ジェトロ(日本貿易振興会)が24日に発表したASEAN6ヵ国及びインドに進出した日系製造業の経営実態調査結果(有効回答数1130社)によると、進出企業の今後1~2年の事業展開の方向性では、ASEANで「規模拡大」との回答割合が昨年調査の49.9%から53.6%に、インドでは同81.1%から86.6%へとそれぞれ増加した。一方、「規模縮小」や「撤退」の合計は6.1%でほぼ横ばい。インドでは該当する回答がなかった。
「規模拡大」の具体的方針については、ASEANで「生産品目の拡大」(57.4%)、「追加投資」(57.0%)の回答が多い。一方、「規模縮小」「撤退」では、「進出国における拠点の統合改廃」(35.5%)が最も多く、進出国内での再編が加速している様子がうかがえる。インド進出企業の「規模拡大」では、「追加投資」が7割を超え、「生産品目の拡大」(50.0%)、「生産品目の高付加価値化」(43.1%)と続く。
また、今後の原材料・部品の調達方針(複数回答)では、「進出国からの調達を増やす」が66.2%で最も高く、「ASEANからの調達を増やす」(39.3%)と続き、「中国からの調達を増やす」(19.9%)を大きく上回った。インドでは、現地調達率51%以上との回答割合が6割を超える。各国とも現地調達の拡大を進める一方、「現地サプライヤーの品質向上が必要」との指摘も78.6%にのぼり、今後の課題が浮き彫りになった。
ASEAN進出企業は、経営に一定の安定感がみられる一方、いまだに「通関等諸手続きの煩雑さ」(51.1%)や「行政手続きの煩雑さ」(43.7%)、「インフラ整備状況が不十分」(40.3%)といった貿易・投資環境面における問題を抱えている。また、労務・雇用面では、「従業員の賃金上昇」(50.6%)や「有能技術者の確保が困難」(46.8%)とする回答も高かった。
インドでも、「インフラ整備状況が不十分」(72.2%)や「通関等諸手続きの煩雑さ」(58.5%)、「税務手続きの煩雑さ」(55.6%)、「行政手続きの煩雑さ」(50.0%)、といった投資環境を課題にあげる割合は高いものの、労務・雇用面では、「従業員の賃金上昇」(55.7%)が目立った問題と指摘する割合が高いぐらいだった。