今年6月までの1年間(2005事務年度)における法人の黒字申告割合は31.9%と3年連続で上昇したが、約7割の法人が赤字という状況は変わりない。ところが、このような状況に便乗して実際は黒字なのに赤字を装う企業が後を絶たない。2005事務年度中に法人税の実地調査をした14万3千件のうち約3割にあたる4万3千件は無所得申告法人の調査に充てられ、うち約16%の7千社が実際は黒字だったことが判明した。
調査結果によると、実地調査した4万3千件のうち約67%にあたる2万9千件から総額6561億円にのぼる申告漏れ所得金額を見つけ、加算税額119億円を含む649億円の税額を追徴した。調査1件あたりの申告漏れ所得金額は1532万円となる。何らかの非違があった2万9千件のうち1万件は仮装・隠ぺいなど故意に所得をごまかしており、その不正脱漏所得金額は1697億円、1件あたり1695万円だった。
2005事務年度の無所得申告法人調査は、前年度に比べ2割増の実地調査を行っており、申告漏れや不正計算のあった件数もともに2割近く増えている。この結果、黒字となった法人が7千社あったわけだ。また、調査で把握された1件あたりの申告漏れ所得1532万円は、前年度より11.4%減少したとはいえ、法人全体の平均1164万円を大きく上回る。不正申告1件あたりの不正脱漏所得金額は1695万円とさらに高額だ。
このように、赤字申告や無申告だった法人でも調査してみると、一般の実地調査よりも高額な申告漏れが把握されることも少なくない。国税当局は、7割が赤字申告という状況のなかで、近年、特に赤字法人を装う企業に目を光らせて調査対象としている。300万社近い法人数を考えれば、「うちには調査は来ない」と高をくくりがちだが、国税調査は急所を押さえているといえそうだ。