一時のリストラや新規採用削減で人員が減っているのに仕事は増えて、社員の働く時間が伸びているという職場は少なくない。裁量労働制や成果主義人事制度の導入が長時間労働を助長しているという声もある。リクルートワークス研究所が男性正社員を対象に実施した「ワーキングパーソン調査(長時間労働の問題)」結果(有効回答数6754人)では、長時間労働が若手・中堅社員にかたよっている実態が浮き彫りになった。
同調査では長時間労働を「週60時間以上働くこと」と定義したが、年齢別に長時間労働者の割合をみると、「25~29歳」(27.8%)、「30~34歳」(28.3%)、「35~39歳」(26.3%)の層で週60時間以上働く人が3割近くにのぼった。役職ランクと管理職、専門職ごとに長時間労働者の比率をみると、「係長・主任・班長クラス」の管理職が27.4%でもっとも高く、このクラスの「25~29歳」層は実に47.8%に達している。
また、成果主義と答えた人と男性正社員全体の年齢層別長時間労働者比率を比べてみると、成果主義の「18~24歳」、「25~29歳」層での長時間労働者比率が、男性正社員全体に比べ高く、30代より上の層になるとその差は縮小している。成果主義を採用する会社の若手社員で、長時間労働者比率が高まる傾向がある。同様に、裁量労働で働く人の長時間労働者比率も「25~39歳」層で全体より目立って高くなっている。
一方、長時間労働と能力の関係に着目してみると興味深い事実がみえてくる。「25~29歳」層で専門知識や技術・ノウハウ、対人能力、対自己能力、対課題能力が「大いに高まった」との回答比率は、労働時間が長いほど高まっている。労働時間が長いほど、やはり能力向上につながる経験の機会も多くなるということだろう。
とはいえ、長時間労働にはマイナス面も大きい。例えば、週労働時間が長いほど「精神的ストレスを感じる」割合が高くなるという調査結果(労働政策研究・研修機構)も出ている。特に「週50時間以上」では7~8割が精神的にストレスを感じると回答している。ワークス研究所は、「長時間労働を通じての能力向上」への固執は知恵がないと指摘。労働時間と能力開発のバランスのとれた働き方の設計を提案している。
同調査結果の詳細は↓
http://www.works-i.com/special/tyosa-no-mori_11.html