OECD(経済協力開発機構)はこのほど、日本に対し、消費税率の引上げを中心とした包括的な税制改正の実施を求める2008年版の政策勧告を公表した。日本の公的債務残高はOECD諸国中最悪の状態にあり、財政再建や高齢化による歳出圧力の高まりに対処するためには、歳出削減だけでなく包括的な税制改正が必要だと指摘した。同報告書は加盟国に対して定期的に政策勧告するもので、日本に対しては2006年7月以来のもの。
勧告によると、政府債務比率を引き下げるのに必要な歳入を確保するためには包括的な税制改革が必要だが、その際、日本の経済成長に及ぼす悪影響を最低限に抑えることが重要だ。そのためには、直接税よりも間接税の比率を高める、現在5%とOECD諸国のなかで最低の消費税率の引上げが必要であり、消費税収を増やすためには、広範な課税ベースに対する単一税率を維持し、増収分の配分を確保すべきだとしている。
消費税率を引き上げる一方で、法人税減税を求めている。法人税を納めているのは全法人の3分の1に過ぎず、課税ベースを拡大すれば、資源配分改善により潜在成長力を引き上げることができる。租税特別措置を削減するとともに高い控除枠の引下げによる増収分を利用して、現在40%とOECD諸国のなかで最高の法人税率をOECD平均の29%に近い水準まで引き下げれば、これも成長を後押しすることになるとの考えを示した。
一方、賃金所得は2分の1以下しか課税対象ではないことから、課税ベースを拡大する余地は大きい。その主因である大きな給与所得控除の削減は、自営業者の課税対象の捕捉引上げと並行して行うべきだ。課税ベースの拡大による個人所得税収入の増加が法人税減税の影響を補う。所得分配にプラスの効果を有する個人所得税の役割を拡大することは、税の公平性という面からも有益だとしている。
また、複雑な地方税制度の簡素化を求めた。法人所得にかかる地方税を段階的に廃止する一方で、個人所得、消費、資産に対する既存の地方税収を増やす。国の消費税率の引上げで地方消費税率も自動的に引き上がり、不安定で、雇用と投資を抑制する地方法人税を廃止する影響は十二分に補える。地方法人税の廃止により全般的な実効税率はOECDの平均に近づき、経済成長にポジティブな影響を及ぼすことになると指摘している。
政策勧告「OECD対日経済審査報告書2008年版」の要旨は↓
http://www.oecdtokyo2.org/pdf/theme_pdf/macroeconomics_pdf/20080407survey.pdf