企業が過剰雇用の削減や過剰債務の削減など“後ろ向きのリストラ“にまい進したことは記憶に新しいが、企業リストラはすでに最終段階にあると分析しこの後のわが国経済を予測するのは、第一生命経済研究所の飯塚尚己氏のマクロ経済分析レポートである。レポートは、まず先日公表された法人企業統計によって4~6月時点における企業リストラの進捗度をみている。
その結果、1)損益分岐点比率は88.7%と平成景気のピーク水準にまで回復、2)労働分配率は67.2%と90年代後半以降の最低水準にまで回復、3)債務負担倍率は4.72倍と適正とされる80年代前半の水準にまで回復、と不況抵抗力、過剰雇用・過剰債務削減の面で相当の進展を確認。そこから、一部の非製造業や中小企業における調整の遅れを考慮しても、企業の“後ろ向きリストラ”は終息したと判断している。
また、これまでのリストラによって、1)企業部門の構造調整が景気を下押しする力が大きく減殺したこと、2)輸出などの外生需要の増加が設備投資や雇用の増加に結びつくといった通常の前向きの景気回復メカニズムが復活しつつあることの2点が、景気の先行きを考えるうえでも重要なポイントとなると指摘している。
わが国の景気は、2004年度下期以降、外需の減速やデジタル景気の一服によっていったん減速するものの、企業部門の構造調整圧力がほぼ解消していることを踏まえると、ある程度の減速であれば企業が大幅な雇用削減や投資抑制を行うには至らないとみる。つまり、深刻な後退局面に陥ることなく、2005年後半には再び景気回復の勢いが加速すると見込んでいる。
もっとも、日本経済が本格回復を始めるためには、やはりマクロ経済政策による後押しが必要であり、それとは逆行するように、所得税の定率減税の廃止・縮小など景気抑制的な政策が議論される方向にあることに対しては、性急な政策転換による景気失速の愚は犯すべきではないとの考えを示している。
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http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/rashinban/pdf/et04_61.pdf