税 務 関 連 情 報

2003年07月23日-001
夫が税理士である妻に支払った報酬は必要経費か?

 弁護士である夫が税理士である妻に支払った税理士報酬は夫の必要経費となるのだろうか。一見なにも問題がないように思えるが、所得税法には、「生計を一にする親族が事業に従事したことで支払を受ける対価の額は、その事業所得等の計算上、必要経費に算入しない」という所得税法第56条の規定(事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例)があって認められないのである。

 これは、同じ屋根の下で暮らす親族間で自由に対価が支払われると、事業者の所得を意図的に家族に分散して税金の負担を軽減することができることから、そのような行為を防ぐために定められたものなのである。ところが、東京地裁(藤山雅行裁判長)は16日、このケースで税理士報酬は必要経費にあたると認定して波紋を呼んでいる。夫婦間で支払われた報酬を必要経費と認めた初判決である。

 これまでの経緯をたどると、原告は、税理士である妻と顧問契約を結び、1995~98年にかけて約329万円の税理士報酬を支払い、必要経費に算入して確定申告した。ところが、税務署では、特例に基づいて必要経費算入を認めなかったことから、原告は、国税不服審判所の判断を仰いだが、認められなかった(2000年5月裁決)ため争いの場を裁判に移していたというもの。

 東京地裁では、「それぞれが独立した経済生活であると認められる場合には所得税法の規定の適用がないと考えるのが正当な解釈」との原告の主張を認めた。しかし、国税当局にとってこの判決は、「課税庁は法律を遵守し誠実に執行する機関である」ことから、所得税法上の規定に則って課税しただけに納得がいかないものがある。

 今回の裁判が法律そのものの解釈を争点としたものであればまだしも、法律を否定したうえで成り立つ判決だけに、国税当局には容認できない判決となる。そもそも、法に基づいて審理する裁判所が、法律そのものを否定して判断できるのかという疑問も湧く。所得税法の規定を真っ向から否定する解釈だけに、法律に則って課税した国税当局にも譲れないものがあり控訴するとみられる。今後の行方が注目されるところだ。

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