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経営関連情報 (2006/11/20)

人材育成は「投資」と割り切る我慢強さが重要

 新入社員の離職率上昇が問題視されている。1987年3月大卒者の離職率が1年目11.1%、3年目28.4%だったのに対し、2003年3月大卒者の場合、1年目15.3%、3年目35.7%と大幅に上昇している。時間と費用をかけて獲得した人材が短期間で辞めてしまっては、企業にとって大きな損失である。そこで、離職原因を分析し、人材育成は「投資」と割り切る我慢強さが重要と指摘するのは三菱総研の磯田誠氏のコラムである。

 離職の原因を特定するのは難しく、現場からは新入社員の忍耐力不足やわがままを嘆く声もしばしば聞かれるが、磯田氏は、実際には離職の原因が現場にあるケースも少なくないとみている。かつて多くの企業では、新入社員を戦力予備軍とみなし、最初の数年間に数多くの失敗を経験させ、一人前の戦力へとじっくり育てていった。「新入社員は失敗から学ぶ」との共通認識があり、失敗を当たり前のことと捉える気持ちがあった。

 ところが今は、短期的な組織成果を要求されるマネージャーは、新入社員にも即戦力としての成果を求めるようになり、一度失敗すれば「組織成果が下がってしまう」として、もはや新入社員には仕事を任せず自分で処理してしまう。その結果、新入社員の能力は向上することなく、ますますマネージャーは仕事を任せなくなるという悪循環が繰り返され、結局は、働き甲斐や自分の居場所を見つけられずに新入社員は退職してしまう。

 磯田氏は、こうした悪循環を断ち切るためには、人材育成にかける時間と費用を「コスト」ではなく、「投資」と考える視点に立ち戻ることが不可欠だと言う。特に、経営者やマネージャーが新入社員の失敗を「コスト」ではなく、「投資」と割り切る我慢強さが重要だと指摘する。経営者、マネージャーの人たちには、新入社員時代の自分が失敗したときの上司の顔をぜひとも思い出していただきたい、とコラムは結んでいる。