経済産業省は、2006年度税制改正のなかで、現行では損金不算入とされている役員賞与・業績連動型役員報酬に係る課税の取扱いについて、新会社法や会計基準の考え方との整合性、国際的な取扱いや租税回避防止の観点を踏まえ、時代に適合した税務処理のあり方について議論していく必要性を求めていく考えだ。長らく損金不算入とされてきた役員賞与の取扱いが見直される可能性はあるのだろうか。
現行の法人税法における取扱いは、役員賞与は一般に利益の処分として考えられており、また、業績連動型役員報酬についても、一般的に利益に一定率を乗じて算定されるため、利益の分配との性格を有することから、ともに損金不算入とされている。さらに中小法人の場合は、決算賞与の支払によって法人の利益を比較的容易に調整できるといった、いわゆる租税回避の問題もある。
しかし近年、従業員の給与が業績連動型となりつつある一方で、経営者たる役員の報酬が税務上定期定額制や類似基準による横並びを強要されてしまう制度は時代にそぐわなくなっているとの指摘がある。加えて、新会社法において役員賞与も利益処分ではなく報酬決議によることが明確化され、会計基準においても発生時に費用処理する方法に一本化される見通しなどから、税務上も損金算入すべきだとの意見が高まっている。
他方、主要先進国においては、税法上も役員賞与の損金算入が認められており、わが国の制度は特異な制度となっているとの意見も後押しする。例えば、アメリカでは、業績に連動して支払われる役員報酬は法人税の課税所得の計算上控除されるものとなっており、日米の違いがわが国企業の国際競争力をそいでいる。業績連動型報酬の損金算入を認めないわが国税制が、アメリカ型のプロの経営者の出現を妨げているという意見だ。
しかし、現行の法人税の考え方は、商法が利益処分という支給手続きを求めていたことだけを根拠にしているわけではない。役員賞与は功労報償としての性格を有するものと考えられ、大企業の利益処分経理にみられるように、一般に利益の処分として認識されているため、利益獲得のための費用ではないとの考え方だ。ハードルは高そうだが、まずは議論の俎上に乗るかどうかが注目される。