野村総研が実施した「金融危機が個人金融資産に与えた影響に関するアンケート調査」結果(有効回答数1472人)によると、昨年9月から今年3月までの半年間で1億円以上5億円未満の金融資産を持つ「富裕層」の資産が31%減少した。「マス層」(3千万円未満)は16%、「アッパマス層」(3千万円以上5千万円未満)は19%、「準富裕層」(5千万円以上1億円未満)は29%、「超富裕層」(5億円以上)は27%、それぞれ減少している。
このように、金融資産5億円未満の層では、資産額が多いほど金融危機によって受けたダメージが大きい。また、すべての階層において、金融危機前に実施した調査よりも現金・預貯金の比率が上昇。特に超保有層では、2007年に保有金融資産の23%だった現金・預貯金の比率が、2009年3~4月には37%にまで上昇している。この背景には、株式や投資信託など、現金・預貯金以外の金融資産の時価評価額が下がったことなどがある。
2008年9月以降に生じた金融資産の管理・運用に関する考え方の変化では、「元本割れする可能性のある金融商品のリスクを以前よりも気にするようになった」とする割合が、いずれの階層も50%以上と高く、金融危機によって資産運用の安全性が重視されるようになったことがうかがえる。特に、アッパマス層(80%)、準富裕層(74%)、富裕層(73%)において、いずれも70%以上とその傾向が強く出ている。
自分で管理・運用する金融資産状況に関連して、2008年8月以降に生じた、金融機関の担当者による説明や対策についての不満の有無は、「フォローに不満な金融機関がある」との回答が、マス層では約3割、アッパマス層で半数あり、特に準富裕層以上の各階層では7割以上となった。不満の内容に関しては、マス層・アッパマス層では「連絡や訪問がなかった」や「具体的な対策や運用方針のアドバイスがなかった」が挙げられた。
また、準富裕層以上では「経済や金融商品の動向に関する専門的な知識が不足していた」といった項目が上位に挙がり、野村総研は、金融資産階層によって、必要とされるフォローの仕方が大きく異なり、金融機関にはさらなるサービスの改善が求められると指摘。また、金融機関は、今回の金融危機で生じた顧客からの期待の変化を的確に捉え、真摯に対応していく必要があるとしている。
同アンケート調査結果は↓
http://www.nri.co.jp/news/2009/091015.html