所得税と住民税を中心に個人所得課税は抜本的に見直される方向にある。雇用形態や家族構成の変化、2006年度からの三位一体改革での税源移譲に対応して、所得税・住民税ともに税率や控除などの課税構造を変える必要がある。税源移譲が実現すれば、基幹税としての地位がさらに失われる所得税の回復が急務であり、逆に基幹税としての役割が大きくなる住民税は独自の課税の仕組みを確立する必要がある。
最大の焦点は、所得控除をどうするかという点。基本的には、基礎控除は拡大するが、それ以外のものは極力なくす。まず、給与所得控除や退職所得控除がターゲットとなる。さらに、配偶者控除と扶養控除の統廃合も検討課題だ。基礎控除を拡大し、児童及び老齢の親族のみを対象とした扶養控除、または児童の扶養について税額控除する考え方がある。所得控除を、所得の水準に関係なく効果が出る税額控除に変えていく観点もある。
一方、これまで所得税にある主要控除を全部くっつけてきて “ミニ所得税版”といわれる住民税は、極力基礎控除を拡大しつつ、諸控除は廃止する。所得税は応能原則で、ある程度能力に応じ担税力に応じて課税するが、住民税は応益原則だから、地方公共サービスについて最低限多くの住民が広く負担すべきだという考えだ。だから、住民税は所得税と離れて独自の課税の仕組み作りを目指す。
これらの所得税や住民税の個人税制の抜本見直しの前提には、最大29万円の税額を控除する定率減税の廃止がある。石政府税調会長は「所得税というバケツの底に大きな穴があいているのに、(所得控除の見直しで)細々した小さい穴をふさいでも意味がない」と語る。個人所得課税の見直しは、定率減税の縮小・廃止、三位一体での税源移譲などをにらみ、2006年度から5~6年かけて実現したい考えだ。