税 務 関 連 情 報

2003年11月14日-001
海外在住の娘への金銭送金は手続をもって贈与成立

 父親が生前に、海外に住み外国国籍を持つ娘にした海外送金が、相続税の課税価格に加算されるか否かが争われた裁判が昨年9月に東京高裁であった。海外への金銭の送金における贈与の時期の判断基準を初めて示したものとして国税庁がこのほど公表したものである。判決では、送金手続が完了した時点で贈与が成立しており、送金時点では国内財産となるから相続税の課税価格に加算すべきだとの判断が示された。

 この裁判のポイントは、父親が生前に海外在住の娘名義の海外銀行の預金口座に送金した2000万円が取得時点で国内財産であったかどうかにある。つまり、贈与契約が海外送金以前に成立していたか否かという点にある。父親は、送金した日から3年以内に死亡しており、娘は当初、相続税の申告において、相続開始前3年以内の贈与として相続税の課税価格に加算して申告した。

 ところが娘はその後、それは誤りだったとして更正の請求を行ったが、認められなかったため訴訟を起こしたもの。一審の東京地裁では、父親の一方的な意思により送金したもので、送金前に贈与契約があったとは推測できないとの理由から、娘側の主張を認め、相続税の課税対象にはならないと判断している。

 二審の東京高裁では、親子間とはいえ2000万円もの現金を一方的に送金するとは考えにくく、贈与契約はあったと一審判決を覆した。さらに、海外在住者に金銭の贈与を約束し、送金のために海外電信送信の手続きをとった場合は、受贈者がその金銭を現実に入手するまでもなく、送金手続が完了した時点で贈与が履行されたものと考えるべきとの判断を示した。なお、この裁判は、今年2月の最高裁において娘の請求が棄却され確定している。

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