わが国財政は大幅な赤字が続き健全化への道筋は不透明。その一因は税収が継続的に減少してきたことにある。その要因分析と今後の見通しを示したのはUFJ総研のレポート。現在の危機的な財政を改善するには歳出削減だけでは限界があり、増税が実施される可能性が高く、さしあたって消費税の引上げや所得税における定率減税の廃止、各種所得控除の見直しなどが検討されると予測している。
レポートによると、バブル期を頂点として税収の落込みが続いており、その原因を景気の低迷に求めることが多いが、国全体の経済規模を表すGDPの動きと比べてみると、税収は景気の動向以上に落ち込んでいる。バブル期の税収増は地価の高騰や金利の大幅な上昇によって押し上げられていた部分が大きく、その後の減少は大規模な減税やバブル崩壊の後始末といった要因によって下押しが起こっていたと分析している。
所得税では、景気の低迷を反映した給与総額の減少のほかに、累次の大規模な減税の影響が大きい。法人税では、バブルの後始末としての特別損失の計上増や、赤字企業の繰越欠損金の増加が課税所得を押し下げたため、経常利益の回復に比べ税収が下押しされる要因となった。他方で消費税は、国内の財貨・サービスの取引全般を広く課税対象としていることから、97年の税率引上げによる税収規模の拡大後、底堅く推移している。
2010年度までの国の一般会計の税収動向を試算すると、所得税は給与総額の伸び悩みもあって小幅な増加にとどまるが、法人税は企業の財務体質の改善や収益力の向上に伴って増加する。消費税は経済規模に沿って安定的に推移し(2007年度に5%から7%への税率引上げを想定)、2010年度の税収は標準ケースで約56兆円程度、所得税の定率減税を廃止するケースで約58兆円に達すると見込む。
現在の国の財政構造は、国債関係の歳入歳出を除いた基礎的な収支(プライマリーバランス)だけでみても約20兆円の赤字だ。もちろん、歳出削減での赤字減らしの努力も続けられようが、近年は社会保障費を中心に非裁量的な支出が増加する傾向にあり、歳出側の努力だけでは限界がある。目を見張るような経済成長が起こらない限り、近い将来における増税の実施が現実味を帯びてくる、との結論となる。