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法定相続分課税方式から遺産取得課税方式へ

税務関連情報 - 2008年02月15日

 中小企業の事業承継円滑化を目的に、2009年度税制改正において事業承継税制の抜本的見直しが行われることが予定されている。その柱は、後継者が相続などで取得した自社株式の80%に対応する相続税の納税猶予制度の創設だが、この見直しとともに相続税の課税方式を、現行の法定相続分課税方式から遺産取得課税方式に改めることが検討される。来年度は事業承継だけでなく、相続税の大幅見直しに発展しそうだ。

 現行の法定相続分課税方式は、各人の課税価格を合計した相続財産総額をもとに、いったん法定相続分で相続税総額を算出した後、その総額を各相続人の実際の相続割合で按分して個々の負担税額を決定する。遺産分割の方法にかかわらず、相続税総額は変わらない。一方、遺産取得課税方式は、個々の相続人が実際に相続した遺産に直接課税するので、遺産分割の方法によっては、相続税総額が大幅に増えることがある。

 なぜ遺産取得課税方式の導入が検討されるかというと、現行の課税方式のままで自社株に係る相続税の納税猶予制度を適用すると、小規模宅地の特例と同様に減額分だけ全体の相続税も減る結果、事業承継相続人以外の相続人の相続税も軽減されてしまうことになるからだ。そこで、遺産取得課税方式を導入して、事業承継相続人以外の相続人には減税の恩恵が及ばないようにしようというわけだ。

 ただし、遺産取得課税方式が導入されると、事業承継に関係のない一般の相続にも大きな影響が出てくる。例えば、法定相続人が兄弟2人で、兄がすべての財産を相続した場合などは相続税総額が大幅に増えることになる。実際の検討にあたっては、基礎控除の方式や額、相続税率なども見直される可能性が強く、事業承継税制の抜本改革が相続税の大幅見直しつながりそうな状況にある。その動向が注目される。