2003年06月09日-002
年金制度再構築のためには消費税率引上げやむを得ず
財務相の諮問機関である財政制度等審議会は、膨れ上がる社会保障の抑制に公的年金の削減を求める一方で、基礎年金の国庫負担割合を現行の3分の1から2分の1に引き上げるという政府の約束を反故にする意見書を出すようだ。「必要額が2兆7千億円と大き過ぎ、現在の財政状況では難しい」というのが、その理由だ。
これには、年末までに年金制度改革案をまとめる予定の厚生労働省が猛反発しているが、「財源がない」との“開き直り”に抵抗できるのか。そこで、紹介するのは「年金制度再構築のためには消費税率の引き上げもやむを得ない」という、三菱総研主任研究員の白石浩介氏の主張。公的年金の保険料引き上げの抑制のためには、年金給付の削減は避けられないが、一方では国家財政からの補助を増やす必要があるという。
国民年金では保険料の未納者増加による制度の空洞化が進んでおり、国庫負担割合を2分の1への引上げが提案されているが、「年金カットが先決」ということから、このアイデアに否定的な声がある。しかし、厚生年金加入者からみると、国民年金における財源不足を厚生年金のカットで賄うことには納得がいかないだろう。そこで、今後ますます増加する低所得者層の引退生活の保障は国庫資金によるべきことを提案している。
だが、毎年の財政赤字が30兆円を優に超える国にとっては、新たな財源が必要になる。そこで浮上しているのが、国際比較でも低い税率の消費税だ。持続可能な年金制度再構築のための消費税率引上げならば国民に受け入れられやすく、財政赤字の削減も緊急課題なのだから、まずは2~3%程度の引上げを実施すべきだというのが氏の主張である。
このように、財官民そろって消費税率引上げやむなしとの意見が多いが、大きな障壁は、在任中は上げないと小泉首相が公言していることだ。歳出削減が先という小泉首相の言い分も分かるが、事態は緊急を要する。財源問題は、社会保障制度の再構築だけでなく、財政再建にも直結するものだ。消費税率の引上げをせずとも、これらを立て直すことができるなら、その方法を具体的に示してほしい。口先だけの改革には皆さん飽きているようだ。
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