税 務 関 連 情 報

2002年03月15日-001
今後の税制改正審議で見直し必至の特定支出控除制度

 国税庁によると、平成12年分の確定申告で給与所得の特定支出控除を適用して申告したものは7名だったことが明らかになった。最近の同制度の適用者は、平成9年分1名、平成10・11年分がともに3名であるから、12年分はわずかながら増加したといえるが、給与所得者全体の数5,250万人(12年12月末現在、国税庁:民間給与の実態調査)からいけばゼロに等しい。今後の税制改正審議の中で、同制度は形骸化したとの指摘からの見直し、ひいては給与所得控除の水準の見直しが行われることは間違いない。

 給与所得者は一般的に、必要経費に相当する金額として法定の給与所得控除額が適用されるが、このような個人の事情にお構いなく画一的に一定額を適用することに対する給与所得者の不満・不平から、昭和62年に、実額による経費控除として「特定支出控除制度」が創設された。同制度は、1)通勤費、2)転任に伴う引っ越し費用、3)研修費、4)一定の資格取得費、5)単身赴任者の帰宅旅費の5種類を勤務に必要な特定支出として、その年中の特定支出の合計額が給与所得控除額を超えた場合は、確定申告によって、その超える部分を特定支出控除として控除することが認められている。

 サラリーマンにも確定申告の途を開くものとの期待されたが、現実には、実際の適用件数は僅少で推移しており、形骸化しているとの指摘も多い。その理由としては、特定支出控除の対象となる勤務費用の範囲は諸外国に比べほとんど同じであるのに、特定支出控除の適用が少ないのは、わが国の給与所得控除の水準が相当に高いためだというもの。そこで、現行の給与所得控除の「他の所得との負担調整」的部分を見直し、「勤務費用の概算控除」としての性格をより重視する方向で見直していけば、特定支出控除の選択的適用が増加するとの意見もある。今後の抜本的な税制改正の審議の中で、給与所得控除も含めたところでの特定支出控除の見直しは大きな課題の一つといえる。

 

 

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