景気が着実に回復するなか、製造業の雇用はこのところ横ばいだが、新規学卒入職者数は、大企業は回復しつつあるものの、中小企業は減少し、全体でピークの半数以下だ。また、製造業の就業者に占める55歳以上の割合は全産業を下回っているものの、他産業を上回る勢いで高齢化が進展している。このような状況下、経済産業省が厚生労働省等と連携して作成した2003年度ものづくり白書は、ものづくりを支える人材育成を強く求めている。
白書は、製造部門の人材の能力低下懸念のため、企業ではOJT・Off-JTなどの教育の充実に取り組んでおり、人材育成に力を入れている企業ほど売上の増加割合が高いとの調査結果(厚労省2004年)を示す。3年前に比べ売上高が100%以上に伸びている企業割合は、「人材育成にかなり力を入れている」企業の57.3%に対し、力の入れ具合が低くなるにつれ逓減、「力を入れていない」企業では28%とほぼ半分に落ち込んでいる。
製造業の技能の継承について、6割の企業(大企業では8割)が危機感を持っており、その理由・きっかけとして、現場の高齢化や不良品の発生、外部環境の変化などを挙げている。企業では、熟練技能継承のため、OJTによるマンツーマン指導をはじめとした取組みに力を入れている。例えば、マイスター制度を導入し、1年から1年半かけて計画的なOJTで確実にコア技能を伝承している一般機械器具製造のA社の事例を示している。
国際分業体制の構築が進むなか、海外展開と国内雇用の関連は薄くなっており、また、国内では、高度な技能・技術を要する開発・製造が求められており、わが国人材の優位性を活かした人材育成に取り組むことが必要としている。