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税務関連情報 (2006/08/25)

税収“大化け”で増税なしで財政健全化?

 政府が7月の「骨太方針」で決めた財政健全化策では16.5兆円の財源捻出が必要だ。壁は相当高いようにみえるが、税収の“大化け”で財政は思わぬ好転を示す可能性がある、とみるのは日本経済研究センターの猿山澄夫氏のコラムである。氏は、政府の試算の前提である税収の見積もりに疑問を呈している。政府は、税収と名目GDP(国内総生産)の伸び率の比である「弾性値」を控えめに1.1と想定している。

 GDPの裏側には、家計や企業の所得があるから、そこにかかる税金がGDPと同程度に伸びるというのは自然な想定に思える。しかし、今後5年程度でみると、税収は「隠し球」が3つある。それは、利子と配当所得、法人税の「繰越欠損金」だ。家計の利子所得は、1990年度に36兆円を上回っていたが、2004年度は4兆円台。今後、金利が上がり始めると、利子所得とそれにかかる税金は2倍、3倍という単位で増える可能性がある。

 配当はすでに急増している。家計の配当所得は2001年度からの3年間で2倍に増えた。現在10%の軽減税率が2008年度から20%に引き上げられると、税収が膨らむ公算は大だ。また、大化けする可能性があるのは法人税である。これまで企業は、不況時の赤字を繰越欠損金として抱え、利益が出ても課税所得を小さくしてきた。それが今後は、繰越欠損金が減っていき、利益が横ばいでも納税額が増える局面に向かうと指摘する。

 コラムでは、こうした税収の動きをモデルに織り込み、2005年度までを予測した結果、税収の弾性値は、2005~11年度の間で所得税が定率減税の廃止を含めて2.3、法人税が1.8など、税収全体では1.5と政府の想定を大幅に上回った。こうした税収の“大化け”があれば、「裁量的支出がGDP並みで伸びる場合」(歳出増加型)という緩い歳出を想定しても、2011年度の基礎的収支赤字は3.2兆円とGDPの0.5%に収まる。

 一方、公共投資や政府消費などの裁量的支出や公務員人件費を伸び率ゼロに抑える場合(歳出抑制型)を想定すると、収支は足早に好転し、2011年度には黒字化する。増税なしで、目標が達成できる計算となる。今後の大きな焦点となっている消費税率引上げが不要となれば大歓迎だが、前提は税収の“大化け”にある。決して不可能な見通しではないことから、今後の税収の動向が大いに注目されよう。

 同レポートの全文は↓
 http://www.jcer.or.jp/research/kenrep/kenho0801.pdf