野村総研が、今年8月から9月にかけて東証一部・二部上場企業を対象に実施した「役員処遇に関するアンケート調査」結果(有効回答数256社)によると、全役員または一部の役員を対象とした業績連動型報酬制度については、59.0%の企業が「制度の仕組みがある」と回答し、その割合は年々増加傾向にある。一方で、退職慰労金制度を廃止する企業が増えており、役員層にも「成果主義」が浸透しつつある傾向がみられる。
役員退職慰労金制度については、「制度がない」(3.9%)、「最近廃止した」(37.5%)と回答した企業が計41.4%にのぼり、昨年度調査を14ポイントも上回った。さらに、同制度を維持している企業でも、約半数が「制度改訂を予定」(9.3%)、「検討している」(40.0%)ことが分かった。企業のコーポレートガバナンスへの意識の高まりに伴って、役員報酬制度の見直しが加速しつつあることがうかがえる。
役員に対する「成果主義」の浸透に伴い、役員に対する能力開発支援については、「マネジメント能力のアセスメント(役員の適性診断や診断結果のフィードバック)」の制度がある企業の割合は、現在6.6%だが、「今後用意したい」と回答した企業は28.1%にのぼった。また、「エグゼクティブ・コーチング(役員向けの外部コーチの活用)」についても、現在制度がある企業は9.0%だが、「今後用意したい」企業は24.6%だった。
日本企業では従来、役員候補人材に対して、長い時間をかけてキャリアステップを踏ませながら会社やグループの価値観を共有させ、経営に必要な知識やスキルを培ってきた。しかし、役員の早期登用や外部からの登用が進んでいるなかで、役員になってからも適切な経営判断をするための能力開発を支援する仕組みが不可欠であると、多くの企業が認識しつつあるようだ、と野村総研はみている。