2005年度税制改正に向けて定率減税の縮小・廃止問題が注目されている。定率減税は、景気対策のため1999年度に負担軽減措置法によって実施されたものだが、法律では期限がなく永久に続く恒久的減税となっている。所得税額の20%相当額(最大25万円)を一律に控除しており、税金に関心の薄いサラリーマンのなかには、この定率減税がいつまでも続くものと勘違いしている人も多い。
いわば既得権化された感がある定率減税だが、いよいよ存亡の危機が訪れている。昨年度の与党税制改正大綱で、基礎年金の国庫負担割合の引上げの財源として、2005~2006年度にかけての縮減・廃止が盛り込まれた。景気は回復基調にあるとはいえ、所得環境はようやく底打ちした段階、個人消費への影響が懸念される。
その定率減税縮小が個人消費に与える影響を分析したのは日本総研。それによると、定率減税は、税額控除という性質から、税負担の少ない低所得層での恩恵は小さく、比較的高い所得層での減税額が大きい。そこで、「夫婦+子ども2人世帯」をモデルとして、定率減税が半減された場合を想定して、年収階級別に可処分所得減少に伴う消費支出額を試算したところ、年間の個人消費を0.45%(約1.3兆円)押し下げるとの結果となった。
さらに、1)所得環境の改善の遅れ、すでに決まっている年金負担増や配偶者特別控除の廃止などの負担増を勘案すると、0.45%という減少幅は決して小さくない、2)2005年度からの減税縮小は、景気減速のタイミングと重なり、景気後退をもたらしかねない、3)過去2年間の景気回復により、税収額はこれまで想定したよりも上振れしている、4)年金制度の将来展望が拓けず、不安感が払拭されないなか、その財源として減税を廃止するというのは、国民の理解を得にくい、との4点を指摘している。
日本総研は、試算値の大きさや上記の4点を勘案すれば、2005年度税制改正での定率減税の縮小・廃止は時期尚早であり、仮に縮小に踏み込むにしても、2009年度までかけて、段階的に廃止するなど(年間の個人消費減少は6000億円)、家計が収入減を意識しない程度にまで縮小規模を抑えるべきだ、と主張している。