政府の「経済危機対策」に伴い4月27日に国会へ上程された、(1)住宅取得のための時限的な贈与税の非課税制度の創設、(2)研究開発税制の拡充、(3)中小企業の交際費等の損金不算入特例の拡充、を盛り込んだ追加税制改正法案が、5月13日に衆院で可決成立し、参院に送られた。同法案の実際の審議は2日間しか行われなかったが、その中でも改正項目について明らかになったことがいくつかある。
個別の改正項目をみると、中小企業に期待される追加経済対策としては、資本金の額または出資金の額が1億円以下である法人等を対象に年間400万円(定額控除限度額)までの交際費等支出額の90%の損金算入を認める交際費等の損金不算入制度における定額控除限度額を2009年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税から600万円に引き上げる中小企業の交際費等の損金不算入特例の拡充がある。
しかし、民主党の階議員が400万円超の交際費を支出できる企業は全体の1.3%程度に過ぎないと指摘したこと、竹下副大臣が資本金5千万円以上1億円未満の中小企業の交際費支出額が平均470万円であることを引上げの根拠としたこと、さらに今回の措置は「交際費支出を拡大できる余力のある中小企業が適用を受ける仕組み」と加藤主税局長が答弁したことから、ほとんどの中小企業が恩恵を得られないことが明らかになった。
研究開発税制の拡充についても、大企業中心ではないかとの共産党の佐々木議員の質問に対し、答弁に立った岡本国税庁次長は、「研究開発税制の税額控除の適用額は、2007年度分会社標本調査に基づき試算すると、資本金1億円未満の法人が170億円、1億円以上の法人が6099億円、また、1億円以上10億円未満の法人が500億円であることから、大半が資本金10億円以上の法人の適用」と制度が大企業中心であることを認めている。
これから野党が過半数を占める参院へ舞台は移るが、補正予算の成立の関係もあり、会期延長となるだろう。延長後、野党が参院で審議を引き延ばしても、最終的には憲法の規定により衆院通過60日後の7月中に再可決により成立となる。