今年6月までの1年間(2004事務年度)における法人の黒字申告割合は31.5%と2年連続で上昇したが、約7割の法人が赤字という状況は変わりない。ところが、このような状況に便乗して実際は黒字なのに赤字を装う企業が後を絶たない。2004事務年度中に法人税の実地調査をした12万4千件のうち約3割にあたる3万6千件は無所得申告法人の調査に充てられ、うち約17%の6千社が実際は黒字だったことが判明した。
調査結果によると、実地調査した3万6千件のうち約7割にあたる2万5千件から総額6147億円にのぼる申告漏れ所得金額を見つけ、加算税額104億円を含む587億円の税額を追徴した。調査1件あたりの申告漏れ所得金額は1729万円となる。何らかの非違があった2万5千件のうち8千件は仮装・隠ぺいなど故意に所得を不正計算しており、その不正脱漏所得金額は1339億円、1件あたり1593万円だった。
また、調査した結果、黒字となった法人が6千社あったわけだ。このように、赤字申告や無申告だった法人でも調査してみると申告漏れなどがあることは少なくない。調査件数や把握された申告漏れ所得金額は前年度より増えており、国税当局は、赤字法人を装う企業に目を光らせている。300万社近い法人数を考えれば、「うちには調査は来ない」と高をくくりがちだが、国税調査は急所を押さえているといえそうだ。
調査事例をみると、インターネット上で通信販売を行っている業者の申告状況を確認したところ、数年前に医薬品の小売店を廃業した無申告法人だったことから、実地調査を行い、代表者がパソコンで管理している取引状況などを精査したものがある。その結果、健康食品の通信販売を行い多額の利益をあげていながら、店舗の閉鎖をいいことに故意に申告していなかったこと事実が判明している。