不正軽油は悪質な脱税行為であるとともに大気汚染の元凶となっているため、東京都では2000年の撲滅作戦開始以来、様々な取組みを行っている。具体的には、都内で走行あるいは作業するディーゼル・エンジン搭載の車両等から燃料である軽油が不正にA重油などを混和させていないかを燃料タンクから抜き取って調べたうえ、不正軽油には課税したり、入手経路を追跡して製造販売業者等の摘発などにつなげている。
東京都がこのほど発表した「不正軽油撲滅作戦の2008年度の実績と成果」によると、2008年度は、07年度を1000本近く上回る8343本のサンプルを採取したが、そのうち混和があったのは28件(都内ナンバー6件、他県ナンバー13件、重機等9件)、全体の0.3%にとどまった。混和検出率は、都内ナンバーが0.2%、他県ナンバーが0.5%と過去最低の水準となり、これまでの撲滅作戦の成果が顕著に現れた結果となった。
作戦初年度の2000年度の混和検出率が14%だったことに比べると大きく低下した。2008年度の課税件数は前年度から半減の6件、課税額も同71.5%減の1887万円と大幅に減少し、取組みの効果を如実に示している。2008年度に都が実施した軽油の抜取調査は、4回にわたる都内の一般道の路上を始め、高速道路のパーキングエリア・サービスエリア、工事現場、貯油施設、市場、埠頭、採石場など多くの場所で行われた。
軽油引取税は、1リットルあたり32.1円が課されており、税率が低い他の燃料油と混和すると“うまみ”があることから、かつては脱税が後を絶たなかった。他方、不正軽油撲滅には環境汚染の防止という効果もある。不正軽油そのものが大気汚染を引き起こすとともに、混和の過程で発生する硫酸ピッチの不法投棄事件が後を絶たず、それも自治体の悩みのタネだった。こうした自治体の悩みが撲滅作戦により解消されつつある。