デフレ不況のなかで多くの業界が厳しい価格競争を繰り広げているが、酒類業界はそのはしりともいえる。国税庁では、1998年4月に「公正な競争による健全な酒類産業の発展のための指針」を定め、原価割れの販売や不透明なリベートなど公正なルールに則しているとは言いがたい取引に目を光らせている。その一環として、毎年実態調査を実施しているが、このほど昨年6月までの1年間(2002事務年度)の調査結果を公表した。
調査は、約20万1千場ある小売業者・卸売業者・製造業者の酒類販売場等のうち、著しく廉価で継続的に販売しているなど取引に問題があると考えられた1405場を対象に行われた。その結果、93.6%にあたる1315場で、総販売原価を下回る価格で販売するなど「合理的な価格の設定」がされていないと認められた。
特に、一般消費者に販売している小売業者は、1084場のうち1072場と99%が日常的に廉価販売をしており、うち1割強(145場)が仕入れ価格よりも低い価格で販売していることがわかった。例えば、ある小売店は、競合他店の販売価格に対抗するため、清酒・ビール・発泡酒について、仕入れコストや利益を度外視して販売価格をつけていた。その結果、常に総販売原価割れ販売となっており、合理的な価格の設定をしていないと認められた。
調査結果ではほかに、特定の取引先に対して不透明なリベート類を支払うなど「取引先等の公正な取扱い」が行われていないと考えられるものが製造業者や卸売業者を中心に14.1%(198場)、「公正な取引条件の設定」がなされていないと考えられる取引があるものが1.7%(24場)あった。
国税庁では、このような問題がある取引などが認められた場合は、その改善のための指導を行っている。今後も、酒類販売の公正な取引環境の整備に向け、酒類業界の自主的な取組みを促すなど、指導・監視を積極的に進めていくこととしている。