財政再建に向けて政府は2010年代初頭における国と地方のプライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化の達成を掲げている。プライマリーバランスとは、「借入を除く税収等の歳入」から「過去の借入に対する元利払を除いた歳出」を差し引いた財政収支のことをいう。その黒字化のためには、将来的に消費税をはじめとする増税による税収増が避けられない状況となっている。
そこで、消費税増税に向けた課題として、税率の引上げはあくまでも社会保障制度改革と一体となって検討すべきことを挙げたのは、ニッセイ基礎研究所(篠原哲氏)のレポートである。レポートは、まず税率引上げに際し、経済動向への配慮という観点を重視すること、デフレや景気の状況、他の税制改正による影響も見極めながら、引上げの規模とタイミングを検討していくというスタンスを求めている。
また、いうまでもなく歳出部門の全般にわたる無駄を見直す必要性を挙げ、社会保障給付の増加が財政赤字の主な拡大要因となっていることから、給付の抑制を進め、歳出規模の増加に歯止めをかけていくことも不可欠だとしている。特に社会保障給付の財源として、消費税を直接充てるのであれば、税率の過度な引上げを防ぐためにも、国民が耐えられる負担水準のなかで社会保障給付を実施していくという視点が重要だと指摘する。
さらに、消費税率の引上げの問題は、決して財政赤字の縮小という観点だけで完結するものではなく、社会保障制度など他の制度とも密接に関連した問題であると指摘。このため、引上げに向けては、経済動向への影響にも考慮するとともに、今後の社会保障制度のあり方も含め、税と社会保障制度を一体的に捉えた検討を進めていく必要がある、というのが本レポートの主張である。
同レポートの全文は↓
http://www.nli-research.co.jp/doc/ke0502.pdf