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税務関連情報 (2006/06/14)

実質一人会社規制逃れに目を光らせる税務当局

 今年度税制改正で導入された特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入措置は、いわゆる実質一人会社のオーナー給与の給与所得控除相当額を損金不算入とするものだ。該当しそうな企業はその対応策を迫られている。例えば、オーナー社長及び同族関係者が保有する議決権株式を90%以下にすることなどが考えられるが、安易な第三者への株式譲渡は実質一人会社規制逃れと判断されて否認される可能性が高い。

 この実質一人会社規制の対象となるのは、オーナー社長(業務主宰役員)及び同族関係者が議決権株式の90%以上を保有し、かつ、オーナー及び同族関係者が常務に従事する役員の半数以上を占める会社である。ただし、基準所得金額が年800万円以下の場合と、同800万円を超えても3000万円までは、オーナー給与の占める割合が50%以下であれば、実質一人会社規制の対象外となる。

 しかし、この適用除外要件は、判断基準の基準所得金額が適用事業年度前の3事業年度をもとに計算するため、いまさら数値を変えることはできない。そこで考えられる対応策は、同族関係者の株式保有割合を90%以下にするか、または同族関係者以外の役員を半数以上にすることしかない。例えば、同族関係者以外の第三者に11%の議決権株式を持ってもらうことが考えられる。

 ところが、政令では、仮に同族関係者以外の第三者が議決権株式を保有していても、同族関係者と同一内容の議決権を行使することに同意している場合は、その株式は同族関係者が保有しているとする「みなす規定」が設けられているのだ。その判断は事実認定となるが、いままで第三者が株式を保有していなかった企業が、経済的合理性などの理由がなく第三者が保有した場合は実質一人会社規制逃れと判断されるおそれがある。

 また、常務に従事する役員についても、同族関係者以外の役員を増やしたとしても、その役員の実際の業務内容や権限、支払給与額などが調べられ、実質一人会社規制逃れの名目的な役員と判断される可能性も少なからずある。特に実質一人会社規制の導入初年度においては、税務当局もこうした形式的な規制逃れには十分目を光らせており、安易な対応策は通用しないということになりそうだ。