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実地調査中心の効率的な所得税調査が浮き彫りに

税務関連情報 - 2008年10月20日

 近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。2007事務年度の調査でも、調査件数では約3割の実地調査で、申告漏れ所得金額全体の9割強を把握しており、実地調査を中心とした効率的な所得税調査の姿が浮き彫りとなった。

 国税庁が15日に公表した2007事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前年度に比べ4.0%増の82万7千件に対して行われ、うち71.6%にあたる59万2千件から前年度より5.1%増の9635億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は6.4%増の1322億円だった。1件あたりの平均では117万円の申告漏れに対し16万円を追徴している。

 実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度比4.8%減の6万件だったが、うち88.3%にあたる5万3千件から同9.2%増の総額5828億円の申告漏れ所得を見つけ、1121億円を追徴。件数では全体の7.3%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体のほぼ6割を占めた。調査1件あたりの申告漏れは、前年度を14.1%上回る965万円と、全体の平均117万円を大きく上回る。

 また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、調査件数全体の21.2%の17万5千件行われ、うち81.7%の14万3千件から3371億円の申告漏れを見つけ、159億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは192万円。一方、簡易な接触は、59万1千件行われ、うち67.0%の39万6千件から436億円の申告漏れを見つけ42億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは7万円だった。

 このように、実地調査では、全体の約3割の調査件数で申告漏れ全体の9割強を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されている。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得高額業種は、「貸金業」が2957万円でトップ、「病院」(2830万円)、「風俗業」(2100万円)までがワースト3。