先月25日の政府税制調査会の答申では、「酒類の分類の簡素化を図り、酒類間の税負担格差を縮小する方向で早急かつ包括的に見直すべき」との酒税見直しの方針が盛り込まれた。これは、「酒税の複雑な税制を簡素化することが目的」(石会長)との建て前だが、「第3のビール(ビール風アルコール飲料)」を狙い撃ちしたのは誰の目にも明らか。再び発泡酒課税強化と同様の愚策が繰り返されようとしている。
税調の答申では「従来とは異なる原料や製法により、同種・同等のものでありながら税負担の異なる酒類が生産されるようになってきた」との見直しの背景を挙げている。例えば、サッポロビールが開発した「ドラフトワン」は、原料にエンドウマメを使い、発泡酒よりも低価格で発売した。発泡酒は麦芽比率を低くしてビールより税負担を少なくしたが、「第3のビール」は原料そのものを変えてさらに税負担の軽減を実現したのだ。
それに疑義を唱えたのは財務省である。パイが決められたなかで消費が低税率のものに流れれば税収は当然減る。それでは困るわけだ。なにやら発泡酒が登場したときを彷彿とさせる。税制の対応は常に“モグラ叩き”である。「節税商品の登場を許した現行の酒税が問題」(石会長)というなら、なぜ発泡酒の登場時に手直ししなかったのか。
もちろん酒類メーカーは大反対である。現行の酒税法の枠内での企業の開発努力による成果を次々に摘み取られてはたまったものではないだろう。サッポロビールは先月30日までの6日間に「消費者アンケート調査」を実施し、回答者の96.6%が「増税に反対」との結果を発表した(有効回答数5万559人)。世論を喚起して増税には断固反対との姿勢を示したわけだ。
増税に反対する理由(複数回答)では、「売れたら増税、という考えがおかしい」(79.2%)、「企業の開発努力を否定するもの」(69.1%)、「庶民イジメになる」(56.8%)などの意見が多い。消費者にとって低価格は歓迎すべきもの、困るのは財政当局だけである。財政健全化のための税負担増―もちろん歳出削減を前提に―は仕方がないとしても、こんな“重箱の隅”を突っつくような増税はいいかげんに止めてほしいものだ。