国税は金銭による納付が原則だが、相続税については、財産課税という性格上、延納によっても金銭納付が難しい理由がある場合は、一定の相続財産による物納が認められている。国税庁が1日に公表した2006年度相続税の物納申請状況等によると、今年3月までの1年間の物納申請件数は1036件、金額では472億円で、前年より件数で40.2%減、金額で42.2%減となり、ともにここ10年間ではもっとも低い数字となった。
物納申請件数は、バブル崩壊後の1990年度以降、地価の下落や土地取引の停滞などを反映して著しく増加した。それまで年間500件前後に過ぎなかったものが、92年度には1万2千件台まで急増したが、99年度以降は減少しており、2006年度で8年連続の減少となった。2006年度の申請件数はピーク時92年度(1万2778件)の約8%、金額では同じくピーク時92年度(1兆5645億円)の約3%まで減少している。
一方、2006年度の処理対象件数は4817件だったが、うち2971件を処理。前年度に比べ24.2%の減少だったが、申請件数の大幅減少から、年度末での処理未済件数は、前年度より51.2%減の1846件とほぼ半減し、金額でも42.8%減の1866億円となった。2006年度の処理の内訳は、約70%にあたる2094件が許可されており、物納財産として不適格として16件が却下され、残りの861件は納税者自らが物納申請を取り下げている。
なお、2006年度税制改正において、不動産や自社株式の物納に係る許可基準の緩和や、これまで不明確だった物納不適格財産が政令で限定列挙、明確化されており、不適格要件に該当しなければすべて物納可能となっている。しかし、1日公表された2007年分の路線価は+8.6%と、14年ぶりにプラスに転じた昨年に引き続き上昇しており、今後も物納申請件数は、減少傾向が加速するとみられている。