温暖化対策としての環境税は10年来議論されてきたが、具体的な動きがみられるようになったのは最近のこと。経済産業省は、それまで非課税だった石炭へも課税する石油石炭税を導入(昨年10月から)、歳出面でも温暖化対策に割り当てることとした。一方、環境省は、新規の炭素税の具体的な制度設計を提案し、国民の意見を求めている。
富士通総研は、温暖化対策としての環境税のあり方を分析する研究論文(齋藤有希子氏執筆)を公表し、環境税の今後の制度設計としては、エネルギー税制のグリーン化が有力との考えを示した。経産省による環境税はエネルギー税制のグリーン(環境配慮)化であり、環境省による環境税の案は新規の炭素税である。
同論文では、一般均衡モデルを用いたシミュレーション分析の結果、1)グリーン化と新規の炭素税導入ともにエネルギー多消費産業への影響が大きく、特に鉄鋼部門の生産量の減少が顕著なこと、2)グリーン化のほうが、鉄鋼部門を除く多くの部門の生産量の減少を抑えること、3)グリーン化のほうが、産業部門の総使用エネルギーの減少を抑え、エネルギーの代替が効率よく行われていることが確認されたとしている。
これらのことから、新規の炭素税を導入するのではなく、グリーン化により、経済への影響を逓減し、効率的に温暖化対策が進むことが確認されたとして、今後の環境税の制度設計として、さらなるグリーン化が有力であるとの考えを明らかにしている。また、グリーン化において、家庭部門の削減化が望めないなどの残された課題を解決すべく、税の効果的な還流方法など、よりよい制度設計を勘案することの重要性を指摘している。
研究論文の詳細は↓
http://www.fri.fujitsu.com/open_knlg/review/rev083/review06.pdf