いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものは強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。近年はバブル崩壊後の景気低迷、低成長の影響からか脱税額も小粒化傾向が続いているが、国税庁が20日に公表した今年3月までの1年間の2004年度査察白書によると、査察で摘発した脱税総額は前年度を54億円下回る282億円と小粒化がさらに鮮明となった。
一方で、大口・悪質として検察庁に告発された件数は、2000年度以降最多の152件(前年度147件)にのぼった。2004年度1年間に全国の国税局が査察に着手した件数は210件(同201件)、継続事案を含む213件(同202件)を処理し、うち71.4%(同72.8%)にあたる152件を検察庁に告発した。つまり、査察の対象になると、約7割は実刑判決を含む刑事罰の対象となるおそれがあるということになる。
告発分1件あたりの脱税額は前年度より4600万円少ない1億6200万円だった。告発事件のうち、脱税額が3億円以上のものは前年度より4件少ない17件、5億円以上では同9件少ない6件と、大口事案が大幅に減少している。この結果、2004年度の脱税総額282億円は、ピークの1988年度(714億円)に比べ約4割にまで減少している。
告発件数の多かった業種(5件以上)は、健康食品関連を含む「飲食料品小売業」が11件でもっとも多く、次いで、床下点検をして床下換気扇や耐震補強具の取付販売を行う点検商法関連が中心の「機械器具小売業」、「パチンコ」、「医療業」が各8件で続いた。脱税の手口では、飲食料品小売業や機械器具小売業では架空原価や架空人件費の計上、パチンコ、キャバレー・飲食店、建設業では売上除外、医療業では売上除外や架空経費の計上が多くみられたという。
また、脱税で得た現金・割引債などや脱税工作に使った印鑑・金庫の鍵などの隠し場所は、自宅洗面所の鏡の裏側の壁を切り抜いた内側、自宅洋間のクローゼット内に設置された衣類吊り下げ用の金属パイプのなか、自宅台所の冷蔵庫のチルド室内の製氷皿の中など様々だった。また、着衣のポケット内に、重要記録が保存された小型のメモリーカードを隠していた事例も報告されている。