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税務関連情報 (2004/12/01)

弁護士が支出した大学院の授業料は必要経費にあらず

 弁護士が支出した大学院の授業料は必要経費となるのか。弁護士Aが、大学院の修士及び博士課程の授業料と米国大学ロースクールへの寄附金は弁護士業務を行ううえで必要な支出であるとして必要経費に算入して申告したが、税務署は認めず過少申告加算税を課したため、それを不服として国税不服審判所に審査請求した。しかし、Aの主張は認められなかったという事例が、注目すべき裁決(審判所の判断)としてこのほど公表された。

 審判所は、修士及び博士課程の専攻は、Aの営む弁護士業務と関連性があることは認められるものの、むしろAの自己研鑽のため進学したものと認めるのが相当で、また、寄附金の支出は、Aの善意的心情からのものと認められ、いずれも業務を行ううえで直接かつ通常必要なものとは認められないとした。事業所得を生ずべき業務について生じた費用ではないから、必要経費とすることはできないとの判断だ。

 これは、個人事業者が支出する費用が業務を行ううえで必要かどうかの判断においては、単に主観的な判断だけではなく、直接かつ通常必要なものとして客観的に必要経費として認識できるものという厳格性が求められるということだ。所得税法では、必要経費としての性質と家事費としてのとしての性質をあわせもつ家事関連費は原則として必要経費にはできないこととされている。

 ただし、家事関連費の主たる部分が事業所得を生ずべき業務を行ううえで必要であり、かつ、その必要な部分を明らかに区分できる場合、または取引の記録などに基づいて、業務を行ううえで直接必要なことが明らかにされる場合に限り、事業所得の金額の計算上必要経費に算入することを認めている。今回のケースの授業料は、家事関連費であるともいえるが、いずれの場合にも該当しないと判断されたわけだ。

 本事例の詳細は↓
 http://www.kfs.go.jp/service/JP/66/10/index.htm