倒産件数の沈静化が目立つなかで、ホテル・旅館など宿泊業の倒産が増加している。東京商工リサーチがまとめた2004年1年間の宿泊業の倒産は、前年比19.7%増の109件となった。2004年における宿泊業の倒産増加は、国内観光の不振に加えて、観測史上最多の台風上陸や記録的な猛暑など悪天候や異常気象が客足の減少に大きく影響したとみられている。
倒産件数が増加した一方で、負債総額は前年比16.6%減の約2018億円と前年を下回った。負債別でみると、「100億円以上」の大型倒産が5件とほぼ前年並みだったのに対し、「1千万円以上5千万円未満」が前年比180.0%増の14件、「5千万円以上1億円未満」が同40.0%増の14件となった。このように、負債1億円未満の倒産は、同86.6%増の28件となっており、小規模企業の倒産増加が目を引く結果となった。
従業員数別では、「5人未満」が前年比96.1%増の51件で全体の46.7%を占め、小規模企業の倒産増加を裏付けた。これに対して「50人以上300人未満」が同27.7%減の13件となった。また年商別では、「1億円未満」が同35.1%増の50件となった。
原因別では、「販売不振」が前年比16.0%増の58件となり、全体の過半数を占めた。以下、「累積赤字」が前年と同じ17件、「設備投資過大」が12件、「連鎖倒産」が11件などとなっている。また、形態別では、「破産」が同34.6%増の35件となったが、再建型の法的手続きである「民事再生法」は同18.1%減の18件となった。このように、企業の解体・消滅である破産の増加が、厳しい企業淘汰を浮き彫りにした。
宿泊業は、客数が少なくても光熱費・水道代・人件費などの固定費がかかる業態のため、特に土日、休日での台風上陸が経営に響いたと分析している。さらに、過去の設備投資に要した借入負担が重荷になっているところも多く、東京商工リサーチでは「宿泊業は、当面は厳しい経営環境が続く」との見方を示している。