雇用環境の回復が盛んに報じられているが、地域別の有効求人倍率(全国平均0.98倍:1月)をみると、最高の愛知(1.86倍)から高知(0.50倍)や青森(0.47倍)、沖縄(0.40倍)まで雇用状況は大きく異なる。帝国データバンクが3月後半に実施した「2008年度の雇用動向に関する企業の意識調査」結果(有効回答数1万189社)によると、2008年度に正社員の「採用予定なし」とする企業が3割を超え、雇用意欲に変調の兆しがみられた。
この4月から来年3月までの正社員(新卒・中途入社)の採用状況をみると、「増加する見込み」と回答した企業は21.3%となった。過去の調査をみると、雇用環境の改善が続くなかで2005年度が28.2%、2006年度が27.0%、2007年度が25.6%と、採用意欲は漸減傾向にある。また、2008年度は「採用予定なし」も30.4%と3割を超えており、企業の景況感が後退しているなか、採用意欲が低下する兆しも現れ始めた。
規模別にみると、採用する見込みとの回答割合は、「大企業」では25.2%と「中小企業」を5.0ポイント上回っており、大企業のほうが、依然として低迷が目立つ中小企業よりも採用意欲が高い。また地域別では、これまで景気回復をけん引してきた「東海」(23.6%)で採用増の割合が高かった一方、「四国」(16.3%)や「中国」(17.5%)では低く、正社員の採用についても地域間格差が表面化する結果となった。
2008年度の正社員比率については、2007年度に対して「上昇する見込み」と回答した企業は16.1%で、「低下する見込み」を7.5ポイント上回った。正社員比率が上昇する見込みと回答した企業のその要因(複数回答)は、「業容拡大への対応」(55.1%)、「団塊世代退職による補充」(25.1%)と続き、4月から施行された「改正パートタイム労働法への対応」は13.5%となり、非正社員から正社員への転換が少なからず期待されている。
正社員への転換制度が「すでにある」とした企業は10.2%、「今後導入予定」の11.0%を合わせると21.2%が転換制度を持つことになる。業界別では、「小売」(38.4%)や「運輸・倉庫」(29.3%)、「製造」(27.5%)など、非正社員が多い業界で保有割合が高くなっており、正社員化による雇用安定化で消費活性化が期待されると同時に、非正社員の依存度が高かった業界では、新たな収益構造を生み出す必要性に迫られていくとみられている。
同意識調査結果の詳細は↓
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/keiki_w0803.pdf