通勤に係る支出と住宅に係る支出との負担関係がおおむね反比例になることから、通勤手当と住宅手当とを合算して住宅通勤手当として定額支給することを検討している企業もみられる。この場合、通勤費実費相当額(最高10万円)については、非課税の通勤手当として認められるか気がかりとなる。結論からいうと、通勤費の実費部分が通勤手当として区分識別できるのであれば、非課税の通勤手当として認められる。
つまり、給与明細書などで、通勤費の実費部分の額が通常の給与に加算して支給される通勤手当として区分識別できることが必要となる。通勤住宅手当の検討は、通勤費と住宅費が代替関係あるいは補完関係にあることに着目して、無秩序な通勤手当の支出の増大に歯止めをかける趣旨で、いわば通勤手当と住宅手当との合計額の上限を定額としようとするものと考えられる。
したがって、定額の範囲内で支給される通勤費の実費が、もっとも経済的かつ合理的と認められる通常の通勤経路や方法による運賃などの額であり、かつ、その部分の金額が区分識別し得るものであれば、通常の給与に加算して受ける通勤手当に該当するものとして認められる。ただ、その手当ての支給にあたって、通勤費の実費部分について通勤手当として加算した旨を明確に表示する必要がある。
なお、通勤手当と住宅手当の区分は消費税の関係からも必要となる。通勤手当のうち、通勤のために通常必要とする範囲内のものは、所得税法上非課税とされる金額を超えている場合であっても、その全額が課税仕入れに該当するものとして取り扱われる。一方、住宅手当については、事業者の事業遂行上直接必要なものとはいえず、給与等に該当することから、課税仕入れには該当しないという違いがあるからだ。