あずさ監査法人がこのほどまとめた2009年上半期の株式公開(IPO)動向によると、今年1~6月における新規上場会社数は、前年同月比63%減(▲15社)の9社にとどまり、新興3市場が実質的に整備された2000年以降で最小となった昨年上半期の24社をさらに大きく下回る結果となった。上半期の上場会社数が一ケタにまで落ち込んだのは、1992年(3社)以来、17年ぶりのこととなる。
この主な要因としては、(1)上場予定企業の業績が悪化、(2)株式市場の低迷が継続、(3)証券会社・証券取引所の審査が厳格化、(4)企業の負担増加懸念、が挙げられている。金融危機に端を発した実体経済の急激な悪化に伴い、投資家に成長性を示せる上場予備軍の数が減少したことや、2008年の新興3市場の資金調達額(公募:中位値平均)は前年との比較で40%近く減少するなど、企業にとって上場メリットが相対的に低下した。
日銀短観では6月の大企業製造業の業況判断指数(DI)が過去最悪だった前回3月調査から10ポイント上向き、06年12月以来、2年半ぶりに改善となるなど、世界経済の悪化にもようやく歯止めがかかる兆しが見え始めた。これに伴い、今年IPOした企業9社のうち初値が公募価格を上回った企業の割合は約67%(6社)となり、昨年の約47%(49社中23社)から改善となるなど、IPO環境にも少しずつ変化の兆しが出てきている。
しかし、今後のIPO市場を展望すると、仮に株価が年間IPO社数で100社を超えていた一昨年の水準にまで回復したとしても、上場予定企業にとって市況低迷と並んでもう一つの大きな懸念材料である企業業績の回復には、なお相当程度の時間を要するものとみられる。日経平均株価も6月には約8ヵ月ぶりに終値で1万円台を回復したが、そうした株価の上昇が直ぐにIPO社数の大幅な増加につながる可能性は低いと推測している。
2009年上半期のIPO動向の詳細は↓
http://www.azsa.or.jp/b_info/ipo/200907/ipo_200907_01.html