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税務関連情報 (2007/11/19)

年金受給権への課税は二重課税にあらずと判決

 年金払生活保障特約に基づき、夫の死亡によって妻が死亡保険金とともに受け取った年金が雑所得かどうかで争われた事件で福岡高裁は、二重課税にあたると指摘して納税者の主張を認めた原審の長崎地裁判決を否定し、国側勝訴の逆転判決を下した。この事案は、保険事故に基づいて妻が受け取った年金払保障特約年金に対して、原処分庁が雑所得と認定してきたため、納税者が二重課税であると主張してその取消しを求めたもの。

 原審の長崎地裁は、年金受給権もみなし相続財産として相続税法上も評価されているとした上で、さらにその上に個々の年金に所得税課税することは二重課税になるとも指摘し、納税者の主張を全面的に認める判決を言い渡した。年金は雑所得ではなく所得税の非課税所得なのだから二重課税にあたるとの判断だ。そのため、判決内容を不服とした国側が、その取消しを求めて控訴していた。

 控訴審の福岡高裁は、妻が受け取る年金は10年間、保険事故発生日の応答日に年金受給権に基づいて発生する支分権に基づく最初の現金というべきものであると認定。その結果、年金は年金受給権とは法的に異なるものであり、夫の死亡後に支分権に基づいて発生したものであるから、相続税法上の保険金には該当せず、所得税の非課税所得にも該当しないことから、年金にかかる所得は所得税の課税対象になると判示している。

 また、税制調査会の1963(昭和38)年12月6日の答申を引き合いに、立法当時、生命保険契約に基づく死亡保険金として支払われる年金について所得税の課税が予定されていたということができるとも指摘。さらに、年金受給権の取得に相続税を課し、個々の年金の所得に所得税を課することを二重課税ということはできないとも判示した。これを受けて納税者側は上告したようだが、最高裁の動向が注目されるところだ。