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税務関連情報 (2007/05/18)

急浮上した「ふるさと納税」制度

 地方税である個人住民税の一定割合を、生まれ故郷などの自治体に納税することを納税者が選択できる「ふるさと納税」制度が急浮上して議論を呼んでいる。5月初めに構想を打ち出したのは菅義偉総務相だが、安部首相も導入に前向きな姿勢をみせ、政府が6月に閣議決定する「骨太方針2007」に明記し、2008年度税制改正で実現を図る方針を打ち出したことから、にわかに現実味を帯びてきた。

 現行の個人住民税制度は1月1日現在に住民票がある自治体に納付することになっており、納税者が自治体を選択することはできない。菅総務相の構想では、6月徴収分から一律10%となる個人住民税の1割程度を「ふるさと」への納税規模と想定している。「ふるさと」納税は、税源の不足する地方の財政力を補完する意図がある。地方税の住民一人あたりの税収格差は、最多の東京都と最少の沖縄県で3.2倍(2005年度)もある。

 こうした税収格差を是正するための制度だが、創設への課題は少なくない。その代表的なものとして、地方税には、納税者が自治体から受ける行政サービスの対価として支払うという受益者負担の原則がある。ふるさと納税制度が導入されれば税収減が確実な東京都の石原都知事は「聞こえはいいが、税の体系としてはナンセンス」と批判。税法の原則をねじまげてまで新税を創設することができるのか、という疑問の声もある。

 こうしたことから、寄附金控除の拡充によって、納税者が故郷に寄附した一定割合を納税額から差し引く税額控除を主張する案も出ている(中川自民党幹事長)。対象を住民税だけに限れば、国税に影響はないため財務省も受け入れやすい。「ふるさと納税」制度も含め、最終的には、年末にかけての税制改正の議論の中で決定することになるが、参院選も終わった後だけに、どこまで具体化するのか先行きは不透明だ。