来年度税制改正に向けた政府税制調査会の答申は大増税時代の幕開けが鮮明となった。危機的な状況にあるわが国財政の健全化に本格的に取り組むためには、税負担増は避けて通れないことが明記された。定率減税の廃止、諸控除の見直しなど所得税の抜本的改革、消費税率引上げに向けた本格的な議論の開始と、増税路線は続く。改めて、なぜ今増税が必要なのかという問いに、石弘光税調会長が答えている。
それは、国民の側からみて、公共サービスなどで受け取っている受益と国民が(特に税で)負担すべきものとのギャップがあまりにも開きすぎた結果、財政赤字が大きく膨らんで、いつまでも放置できない状態になった。だから、歳出を削減し税負担を引き上げることと両方あいまって、このギャップを埋める必要がある。受益と負担のギャップの縮減が、歳出削減を前提とした増税の必要性だと説明している。
この状態を先送りすればするほど負担は膨らんでくるから、負担を平準化させて、毎年できる範囲で景気に配慮しながら本格的に財政健全化に取り組んでいく考えだ。今後は減税という行為はないと明言し、政府がお願いして増税するのではなく、「国民の側からみて、自分で負担しない限り、この日本国は持たないよという感じが一番いい」と増税せざるを得ないことへの理解を強く求めている。
その上で石会長は、負担増に対する国民の理解を得る決め手として「負担増への見返りとして何がくるかということを明確に提示する、長期的にしっかりした青写真を作って国民に訴えることだ」と提案している。確かに、全体像が見えてこないと不安が膨らむが、もうひとつ、前提である歳出削減の姿も不透明といえまいか。我々が増税路線に耐え得る青写真と具体的な歳出削減の進み具合の提示、この2つを強く求めたい。