2003年10月03日-002
「ホテイチ」にみるデフレ下個人消費に変化の兆し
イラク戦争やSARSの影響による外国人宿泊客の減少、企業によるセミナー需要減少と、日本のホテル業界を取り巻く環境は厳しい。このような苦境の中、最近「ホテイチ」という言葉が登場している。ホテイチとは、ホテルの1階、ホテルオリジナルの持ち帰り惣菜店のこと。このホテイチをテーマに、デフレ下の個人消費に変化の兆しをみるのは東京商工リサーチのトレンド経済レポートである。
レポートによると、昨年はホテルオークラ・都ホテル大阪がテークアウト売り場を設けたほか、今年に入り、帝国ホテルも改装・新設、リーガロイヤルホテル・赤坂プリンスホテルなどもホテイチを強化して、不振の宴会部門をよそ目に、年商8億円、前年度比88.4%増(ロイヤルホテル)の健闘をみせている。
高級ホテルのホテイチの一般的傾向は、昼は凝ったサンドイッチセット、夜はロースとビーフやエスカルゴなどの高級惣菜を1品1000円程度で提供する。館内で飲食するのに比べて約半額とかなり安い。ただし、百貨店地下の惣菜売り場「デパ地下」よりは高めだ。主な客層は、味や素材にこだわる主婦やOLたち。「家庭で少しだけリッチに」という消費行動がホテイチ健闘の背景にある。
もっとも残念ながら、ホテイチの属する外販事業部門はホテル収入全体に占める比重が小さく、売上の減少分を補う規模には到底なり得ない。しかし、ホテイチには個人消費の変化の兆しがみられる。ホテイチは、消費者のニーズを見極め、自らの優位性を打ち出したマーケティングの成功ともいえる。
女性・シニア、これまでターゲットではなかった客層、健康関連等新しい分野にニーズを見出し、各企業とも個人消費を誘引しようと知恵を絞っている。ホテイチを始め、高級ホテルのレディスプラン・カリスマ美容師・高級海外旅行・エステティック・健康食品などなど、不況といわれても支出を惜しまない傾向もみられる。日本の個人消費は、不況による消費の節約といっても、何らかの変化の兆しがみえるのである。
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