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経営関連情報 (2004/06/18)

妊娠・出産理由の解雇をめぐる個別紛争が増加

 厚生労働省がまとめた2003年度男女雇用機会均等法の施行状況によると、都道府県労働局雇用均等室に寄せられた相談は約1万8266件にのぼり、その40.5%が「セクシュアルハラスメント」に関するもので最も多かった。また、雇用均等室の個別紛争解決援助の申立ては前年度より35件増の157件だった。個別紛争の内容をみると、厳しい雇用情勢を反映して、退職勧奨や解雇に関するものが大幅に増加している。

 個別紛争の約8割にあたる123件が「定年・退職・解雇」に関するもので前年度からは25.5%(25件)増えた。このうち「妊娠・出産等」を理由とする事案が約8割(96件)を占め、前年度の77件から大幅に増加した。これらの事案のほとんどは、雇用均等室が女性労働者・事業主双方に事情聴取し援助した結果、解決をみている。

 例えば、医療・福祉法人(従業員約150人)に勤めていた女性Aは、妊娠を伝えたところ、会社から、車の運転や身体介助を行う業務の内容上、妊娠した女性に働いてもらうのは難しく、また、妊娠による体調不良から休みが続いていたことなどから、退職勧奨を受けた。Aから申立てを受けた労働局雇用均等室は、事業主からのヒアリング内容を踏まえ、事業主に対し次のような助言・指導を行った。

 妊娠した女性には負担が大きいとして退職勧奨することは、均等法上問題である。妊娠した女性が体調不良により医師から休業が必要だと指導を受けた場合は、事業主はその指導事項が守れるように適切な措置を講じなければならない。妊娠した女性から申し出があれば、事業主は簡易業務へ転換させなければならず、それが難しければ、休業という方法も考えられる。

 一方、女性Aに対しては、妊娠による体調不良で休業が必要だと医師の指導を受けた場合は、その旨を事業主に明確に申し出ること、希望する場合は、簡易業務への転換を申し出ることとの助言・指導をした。これらの結果、事業主はAと話し合い、Aは医師の指導に従い休業するとともに、引き続き産前産後休業、育児休業を取得し勤続勤務することになった。