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税務関連情報 (2007/06/13)

「ふるさと納税」は地域間の税収格差是正に限定的

 安倍政権が地方分権推進の一環として地域間の税収格差是正を目標に掲げていることから急浮上した「ふるさと納税」の導入が実現する可能性が高まっている。7月の参議院選挙に向けたアピールに過ぎないとの批判もあるが、5月以降、実現に向けた動きが加速しており、6月中に取りまとめる予定の「骨太の方針2007」にも制度導入が明記される方針であり、足元で、制度導入の可能性が高まってきている。

 ただし、「ふるさと納税」の実現に向けては、検討を要する問題が少なくない、と指摘するのはニッセイ基礎研究所(篠原哲氏)のレポートである。検討課題は、まず、納税者が自由に収めることができる「ふるさと」の定義の問題だ。納税先である「ふるさと」を、「過去に居住した自治体」とするか、それとも「どの自治体でも良い」とするのかで、制度の姿や理念も変わってくる。場合によっては、自治体間で税収の争奪戦が生じかねない。

 さらには、納税者が納税先を自由に選択することが、地方税の原則である「応益性の原則」に反するという指摘がある。納税者が、自身の居住以外の地域に納税することになれば、地方自治体が供給する行政サービスの費用を、そのサービスを受ける地域住民が負担するという応益性の原則が崩れることになる。このため、最近では、納税者が「ふるさと」へ寄附した場合に住民税から控除できる寄附金控除の拡大案なども浮上している。

 他方、総務省は、現時点では「ふるさと納税」の規模を約1兆2000億円と想定しているが、これは約34.8兆円の地方税収に対して約4%程度の規模でしかなく、地域間の財政力・税収格差の是正に対する効果は限定的である感も否めない。レポートは、仮に来年度税制改正で「ふるさと納税」の導入が決定しても、それによる、地域間の財政力格差の是正の効果については、慎重な見方をしておく必要があると指摘している。