政府税制調査会の金融小委員会は金融所得課税の一体化についての検討結果をまとめ15日の税調総会に報告書案として提出する。損益通算できる金融商品の範囲を、現行の株式や投資信託の一部から社債・預貯金などに段階的に拡大していくことが柱だが、そのなかで投資家が意図的に損失を出して税金を減らすことを防ぐために、預貯金利子などと相殺できる株式などの売買損失額に上限を設けるという。
だが、投資家は誰も望んで損失を出したいわけではなくて、投資の結果として損失が発生してしまったのである。税金を減らすためにわざわざ損失を出すわけではないのだ。また、意図的でない損失の処理はありえまい。いつ損失を実現するかは投資家の判断であって、一方で譲渡益があれば損益通算することによって税金を減らすことは当たり前の経済行為ではないのか。
そもそも、損失が出るかもしれないリスク投資に対し、他の金融商品から発生した利益と通算してトータルでの税額が計算できるという救済措置を設けることによって、預貯金などのリスクの低い金融商品よりも不利にならないようにする。それが、「貯蓄から投資へ」というリスク資産への投資を促すための金融所得課税の一体化の目的であるはずだ。
そうであるならば、「意図的に損失を出すことを防ぐ」というもっともらしい理由で損失額に上限を設けることは制度の趣旨に反するものではないだろうか。損益通算に上限額を設ける背景には、税収が大きく減少する可能性への対応があるのだろうが、目先の小益にこだわり大益を失う恐れがある。リスク資産への投資を促進することは、わが国経済活性化につながる。つまらぬ小細工で制度の真の狙いに水を差してほしくないと思うのだが…。