これからの新しい資産運用手法として有料老人ホームなどの介護事業が一部の土地オーナー間で注目されている。少子高齢化社会を迎えて空室リスクがある従来の賃貸型マンションなどに比べ確実な需要が見込まれるからだ。この高齢者介護事業に対して、金融機関側からも「伸びる産業」として注目に値するとの意見がある。信金中央金庫総合研究所の分析レポートだ。
レポートによると、わが国の高齢化は今後10数年の間にさらに急進展し、2015年には3300万人弱に達するが、このうち要介護者は500万人(その約半分は痴呆性高齢者)に及ぶと推計されている。一方、特別養護老人ホームなどの介護保険施設は70数万人分まで整備されてきたが、現状の伸びが続いたとしても、2015年に110万人分前後が限界と思われる。また、今後は住居費などの負担が求められ、割安感も薄れていく方向にある。
急増する介護需要に対して、この間、訪問介護や通所介護などの在宅サービスが飛躍的に普及してきたが、今後は施設サービスの不足を補う形で、介護付き有料老人ホームやケアハウス、痴呆対応型のグループホームなどの「居住型サービス」が急速に伸びていくと予測される。これは、在宅サービスだけでは必ずしも支えきれないうえに、特に痴呆性高齢者には、家庭的な雰囲気を維持した「ユニットケア」の有効性などが認められてきたためでもある。
金融機関においては、不動産担保や保証人に過度に依存した貸出態度の是正が求められており、リレーションシップバンキングに基づく創業・新事業支援への取組みが本格化しつつある。その際、総花的に取り組むよりも、「伸びる産業」をひとつ重点分野とするアプローチが必要ではないか。そのひとつとして、上記のような観点から、高齢者介護事業が十分注目に値する理由があるというのである。