消費税収の使いみちというものが限定されていることを意外と知らない人が多い。消費税は、1997年に消費税率を3%から5%に引き上げたあと、国民の理解を得るためにという名目で、その使途を、1%分はそのまま地方へ、4%分は地方交付税交付金を除いて「基礎年金」「老人医療費」「介護」に限定したのだ。99年度の予算編成から、一般会計予算の予算総則において消費税の収入が充てられる経費の範囲を限定・明記している。
その背景には、税率引上げの批判をかわすという政府の思惑もあるが、「今後、急速に増大することが見込まれる社会保障給付の財源に消費税を充てろ」という消費税の「福祉目的税化」の議論が起こったことにある。しかし、目的税化は財政の硬直化を招くおそれがあること、諸外国においても例が見当たらないことなどからなどから、当面は予算総則によって限定し、“福祉目的化”したわけだ。
その後も予算総則のなかで明記されており、2004年度の一般会計予算のなかでは予算総則第16条にある。政府にとってみれば、総体の税収が増えればどの税金をどこへ使おうと問題ないのだから、お金がかかる基礎年金への国庫補助などに消費税を回せば、その分、他の税収を自由に使えるというわけだ。もっとも、税収だけでは歳出総額を賄えず、40%強を国債に頼っているのはご承知のとおりだ。
というわけで、5%の消費税のうち、43.6%と4割以上は地方消費税・地方交付税として地方へ。残りの56.4%が基礎年金・老人医療・介護に限定した福祉予算に使われている。また、基礎年金の国庫負担割合を2分の1に引き上げるための財源確保に消費税率が引き上げられるという、いわば既定路線といってもいいものがあるが、前もって福祉目的化していたことがここで効を奏しそうな面もありそうだ。