税 務 関 連 情 報

2003年05月30日-002
米の3500億ドル減税の効果は?

 たまには国外の税制の動きも…。米連邦議会は5月23日に11年間で3500億ドル規模に一本化された減税法案を上下両院とも可決、同月28日にブッシュ大統領が署名して成立した。当初のブッシュ構想の減税規模7260億ドルからすると、減税額は半分以下に抑えられた格好だ。だが、景気に与える影響も半減したと捉えるのは早計だ、と指摘するのは新光総合研究所のレポートである。

 減税の内訳は、1)2006年実施とされていた所得税減税の前倒し適用や教育減税、婚姻税軽減などの家庭向け減税(03~06年)、2)中小企業向け設備投資償却枠拡大(03~05年)、3)州政府に対する2年間で総額20億ドルの臨時財政救済基金創設、4)キャピタルゲイン課税と配当二重課税の軽減などだ。

 注目されていたキャピタルゲイン(株式譲渡益所得)課税と配当二重課税の取扱いは、まずキャピタルゲイン課税は2008年末までの時限措置とした上で、課税所得に応じた2段階の累進税率20%・10%がそれぞれ15%・5%に引き下げられ(03~07年)、08年には税率5%分が0%になる。

 配当二重課税については、ブッシュ案の撤廃ではなく、08年末までという期限を設けた軽減措置となった。税率も、キャピタルゲイン課税と同じだけ引き下げられ、最高税率は現行の38.6%から15%になる。

 減税は03年から13年にかけて均等に実施されるのではなく、大統領選挙が行われる04年の減税規模が最大になるように計画されている。今年683億ドル、04年1486億ドル、05年822億ドル、06年206億ドルと、当初の3年間に集中する。これが、減税規模が半額となりながら景気に与える影響が半減しないと推測する根拠である。

 レポートは、「速やかに減税前倒し分の払い戻しが実施されることで、可処分所得の押上げを通じて、今年後半以降の消費の足元を固める効果が期待できよう」としている。どこまで、それが米経済に影響を及ぼすのか、日本経済にとっても関心は大きいが、米国内には「3年間で景気の急回復や株高がなければ、財政負担が増えるだけ」と先行きを懸念する向きもあり、減税効果は不透明といったところか。

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