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適格退職年金契約の解除一時金の税務上の取扱い

税務関連情報 - 2009年05月08日

 福岡国税局はこのほど、適格退職年金制度から企業型確定拠出年金制度へ移行した際の解除一時金を退職所得とする某企業からの照会に対し、一時所得に該当するとする文書回答を行った。照会によると、適格退職年金を廃止し今年4月に企業型確定拠出年金へ移行することにしたが、就業規則により定年を従業員が60歳に達した後の最初に到来する3月末日と設定しているため、今年4月に定年を迎える従業員の退職日は22年3月となる。

 一方、確定拠出年金法では、適格退職年金制度から企業型確定拠出年金制度に移行する場合、制度の導入月に資格を喪失した者(60歳)は加入者となれないため、企業型確定拠出年金の個人別管理資産として移換される額が、解除一時金として資格得喪者に支払われることになる。また、適格退職年金契約に基づき支給される一時金であって、退職により支払われるものは「みなし退職所得」とされている。

 本件では、一時金の支給から退職までの間が11ヵ月も空いているが、(1)解除一時金の受給者は、制度移行日の属する月に60歳に達する者で、かつ、就業規則に基づき退職する者であること、(2)資格得喪者に支払われる解除一時金は、引き続き勤務する者に対して支払われる打切支給の退職金ではなく、退職予定者の過去の勤務に基づく対価として考えられることなどから、退職所得として差し支えないのではないかとの照会をしている。

 この照会に対して福岡国税局は、まず資格得喪者に支給される適格退職年金の契約の解除一時金は確定拠出年金制度への移行に基因して適格退職年金契約が解除され支給を受けるものであるとし、資格得喪者の退職日が解除一時金の支給を受けた年の翌年であることから、管理支配基準の観点から退職日前に解除一時金に係る所得が実現していることは否めないとの見解を示している。

 そして、退職に基因しない適格退職年金契約の解除一時金となることから、所得税法に規定する「一時所得」であると結論付けている。ただし、確定拠出年金制度移行後であっても、本件資格得喪者のみを対象とする適格退職年金契約を継続して、本件資格得喪者の退職に伴い一時金が支給された場合には、「退職所得」として取り扱っても差し支えないとの見解も合わせて明らかにしている。