原油高騰などに伴い海外の穀物価格が急激に上昇しており、食品産業はコスト増加の影響から価格転嫁に踏み切ったところも多いようだ。農林漁業金融公庫が、全国の食品製造業者、卸売業者、小売店、飲食店を対象に1月に実施した「食品産業動向調査」結果(有効回答数2242社)によると、食品産業全体では52.8%の企業が、コスト増を販売価格に「転嫁した(しようとしている)」ことが明らかになった。
価格転嫁した企業の割合を業種別にみると、製造業では、「糖類」(100.0%)、「油脂」(100.0%)、「パン」(83.3%)、「精穀・製粉」(78.3%)といった食品素材で高い一方、「飲料」(27.5%)、「酒類」(26.8%)などの嗜好品や「炊飯・惣菜」(42.9%)は低い。また、卸売業では、「青果物」(30.3%)といった必需品を扱う企業や、小売業では、「青果・水産物専門小売店」(33.3%)で、価格転嫁した割合が少なくなっている。
コスト増加分を全額価格に転嫁できなかった理由は、「同業者との横並びを基準に価格転嫁を決定したから」(36.5%)、「取引先に価格決定権がある」(35.2%)が圧倒的に多い。小売業では「同業者との横並びを基準に価格転嫁を決定」(47.3%)が多く、大規模の小売業ほど「横並び」の傾向が強い。飲食店では、他業種に比べて、「自助努力でカバーできる」(22.9%)、「経営方針や戦略に値上げがそぐわない」(25.7%)の回答割合が多い。
食品産業全体におけるコスト額の増加割合は10.1%だが、製造業は11.7%で、卸売業(8.1%)や小売業(5.7%)、飲食店(外食)(5.9%)に比べ高い。これは、製造業が輸入原材料に強く依存していることが考えられる。製造業のうち、「油脂」(25.5%)、「糖類」(15.5%)などの食品素材は、特に輸入原材料に対する依存度が高く、原材料価格の高騰の影響を強く受けているためとみられている。
コスト増加分を価格に転嫁した企業の値上げ幅の割合は、食品産業全体で9.1%。製造業は10.1%だが、このうち、「油脂」(20.0%)、「糖類」(17.7%)といった食品素材は高く、一方で「炊飯・惣菜」は5.9%となった。これは、「炊飯・惣菜」は製造業のなかでは、コスト増の影響が比較的少なく、コスト額の増加割合が6.8%と低いためと思われる。その他の業種の値上げ幅は、卸売業が8.0%、小売業が5.9%、飲食店が4.3%だった。
同動向調査結果の詳細は↓
http://www.afc.go.jp/information/investigate/pdf/sangyou-food-h20-02.pdf