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みなし譲渡損失の特例は特定口座保管の株式が対象

税務関連情報 - 2009年07月10日

 未曾有の“上場企業倒産ラッシュ”となった2008年に続き、2009年も、国内不動産市場の長期低迷や景気の急速な悪化を受け、上場企業の倒産が散発している。上場企業が倒産した場合、その株式に係る税務上の取扱いは、個人と法人では異なる。法人が所有する上場株式の場合、その上場会社が倒産して清算手続きなどにより株式の価値を失ったときは、簿価を法人の損金に算入することができる。

 一方、個人が所有する上場株式の場合、以前は無価値化しても損失はなかったものとみなされていたが、2007年4月1日以降に特定口座内に保管されている上場株式は「みなし譲渡損失の特例」を適用することが可能になった。特定口座に保管している上場株式が倒産して上場廃止となって、特定管理口座に移管され、その後清算手続きなどで無価値化した場合には、簿価を譲渡損とみなして、分離譲渡所得の金額から控除できる。

 このみなし譲渡損失は、その年限りで、翌年以降への繰越控除の適用はない。また、特定管理株式が価値を失って譲渡損失とみなすことができるケースとしては、(1)清算結了、(2)破産手続き開始の決定、(3)更生計画に基づく100%無償減資(発行済株式の全部を無償で消滅させること)、(4)再生計画に基づく100%無償減資、(5)特別危機管理開始決定(いわゆる銀行の国有化)のいずれかの場合に限られている。

 この特例措置は、特定管理口座で保管されている特定管理株式に限られ、一般口座や自宅などで保管されているタンス株は対象とはならない。通常は、一般口座に入れておいても、所有する株式が倒産して管理ポスト入りした段階でわずかな株価で売却して株式の譲渡損を出すのだが、それを忘れて上場廃止となってしまうと、一般口座の場合は譲渡損失として他の株式等の譲渡益と通算することができなくなるので注意したい。