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税務関連情報 (2006/09/20)

消費税率5%引上げで実質成長率1.9%押し下げ

 財政再建のなかで消費税率引上げは既定路線となっているが、引上げ時期や引上げ幅、複数税率の採用の是非など検討項目は多い。引上げ時期については、基礎年金の国庫負担割合を2009年までに2分の1に引き上げることから、2009年4月説が有力だ。そのためには、具体的な議論を2007年には開始する必要がある。消費税の本格的な議論の開始を前に、消費税率引上げの経済的影響を試算したのは三菱総研のレポートである。

 三菱総研が新たに構築した消費税モデルの推計結果によると、消費税率1%の引上げが実質GDPに与える影響は▲0.4%と推測される。消費税率の3%引上げによりGDPは▲1.1%、5%の引上げによりGDPは▲1.9%だけ低下する。また、消費税率を10%とする一方で、食料品ほかの5品目に軽減税率を適用して税率を5%に据え置いた場合、GDPの落込み幅は▲1.9%から▲1.6%に縮小する。

 品目別の影響をみていくと、消費税率を10%とした場合には、食料品購入の減少は▲1%未満にとどまる一方で、家電製品や自動車などの耐久消費財の購入量は減少幅が▲4%以上に達する。このように、消費税率引上げは少なからぬマイナスの経済的影響を伴う点には注意が必要となる。

 また、所得階級別に影響をみていくと、第?分位(平均収入187万円)から第?分位(同1129万円)の所得5階級別の家計における所得の多寡による差異は小さく、いずれの所得階級でも▲2.7%前後の支出減少が見込まれる。ただし、シミュレーション結果を詳しくみていくと、低所得者が被るマイナス効果がやや大きい。そこで、食料品ほかの5品目に軽減税率を適用してみると、高所得者と低所得者の間にあるマイナス効果の差が縮小する。

 つまり、生活必需品への軽減税率の適用には、低所得者がより被ることになる消費税率引上げのマイナスの経済的影響を、いくぶん緩和させる効果がある。軽減税率の導入は、消費税率引上げに伴う逆進性の緩和のために検討されるものだが、税制の複雑化や課税ベースの縮小などの問題が存在する。三菱総研は、軽減税率を適用させる品目などの検討を通して、複数税率の是非に関する議論を深めることが望ましいとしている。

 同レポート「消費税の経済的影響」の全文は↓
 http://www.mri.co.jp/REPORT/ECONOMY/2006/mr060900.pdf