信金中央金庫総研がこのほど発表した「中小企業の事業承継に関する調査」結果(有効回答数1万3946社)によると、事業承継を「最優先の経営問題」とする回答が20.0%、「経営問題のひとつ」とする回答が59.0%と、約8割の企業が経営問題として認識している。しかし、その対応については、「対応できている」が24.7%、「現在、対応を進めている」が23.5%と、合わせて48.2%の企業にとどまった。
事業承継の際に想定される問題(複数回答)については、「事業の将来性」(65.5%)、「後継者の力量」(54.3%)、「取引先との信頼関係の維持」(43.5%)、「候補者の不在」(14.3%)の順となった。「事業の将来性」は、小規模企業ほど割合が高く、また、業種別では「小売業」(68.3%)、「建設業」(69.1%)が高い。小売業は、「候補者の不在」(17.7%)とする回答も高く、小規模な小売業で後継者問題が深刻な状況がうかがえる。
「後継者の力量」については、従業員「1~4人」の企業では43.0%と平均を下回っており、むしろ「候補者の不在」が22.1%と高くなっている。事業の将来性や後継者の力量だけでなく、候補者がいないことを問題とする企業が小規模層では2割以上を占めている。一方で、従業員規模が比較的大きな企業では、「先代経営者の影響力」、「相続税などの税金対策」、「自社株など個人資産の取扱い」が目立つ。
中小企業が、事業承継のために地域金融機関に期待することとしては、「個別相談」が46.3%、「セミナー等による情報提供」が33.7%となっている一方、「専門家の紹介」(11.9%)や「事業譲渡先の紹介」(4.2%)との回答割合は低い。従業員「1~4人」の小規模企業では、「個別相談」への期待が50.1%と高く、小規模企業ほど事業承継のために地域金融機関に対してより個別的な対応を求めているといえそうだ。