景気の回復が続くなか、企業部門の改善が家計部門へ波及しつつある。雇用状況も増加傾向が続いているが、これまでの回復は、企業側のリストラによる人件費削減目的などを背景に、雇用者全体では増加しつつも、非正規雇用中心の増加だった。一方で、団塊世代の大量退職や、景気回復の長期化による企業側の雇用不足感の高まりなどから、正規雇用者増加の兆しもみられる。
そこで、先月5月に発表された労働力調査(詳細結果)で正規雇用者が5期ぶりに増加した背景について考察するのは内閣府のレポートである。労働力調査によると、正規雇用者数は2006年1~3月期に前年同期差で7万人の増加と5期ぶりにプラスとなった。産業分類上の「公務」を除いたベースでみると、正規雇用者数は、2006年1~3月期に同30万人増と統計上把握が可能な2004年以降で初めての増加となった。
産業別の内訳をみると、製造業が前年同期差33万人増と2期連続、教育・学習支援業が同17万人増と4期連続、情報通信業が同8万人増と6期連続の増加。規模別でみると、従業者数1~29人の事業所が同32万増と9期ぶりのプラスとなり、中小企業にも正規雇用者の増加の兆しがみられる。また、年齢別にみると、15~24歳で同2万人の増加と6期ぶりにプラスとなった。ただし、25~34歳は同21万人減と減少が続いている。
同時に発表された2006年4月の労動力調査によると、15~24歳の失業率は9.0%と若年層の雇用はいまだ厳しい。一方、非正規雇用は2006年1~3月期に72万人増加している。その結果、雇用者数全体が増加するなかでも、正規雇用比率は低下している。内閣府のレポートは、今後、景気回復に伴い、正規雇用者数の増加がこのまま続くかどうか、さらに正規雇用者比率の低下傾向に変化が生ずるかについても注目している。