2003年06月13日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(59)
『所得税における水平的公平性について』(20)
★税務執行上の公平性確保は緊急課題
給与所得控除の意義は改めて見直されるべき時期にきているとの報告書の結論は認めよう。一方、所得捕捉の格差について報告書は、クロヨンと称される所得捕捉率の格差について近年のデータを用いて検証を行った結果、いまだにその存在は否定できないものの、その格差はかなり縮小されてきたというのが結論だ。その背景として、税務執行体制の強化や、農業分野における構造変化、所得標準の廃止などの要因を挙げている。
しかし、この結論については、前々回(6月4日発行号)において、税務統計と国民所得統計で格差を検証するという大前提が疑わしいということを指摘した。報告書が「真の所得」とする国民所得統計は、脱税が7割超を占める地下経済がすっぽりと抜け落ちている。そもそも、所得捕捉が問題となっている議論の検証に、脱税が抜け落ちている統計を比べても意味がないことは一目瞭然である。
だから、所得捕捉率の格差はかなり縮小したという報告書の結論には到底賛成できない。したがって、報告書も指摘するように、「給与所得控除の縮減を考える際には、クロヨン批判などの税務執行上の不公平感の解消が必要」との要請は、おざなりなものでなく絶対的なものと考える。
個人の負担が重くなることを受け入れるにしても、それは、徹底した歳出削減が同時並行に行われることが前提であることと同様に、所得捕捉の面で不公平を解消することも絶対的に必要なことだ。そうでなければ、我々は、納得して“広く薄い”負担を受け入れることはできないだろう。税務執行上の公平確保への要請は緊急課題なのである。そこで、いよいよ納税者番号制度の導入を公平性確保の切り札として提案するわけである。
(続く)
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