去る10月25日に環境省が「環境税の具体案」を発表以来、多数の賛否の意見が同省に寄せられたことから、これを受けて25日、小池百合子環境相による、環境税導入に反対する典型的な批判に対する見解をまとめた資料が発表された。あわせて、地球温暖化対策を進めるうえで、環境税があったほうが効果的にその解決が図られると見込まれる同相からの2つの具体的な提案も明らかにしている。
小池環境相が対応した主な批判は、1)日本の産業界に厳しい対策は必要ない、2)温暖化対策に今以上の資金は必要ない、3)環境税により日本の企業の国際競争力が失われる、4)アメリカ、中国が参加しない京都議定書を守っても効果は乏しい、との4つ。例えば1)は、CO2を減らす必要があるのは家庭であって、工場からの排出は増えていないので、産業界では今予定している以上の厳しい対策は必要ないとの批判である。
これに対し、小池環境相は、日本経団連のCO2排出量削減への自主的な取組みを評価しつつも、工場全体でみると90年度比で0.8%減にとどまり、京都議定書の目標同8.6%削減にはほど遠い状況で、工場に加え、本社ビルなど事業場全体でみると、同7.6%も増加していると指摘。他方、CO2排出量が増加している家庭の排出を減らすのにも、企業側の対策努力が必要として、より公平な仕組みである環境税の導入を求めている。
一方、小池環境相は、1)石炭火力発電に使われる石炭の増加は見逃せず、これを相殺する自然エネルギーの利用拡大が必要、2)論争ばかりしていて、森林整備を先延ばししてはいけない、との2つを提案。最近、火力発電での石炭使用料が90年比で約2.8倍となっており、今後もその増加が見込まれる。そこで、環境税を使って、自然エネルギーの利用にてこ入れをし、電気のクリーン化への後押しする努力をすべきだと提案する。
政府税調の25日の答申において環境税は、温暖化対策全体での具体的な位置づけ、その効果、国民経済や国際競争力に与える影響など多岐にわたる検討課題があり、その議論の状況を踏まえつつ、総合的に検討していく必要がある、として2006年度改正での導入は見送られる方向にある。このような状況のなかで、環境省がいち早く検討材料を提供したことには、導入に向けた具体的な議論をより深めたいとの同省の考えがうかがえる。
小池環境相の批判への回答、提案の詳細は↓
http://www.env.go.jp/policy/tax/know/180files/4and2.pdf