税 務 関 連 情 報

2003年05月09日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(51)

『所得税における水平的公平性について』(12)

★事業所得における必要経費の二重控除と所得分割

 給与所得控除の根拠について、現在の税制調査会の考え方は、勤務費用の概算控除としての合理的な水準を見極めつつ見直すとして、表面的には所得捕捉率の格差は給与所得控除の構成要素に含まれていない。しかし、「事業経営者の所得捕捉が十分に行われていないのではないか、といった不公平感が根強く、これを念頭におくべきだ」とし、暗に所得捕捉率格差の調整としての意義を認めていると解釈することもできる。この問題の検証は後になる。

 最後に、給与所得控除に対応する、事業所得の必要経費についての考察である。事業専従者に支払う給与については、その専従者の給与収入となる。そこで、所得分割の批判とともに、経費控除は事業主の事業所得算定の際に控除されていることから、給与所得控除の適用は必要経費の二重控除になるとの批判がある。

 経費の二重控除の問題については、前出の総務省の資料から給与所得者の経費相当支出額の内容をみると、背広代や身の回り品・書籍・小遣い(内容不明)など、一概に事業所得計算上の必要経費に入るとは考えられない(給与所得者の経費としても同様)項目も多い。また、失業の不安、有形無形の拘束、成果と給与額の不一致といった要素についても、家族従業員の給与所得にはすべて存在しないとは言い切れないと指摘している。

 つまり、報告書は、事業所得者が世帯内における所得分割がなされても、それに勤労の実態がある限り、同条件にある共働きの給与所得者と比較して、その相対的地位は変化しないというのだ。勤務実態がない場合、実際には働いていない家族に給与を支払っている場合は、脱税であり、そうなると税制の問題ではなく徴税の問題いうことになる。

(続く)

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