退職金は、税務上、損金算入され、個人課税でも退職所得控除や2分の1課税などの特典があるが、それは会社を辞めるときに支給される場合だけでなく、役員に昇格した場合の使用人分の支給額や役員の分掌変更などに伴う打ち切り支給額についても認められる。つまり、分掌変更などで、代表取締役から非常勤の役員になった場合など、実質的に退職と同様の状態である「みなし退職」での退職金も税法上の優遇措置が認められるのだ。
ただし、「みなし退職」での役員等に対する打ち切り支給については、一定要件があって、これを満たさないと、税務処理上、損金不算入となり、個人課税面での特典も否認されてしまうので、この要件には十分留意する必要がある。「みなし退職」とは、1)代表権を持たない、2)実質の経営にあたらない、3)報酬がおおむね50%以下に激減する、などの状態をいうとされている。
税法では、「法人が役員の分掌変更や改選等による再任などに際し、その役員に退職給与として支払った給与については、その支給が、例えば、1)常勤役員が非常勤役員になったこと、2)取締役が監査役になったこと、3)分掌変更等の後における報酬が激変(おおむね50%以上の減少)したことなど、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによる場合には、退職給与として取り扱うことができる」と定めている。
もちろん、支払った役員退職金が過大でないことも必要だ。このみなし退職制度は、例えば、オーナー社長が後継者に事業承継するに際し、非常勤の役員として会社に残り、後継者にアドバイスできるうえに、退職給与として認められるのだからメリットは大きい。ただし、上記の要件を満たさないと目論見が大きく狂ってしまうので、慎重な処理が望まれるわけだ。