国税庁は、酒類業者に対し、公正なルールに則していない取引があった場合には合理的な価格設定を行うように指導するなどしているが、同庁が昨年6月までの1年間(2006事務年度)に実施した酒類の取引状況等実態調査では、調査対象の96%の酒類販売場等において総販売原価を下回る価格で販売するなど、利益を度外視した価格設定がみられた。同庁は、これらの酒類販売場等に対し改善指導を行っている。
国税庁は、2006事務年度に約22万場の酒類販売場等のうち、チラシ広告などの情報から取引に問題があると考えられた1266場を一般調査した。その結果、全体の96.0%にあたる1215場において「総販売原価を下回る価格で販売するなど合理的な価格設定がされていない」ことがわかった。一般的には酒類の販売価格は、仕入価格(製造原価)、販売費及び一般管理費などに利潤を加えたものとなるはずとされている。
例えば、スーパーマーケットを営むA社は、常時、総販売原価(販売費・一般管理費比率:13.8%)に比べ、ビール350ミリリットル缶1ケースあたり281円、発泡酒同330円、その他の発泡性酒類同284円下回る価格で販売していた。また、仕入価格の値上げがあった後も、特売時において、仕入価格の値上げ前の特売時販売価格で販売を継続したため、仕入価格を下回る価格で販売していた。
これらの問題があった酒類販売場等に対し国税庁は、こうした原価割れ販売を続けると、事業者が将来にわたって健全な経営を維持することが難しいとの観点から、合理的な価格設定を行うよう指導している。そこには、合理的な価格設定を無視した原価割れの商品を、顧客誘引のためのおとり商品として使うことは、致酔性などの酒類の特性を考えると弊害が大きいとの判断がある。
取引に問題があった事例は↓
http://www.nta.go.jp/shiraberu/senmonjoho/sake/koseitorihiki/071228/02.pdf