税 務 関 連 情 報 |
2003年06月02日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(56)
『所得税における水平的公平性について』(17)
★税務統計と国民所得統計の比較
前回(28日)は、77年には給与所得、自営業所得、農業所得の間に9対7対4に近い所得捕捉率の格差があったのに対し、その後20年間でその差は飛躍的に縮小し、97年の時点では10:9:8に近い比率になっており、大幅に改善している、との報告書の推計結果を紹介した。今回は、その推計結果がどのような方法に基づいたものなのかを紹介する。
推計の枠組みは、税務署に把握され課税対象となっている所得額と、実際に得られている所得(「真の所得」)を、給与所得、自営業所得、農業所得それぞれについて比較することで、所得捕捉率を計測し、その格差を推計することである。具体的には、税務統計と国民所得統計の間での違いを調整した上で、両者において把握されている所得の格差を推計するのである。
具体的な計算は、税務統計と国民所得統計の定義の違いからくる調整に尽きる。給与所得については調整すべき項目はほとんどないが、自営業所得については、自営業所得に含まれる産業区分の調整や、税務上損金に算入される専従者控除や青色申告特別控除を税務統計上の所得に加算するなどの調整を加えて所得捕捉率を算出する。
この結果、報告書の推計では、77年は94.5対69.2対38.8だった給与所得、自営業所得、農業所得の間の所得捕捉率の格差が、101.8対94.7対81.0と大幅に改善されている。この業種間格差が縮小したという結論は、本当に正しいのか。そのカギは、「真の所得」とした税務統計と比較される国民所得統計にあるのではないか。
(続く)
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