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経営関連情報 (2007/10/26)

老人福祉・介護事業の倒産が前年同期比81%増

 東京商工リサーチが発表した「老人福祉・介護事業の倒産状況」によると、2007年1~9月の老人福祉・介護事業の倒産件数は、前年同期比81.2%(13件)増の29件となった。最近の老人福祉・介護事業の倒産は、年間ベースで2000年3件、2001年3件、2002年8件、2003年4件、2004年11件、2005年15件、2006年23件と推移してきたが、2007年はすでに9月末時点で前年を6件上回っている。

 負債総額は、前年同期比35.6%減の68億2300万円にとどまったが、最近10年間では年間ベースで2006年に次ぐ水準で推移。また、老人介護・福祉事業倒産の内訳をみると、2006年は施設系の「老人福祉・介護事業」が11件で、「訪問介護事業」は12件と前年の4件から急増した。これに対し2007年は、9月末時点で「老人福祉・介護事業」が16件、「訪問介護事業」が13件と、施設系の老人福祉・介護事業の倒産が増えている。

 こうした老人福祉・介護事業の倒産増加の要因に、2006年の介護保険法の改正がある。訪問介護事業大手による介護報酬の不正請求が社会問題となったが、高齢者の増加に伴い、介護保険の総費用が制度開始時点より2倍に増加した。財源不足に危機感を持った政府は、2006年の法改正によって、給付抑制のため事業者へ支払う報酬の単価を引き下げた。これらが介護保険からの給付に依存する訪問介護事業者を直撃している。

 また、老人ホームなどの施設介護事業でも、介護保険施設における居住費及び食事費が原則、全額利用者負担になると同時に、施設に給付されていた基本食事サービス費が廃止されたことで、減収に転じる事業者が多くなり、施設利用者の自己負担額上昇による退所や食費など費用の徴収難の増加が経営を圧迫。さらに、入居者確保の競争激化や自治体の開設規制の強化などで年々、経営環境が厳しくなっており、今後の動向が注目される。