税 務 関 連 情 報

2003年06月11日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(58)

『所得税における水平的公平性について』(19)

 これまで18回にわたって内閣府が公表した分析報告書「所得税における水平的公平性」を基に、わが国の個人所得税の業種間における水平的公平性の実態について、主に制度上の負担の格差、クロヨン問題と称される所得捕捉の格差の2つの側面から、その実態につい手に検証を眺めてきた。長い間お付き合いいただいたが、今回は総まとめである。

★見直される時期にきている給与所得控除

 まず、制度上の負担の格差について報告書は、現行制度に基づき給与所得者と事業所得者の課税最低限、実効税率などを比べた結果、給与所得者のほうが制度上有利になっているという結論である。事業所得者が専従者給与を用いた所得分割を行ったとしても、給与所得者の共働きと比べればその差はないことになるという。

 この要因として、多額に及ぶ給与所得控除の存在を挙げている。必要経費の概算控除としては過大であり、また、他の所得との調整としても現在の就業構造や社会環境に照らし適切とはいいがたいとする。ただ、その縮減を考える際には、源泉徴収と申告納税からくるクロヨン批判などの、税務執行上の不公平感の解消が必要だとの考えを示している。

 給与所得控除の意義、位置付けについては、非常に難しいものになってきている。給与所得控除が引き上げられてきた背景には時代時代の必然性があろうが、確かに、必要経費の概算控除としては過大だとの指摘は否定できない。今後の税制改革の流れは、財政再建・社会保障制度の再構築に向けて、国民の一人ひとりが“広く薄く”負担していくことになる。給与所得控除の意義は改めて見直されるべき時期にきているといえる。

(続く)

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