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税務関連情報 (2004/01/19)
不動産譲渡の損益通算廃止に批判続出

 2004年度税制改正では、土地・建物などの譲渡損失と他の所得との損益通算や繰越控除が今年1月1日以後の譲渡から廃止される改正案が盛り込まれた。昨年12月の与党大綱が公表される間際になって唐突に浮上した感のあるこの“増税”案に税理士など実務家の間に批判が続出している。

 納税者の負担増になる改正は通常遡及適用されることは稀だが、今回は1月から適用される。となると、含み損のある不動産を売却して、損失を実現させることで給与所得や事業所得と通算するというこれまで認められていた節税策が封じられる。

 急遽浮上した土地税制の見直しは、土地譲渡益課税の税率を引き下げてデフレ下で塩漬けとなった土地の流動化を図ることが目的。しかし、現実には評価損を抱えた土地がほとんど。税率の引下げの恩恵など及ぶべくもない。

 一方で、発生する可能性が高い譲渡損の救い道を封じ込めてしまう今回の措置には、誰もが“姑息”と感じることだろう。恩恵者が少ない減税を建て前に譲渡損を封じ込めてしまうのだ。せめて適用時期を来年からとでもしてくれれば救われるが、1月にさかのぼってということではなす術もない。

 批判続出に日税連などは改正内容の見直しを求め財務省や自民党など関係方面に働きかけたようだが、16日に閣議決定された税制改正要綱にも遡及適用が明記された。しかし、今回の“改悪”ともいえる損益通算の廃止がこのまま成立してしまっては納税者もやり切れない。これが先例となって“改悪”がまかり通ることも危惧される。