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税務関連情報 (2003/12/10)
小規模事業者には厳しい改正消費税法での転嫁

 消費税は適正な転嫁を通じて最終消費者に負担を求めることを予定している税であって、それができなければ、事業者が税を負担する結果となる。来年4月からの改正消費税法施行により事業者免税点制度の適用上限が1千万円に引き下げられ、新たに約136万事業者が課税対象に取り込まれるとみられている。これらの事業者は消費税を転嫁することができるのだろうか。

 東京税理士会がこのほど発表した消費税法改正に関する緊急アンケート調査結果によると、免税点引下げによる「消費税の適正な転嫁の可能性」について(回答者数:会員税理士201人)については、「転嫁できない・困難」が57%、「転嫁に不安・心配」との回答が30%で、9割近くの事業者が転嫁に不安・困難と考えていることが分かった。「転嫁できる」は13%に過ぎなかった。

 例えば、年商1500万円の売上の板金加工業者は、そのほとんどの得意先から消費税相当額の5%前後は値引されており、納税は事業者負担となるとの声を寄せている。公取委では、このような親会社の優越的な地位の乱用による下請業者への値下げ強制を独禁法違反として厳しく監視しているはずだが、隅々の取引まで目を行き届かせるのは不可能だろう。

 また、下請業者に限らず、一般の小売店では、デフレ下の厳しい競争のなかでは消費税分の値上げはしずらいところが多い。月商200万円のクリーニング業者は、不況の影響で値引合戦のため、利ざやも少なく、課税になったからといって転嫁はできないと、苦しき胸のうちを明らかにしている。年々売上が減少するなかで、転嫁もままならない不安に廃業を考える経営者の声もあった。

 法律は成立してしまったのでいや応なしに対応しなければならない日がくる。たった5%分の税金とはいえ、売上が減少し利幅も少ないなかで、5%を転嫁するか自分で負担するかには雲泥の相違がある。そのうえ、今回は無理算段してどうにか対応したとしても、将来的な消費税率の引上げは必至だ。このような小規模事業者の実態・苦しさに目を向ける政治家・マスコミが増えることを切に願うばかりである。