2003年09月26日-003
加速するサービス業の海外アウトソーシング
これまでサービス業は貿易の対象になじまないものといわれてきた。人の移動が物品の移動のように自由にならなかったからだ。ところが最近は、サービス業の海外アウトソーシングが加速しているという。紹介するのは丸紅経済研究所の杉浦勉氏の分析レポートである。レポートによると、情報通信技術の発達とブロードバンド化によって、株式市場の分析やアニメ製作、経理業務、コンピュータ・プログラミング、チップ・デザインなど、高賃金で専門的な各種サービスが海外へアウトソーシングされるようになっているという。
こうしたサービス業の中心的な受け入れ基地はインドである。多くのインド企業が欧米の映画会社からアニメ製作や特殊効果のコンピュータ技術サービスを請け負っている。また、金融・メディアグループのロイター社は、投資銀行のモニター画面に送る金融データを収集・分析するプロダクション施設をインドに開設する準備を進めている。インドは、地理情報サービスのようなニッチ部門でも世界のリーダーとなっている。インドのRMSI社は地図や衛星画像を分析して欧米の保険会社の地理的リスク評価を代行したり、自動車のためのカーナビ地図を作成したりしている。コストの優位性と質の高い英語力が利点となっている。
このようなサービス業のアウトソーシング現象は、欧米とインドの間だけではなく、欧米と南ア・タイ・マレーシア・シンガポールなどいわゆる環太平洋地域との間でも起こっている。タイでは、建築家のチームが英国の建設プロジェクトの設計図を製作し、三次元のコンピュータ・デザインを受託している。ブロードバンドを利用したサービス受託である。デロイト・リサーチの見通しによれば、北米・EU・スイス・日本・香港・シンガポールなど成熟した工業国・地域における金融サービス部門の全就業者数1300万人のうち、約200万人分の雇用が、2008年までに環インド洋地域に移転するとみられている。
日本のサービス市場は今はまだ規制と日本語の壁に守られているが、韓国や中国など近隣諸国での日本語の堪能者が増え、規制が緩和すれば、日本のサービス業もそれらの国へ広範囲にアウトソーシングしていく時代がやってくるかも知れない、と杉浦氏は予測している。
【ホームへ戻る】
|