中小企業の事業承継を円滑化するため、2007年度税制改正において相続時精算課税制度を拡充した特定非上場株式贈与の特例が創設されるが、現在、国会に上程中の税制改正法案によると、適用要件として、年間贈与額の合計が500万円以上との要件があることが明らかになった。また、自社株贈与特例では、父母両方から贈与を受けた場合、片方しか適用されないケースがあることも分かった。
自社株贈与特例は、2007年1月1日から2008年12月31日までの間に、中小オーナー経営者が、自社株式を後継者である子どもに贈与する場合、親である贈与者の年齢要件を60歳に引き下げ、非課税枠を3000万円に引き上げるもの。ただし、贈与時点では発行済株式等の総額が20億円未満の会社が対象で、また、受贈者が代表者かつ株式等50%超保有となるなどの要件を、特例選択後4年経過時点で満たす必要がある。
また法案では、贈与者にも受贈者と同じように、自社の、1)代表者で、2)発行済株式等の50%超を保有し、3)議決権の50%超を有するという適用要件が付された。このことから、相続時精算課税制度では父母両方からの贈与も認められるが、自社株贈与の特例では、父母両方から同一の自社株式を贈与される場合には必然的にどちらか一方の贈与にしか同特例の適用はないことになる。
例えば、父が経営する会社の株式を父が60%、母が30%持っていたケースでは、父しか50%超という要件に該当しないため、母からの贈与は特例の対象とはならないことになる。ただし、母からの贈与は従来の相続時精算課税制度(非課税枠2500万円)を利用すれば負担なく贈与できよう。また、母が自社株を50%超保有する別会社を経営している場合であれば、その会社の株式の贈与は特例の対象となる。