2003年03月28日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(40)
『所得税における水平的公平性について』(1)
前回掲載からやや時間が経ってしまって申し訳ない。その間に、まさに当連載の追い求めるテーマについて分析した報告書が内閣府より公表された。同報告書は、内閣府政策統括官(景気判断・政策分析担当)のスタッフや外部研究者による研究成果をとりまとめたもので、「所得税における水平的公平性について」と題して、給与所得者、事業所得者、農業所得者の間での公平性について、その実態を明らかにすべく分析を行っている。
つまり、わが国における個人所得課税の業種間における水平的公平性の実態について、主に制度上の負担の格差、クロヨン問題と称される所得捕捉の格差の2つの面から、その実態について検証しているのだ。そこで、この報告書を数回にわたって分かりやすく紹介したいと思うが、なかには正直言って“分かりやすく”という意味で手ごわい部分もある。例えば、所得捕捉率の格差の業種間比較に関する具体的計算方法などだ。それらは原文で確認していただきたい(原文のURLは最後に記しておく)。
所得税における不公平感の代表例として、事業所得者が家族従業員を雇うことによる所得分割、給与所得者には認められない必要経費の実額控除と、逆に給与所得者に認められる多額の給与所得控除、クロヨンと称される所得捕捉率の格差、が指摘されることが多い。報告書では、こういった問題について、その実態、根拠や妥当性を定量的な観点から分析・検証を行った。
★給与所得者のほうが事業所得者よりも低い税負担
まず、制度上の水平的公平性についてであるが、現行の所得税制の下で、実際どの程度、業種間・世帯間での税負担の差異があるのかをマクロデータやモデルケースでの試算によって検証した。その結果、給与所得者のほうが事業所得者よりも制度上有利となっており、事業所得者が専従者控除を用いた所得分割を行ったとしても、給与所得者の共働き世帯と比べれば、その差異はなかった。
この要因としては、多額に及ぶ給与所得控除の存在を挙げている。そこで、給与所得控除とそれに対応する事業所得の必要経費について、その理論的根拠と妥当性を検討して結果、現行の給与所得控除額は、概算経費控除としてはいささか過大であり、また他の根拠とされる他の所得との調整の要素としても、その妥当性を明確に示すことは難しいとの結論を示している。
報告書原文は http://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/dp031.pdf 。
(続く)
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