2009年5月4日、オバマ政権は税制改正案の概要を発表し、合法的に租税回避を可能とするスキームや富裕層による違法な隠し口座の温床となっている、タックスヘイブン国の利用による租税回避を削減することを明らかにした。このタックスヘイブン国の取締りの強化を解説するのは、KPMG税理士法人が発表した「オバマ政権による税制改正案(国際税務他)」と題したレポートである。
レポートによると、租税回避目的で設立した実態のない会社に対する有利な税務上の取扱いが、米国納税者の米国における租税回避を容易にしていることを問題視しているという。例えば、米国法人が日本に新しい工場を建設するために投資を行うにあたり、ケイマン持株会社、ケイマン持株会社の傘下のケイマン孫会社と工場を所有することとなる日本孫会社の3つの新法人を設立するケースを例示している。
ケイマン孫会社は日本孫会社に建設資金を貸し付ける。貸付利子はケイマン孫会社の所得であり、日本孫会社で損金計上される。こうして、高課税国の日本から、非課税国のケイマンに所得移転される。米国税法上、本来であれば、米国法人がタックスヘイブン国と他国にそれぞれ外国子会社を設立した場合において、両子会社間で移転された所得は米国法人にとって非積極的所得とされ、米国法人の合算課税の対象となる。
しかし、チェックザボックス規則により、これら2つの外国孫会社が独立した法人格のない事業体(つまり、ケイマン持株会社の支店)とみなされて、ケイマン孫会社で発生した受取利子と日本孫会社で発生した支払利子が相殺されることとなり、受取利子は米国における合算課税の対象外となる。結果、日本では支払利息が損金算入されるものの、米国ではケイマン孫会社の受取利子を合算課税の対象としないことが可能となっている。
そこで、オバマ政権は、国外に投資する米国法人がその外国孫会社(この例では、日本孫会社)を米国税務上チェックザボックス規則により法人格のない事業体(つまり、支店)とみなすことがないように改正する考えだ。米国法人の直接所有の孫会社及び外国子会社と同一国にある孫会社(この例では、ケイマン孫会社)に対しては、現行法どおりチェックザボックス規則の適用が可能である。
同レポートの全文は↓
http://www.kpmg.or.jp/resources/newsletter/tax/taxnl200907_j.pdf