コミュニティビジネスは、生活に関わる身近な問題解決のために、地域住民が主体となって継続的に行っていく事業。そのコミュニティビジネスを分析して、その事業のなかに地域経済の活性化に資する仕組みの育成や、企業経営へのヒントを提示する可能性をみるのは浜銀総研の鈴木紀子氏のレポートである。
近年、コミュニティビジネスが様々な分野で広がっている要因として、1)社会環境の急激な変化によって、日々の暮らしにおいても、従来の枠組みでは解決できない問題が生じ、その対応が求められるようになった、2)他方で、個人の意識やライフスタイルの変化から、地域の問題に関心を持ち、地域に根ざした活動を支える人々が増加傾向にあることを挙げている。
コミュニティビジネスの実態をみると、事業は、高齢者や障害者への生活支援、子育て支援、不用品のリサイクルなど、生活関連分野を中心に多岐にわたる。また、組織形態は、NPO法人をはじめ株式・有限・任意団体などのかたちで運営され、事業規模も年間数億円から100万円程度のところまであるなど、多様性に富んでいる。
今後、コミュニティビジネスが地域に浸透していくためには、事業者への信頼の確立、担い手となる人材や安定的な資金源の確保といった点がカギとなる。最近では、行政や経済団体などの支援の動きが広がりつつあり、こうした支援は単に個々の事業者の育成にとどまらず、地域内でヒト・モノ・カネ・サービスが循環する仕組みを育てる一助となる。
一方、企業の視点からみた場合、コミュニティビジネスの事業スタイルは、地域社会への配慮など社会的責任を意識した経営を実践する際の参考にもなり得る。また、その事業のなかには消費者ニーズが潜んでいる可能性も高く、企業経営者にとって、新たな着眼点を提示するものになるだろう、というのが鈴木氏の見方である。