似のできない技術力」、「ナンバーワン商品を保有しておくこと」が不可欠と考えている。しかし、どのように「顧客ニーズが変化」しているかを把握、きめ細かい対応で「顧客満足」を増すことに取り組んでいることが分かった。
こうした技術力は、「大手企業からの人材受入れや社員教育」により日々その水準向上に努めている。特に従業員は「企業価値の源泉」であり、社員一人ひとりが「自分の責任で仕事をしている」と思える、「人を中心に置いた会社作り」に務めている。結局、会社にとっては「社員の能力をいかに高めて引き出すか」、社員にとっては「自分の働きが会社の成長を支え自分に跳ね返ってくる」という仕組みと意識作りが必要と考えている。
同調査結果の詳細は↓
http://www.shokochukin.go.jp/material/pdf/special/cb06other07_1.pdf