家計が保有する金融資産は1500兆円を突破したが、この金融資産の多くが高齢者世帯に集中している。このような資産は次世代に相続されていくが、その実態はあまり知られていない。そこで、第一生命経済研究所は、遺産相続の実態を、世帯単位ではなく個人単位で明らかにすることを目的として中高齢者715人を対象にアンケート調査を実施し、「高齢者の遺産相続に関する調査研究」として公表した。
同調査研究によると、親が死亡したときに遺産を相続した人の割合は、父親が亡くなったときには22.7%、母親が亡くなったときには23.2%と、ともに2割強だった。性別にみると、父親・母親の場合ともに男性のほうが相続した割合は高かった。兄弟の順位では、長子と次子以降を比較すると、父親の遺産の場合はそれほど大きな差はないが、母親の死亡時における長子で相続した人の割合は、次子以降の割合を大きく上回った。
相続した人の割合を資産別にみると、居住用不動産では父親の遺産の場合、男性は16.3%、女性は5.0%と圧倒的に男性の割合が高かく、母親の遺産の場合は、性差はそれほどみられなかった。また、金融資産を相続した人の割合は、父親からの場合は男性が17.0%、女性が19.0%、平均金額は男性が877万円、女性が714万円。一方、母親からの場合は、男性が13.5%、女性が21.2%、平均金額は男性が531万円、女性が678万円だった。
個人金融資産の保有額に対する親からの遺産の影響は大きく、男性の場合、父親の遺産額が1万円増えると、保有資産が7210円、女性の場合は、母親の遺産額が1万円増えると、保有資産が5920円増えることが分かった。なお、保有資産については、資産はほどほどに使い、残った場合は子どもたちにほぼ均等に配分するという意識が多くを占めたことも明らかになっている。