減価償却制度が約40年ぶりに抜本的に見直されたことにより、経済産業省では、設備投資の費用を早期に回収(償却)することが可能となるため、資本コストが低下するとともに、減価償却費の増加によって企業のキャッシュフローが増加するとみている。同省の試算では、制度見直しにより、当初3年間で、損金算入額が約8億円増加し、約3億円(実効税率40%)のキャッシュフローが増加するとしている。
減価償却制度の改正による企業収益への影響を試算したのは、野村総研の金融経済研究所が11日に発表したレポート(「2007~2009年度の企業収益見通し」)である。レポートは、減価償却制度の改正が2007年度の予想経常増益率にどの程度影響があるかを業種ごとに試算。制度改正前の償却基準を採用した場合のNOMURA400(除く金融業)の2007年度予想減価償却費は19.3兆円となった。
これが、制度改正後基準では、2007年度予想減価償却費が20.1兆円となっており、制度改正で追加的に8560億円の減価償却負担が発生すると見込んでいる。これにより、制度改正前基準の2007年度NOMURA400(除く金融業)の予想経常増益率は11.4%と試算され、改正前基準の同8.4%と比較すると、制度改正が予想増益率を2.9%ポイント下方修正される要因となったとの考えを示している。
NOMURA400(除く金融業)に対する影響度(2.9%)を上回ることが見込まれる業種として、化学、鉄鋼・非鉄、電機・精密、サービス、通信、運輸、公益を挙げている。資本集約型産業で総資産に占める有形固定資産の比率が大きい業種(化学、鉄鋼・非鉄、運輸、公益など)や、技術進歩のスピードが速く設備の入れ替わりが激しい業種(電機・精密、通信など)が該当するケースが多いようだと指摘している。
※NOMURA400とは、野村證券金融経済研究所が作成している株価指数で、日本の株式市場を代表する 400 銘柄から構成されている。