税 務 関 連 情 報

2002年06月05日-002
日本総研、「税の空洞化」論、最高税率引下げに疑問符

 税制抜本改革をめぐっては、政府税制調査会と経済財政諮問会議が6月中に基本方針を決める予定だが、所得税の改革論議は、政府税調が「税の空洞化」論を主張し、課税最低限の引下げなど増税不可避の方向性を打ち出している。一方、財政諮問会議は、最高税率引下げや税率の累進構造見直しなどとセットで経済活力を生み出す税制改革の必要性を打ち出している。ところが、日本総合研究所がこのほど公表した所得税改革への提言では、政府税調が主張する「税の空洞化」論と、諮問会議が掲げる「所得税の最高税率の引下げ」に真っ向から疑問を呈している。

 「税の空洞化」とは、何回にもわたる所得税減税で、就業者のうち約4分の1程度の人々が税金を払っていないことを問題視し、課税最低限を引き下げて、より多くの人に納税してもらおうというもの。しかし、提言では、わが国の所得税収(対国民所得比率)が欧米諸国と比べて少ない真の理由は、非納税者の比率が高いためでなく、1)給与所得控除や配偶者控除など欧米諸国と比べて手厚い諸控除があるので、課税ベースが狭いこと、2)わが国の場合、欧米諸国と比べて高額所得者の数が少なく、所得水準も相対的に低いことにあると指摘している。

 一方、最高税率の引下げについては、1)最高税率を引き下げても、その恩恵を受ける層が国民の1%未満にしか及ばないこと、2)法人成りなどの合法的な方法によって事実上税負担を軽減することが可能であることなどから、現時点ではあえて行う必然性に乏しいとの判断を示している。提言では、最高税率の引下げは、経済活性化ではなく、税負担の公平性の観点から論じられるべきだとしている。

 

 

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