役員退職金の損金算入時期に注意!! とはいっても、通常の一括支給の場合はあまり問題にならないが、注意したいのは退職年金として支給する場合だ。企業によっては、資金繰りの関係で役員の退職金を一括で支給せずに、年金方式で支払うところも少なくない。この場合、その年金総額を一括して損金算入することは認められず、それぞれの年金を支給すべきときの損金の額に算入することになる。
つまり、退職年金は、原則、退職時において未払計上してもその額を損金算入できないことになる。退職金の分割支給の場合は、退職金が確定した事業年度において翌期以降に繰り越される退職金を未払計上することで、一括して損金算入できるが、役員の退職年金は、これと同様ではないので注意を要するところだ。これに対し、役員退職金を一括支給する場合の損金算入時期は柔軟性がある。
役員退職金は通常、株主総会の決議をもって支給されることになるが、会社によっては、株主総会の決議を経る前に確定した時点で支給を行うところもみられる。この場合に気になるのは、法人税法上の損金算入時期だが、法人税法上、役員退職金は「支給額が確定した事業年度」または「支出を行った事業年度」において、損金経理を条件に損金に算入することが認められている。
すなわち、役員退職金の損金算入は、株主総会の決議により支給額が確定した日を含む事業年度、あるいは現実に支払った事業年度のいずれで行ってもよいわけだ。この場合、株主総会の決議と現実の支給の“順番”は問われない。たとえ、最初に支給した後、事後承認の形で株主総会において決議を行ったとしても、現実に支給された事業年度において損金算入することができる。