今年12月にも北米産牛肉の輸入が再開される可能性が高まっている。第一生命経済研究所が19日に発表したレポート「牛肉輸入再開が日本経済に及ぼす影響」は、政府の前提とする輸入停止前の17%程度の量が輸入再開されるケースで、個人消費と輸入の合計で実質GDPを178億円押し上げられると試算した。輸入解禁が実現すれば、肉類の価格低下や消費促進をもたらし、生活者や関連する食品供給業者に影響を与える。
レポートによると、2003年12月に北米産牛肉の輸入が停止されたときは、この影響により2004年の肉類の消費者物価が前年比で2.9%上昇し、家計の実質肉類消費が▲2.5%減少した。一方、肉類の輸入も減少し、2004年の肉類・同調品輸入重量は前年比▲3.2%減少した。結局、消費者の間で牛肉の購入が控えられた結果、2004年の実質GDPは▲0.02%(▲1061億円)押し下げられたと推測している。
今回の北米産牛肉の輸入解禁が日本経済に与える影響について、レポートは、上記の政府の前提に基づくケースとともにに、1)輸入停止前の半分程度の量が輸入再開されるケース、2)輸入停止前の水準に輸入量が回復するケース、の3つに分けて推計。その結果、政府の前提に基づくケースでは実質GDPの押上げ効果は178億円にとどまるが、1)、2)の場合はそれぞれ526億円、1097億円程度押し上げられると試算している。
このように、金額面から判断すると、北米産牛肉の輸入解禁が経済全体へ与える恩恵は小さいが、これまで牛肉高騰が経営を圧迫してきた飲食業界に関連する分野では恩恵が大きくなる可能性が高いとみている。一方、国産牛肉の高値の恩恵を受けていた畜産関連の食品供給に関連している分野では、悪影響が深刻になる可能性があると予想している。
同レポートの詳細は↓
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/news/pdf/nr2005_23.pdf