シバリが入った養老保険の全額損金プラン
養老保険の全額損金プランに事実上のシバリが入った。これは、2011度税制改正で、一時所得として受け取った生命保険契約に基づく一時金の税務として、「給与課税されていない会社負担分の保険料は必要経費に含めない」とする取扱いが明確化されたことによるもの。全額損金プランとは、会社を契約者及び死亡保険金受取人、役員や従業員を被保険者及び満期保険金受取人とする養老保険契約のこと。
この場合、会社が負担した保険料のうち死亡保険金に対応する部分は支払保険料として損金扱いとなり、満期保険金に対応する部分は被保険者への給与としてやはり損金扱いとなる。また、満期保険金は受取人の一時所得扱いとなるため、法人税だけでなく所得税の観点からも税負担を軽減できるスグレモノとして一時期脚光を浴びたが、今回の改正によって、全額損金プランの旨味は半減してしまったことになる。
だが、気になるのは改正法の適用期日だ。改正法によると、適用は2011年6月30日以降支払われる一時金からとなっており、それ以降は給与所得として課税された部分のみが、その一時所得の計算上控除できる必要経費となる。6月29日以前に支払われた一時金の取扱いについては「一時所得の必要経費に給与課税されていない保険料も含まれるか否か」をめぐって現在係争中の裁判の結果に影響を受けるものとみられている。
最高裁における裁判の結果、「会社負担分の保険料は必要経費に含めない」と主張する国が勝訴すれば、新法適用前の取扱いも変わらないことになるが、納税者が勝訴した場合には会社負担分も含めた保険料の全額が必要経費にできる可能性が出てくる。現在、同様の事件が2件争われており、高裁で判断が分かれていずれも上告中となっている。最高裁の判断に注目が集まるところだ。