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親族が行方不明の場合の相続問題に課題

経営関連情報 - 2011年06月10日

 民法882 条に「相続は死亡によって開始する」との規定がある。東日本大震災は、地震被害とともに津波により、多数の死者、行方不明者を出し、今なお多くの行方不明者がいる。そこで問題になってくるのが相続。前述のように、行方不明の場合は法的に相続が開始しない。 このため、震災による被災などで親族に行方不明になった者がいる場合には、「認定死亡」と「失踪宣告」の2つが登場することになる。

 「認定死亡」とは戸籍法第89 条に基づくもの。水難、火災その他の事変で死亡したものがある場合に、その取調べをした官公署は、死亡地の市町村長に死亡の報告をしなければならない。ただし、外国または法務省令で定める地域で死亡があったときは、死亡者の本籍地の市町村長に死亡の報告をしなければならないこととされている。これによって、法律的に死亡が推定されることになる。

 一方の「失踪宣告」は民法第30 条に基づくもの。不在者の生死が7年間明らかでない場合、家庭裁判所は、失踪の宣告をすることができる。不在者の生死が不明の場合に、失踪宣告によりその者を死亡したものとみなして、財産関係や身分関係について死亡の効果を発生させる制度。失踪宣告の要件は、(1)利害関係人の請求、(2)生死不明の状態が一定期間継続する、(3)家庭裁判所が公示催告等の手続きを経ることとなっている。

 この失踪宣告の効果としては、民法第31 条に規定される通り、(1)「普通失踪の場合は7年間」、(2)「特別失踪の場合は危難が去った後、1年間」をそれぞれ経過したときに死亡したものとみなすとされている。大震災などの天災は「特別失踪」という扱いになろうが、今回の震災の規模や被害程度からみて、1年間は長すぎるという議論もある。これを3ヵ月に短縮できないかとの意見もあり、今後の検討が待たれるところだ。