ゼイタックス

経営関連情報 (2003/12/03)
中小企業も決算書を公開する時代(7)

 ~貸倒引当金は、どのように取り扱うか?

 貸倒引当金とは、金銭債権に対して取立不能見込額を見積もった場合に、貸借対照表上に記載される金銭債権の評価勘定としての引当金をいう。金銭債権について、取立不能のおそれがある場合には、取立不能見込額を貸倒引当金として控除しなければならない。

 取立不能見込額については、原則、個別の債権ごとに評価する。しかし、特定の種類の集団的な金銭債権については、過去の貸倒実績率等に基づき一括で評価することも、それが適正かつ合理的である限り、認められる。

 貸倒引当金の算定方法については、法人税法に詳細な規定があるが、それらも参考にしつつ、商法の規定の枠組みのなかで算定方法を選択することが適当だ。

 「個別評価する金銭債権の取立不能見込合計額」+(「一括評価する金銭債権」×「貸倒実績率等」=「貸倒引当金」

 金銭債権に対する貸倒引当金を計上しないと、自己資本が過大に表示されていることになる。例えば、金銭債権100で本来貸倒引当金として控除すべき額80がありながら計上せずに資本200とされている場合、本当の財政状態は、貸倒引当金80を控除して資本は120であり、これが正しい自己資本の表示となる。

 最後に、金銭債権と貸倒引当金の具体例を眺めてみよう。甲社(小売業)の貸借対照表上から金銭債権を合計すると、売掛金250、受取手形150、未収金300、短期貸付金400の計1100万円だった場合で、売掛金のなかに個別評価による取立不能見込額が90万円あったと想定する。

 このケースでは、「取立不能見込額90万円」と法定繰入率による計算「(金銭債権1100-90)×1/100‡?10万円」を合計した100万円を、金銭債権1100万円に対する貸倒引当金として計上する必要がある。なお、法定繰入率は、卸・小売業は1.0%だが、製造業0.8%、金融保険業0.3%など主たる業種によって異なる。

(続く)