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税務関連情報 (2004/10/18)

直ちには導入しない消費税の軽減税率

 将来の消費税率アップの議論がいよいよ動き始めた。いつごろ、どれぐらい引き上げられるのかが最大の焦点だが、引上げの議論のなかで必ず出てくるのが軽減税率の問題だ。消費税は低所得者層も高所得者層も等しく負担することになるので、所得に対する逆進的な負担を緩和するために、欧州諸国のように食料品などの生活必需品は税率を軽減すべきだという意見である。

 これに関して政府税制調査会では、昨年6月に公表した「少子・高齢社会における税制のあり方」のなかで、「消費税率の水準が欧州諸国並みである二ケタ税率となった場合には、所得に対する逆進性を緩和する意味から、食料品等に対する軽減税率の採用の是非が検討課題となる」と明記している。「欧州諸国並みの二桁というのは、10%ではなく、おそらく15%ぐらい、二ケタの上のほう」(石税調会長)との考えだ。

 つまり、現行の消費税率5%を少し上げたから軽減税率を採用とはならないとの姿勢だ。また、食料品等を軽減したとしても、高所得者層も当然食料品は買うわけだから、必ずしも軽減税率がすべからく逆進性負担の解消につながらない。それ以上に、消費税導入前の物品税では様々な物品に異なる税率で課税して苦労したが、その二の舞になるおそれがある。だから、軽減税率の導入は慎重にすべきだという意見が太宗を占めている。

 所得の逆進性の問題については、消費税という一税目だけでなく、所得税の累進税率構造や資産税のからみなど税制全体、さらには社会保障制度などの歳出面を含めた財政全体で考える必要がある、というのが政府税調の基本スタンスでもある。なお、消費税率の引上げ幅については、一挙に上げるのは難しく、段階的に、例えば2%ぐらい、4~5年おきに上げていくという意見が税調内では強いようだ。