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税務関連情報 (2004/11/29)

社保診療報酬の所得計算特例の適用率は38.6%

 租税特別措置は特定の政策目的を実現するための政策手段であるから、役目が終われば廃止されるはずだが、既得権としてしぶとく生き残っているものも多い。財務省の試算では、特別措置の適用による2003年度における税収の減少見込み額は約3兆5590億円にのぼる。会計検査院では、2003年次に法人関係の措置法の実施状況を検査したが、2004年次は社会保険診療報酬の所得計算の特例を選定し検査した。

 同特例は1954年に創設されたものだが、現行の特例は、小規模零細医療機関の経営の安定を図ることが目的とされ、社会保険診療報酬が5千万円以下の場合は、実際の経費ではなく、所得に応じて57%~72%を乗じた概算経費を必要経費にできる。2003年度の減収見込み額(財務省試算)は約220億円とされている。ほかの所得計算では採用されておらず、課税の公平の見地から廃止を求める意見は少なくない。

 会計検査院の検査結果によると、100税務署における2002年分の社会保険診療報酬が5千万円以下の医業等事業所得者4334人のうち、特例適用者は1672人、特例非適用者は2662人で、その適用率は38.6%だった。特例適用者の平均概算経費率と平均実際経費率との差は18.3%、平均軽減税額は約139万円だった。また、特例適用者は特例非適用者と比べると、平均収入金額は同じぐらいだが、平均実際経費は約908万円少なく、平均所得金額(特例適用前)は約994万円上回っている。

 一方、特例に係る課税の執行状況については、特例適用者1739人(別途抽出した67人との合計)の2002年分の検査をした結果、特例を適用した場合の青色申告特別控除額計算の誤りで控除額を過大としている者など85人が見受けられた。会計検査院では、国税庁に対し、特例をはじめ特別措置に係る課税の執行について、より適正に行うことを求めている。