税 務 関 連 情 報 |
2002年07月15日-003
外形標準課税導入議論の活発化
政府税制調査会が税制改革の基本方針の中で法人事業税への外形標準課税の導入を答申し、今後導入の是非をめぐって活発な議論が展開されることが予想される。そこで、ここではUFJ総合研究所が7月始めに公表した「日本経済ウオッチ」の中で述べている外形標準課税導入の背景を紹介しながら、今後の議論の一助としたい。
外形標準課税導入の大きな理由の一つは、税収不足に悩む地方自治体が企業収益に影響されない安定的な税収の確保を図ることにある。法人事業税収はピーク時91年度の6.5兆円から2000年度には3.9兆円まで低下した。法人事業税が低迷する理由は、収益環境の悪化を背景とした企業収益の伸び悩みと、景気対策として実施された法人事業税率の引下げにある。
マクロベースでみた近年の企業収益は、一時的に景気が回復した2000年を除くと30兆円を下回る水準(87年度と同程度)で推移している。また、12%(普通法人対象)あった法人事業税率は、景気対策の一環として98年度に11%、99年度には9.6%と段階的に引き下げられている。このため、企業収益が大きく改善した2000年度においても法人事業税収の増加幅が僅少になるなど、税収が以前に比べ増加しにくくなっている。
一方、景気低迷が長引くにつれ、法人全体に占める赤字法人の割合が約7割と上昇している。赤字法人割合が上昇すると、法人所得を課税対象とした法人事業税を納めない企業が増えてくるため、黒字法人に法人事業税の負担が集中するといった弊害が大きくなっている。
政府税調は、このような法人事業税の不安定性、負担の偏りの是正方法として、資本金や人件費など事業の規模や活動量を示す外形的基準を課税対象として法人事業税収の安定化等を図る外形標準課税の導入を答申したわけだ。問題は赤字法人も課税対象となることだ。周知のように、日本商工会議所など中小企業関連団体が導入に強硬反対している。今年の秋には具体的な導入案が固まる見通しだが、それまでの間、外形標準課税導入に関する議論は一段と活発化することは確実だ。
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