これまで、役員に対する営業の歩合給や能率給の支給は、使用人に対する支給基準と同一の基準によっているときは、臨時的な給与としないで定期の給与とする通達の取扱いがあった。ところが、2006年度税制改正において役員賞与が損金算入となるケースは、1)定期同額給与、2)事前確定届出給与、3)利益連動給与の3つに整理されたことから、これらの要件にそぐわない定めは廃止されることになるようだ。
役員に対する歩合給や能率給の損金算入を定めた法人税基本通達(9-2-15)は、そもそも役員に対し残業などの超過勤務手当を支給している場合、使用人兼務役員に対するものは定期の給与とすることを主に定めたものだ。しかし、企業実態にあまりみられない役員に歩合給を支給するケースでも損金算入が認められると受け取れる文面だったことから、国税当局でも疑問視していた面がある。
今回の役員賞与の見直しにおいて、役員給与のうち損金算入が認められるものは役員の職務執行前にあらかじめ支給時期や支給額が定められていたものに限られている。そこで、役員に対する歩合給等の支給は、事前に定められていたものとの要件にはそぐわないことから、国税庁は、法人税基本通達9-2-15は今年4月以降開始する事業年度から適用できないこととなるとの見解を明らかにしている。
もちろん使用人兼務役員に対する歩合給や能率給の支給は、他の使用人と同じ支給基準であればこれまで通り損金算入できる。一方、役員に対する歩合給等を損金算入とするためには利益連動給与とする方法があるが、同給与は同族法人には適用されないため、一般の中小企業が役員に支給する歩合給等を損金算入する道は事実上なくなった。これまで役員に対し歩合給等の支給実態がある企業は注意が必要となる。