税 務 関 連 情 報

2003年05月19日-003
りそなGの国有化―税効果会計の厳格化ってなに?

 りそなグループが税効果会計の厳格化が引き金となって、政府に対し2兆円前後の公的資金注入を要請する方針を固め、実質国有化されるとのニュースが17日、新聞各紙の朝刊で報じられた。同グループはこれまで3月末の自己資本比率を6%程度維持できるとしていたが、監査法人による税効果会計の厳しい査定によって、国内で業務を営む銀行の最低基準である4%を下回る3.5%程度になることが原因である。

 ここでのテーマは、税効果会計が厳格化されると、どうして銀行の自己資本が小さくなるのか、ということである。まず、税効果会計とは何かというと、銀行などが不良債権を有税で処理した際に生じた損失が、将来税負担が減少するとみなして、その分をあらかじめ資本として増やしておく会計をいう。

 具体例でいえば、不良債権を有税で処理すると、税率を40%と仮定した場合、税引前の利益を100とすると税金は40ではなく50となり、この差額の10は将来の課税所得から控除されるとみなして、貸借対照表でその10が繰延税金資産となり、同額だけ税効果資本として増やす。不良債権処理の費用は、会計上は当期の費用となるが、税務上は将来のある時点まで損金処理できないからだ。

 しかし、ここで問題となるのは将来の収益計画である。将来の税引前利益が100あれば将来の税金負担が40のところ10減少して30となるが、もし将来の税引前利益が10しかなければ4しか減少しない。当期の税負担が減少するとみなした分は、将来納めることになる税金の範囲内でしか控除されないからだ。つまり、将来の収益計画を甘く見積もれば、納税見込み額も大きくなり、その分資本へ算入する額も増えてしまうことになる。

 りそなグループの例をとれば、同グループの収益力に比べ税効果資本の比重が大きすぎると、監査法人から判断され、税効果資本を取り崩して損失処理することを求められたわけだ。その結果、資本全体も小さくなって、自己資本比率が当初の見込みより大幅に下回ったことになる。これが、税効果会計の厳格化だが、このような会計上と税務上の費用の捉え方の違いを知ることも、企業経営には必要なことかもしれない。

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