税 務 関 連 情 報

2003年05月19日-002
今年が最後になるのか“長者番付”

 今年も16日、2002年分の確定申告で所得税額が1千万円を超えた高額納税者を公示する、いわゆる“長者番付”が、全国の524税務署で一斉に公表された。今回の公示対象者は、今年3月末までに確定申告で納税した約686万8千人のうちの1.1%に当たる7万5375人。公示基準がそれまでの所得金額1千万円超から現行基準に改正された83年分以降最低だった99年分の7万5255人に次ぐ2番目に少ない人数だった。

 ところで、この所得公示は、プライバシー保護などの観点から廃止される方向にある。昨年11月に公表された政府税制調査会の2003年度税制改正に向けた答申のなかで、「今後、制度の廃止を含めて検討する必要がある」と明記された。2003年度税制改正においては実現しなかったものの、引き続き廃止に向けた議論が行われることは間違いない。今年の公示が最後になる可能性もなくはない。

 廃止を検討する理由として、この制度が50年に導入された当初の「第三者による脱税のけん制効果」という役割は終わったとの見方や、“長者番付”に載ったことで、団体・企業からの寄付の強要や営業攻勢、各種勧誘、犯罪や嫌がらせの誘発の要因となり、プライバシーへの配慮の観点からは問題が多いことなどが指摘されている。

 第三者による脱税のチェック機能に関しては、公示対象が3月末までの申告納税者であることに着目して、当初は所得税額が1千万円を超えない所得で申告し、4月1日以降に修正申告する、いわゆる“公示逃れ”による制度の形骸化が指摘されている。修正申告は公示義務がないため、公示されたくない人には格好の裏わざとなっている。

 このようなことから、本来の目的よりもプライバシーの観点からの弊害が大きいとの批判が強くなっており、廃止へ向けた議論が浮上しているわけだ。しかし、大多数の庶民にとって、毎年5月にマスコミが公表する芸能人やスポーツ選手、文化人などの“稼ぎぶり”は、格好の“酒の肴”。5月の風物詩がなくなることには一抹の寂しさがあることも否定できないようだ。

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