国会で継続審議となっていた労働基準法改正案が上程後1年9ヵ月を要して12月5日に成立し、同月12日に公布された。焦点となっていた割増率50%以上の適用を義務化する1ヵ月の時間外労働時間数は「60時間超」となった。政府案では当初「80時間超」となっていたが、下方修正したことから、反対していた民主党も最終的に同意したもの。改正労基法は2010年4月1日から施行される。
時間外労働に対する割増賃金は現在25%だが、改正後の1ヵ月の時間外労働に対する割増賃金は、(1) 45時間までは25%、(2)45時間超は、労使で時間短縮・割増賃金率を引き上げる(努力義務)、(3)60時間超は50%以上を義務化、引上げ分(25%)の割増賃金の支払に代えて有給の休日付与も可能、となる。ただし、(3)については、中小事業主の事業場については当分の間適用しないとする猶予措置を講ずる。
(3)の代替休暇制度を導入については、書面による労使協定の締結を条件とし、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金(50%以上)の引上げ分の支払に代えて、通常の労働時間の賃金が支払われる休暇の付与(通常の年次有休休暇とは別)でも適法とする。詳細な運用基準については、今後厚生労働省令などで明らかにされるが、60時間超の時間外労働4時間について1時間分の休暇とする方向だ。
また、労働者の請求に基づく年休の時間単位付与も、新たに認めるが、労使協定により対象労働者、付与日数(5日以内)などを規定する必要がある。なお、(3)の中小事業主に対する適用猶予措置は、中小企業の現状の「体力」を考慮し、施行予定日の2010年4月1日から3年間猶予するもので、その時点の実施状況を勘案し、再度法改正して中小企業への適用を決定することとされている。