個人消費は、実質GDPの構成比で約55%(2004年度実績)と最大のウェイトを占めるなど、日本経済の動向をみるうえで、きわめて重要な需要項目だが、ここ数年、景気の如何にかかわらず、おおむね持続的に推移している。中小企業金融公庫総研では、「最近の個人消費の動向について」と題した調査レポートにおいて、そうした好調な個人消費を支える要因を分析し、今後も個人消費は総じて底堅く推移していくものと予想している。
レポートによると、個人消費の現状は基調的に緩やかな伸びが続いており、伸び率は高くないが、景気の動向にかかわらず底堅い動きがうかがわれるとみている。個人消費の動向と関連の深い雇用・所得環境をみると、雇用環境は改善基調が続いているが、雇用の増加は主としてパート・派遣などの相対的に賃金コストの安い非正規雇用であり、所得環境は依然として厳しい状況が続いている。
消費性向は、所得環境の改善が遅れるなかにあっても高水準で推移している。特に、60歳以上の高齢者層における水準の高さが目立つ。60歳以上の高齢者層の消費支出は底堅く、平均消費性向の高いこの層のウェイトが世帯のうちで急速に上昇していることによって、全体としての消費支出が下支えされている可能性が高いと分析している。
20~29歳及び60~64歳の年齢階層は、選択的支出(教育費やパック旅行など比較的裁量の余地が高い支出)に対する消費意欲が旺盛だ。また、60歳以上の高齢者層のウェイトの上昇が最近の底固い消費に寄与していることや、今後も高齢者層が消費の主要な担い手となる可能性が高いことなどを確認。供給側が各年齢階層のニーズをつかんだ商品やサービスを提供できれば、さらに消費が促されるとみている。
今後については、1)企業の雇用調整が一服した気配もうかがわれ、企業業績の回復が所得環境の改善を通じて、年齢階層の偏った消費のすそ野を広げるといったことも展望できること、2)高齢化の進展に伴い、引き続き高齢者が今後の消費を下支えしていくと期待できることなどから、レポートは「総じて個人消費は底堅く推移していく」と予想している。高齢者を中心とした潜在的な消費ニーズの顕在化が企業にとって重要になる。
調査レポートの詳細は↓
http://www.jasme.go.jp/jpn/result/c17_61.pdf