労働者を1人でも雇っている事業主は、原則として労災保険に加入する必要があるが、現在、労災保険の適用事業であるにもかかわらず、加入手続きを行わない未加入事業所は約54万件と推定され、制度の空洞化が懸念されている。そこで、厚生労働省は22日、11月1日から、労災保険未加入の事業主に対する費用徴収制度を強化し、自主的な加入手続きの促進を図ることを明らかにした。
費用徴収制度とは、事業主が労災保険の加入手続きを怠っていた期間中に労災事故が発生した場合、労働者やその遺族には労災保険が給付されるが、その給付金額の全部または一部を、事業主から徴収する制度。別途、さかのぼって保険料も徴収されることになる。現行では、こうしたケースでの事業主負担は4割だが、11月からは100%または40%を事業主から徴収するよう強化される。
具体的には、労災保険の加入手続きについて行政機関から指導を受けていたにもかかわらず、その後も加入手続きを行わなかった場合は、「故意」により手続きを行わないものと認定され、保険給付額の100%が費用徴収される。また、行政機関から指導を受けた事実はないものの、労災保険の適用事業となったときから1年を経過して、なお手続きを行わない場合には、「重大な過失」により手続きを行わないものと認定され、保険給付額の40%が費用徴収される。
今回の費用徴収制度の運用強化は、労災保険未手続き中の事故に対してより厳しい措置を講ずることにより、未手続き事業主の一層の注意を喚起して、自主的な加入手続きの履行を促進することを主眼としている。このため、厚生労働省では、運用強化に先立ち、全国的な広報活動を展開し、新たな費用徴収制度の周知と併せて、自主的な加入手続きの履行についての呼びかけを重点的に行う予定だ。