わが国の景気回復期待や米国の利上げ観測などを背景に長期金利が急上昇しており、企業収益や雇用に及ぼす影響が懸念される。長期金利の上昇が企業収益に及ぼす影響を分析したのは第一生命経済研究所のレポートである。そこでは、2003年度の法人企業統計を基に長期金利が1%ポイント上昇すると1年程度のタイムラグを経て企業の経常利益を▲4.9%減少させると試算している。
業種別にみれば、相対的に国際競争力の高い製造業の一部業種に対する悪影響が小さい一方で、業績が低迷している非製造業に対する悪影響が大きいことから、長期金利上昇は、業種間の収益格差を拡大させるおそれがあるとみている。特に、石油石炭工業は原油高とのダブルパンチで厳しい経営を強いられるとの危惧を述べている。
企業が1%ポイントの長期金利上昇で生じる利益減少分を埋め合わせるとすれば、プラス1.0%の売上増が必要になるが、仮に売上増が不可能なら、企業は▲1.5%の人件費削減を強いられることになる。これは、▲46.8万人の就業者数の減少をもたらすと推計している。長期金利上昇により企業の経常利益が圧迫されれば、これまでのリストラ効果が相殺され、さらなる雇用リストラにつながるとの危険性を示している。
2003年度はプラス3.2%の経済成長をしたにもかかわらず、実質長期金利は3.8%程度であり、バブル崩壊に伴い金融緩和が遅れた90年代と比較しても景気抑制的だった。一方、現状では長期金利の水準が上がっているため、伝統的な金融緩和の効果を期待している。この好機を逃さないためにも、日銀は今こそ長期国債保有の上限を撤廃し、積極的な長期国債買い切りオペに踏み切るべきだ、とレポートは提言している。