ゼイタックス

経営関連情報 (2003/11/26)
「労災かくし」の送検件数が過去最多ペースで推移

 「労災かくし」とは、労働災害の発生事実を隠すため、故意に労働者死傷病報告を所轄の労働基準監督署に提出しなかったり、虚偽の内容を記載した労働者死傷病報告を提出するもの。最近も大手ゼネコンが労働安全衛生法違反などの疑いで書類送検されたが、厚生労働省はこれを受けて20日、最近の「労災かくし」事案の送検状況を急遽まとめ発表した。

 それによると、今年1月から10月までの「労災かくし」の送検件数は106件にのぼり、これまで過去最多だった2001年の126件を上回るペースで推移していることが明らかになった。これを業種別でみると、「建設業」が78件で最も多く、「製造業」の17件を大きく引き離してダントツのトップ。3位は「運輸交通業」で6件などとなっている。

 今回報告された送検事例では、労働者死傷病報告を提出せずに「労災かくし」した2次下請の建設会社がある。同社の従業員が市発注の終末処理場の建設工事現場で右足かかとを骨折してしまった。社長はその治療について労働災害には適用されない健康保険を使わせていたが、退院から仕事に戻るまでの約4ヵ月もの間、一切の休業補償をしなかった。

 同社は、労働災害が発生したにもかかわらず労働者死傷病報告を提出しなかったが、生活に困ったその従業員から労働基準監督署に相談があったことで「労災かくし」が発覚したものだ。同社では、「労災かくし」をした理由について、労災事故が起こったことを知った発注者から元請建設会社が指名停止になること、労災保険制度上の保険料の還付を受けられなくなることをおそれたためと説明している。