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税務関連情報 (2005/09/16)

“サラリーマン増税”の裏にあるもの

 財政再建のために国民の一人ひとりに負担増を求めれば、納税者のほとんどを占める“サラリーマン増税”となるのは当然である。それよりも、“サラリーマン増税”と単純に批判することで見えなくなってしまうものがある。それは、特に負担増となるのが高額所得者層であることだ。例えば、個人所得課税見直しの焦点となる給与所得控除での高額所得者のメリットが非常識に大きいことは見落としがちだ。

 現行は給与収入に応じて平均給与収入総額の3割程度が控除され、勤務費用の概算控除としては過大すぎるとの批判がある。たしかに、給与収入500万円で控除額154万円は多すぎるが、もっと問題なのは給与所得控除が青天井であることだ。給与収入1000万円を超える場合は、「収入金額×5%+170万円」で算出した額がいくらになろうと認められる。給与収入100億円であれば、なんと5億円強が所得控除される。勤務費用が5億円なんてことは馬鹿げているが、なにせ青天井なのだ。

 まだある。退職金課税が見直されて困るのも一部の高額所得者だ。ほとんどの人が、20年を超えると優遇される現行制度を見直すほうに目がいきがちだが、2分の1課税が残れば負担増は少ない。問題は短期間での勤務での退職金も2分の1課税できることが見直されることだ。これは、一部の外資企業が退職金課税での優遇措置を乱用した租税回避がみられるので防止策を検討するといわれている。

 ところが、外資系企業の乱用なんぞはほんの一握りに過ぎない。見落としているのは、天下りOBが特殊法人や公団などを渡り歩き3年前後でもらう退職金にも2分の1課税が適用されることである。短期間の勤務に何千万もの退職金を出す構造に憤懣やるかたない思いだろうが、そのうえ税金面でも優遇されているのである。なぜいままで問題視されなかったのか不思議なくらいである。

 このように、“サラリーマン増税”と薄っぺらに批判することで見えなくなっているものが数多い。100億円稼ぐサラリーマンや何度も退職金2分の1課税を利用する天下りOBも一緒くたにして「サラリーマン増税」などと批判する浅はかさがおわかりいただけただろうか。財政再建のために国民一人ひとりの負担増は必要だが、同時に個人事業者の所得把握の不公平だけでなく所得課税の不公平の是正も重要なのである。