ゼイタックス

経営関連情報 (2004/10/29)

潜在成長率を低下させる「ニート」の増加

 アルバイトなどで暮らすフリーターの増加が社会問題となっているが、その陰に隠れて見えてこなかった「ニート」の急増が明らかになった。ニートとは、働くことや学ぶことを放棄した通学と家事手伝いを除いた若者(15~34歳世代)のこと。第一生命経済研究所が発表したニートの急増が日本経済に与える影響を分析したレポートによると、87.3万人のニートが2000~05年の潜在成長率を年率▲0.25%下押しするという。

 国勢調査によれば、2000年のニート人口は75.1万人で、15~34歳人口の2.2%を占める。95年調査と比べ2.6倍への規模に膨らんだ。レポートがいくつかの前提をおいて試算したところ、ニート人口は2005年には87.3万人とさらに膨らむ。2010年には98.4万人、2015年には109.3万人と100万の大台を突破、予測期間最後の20年には120.5万人に到達する見込だ。

 ニートが経済・社会に及ぼす影響は、ミクロ面からは個人間の所得格差の問題がある。シミュレーションでは、ニートの継続期間が5年の場合、その人の生涯賃金は標準労働者の74.4%程度の水準まで低下する。一方、マクロの需要面からは、一定期間収入の途絶えるニート層の消費活動が抑制され、推計の結果、2003年の個人消費はニートにより▲0.26%下押しされたとみている。

 さらに、中長期的にニートが日本の潜在成長率に与えるインパクトを計測すると、ニートが継続的な就職活動を行わないことで、2000~05年の潜在成長率は、労働投入効果により年平均▲0.18ポイント、資本ストック投入効果により同▲0.07ポイント、合計▲0.25ポイント下押しされる。潜在成長率下押し幅は、その後もニート人口の増加に伴い当然大きくなっていく。

 レポートは、このような試算結果から、将来、労働力不足が表面化するとき、労働市場に参入してこないニートの増加は、潜在的に経済成長率の抑制要因ではなく、現実の経済成長率の抑制要因となるとの危惧を示している。そこで行政に対し、良質な労働力を維持し、潜在成長率を高めていくためにも、予防的なメンタルヘルスケアの充実などニート問題に対する早急な対応を要望している。