政府税制調査会は、個人所得課税の抜本改革のなかで、フリンジ・ベネフィット課税の非課税範囲を見直す作業に着手する。フリンジ・ベネフィットとは、会社が役員や従業員に対して支給する給与以外の現物などの形で与える経済的利益である。所得税法では、給与は金銭支給が原則だが、雇用関係に基づいて受けた「物または権利その他の経済的利益」についても基本的に給与所得の収入金額として取り扱う。
ただし、一定範囲の経済的利益については「非課税」または「課税しなくて差し支えない」こととされている。「非課税」とされる代表例は、一般の通勤者に通常必要であると認められる一定額(月額10万円)までの通勤手当だ。そのほか、仕事の性質上制服の着用が必要な人に支給される制服や、給与所得者(役員を除く)に対する住宅の購入資金の低利融資等による利益などが「非課税」とされている。
また、「課税しなくて差し支えない」ものとして、通達では、1)使用者から支給される結婚・出産などの祝金品で、その金額が社会通念上相当と認められるもの、2)勤続期間等に照らし、社会通念上相当と認められる永年勤続者の表彰記念品等、3)社会通念上一般的に行われているレクリエーション行事の費用を負担したことによる経済的利益、4)一定要件を満たす食事の支給、などを掲げている。
このような通達での判断の大きな要素に「社会通念」があるが、政府税調では、その「社会通念」が5~6年前の通念と今の通念では非常に変わってきたという認識がある。また、最近では、大阪市をはじめとする自治体の職員厚遇が次々と露呈し、「フリンジ・ベネフィットの範囲を自分勝手に規定し、お手盛りで支給している」との批判が強まっている。このようなことから、フリンジ・ベネフィット課税の見直しに着手する考えだ。