個人住民税の徴収事務は原則、市町村が行うことになっているが、徴収・滞納処分は特例として、都道府県知事が市町村長の同意を得れば、滞納額を引き継ぎ、都道府県が行うことができる。しかし、その滞納処分等にかかる範囲が狭いことから、2005年度地方税制改正のなかで、この特例の要件を緩和し、より税収確保を図ることになった。つまりは、個人住民税の徴税を強化した改正といえる。
これまでは、市町村から引き継いだ後に滞納処分等を実施する期間が「3ヵ月を超えない範囲内で定めた一定の期間」に限られており、大口・悪質な事案に対処するには時間が足りなかった。また、市町村から引き継ぐのは市町村などの地域単位となっており、個々の滞納事案にも対応できないなど滞納処分等にかかる範囲が狭い。これでは、せっかく引き継いでも効率的な滞納処分ができないとの声があった。
そこで、今回の改正では、滞納処分等の実施期間の上限を3ヵ月から1年に延長し、地域単位要件を廃止する。さらに、これまで過年度分の繰越滞納だけが対象となっていたところに、現年度分の滞納についても対象とすることができるようにする。これによって、都道府県が市町村から引き継ぐ滞納処分が、より効率的に行えることが期待されている。
個人住民税の徴税強化は、今回の改正でもフリーターなど短期就労者の課税漏れを防ぐため、企業が市町村に給与支払報告書の提出を義務化する改正も盛り込まれた。これらの改正措置は、個人住民税が、地方分権を推進するいわゆる三位一体改革のなかで、国税から地方税への税源委譲の受け皿となることにある。個人住民税の重要性が高まるにつれ、課税・徴収に両面での強化は今後とも高まる方向にある。