遠隔地の大学病院でなければ治療ができない難病にかかった人が、主治医の指示によりその大学病院で治療を受けることになった場合の自宅と大学病院の間の旅費は、医療費控除の対象となる。もちろん、病状からみて近隣の病院でも治療できるときに、あえて遠隔地の病院で診療を受ける場合の旅費は認められない。ところで、外国の病院で治療を受ける場合の費用は、どの範囲まで医療費控除の対象となるのだろうか。
最近では台湾やハンガリーへの「歯治療ツアー」や中国への「針灸治療ツアー」など外国の病院で治療を受ける人も少なくないが、まず、治療費等については、外国の医師等による診療や医薬品代の対価も医療費控除に該当する。医療費控除の対象は、「医師または歯科医師による診療または治療の対価」と規定されているだけなので、国内だけでなく、外国の医師等による適切な診療や医薬品代の費用も含まれる。
一方、医師等による診療等を受けるための通院費も、医師等による診療等を受けるために直接必要なもので、かつ、通常必要な費用であれば医療費控除の対象となる。しかし、医療費の範囲は「病状に応じ一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額に限られる」とされていることから、渡航費用(航空料金)については、同じ治療が国内でも受けられる場合は認められない。現地でのホテル代や食事代なども対象とはならない。
ただし、海外でしか医療方法がない15歳以下の心臓移植手術をはじめ、国内では治療できない難病の治療のために海外渡航する場合は、上記の難病のために遠隔地の病院で治療を受けざるを得ない場合に必要な旅費が医療費控除の対象となるのと同様に、その渡航費用を医療費控除として認めているようだ。