ゼイタックス

税務関連情報 (2004/11/26)

広域的事業・海外取引・ITなどに着目した法人調査

 近年の厳しい財政事情のなかで国税職員の定員は純減を続けている。対して増加する納税者を限られた人員で調査するためには、社会経済情勢が変化するなかで取引形態に着目した的確な調査対象の選定が従来にも増して重要になっている。それは、経済のグローバル化やIT化などを背景に、広域的な事業を行う法人や国際取引、電子商取引などの取引形態に着目した重点的な調査だ。最近の法人調査の事例を紹介しよう。

【広域的調査事例:貸金業】
 広域的に貸金業などを営む法人グループに対して、3税務署が連携して実地調査を行った事案だ。調査した結果、一般消費者向けに貸金を行う法人については、多額の利益を上げていたにもかかわらず、帳簿書類のすべてを破棄して申告していなかったことがわかった。除外していた資金は、海外や国内の銀行の代表者名義の預金に蓄えるとともに、一部は代表者自らが遣ってしまっていた。

【海外取引調査事例1:自動車販売業】
 調査した法人は、累積赤字の海外の不動産パートナーシップに対する出資持分を、そのジェネラルパートナーである海外の関係会社に無償で譲渡していた。国税当局は、そのパートナーシップが損失先行型のスキームであることに着目し、海外から関係書類を入手するなどして事実関係を調査したところ、調査法人は虚偽の契約書や取締役会議事録を作成するなどして、パートナーシップ出資持分の譲渡益を除外し、さらに、その譲渡代金を海外の信託を通じて運用し、その収益を除外していたことが判明した。

【海外取引調査事例2:貿易業】
 化学製品の輸出を行う法人を実地調査したところ、海外の取引先に依頼して架空の契約書などを作成し、コミッション契約があったように装い、架空コミッション料を計上していたことが明らかになった。その架空コミッション相当額は、海外の銀行にある取引先名義の口座に振り込まれた後、現地で引き出され、調査法人の交際費として遣われていた。

【IT調査事例:製造業】
 製造業を営んでいる法人の調査において、業務・会計データをダウンロードし、関係法人との各種取引を抽出・分析して把握した不審な取引について、管理責任者の電子ファイルを精査した結果、欠損金のある子会社に架空の業務委託手数料を支払うことで、調査法人の所得金額を少なくしていたことが突き止められた。