法人税の調査で問題となる典型的なもののひとつに、収益や費用が期間に対応していないいわゆる“期ズレ”がある。本来翌期の費用とすべきものが当期に計上されているケースなどだ。法人の支払った費用は、原則として経過分と未経過分に区分経理する必要があるが、支出効果が1年以内の短期前払費用は、継続的な処理を条件に、区分経理せずに支払った事業年度の損金とすることが認められている。
ほとんどの企業は設立月と決算月は同じではないため、最初は1年に満たない決算期が生じるが、例えばそこで火災保険に加入したとしよう。火災保険料の支払いは通常年単位で行うが、年度の途中で加入したため、事業年度と保険期間にズレが生じることになる。この場合でも、「支払った日から1年以内に提供を受ける役務」の費用の前払いは、期末に未経過分も含めて、全額を支出時の損金とすることできる。
ほかにも、9月決算法人が9月末に前払いした翌期1年分の家賃や1年分の定期券の購入費用、1年分の借入金の利子の支払いなど、支出効果が1年以内の費用であれば、すべて短期前払費用となる。ただし、あくまでも継続的な処理が条件となる。これは、利益調整を防ぐためのものだ。利益があるときだけ適用するといったことは認められず、その期の損益に関係なく常に前払処理する必要があるわけだ。