政府税制調査会の答申では、2006年3月末に適用期限を迎える研究開発税制(上乗せ部分)やIT投資促進税制の廃止を求めた。これらの優遇措置は政策減税として2003年度に導入されたものだが、この間に企業の研究開発や設備投資は総じて順調に推移し、景気という面からいえば使命・役割は終わったのだから、これ以上税で支える必要はないというのが政府税調の考えである。
これに対し、経済産業省や経済界は、減税によって最初の3年間の合計で減税総額約1.8兆円の約2倍にあたる3.4兆円の実質GDP押上げ効果があったことや、国際競争力が弱まることなどの理由を挙げて減税延長を強く求めている。しかし答申は、期限がきたものはいったん廃止して「真に有効な措置に集中・重点化すべきだ」と提言している。国際競争力を支援するというのであれば、別の次元の話として議論すべきだというのだ。
また、同様に3年間の時限措置として導入され、来年3月末に期限を迎える不動産登記に係る登録免許税の軽減措置や不動産取得税の軽減措置についても廃止を求めている。現在は不動産登記を行う際の登録免許税の税率が半分に軽減されているが、来年4月以降は負担が倍になる。住宅ローン減税が昨年から5年間で段階的に縮小されるなか、これらの優遇措置の廃止が好調な住宅投資に水を差すと懸念する関係者も多い。
実をいえば住宅業界の懸念はまだある。税調の答申では言及されていないが、住宅取得資金等の贈与の特例も今年12月末で期限を迎える。同特例は、親や祖父母から住宅取得資金の贈与を受けたとき、550万円までは非課税で、1500万円までの部分は5分5乗方式で計算するため税額が軽減される。住宅取得資金が3500万円まで非課税の相続時精算課税制度があるが、廃止となれば住宅投資に少なからぬ影響はある。
そのほか、来年3月末で期限が切れるもので答申にはみえないものに、取得価額が30万円未満の少額減価償却資産を一括で損金算入できる特例がある。こうしてみると、「期限がきた租税特別措置は極力廃止する」という政府税調の基本方針に基づけば、多くの優遇措置がなくなることになる。最終的には与党税制調査会の判断ということで、12月15日に予定される税制改正大綱が注目されよう。