金融所得課税の一体化に向けて、先日15日、政府税制調査会が報告書を提出。金融商品間の課税方法や税率を同じにして金融税制を簡素化し、損益通算できる範囲を拡大して、個人投資家のリスク投資を活発化することが狙いだ。早ければ2005年度税制改正に盛り込む考えだが、内閣府は、最近、家計のリスク資産保有が高まる兆しがあるとの分析をしている。
わが国の家計が保有する金融資産の残高は、2003年末時点で1410兆円にのぼる。そのうち6割は価格変動リスク(元本割れリスク)がほとんどない預貯金で占められており、株・債権・投資信託など価格変動リスクがある“リスク資産”での運用は約1割にとどまっている。
例えば、株式の保有比率は、1980年代末のバブル期や1999~2000年のITバブル期には株価上昇の影響もあって上昇したが、それを除けば横ばいで推移している。これは、家計がリスク回避的で、リスク資産での運用に慎重なためだ。先進各国と比べても、わが国ではリスク資産での運用比率が低下していることが目立つ。
もっとも、最近は、こうした傾向にも変化の兆しがみられ、個人投資家による株の取引シェアは上昇し、為替リスクがある外貨預金での運用も増加し始めている。これは、インターネット取引の普及や個人投資家向けの証券税制の改正などによって、株の売買が手軽になったことや、90年代以降、金融自由化が進んだ結果、外貨預金による運用が身近になったことなどによるものだ。
今後は、こうした動きが続いて、リスク資産運用に対する慎重性が徐々に積極化していく可能性がある、というのが内閣府の見方だが、追い風になりそうなのが金融所得課税の一体化だ。例えば、これまで雑所得として総合課税されていた外貨預金の為替差益についても、20%の税率での分離課税の対象とされる方向にある。税制面での優遇措置が大きくなってくればリスク投資への動きが強まることは確実といえる。