総額126.9兆円(2003年度)に及ぶ国税・地方税・社会保険料の徴収は、国税庁、地方自治体、社会保険庁、労働局などバラバラの徴収機関によって行われており、非効率だと指摘。徴収機関のわが国の特徴・問題を、諸外国との比較を通じて洗い出し、国税庁による一体徴収へ極力改めることを中心に、社保庁と労働局は徴収業務から完全に撤退するなどの改革試案を示したのは、日本総研の分析レポートである。
レポートによると、わが国は、中央・地方・社会保障基金の各政府部門間で、課税ベースに重複が多く、それにもかかわらず、徴収機関が併存している。とりわけ、社会保障基金政府には、国の機関だけでも社保庁と労働局の2つがあることをはじめ、複数の機関が併存している。加えて、政府部門をまたぐ一体徴収が行われているのは、総税収の1.9%に過ぎない国税庁・税関徴収の地方消費税のみだと指摘する。
一方、諸外国に目を転じると、スウェーデンでは、国税・地方税・社会保険料すべてが租税庁によって徴収され、イギリスでは、納税協力費用(納税者の負う金銭的・時間的負担)削減を主目的として、近年、徴収機関の集約が強力に推し進められてきている。フランスでは、税と社会保険料は別個に徴収されているものの、主要な地方税は国が徴収している。アメリカでも、国税・社会保険料とも内国歳入庁によって徴収されている。
これらの国々と比較すると、わが国の状況は「特異」である。わが国は、政府部門間で課税ベースの多くが重複し、納税者側・行政側双方に余計な費用が発生しやすくなっているにもかかわらず、また、全国民共通の社会保障制度を持ちながら、国税と社会保険料の一体徴収が行われていない。こうしたわが国の特異さが、納税者側に立ったものであるとも、「小さくて効率的な政府」という政府目標と整合的であるとも考えにくい。
レポートの改革試案は、現在、国税庁、地方自治体、社保庁、労働局はそれぞれ41.7兆円、35.1兆円、27.8兆円、3.6兆円の税・社会保険料を徴収しているが、このうち各政府部門間で課税ベースが重複しているものは、国税庁の一体徴収に極力改める。地方自治体には、固定資産税等と国民健康保険等の保険料徴収のみを残す。社保庁と労働局は徴収業務から完全に撤退する。この結果、国税庁の徴収額は、総税収の72.9%に相当する92.5兆円まで増加するというもの。
同レポートの詳細は↓
http://www.jri.co.jp/press/2006/jri_060301-1.pdf