税 務 関 連 情 報

2003年10月24日-002
国税当局の内部資料からみたタンス株の節税

 タンス株を利用した節税法は証券関係者間で大きな波紋を呼んでいる。今回は20日号に続く第2弾である。具体的な節税法は前回の記事に譲るが、国税庁の見解などから「巨額な節税以外は黙認される見通し」とのダイヤモンド誌の見方とは違って、国税当局はあくまで「適正・公平な課税」を基本とした取扱いを行うことが判明した。やはりタンス株節税のリスクは大きいようだ。

 国税当局の内部資料によると、タンス株を特定口座に受け入れたときの価格が実際の取得価額と異なる場合で、証券会社営業所の長の責めに帰すべき理由があると認められるケースでは、みなし取得価格(2001年10月1日の終値の80%相当額)を認めず、正しい確定申告が必要になると明記している。証券業者が顧客と共謀して、確認書類の取得価額・取得日を改ざんしてタンス株を特定口座に受け入れた場合などがこれにあたる。

 内部資料では、この「責めに帰すべき理由」を例示した後に続けて、「特定口座において処理されたタンス株の取得価額及び取得の日が異なることにより、所得税の負担が少なくなった場合には、証券会社営業所の長の責めに帰すべき理由がなく、譲渡所得や源泉徴収税額の再計算(中略)を行う必要がなくても、個人が正しい取得価額により計算した上で所得を計算する必要がある」との方針を記している。

 このように、もっぱら課税を逃れるためだけの行為は厳正に対処することは明らかだ。どこまで正しい取得価額を追いかけることができるのかという実効性の問題はあるが、そもそも大口資産家は日頃から資料情報等により管理されており、株式の売買の動きについても捉まれる公算は強い。譲渡益が大きい投資家ほど節税の誘惑に駆られやすいが、リスクは大きいといえる。

 問題は一般投資家である。「万が一、否認されたとしても、本来払うべきだった譲渡益の10%を払えばいい」という開き直った指摘があるが、逆にいえば、本来20%の税率を軽減している10%を払えばいいのである。それを惜しんで手間をかけ「架空の損」をでっち上げ、後ろめたい思いを抱きながら課税を逃れるよりは、正しく納税したほうがよっぽど気持ちいいではないか。いかがなものか。

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