経営環境が厳しさを増すなか、人材開発部門には、中長期的な視点から人材開発の必要性や重要性を説き、組織能力の継続的な向上を担保する役割を果たすことが求められる。産業能率大学総合研究所が、従業員300人以上の企業を対象に実施した「企業の人材開発に関する実態調査」結果(有効回答数233社)によると、正社員への一人あたり平均教育投資額は年間5.4万円だった。
正規従業員規模が大きいほど一人あたりの教育投資額が高い傾向にあり、教育投資のおよそ半分が非管理職に充てられている。管理職のなかでは、課長クラスへの投資割合が高い。また、人材開発部門の業務領域は、従来どおりの「人事制度連動」が中心で、「ライン部門のパフォーマンス向上」や「キャリア開発」などの領域への業務拡大は進んでおらず、人材開発部門の使命や役割を限定的にとらえている企業が多い。
次世代リーダーの選抜型教育を実施している企業は4割強、実施予定も含めると66.1%に達する。選抜対象は「課長クラス」がもっとも多く、1回あたり10~20人を選抜する企業が多い。選抜方法は、公募は少なく、過去の人事評価やラインの推薦によって選抜する例が多い。年間予算の平均は1234万円で、2006年調査よりも減少している。教育内容は「経営管理知識」、「リーダーシップ」、「トップとの対話」等を半数以上が実施している。
なお、人事制度の体系は、職種別・コース別に等級・評価・賃金制度を適用する企業と、全社で一律の制度を適用する企業が拮抗している。評価・賃金制度については、年齢や勤続年数、本人の能力など属人的な条件を重視する企業よりも、役割の遂行度や成果、仕事内容を重視する企業が多い。昇進や昇格も成果やポテンシャルで判断されており、仕事中心の実力主義への移行が進んでいるとみられている。
同調査結果の要約は↓
http://www.sanno.ac.jp/research/hrd2008.pdf