2003年08月01日-002
高齢化の進行を背景に国全体での貯蓄超過は持続
日本の家計貯蓄率は、91年(14.6%)をピークに2001年には6.9%まで急低下し、過少貯蓄が問題視されている米国の水準(2001年2.3%)に接近した。低下が続けば、国全体として貯蓄不足となり、国内だけでは財政赤字を解消できなくなるとの懸念の声もある。このような家計貯蓄率低下の背景と中期的な展望を示し、5年程度の中期でみれば、国全体の貯蓄超過(経常収支の黒字)は持続する、とするのは信金中央金庫総合研究所のレポートである。
貯蓄率低下の背景には、所得の減少、高齢化の進行に加えて、2000~01年においては高金利の定額郵便の満期が集中したことも影響している。定額郵便の受取利子は、毎期の財産所得・貯蓄に両建てで計上される一方、満期時には10年分の受取利子の20%が税金として源泉徴収され、貯蓄残高が減少するためだ。郵貯利子に課される税金増の影響で、2001年の家計貯蓄率は1%程度押し下げられた。
一方、消費支出には食費・光熱費などの基礎的支出も多く、収入の減少ほどには消費を抑制しにくい、消費の慣性効果(ラチェット効果)があるが、これが最近の貯蓄率低下に影響している。また、家計収入の内訳をみると、金利収入の大幅な減少が目立つが、金融資産の多い一部の家計を除けば、金利収入、特に複利運用されている金融商品の利息については、消費水準を決定する際の所得としてさほど意識されてないと考えられる。
家計調査をみると、30歳代・40歳代の世帯では引き続き高貯蓄率を維持しているが、年金世帯はマイナスで推移している。65歳以上人口比率が1%高まれば、家計貯蓄率は0.4%程度低下すると試算され、高齢化の進行は今後も家計貯蓄率の低下要因となる。一方、企業は、賃金の支払と設備投資を抑制し、債務返済(貯蓄)に努めており、家計と企業を合わせた貯蓄超過(資金余剰)傾向に変化はない。
過剰債務の圧縮が進めば、企業は投資を拡大しようが、その場合には税収増で財政赤字(政府の投資超過幅)が縮小する。5年程度の中期でみれば、国全体での貯蓄超過は持続しよう、というのがレポートの予測である。
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