新規開業者のうち50歳代が占める割合は1990年代以降高まる傾向にある。わが国の新規開業企業数が伸び悩むなかで、50歳代は開業者を輩出する重要な世代となっている。そこで、国民生活金融公庫総合研究所が21日に発表した2005年度「新規開業実態調査」では、50歳代の開業増加の背景や50歳代の開業者の特性など、今日的な50歳代の開業写像を探った。
調査結果(有効回答数2476社)によると、開業時の年齢は増加傾向にあり、今回調査でも前年より0.4歳増の平均43.0歳となり4年連続で上昇した。年代別の構成比をみると、「30歳代」が31.9%でもっとも多く、「40歳代」が27.7%、「50歳代」が24.1%で続くが、30歳・40歳代の構成比が減少傾向にあるのに対し、50歳代は10年前の11.5%から倍増しており増加を続けている。
開業直前の勤務先企業からの離職形態は、全体でみると自らの意思で退職した「非リストラ型」が68.2%、「リストラ型」が23.9%、「定年」2.8%、「その他」5.1%だが、「リストラ型」は50歳代でもっとも高く38.0%と約4割にのぼり、50歳代の開業を押し上げている。しかし、一般に50歳代の開業者は住宅ローンや子どもの養育費負担が重いことから、安全志向が強いため、事業拡大意欲を持つ者の割合は下の年齢層より低い。
また、50歳代のリストラ型の開業は、1)直前の勤務先の多くが業界の低迷に苦しんでいることから、経験を生かした事業で開業すると同様の事態に直面しやすい、2)とはいえ、経験が乏しい事業を営むと経営ノウハウに乏しい、3)自らの意思で開業時期を決めづらいことから、資金の準備が不十分になりがち、という3つの問題を抱えている。にもかかわらず、非リストラ型と比べて業績が大きく劣っているわけではないこともわかった。
さらに、リストラ型の開業者のなかでも「人脈や取引先とのネットワーク」に自信を持つ開業者は、開業時に知人・友人や勤務先の取引先などさまざまな相手から協力を得ている。そのため、リストラ型の開業であっても、「人脈や取引先とのネットワーク」を十分活用することで、リストラ型が抱える問題を克服し、良好な業績をあげている企業が少なくないことが明らかになった。