世界的な経済危機が深刻化し、企業の収益環境の悪化や個人消費の伸び悩みが続くなか、通信業界の事業再編や金融業界の経営統合が話題になるなど、多くの業界で再編が活発化している。帝国データバンクが4月下旬に実施した「業界再編に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万945社)によると、2008年度の業界再編について「進展している」と認識している企業が20.6%で、全体の5社に1社となった。
一方、業界再編(合併や事業譲渡、業務提携など)が「進展していない」と認識している企業は59.4%となり、6割近くの企業が業界再編に進展がみられないと回答。業界別にみると、「進展している」とした企業割合は、「金融」(40.9%)、「小売」(40.8%)が高く4割を超えた。逆に、「進展していない」とした企業は、「建設」(71.0%)が7割を超えたほか、「製造」(60.5%)、「運輸・倉庫」(60.1%)が多い。
業界再編が事業拡大や多角化など「積極的な再編と思う」とした企業は3.5%に過ぎず、逆に、生き残る上でやむを得ない統合など「防衛的な再編と思う」が25.3%となった。「両方」という回答も19.5%あり、何らかの形で「防御的側面あり」と認識している企業は44.8%に達している。「防衛的側面あり」とする企業を業界別にみると、「小売」(52.4%)、や「金融」(52.3%)など、ここ1年間で業界再編が進んだ業界ほど多い。
今後の業界の再編については、45.5%の企業が「進展する」と回答。業界別にみると、「金融」(61.4%)と「小売」(61.2%)が6割を超えたほか、「卸売」(52.2%)も半数を超えた。一方、「進展しない」との回答は33.8%となった。業界別では、「建設」が48.4%でもっとも高い。これまでの業界再編の進展度別にみると、「進展している」と回答した企業の90.3%が今後も「進展する」と回答、さらに再編が進むと考えている企業が多い。
自社が属する業界再編の理由(複数回答)は、「市場の縮小」(45.1%)と「価格競争の激化」(42.8%)が二大理由となった。特に「建設」は「市場の縮小」が51.8%と、国による公共事業の削減や脱談合の流れのなかで、厳しい市場環境を反映。また、「小売」は「価格競争の激化」が55.8%と、所得・雇用環境の悪化による消費者の低価格志向の高まりもあり、低価格戦略とともに規模の経済性を求める企業が業界再編を促している。
同意識調査結果の詳細は↓
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/keiki_w0904.pdf