労働政策研究・研修機構がこのほど発表した「成果主義と働くことの満足度」と題した研究報告書によると、成果主義と企業業績や満足度との、直接的・短期的関係は確認できなかった。一方で、能力発揮、達成感、成長感といった仕事そのものの魅力が満足度に深く関わっており、それが企業業績とも関係していることが明らかになった。このことは、仕事へのこだわりが強い若年者にとって大きな意味があると指摘している。
研究報告書は、同研修機構が昨年実施した「労働者の働く意欲と雇用管理のあり方に関する調査」を再集計し分析したもの。内容は3章に分かれ、成果主義に焦点を合わせた「第1章人材マネジメント戦略と企業業績」では、早期選抜戦略、非正規社員活用戦略、教育訓練戦略をとっている企業や、卸売・小売業において、成果主義が多く導入されていることがわかった。一方、人件費削減と成果主義導入の間に関係はみられない。
また、成果主義導入など人材マネジメント施策・戦略と企業業績との間に統計的に有意な関係は見いだしていない。この結果については、1)企業の経営戦略と人材マネジメント施策との間の関連性は、あっても弱いものにとどまっている可能性、2)人材マネジメント施策が業績に表れるまでは相当の期間が必要であり、短期間の計測では観測できなかった可能性を挙げ、短期に顕著な効果が表れるものではないとしている。
満足度に焦点を合わせた「第2章働くことの満足度と個人・企業の属性」では、多くの労働者は楽な仕事よりも、むしろやりがいがある仕事を望んでいると推測。また、満足度が高い企業では業績も良いことから、「業績に貢献する」という仕事からみた雇用の質と、「満足度が高い」という労働者からみた雇用の質とが、基本的に同一方向を向いていることを明らかにしている。
「第3章若年正社員・フリーターの仕事に対する意識と雇用管理」では、若年者は相対的に、ライフステージに応じた働き方、仕事の内容や専門能力に対するこだわりが強い一方で、長期雇用についてのこだわりは強くない。また、フリーターについては、「勤務時間や勤務日数が選べる」、「通勤時間が短かった」など、短期的な視点から職業選択を行っている、また、自己啓発への取組みにも乏しいことがわかったとしている。
同研究報告書の詳細は↓
http://www.jil.go.jp/institute/reports/2005/documents/040.pdf