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税務関連情報 (2005/03/14)

国外財産贈与で史上最高の1300億円の追徴課税

 今月初めの新聞各紙・テレビなどで「東京国税局が税務調査で、武富士元会長の長男が海外会社経由で贈与を受けた時価1600億円を超える武富士株について申告漏れを指摘」とのニュースが報じられた。追徴税額が約1300億円という。これまでの追徴課税の最高額は、1992年にパチンコ機器メーカー「平和」の名誉会長に課された約260億円だから、一気に5倍となる史上最高の記録更新である。

 これは当時の贈与税の仕組みを利用した節税策だった。2000年度税制改正で見直されたが、それ以前は、贈与を受ける人の住所が国外にある場合は、贈与された財産が国内のものであれば課税されるが、国外にあれば課税されなかった。例えば、子供を海外の大学に留学させて、住所もその国に移させ、親は海外でマンションなどの不動産を購入して、その子に贈与すれば相続税は課されなかった。

 武富士前会長は、98年、オランダに設立した現地法人に武富士株を売却し、99年にその株を香港に居住していた長男に贈与した。98年末に武富士が東証一部に上場したことから、長男が贈与された株式の時価総額は1600億円にのぼった。改正前の“駆け込み”的な節税策だが、合法ではあった。ところが、国税局が調査したところ、長男の当時の実質的生活基盤は香港ではなく国内にあったと判断、税逃れと認定されたもようだ。

 改正後の取扱いは、日本国籍の人が親から国外財産を贈与された場合、そのときの住所が国外にあっても、5年以上海外に住所がないと、贈与税が課税されることになる。それにしても、贈与財産約1600億円に対し、贈与税、無申告加算税を含め約1300億円、さらに延滞税を含めると1600億円となる見込みで、贈与財産が消えてしまう。結局、「正しい申告が必要」という確定申告の時期に合わせた国税当局のメッセージといえそうだ。