2007年版中小企業白書における中小企業の事業承継の分析によると、中小企業の事業承継が円滑に進まない主因の一つとして、事業を承継したいという後継者がいないことを挙げている。その背景には、事業者として得られる収入が雇用者収入を下回っている現状があると指摘する。事業者対雇用者収入比率をみると、例えば、製造業では、1975年は1.5と雇用者を上回っていたものが、2005年には0.6まで低下している。
また、中小企業にとって後継者の第一候補は社長の子どもだが、親の経営する会社に入社せずに自らの生活基盤を築いているケースも多い。一旦生活基盤を築いてしまうと、リスクを取って中小企業を承継するという選択肢は取りにくいというのが、事業承継がスムースに進まない要因の一つと推測している。加えて、後継者がいる企業においても、準備不足により事業承継に支障をきたすケースは多い。
そこで白書は、円滑な事業承継を行うための主な条件として、1)株主や取引先、従業員などの利害関係者(ステークホルダー)の理解、2)後継者教育、3)株式・財産の分配、4)個人保証・担保の取扱いの4つを挙げている。2006年版中小企業白書によると、後継者が決定している企業に限定しても、事業承継に関して「十分に準備を実施している」と回答した企業は約2割にとどまっている。
また、対策を実施している企業のなかでも、後継者を事前に自社勤務させることや、経営に必要な知識を取得させること、関係者の理解を得ることなどについては、何らかの準備を実施している企業は比較的多いが、株式財産の相続・移譲準備については、特に対応が遅れており、財産の分配にあたっては、これまでの借入に伴う個人保証や担保の取扱いも決めておく必要があるが、この点も対応が進んでいないと指摘している。