3月1日に日本経団連が税務関係書類の電子保存の適用範囲を契約書や領収書など手書きの帳簿などにも認めてほしいとの要望書を公表した(3月5日既報)が、三菱総研の主席研究員・松尾正浩氏がその日本経団連の要望を応援するコラムを発表している。
それによると、1998年に成立した現行の電子帳簿保存法では、電子化が認められた税務関係書類は「自己が一貫して電子計算機を使用して作成」する場合などで、契約相手方が作成した「紙」による見積書・契約書・注文書・領収書などには同法は適用されない。そのため、同法の恩恵を受けるのはごく一部の企業に限られていると指摘する。
実際、国税庁が受理した電子帳簿保存の承認申請件数は、法人税・消費税、源泉所得税、所得税・消費税、その他国税をすべて合わせても、2001年度で7569件、2002年度で8519件であり、2003年6月末現在までの累計で3万327件に過ぎない。
電子帳簿保存法を検討した当時の国税庁の研究会報告では、紙と同程度の表現力、閲覧性・検索性、改ざんの防止と非改ざんの証明などが問題点とされ、紙で受け取った書類の電磁的記録は容認されないという経緯があった。しかし、松尾氏は、スキャナの解像度向上、電子署名技術の進展など、その後のIT技術の進歩によって、ほとんどの問題は技術的に解決可能なレベルになったという。
日本経団連の試算では、紙文書の保管のために企業が負担する費用は年間約3000億円にものぼるという。政府は、こうした生産活動に寄与しない経費を削減し、景気の浮揚を図るために、規制緩和をさらに進め、電子保存の適用範囲を拡大すべきだ、というのが松尾氏の主張である。