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経営関連情報 (2005/11/18)

製造業の「国内回帰」とは国内事業の再評価の動き

 このところ、わが国製造業には国内事業強化の動きがみられるが、この「国内回帰」ともいわれる最近の動向を企業アンケート調査から分析したのは内閣府のレポートである。それによると、わが国製造業の海外生産の比率は長期的に上昇傾向が続いているが、一方で、わが国製造業の国内設備投資と海外設備投資の関係をみると、2003年度に国内設備投資は反転し、特に2004年度は大きく増加している。

 こうした動きの背景として、最近のわが国製造業の事業強化の方向性について、海外事業の強化姿勢に大きな変化がないなか、国内事業についてはこの2年ほどで強化する姿勢が強まっていることを、国際協力銀行の「海外直接投資アンケート結果(2000~2005年)」からみて挙げている。

 国内事業と海外事業の役割分担については、内閣府の「2001年度企業行動に関するアンケート調査結果」が、成熟製品は海外に移し先端技術製品や研究・開発機能は国内にとどめるべきと多くの企業が考えていることを示唆している。「2004年度海外直接投資アンケート結果」でも、国内では高附加価値品、海外では汎用品を生産するという傾向がわかり、国内と海外の役割分担が明確になっているとみている。

 海外進出が国内生産に与える影響についても、経済産業省の「海外事業活動基本調査」をみると、「影響はない」とする企業割合が2001年を底として高まる傾向にあり、海外進出による国内生産への影響は限定的と考えられる。他方で、近年「国内回帰」といわれているが、「2005年度海外直接投資アンケート結果」から、海外の事業を縮小・撤退した企業のその後をみると、国内に事業を戻した企業の割合は小さく、海外で行っていた事業を日本に戻すという現象も一般的にみられるわけではないことがわかる。

 このようなことから、このところの「国内回帰」ともいわれる国内事業強化の動きは、海外への事業を強化する姿勢が弱まり国内に向いたというよりは、むしろ国内と海外の役割分担から最適な国際分業体制を構築するなかで、国内需要の盛り上がりも加わり、国内事業が再評価された動きと考えることができる、というのが本レポートの分析結果である。