3月30日に成立した2005年度税制改正は増税色の濃いものだが、証券税制関係では投資家に資する改正が行われている。特定口座の機能拡充だ。特に、特定口座で保管されている株式の無価値化に伴うみなし譲渡損の特例は、投資リスクの軽減といった観点から注目される。これまで、発行会社の倒産などによって価値がなくなった株式の損失は、税務上一切考慮されなかったが、それを譲渡損とみなす改正だ。
特定口座で管理されている上場株式のうち、発行会社の倒産などにより上場株式の要件を満たさなくなった場合は、新たに開設される「特定管理口座」で管理される。この株式を「特定管理株式」という。この特定管理株式を対象に、発行会社が解散などによって株式の価値を喪失し損失が生じた場合は、株式等の譲渡損失が生じたとみなして、その損失の一定額を株式等の譲渡益から控除できることになる。
株式の無価値化による損失が譲渡損とみなされるためには、最終的に、発行会社が解散等にまで至ることが要件となる。上場廃止となっただけでは認められないことから、昨年12月に上場廃止となった西武鉄道株のケースは、この特例の適用対象外となる。この改正は、2005年以後に、特定管理口座で管理されている上場株式等が、発行会社の倒産などにより上場株式等に該当しなくなった場合に適用される。
また、この取扱いは、特定口座で管理されている上場株式等に限定したものであり、非上場株式や特定口座で管理されていない上場株式等は対象とはならない。その他の特定口座に係る改正は、1)タンス株の特定口座への受入れを2005年4月1日から2009年5月31日まで延長(みなし取得費での受入れは廃止)、2)株券貸借取引に係る返還株券等の特定口座への受入れが可能に、などがある。