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法人化に伴う資産の引継ぎは消費税の課税資産の譲渡

税務関連情報 - 2009年07月29日

 個人事業者が法人成りした場合の事業用資産の引継ぎが消費税法上の対価を得て行われる課税資産の譲渡にあたるか否かの判断、つまり消費税の課税対象になるか否かの判断が争われた事案で、国税不服審判所は、事業用資産の引継ぎは現物出資ではなく、債務の引受けを対価とした課税資産の譲渡にあたると判定、税務署の処分を支持し、個人事業者からの審査請求を棄却した。

 この事案は、個人で養殖業を営んでいた審査請求人が法人組織に移行するにあたって、金銭出資によって法人を設立した後、個人事業に係る資産とその資産と同額の負債を法人に引き継がせたことが発端になった。この行為に対して税務署が、資産の引継ぎは「金銭以外の資産の出資」には該当せず、法人が譲り受けた負債を反対給付に対価を得て行われた資産の譲渡にあたると認定した上で、消費税等の更正処分をしてきたものだ。

 そこで個人事業者は、法人成りの実態は現物出資と同様であり金銭以外の資産の出資に該当するところ、その出資によって譲渡時の対価となるべき取得する株式もないのであるから、対価の額は零円であると主張した。したがって、消費税は発生しないことになり、税務署の課税処分は違法との考えから、国税不服審判所に審査請求して、税務署の課税処分の全部の取消しを求めていた。

 国税不服審判所は、消費税の課税対象となるものを解釈した上で、消費税法上、非課税取引を含む資産及び負債が一体になった「営業」それ自体を一つの課税客体として捉えて課税対象とする規定は存在しないとも指摘した。つまり、譲渡された資産の相手勘定を負債として法人における仕訳処理は、法人成りにおいて負債の引受けが資産の引受けの反対給付の証になるという考え方だ。

 その解釈に沿って、審査請求人は、資産の譲渡の対価として法人から金銭を収受する代わりに負債を引き受けさせ、債務の支払義務の消滅を図るという経済的利益を得ているのであるから、その負債の引受額は消費税法上の資産の譲渡の対価の額に相当すると判断、審査請求を棄却している。