2003年05月07日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(50)
『所得税における水平的公平性について』(11)
★必要経費の概算控除としては多額な給与所得控除
さて、給与所得控除とは何か。これまで給与所得控除の意義の説明として、1) 給与所得の必要経費としての控除、2)資産所得や事業所得と比べた担税力の弱 さの調整、3)申告納税所得と源泉徴収される給与所得との所得捕捉率の格差の 調整などの要素が挙げられる。そこで、これらの根拠について検討が加えられる。
給与所得控除の最も有力な根拠として必要経費の概算控除とすることは異論が 少ない。しかし、マクロ的に平均すると給与収入の30%近くの水準になるが、平 均的な給与所得者の必要経費として多すぎるのではないかという疑問がある。 総務省の「家計調査年報」(2001年)から、勤労世帯の必要経費と思われる項 目の年間支出額を、勤め先階級ごとに積み上げていった結果、支出額は最も収入 の少ない階級で22.6万円となり、勤め先収入に概ね比例して上昇し、平均8.2%と なった。
一方、給与所得控除額は、最低控除額が65万円、それを超えると40%から給与 階級1000万円前後で20%まで比率は低下するが、上記の経費相当支出額よりも、 最低保証額、平均控除割合ともにかなりの額が控除されている。また、控除額に 上限がないため、高所得者ほど高額な控除となる逆進性があることが分かる。
給与所得控除の意義の説明として、資産所得や事業所得と比べた担税力の弱さ の調整ということは、そもそも個人事業主の事業所得の構成要素として勤労所得 の割合が大きいことや、右肩上がりの時代が終わり、景気の低迷や空洞化の進捗 で厳しい環境にある下請などの事業所得者の変動性やリスクの高さを考えると、 事業所得のほうがむしろ担税力が低くなっている、との見方を示している。
(続く)
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