国税庁が発表した2008事務年度における公益法人等の課税事績によると、公益法人等に対する実地調査は、今年6月までの1年間に1308件(前年度比3.6%増)に対して行われ、うち863件(同1.2%増)から前年度に比べ29.2%減の総額163億4100万円の申告漏れ所得が把握され、本税額18億4600万円(同12.7%増)が追徴された。調査1件あたりの申告漏れ所得は1249万円(同31.6%減)となる。
仮装、隠ぺいによる不正計算があったものは69件で、不正発見割合は5.3%、不正脱漏所得金額は33億8600万円、1件あたりの不正脱漏所得は4907万円だった。調査状況を組織区分別にみると、不正発見割合は「学校法人」(10.4%)、「宗教法人」(6.7%)が高く、また、調査1件あたりの申告漏れ所得金額は「学校法人」(2878万円)、不正申告1件あたりの不正脱漏所得金額では「財団・社団法人」(9741万円)がそれぞれ多い。
公益法人等については、税の優遇措置が設けられており、社会的関心度も高いことから、国税庁では、事業規模が大きいなど調査必要度が高い法人を中心に、的確かつ効率的な調査に取り組んでいる。その結果、事業規模が大きい法人に対する調査件数は455件となっており、実地調査件数全体の約35%を占め、「非収益事業に係る費用を収益事業に係る費用として経理している」など、非違があった割合は66.8%(304件)となっている。
調査事例をみると、損益計算書を改ざんして利益を圧縮していた学校法人の事例が報告されている。不動産貸付を主たる事業として行っている学校法人に対して実地調査を実施したところ、収益事業とは一切関係のない学校校舎(固定資産)に係る減価償却費を、収益事業に係る経費に付けこみ(収益事業に係る減価償却費に加算)、損益計算書を改ざんして、利益を圧縮していたものだった。
なお、2008事務年度における公益法人等の法人税の処理件数は、前年度から横ばいの3万2992件だった。内訳は、「宗教法人」が1万3009件(前年度比0.8%増)、「財団・社団法人」が1万1314件(同0.1%増)、「社会福祉法人」が1410件(同10.6%増)、「学校法人」が2055件(同2.5%増)など。また、給与所得の源泉徴収義務者は、「宗教法人」5万848件など、前年度比0.2%増の15万9258件だった。