中小企業が新たな事業活動を展開し、取引範囲を拡張する行為は、業容拡大への結実が期待されるだけでなく、域外購買力の獲得や住民生活の質的向上などを通じて、根ざす地域の経済再生・発展にも資するものである。こうしたことを踏まえて、販売網・仕入網の側面から中小企業による広域展開の動きを概観するとともに、さらなる充実化が予想される政府部門の関連施策にスポットを当てたのは信金中央金庫総研のレポートである。
レポートによると、近年、中小企業全般において販売網・仕入網を拡張させる動きが優勢となっている。このなかには、1)新しい製品・サービスの開発や、2)これまで取引のなかった仕入先の開拓など、“イノベーション”ともいうべき活動に取り組み、業容拡大を実現したところも少なくないと推察。こうした動きは、広く域外を市場とする製造業や卸売業、小規模な市町村に本拠を置く企業においてやや強いものとなっている。
また、政府部門が最近打ち出した関連施策・ビジョンのなかには、広域展開を志向する中小企業にとって追い風となり得るものも少なくない。具体的には、IT戦略本部が発表した「IT新改革戦略」や国土交通省が提唱する「二層の広域圏」構想、経済産業省主導による「新連携支援事業」、「地域資源活用企業化プログラム」などである。
販売・仕入エリアを拡張した企業の相当程度が売上増を達成しており、この点、イノベーション(新たな事業活動の展開)の動きを反映している面もある。また、中小企業による取引範囲の広域化は、根ざす地域の経済再生・発展に資するものでもある。
少子高齢化の進行、財政面での制約の強まりなどが確実視される状況下、政府は「地域経済の自立的な発展のためには、中小企業の活性化が不可欠」との着想に基づき、引き続き新市場開拓や新商品開発などのアクティブな動きに対する支援体制を充実化させる公算が大きい。レポートは、各企業においては、こうしたことも念頭に置きつつ、有効な経営方針・経営戦略を策定することが望まれるとしている。
同レポートの詳細は↓
http://www.scbri.jp/PDFsangyoukigyou/scb79h18F10.pdf