政府は今年10月の月例経済報告で、基調判断を「景気は回復している」と据え置いた。また、先行きについても「内需に支えられた回復が続く」としており、11月には「いざなぎ景気」(57ヵ月、1965年11月~1970年7月)を超え、戦後最長の回復期間となることが確実視されている。ところが、帝国データバンクが実施した「いざなぎ景気超えに対する企業の意識調査」では、その実感が持てない企業が多いことが分かった。
調査結果(有効回答数9799社)によると、今回の景気回復局面がいざなぎ景気を超えることについて、「実感がない」と回答した企業が全体の77.4%を占めた。規模別にみると、「実感がない」企業の割合は、中小企業が78.7%と大企業(73.2%)を5.5ポイント上回った。また、地域別では、景況感の改善が遅れている「北海道」が86.6%でもっとも高く、もっとも低い「南関東」(74.0%)を12.6ポイントも上回った。
格差の進行に歯止めがかからないなか、今後も回復の実感を得るには困難な状況が続きそうだ。実感がない要因については、景気循環のなかで「企業業績の改善が進んでいない」との回答が42.0%ともっとも多い。企業業績の改善が進んでいない理由(複数回答)としては、「競争激化」が73.1%ともっとも多く、次いで「仕入価格の上昇」(50.2%)、「公共投資の減少」(36.7%)、「デフレの継続」(26.9%)などが挙げられた。
なお、いざなぎ景気超えの実感が持てない要因として、「従業員の賃金の改善が進んでいない」を挙げた企業が28.4%、「個人消費の改善が進んでいない」は25.3%だった。現在、好調な企業業績の一方で所得改善の遅れが個人消費の拡大や景気の力強い回復の大きな妨げとなっている、との指摘がある。しかし、多くの企業では、従業員の賃金改善以前に、企業業績の改善の遅れが大きな問題と捉えていることが明らかになった。