80年代後半の節税対策の花形だった賃貸住宅建設に対する金融機関の融資スタンスは、不動産担保重視から建設後の入居見込など賃貸住宅経営の収益性、ローン利用者のキャッシュバランスなどを融資に反映するようになった。そこで、大きな問題となってくる賃貸住宅の需給ギャップなどを中心に賃貸住宅の現状と課題を分析したのは農林中金総研のレポートである。
レポートによると、今日の賃貸住宅市場は、都市回帰、都市再開発、地域経済の活性化による人口増加が賃貸住宅建設を促進している一方で、住宅メーカーの積極的な営業戦略や節税対策の手段など実需以外の要因も加わり、賃貸住宅が建設されるケースもある。そのため、現在は、実需以上に供給量が増大しており、賃貸住宅の需給ギャップが大きな問題となっていると指摘する。
賃貸住宅建設を促進するひとつの要因となっているのは、住宅管理運営方法でのサブリース方式である。これは、管理会社が転貸目的として賃貸施設をオーナーから一括して借り上げる方式である。節税対策や資産活用を行いたいが、賃貸住宅経営に不慣れな資産家のニーズに応えている。しかし、サブリースによる賃貸住宅経営の外部委託化は、需給ギャップを拡大させる可能性もあるとみている。
また、現在の賃貸住宅ローンは、基本的にはノンリコースローンで行われ、事業計画上、家賃収入のみで経営が成り立つことを前提としている。ノンリコースローンは、資金の借り手側が債務を返済できなくなった場合、貸し手側は借り手側が差し入れた担保価値以上の債務返済を求めることができない融資方法だ。多くの金融機関は、供給過剰に陥りやすいといった業界の特性や物件の個別性を考慮して慎重に対応している。
将来の賃貸住宅市場は、人口の減少によって賃貸住宅の需要が減少する一方、相続・節税対策や転業による賃貸住宅建設に加えて、分譲マンションの賃貸住宅化など供給量を増大させる新しい潮流もあり、需給ギャップは拡大していくと予想。賃貸住宅ローンについては、地域の賃貸住宅市場の将来動向を多角的に検討するとともに、個々の案件についての収益性とリスクをきちんと吟味する慎重な対応が求められるとしている。
レポートの全文は↓
http://www.nochuri.co.jp/report/pdf/n0504re2.pdf