景気は製造業を中心に回復しているが、非製造業に関しては出遅れ感が否めない。今回の景気回復の強さや今後の持続力を見極めるうえでは、非製造業部門、特に中小非製造業が回復するかどうかは非常に重要なポイントになる。として、中小非製造業の回復のカギを探るのは第一生命経済研究所の客員研究員・橋浦隆一氏のコラムである。
コラムによると、今回の大企業中心の景気回復を特徴づけると、1)輸出系製造業の活況、2)雇用慣行・取引先との条件見直しによるコスト削減などだが、中小企業にとっては、このような大企業的な調整が収益回復に結びつく度合は小さい。1)の恩恵を享受できる要素は低く、家族的なさまざまな人縁地縁で結びついている中小非製造業にとって、2)は実効効果が小さい。
そこで、別の観点からみると、中小非製造業の景況感が改善しないのは、建設、小売、サービスの3業種の低迷が大きく影響している、すなわち政策不況的な要素が強いことに気づく。建設業の低迷は公共投資の大幅削減と競争促進策であり、小売、飲食サービスの低迷には自由化が影響している。これらの業種は効率性が劣る業種であり、競争に耐えられない業種は淘汰されても仕方がないとの議論もまかり通る。
確かに、経済の効率化のために自由化や競争促進策は不可欠だが、それを需要が圧倒的に不足するなかで推し進めればデフレ圧力になる可能性が高い。ところが、国や地方自治体はこの時期に構造改革を行っており、中小非製造業の低迷にはこのような要因も大きく影響していることを忘れてはならない、と指摘する。
もちろん、企業努力は不可欠であり、他社と差別化できない企業が生き残れないのは当然だが、政策として企業の淘汰を後押しするという考え方が、個別業種や個別主体の効率化ではなく、経済全体の効率化にプラスになるのか疑わしい。そもそも、供給面でのネックがあるときに自由化による効率性を議論することは大いに意味があるが、現局面で議論することにどれほど意味があるのか、と疑問を呈している。