税 務 関 連 情 報 |
2002年01月18日-001
なぜ税務署では分からなかった大物OB税理士の脱税
元札幌国税局長という大物OB税理士が脱税事件で逮捕されたことで国税当局は、税務行政への信頼を損ないかねないことを重く受け止め対応を急いでいる。国税庁では16日に臨時の全国国税局長会議が開かれ、今後の対応について議論された。会議では、職員の綱紀保持の徹底を図るとともに士気の維持に努め、適正な税務行政に対していささかの疑念も生じないよう厳正な執行を行い、国民の信頼確保に全力を挙げることを確認した。
問題のひとつは、今回の事件が収入の一部だけを申告する“つまみ申告”という単純な手口だっただけに、どうして税務署で分からなかったのか、OB税理士に対して特別な扱いをしているのではないかといった素朴な疑問である。このような簡単な手口での高額な脱税が4年間もばれなかった土壌を解明して、国民の疑問に答えることが税務行政に対する信頼回復の第一歩ではないのか。
まず、申告を受けていた税務署で脱税が分からなかった原因としては、1)大物OBなので税務署の幹部が特別管理していて精査しなかった、2)申告書と内部資料を突き合わせて疑惑を持った職員の報告に上司が目を瞑った、3)大物OBの申告書なので内部資料との突合せをしなかった、4)突合せをすべき資料情報がなかったなどが考えられる。1)と2)は、隠し通せるものではなくいつかは噂となってばれてしまうから可能性は低い。3)は、OB税理士に対して特別な扱いをしていたことになる。そうであれば、ことは簡単だ。
国税当局が一番恐れるのは4)のケースだろう。申告された所得が正しいかどうかは、支払調書等の資料情報と突き合わせればすぐに判明する。東京国税局の場合は、年間何千万枚に上る資料情報は千葉県や神奈川県等の資料情報センターでコンピュータに入力され、各税務署にデータとして送られる。しかし、余りにも資料情報の数が膨大なため、提出された資料を全て入力することは物理的に不可能らしい。もちろん、申告書の内容が不審で資料情報との突合せが絶対に必要であれば、つまりターゲットが絞られればその申告者に係る資料情報を集めることは可能だろう。ただし、少々の疑惑であって、その時点で突き合わせる資料情報がなければ処理は終了してしまうことがあるかも知れない。簡単な手口での脱税が長年露見しない原因がこの辺にあるとすれば、システム全体の欠陥ということになる。
これらの真偽に関しては、現在、検察が申告を受けた税務署の4代にわたる署長・副署長から事情を聞いているという。今後の検察・国税当局の原因究明で明らかになるのだろうが、事件の全貌に国税当局の落ち度といえる原因があったとしても全て公開して欲しいものだ。正すべきところは正すことが、税務行政の信頼を回復する早道ではあるまいか。
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