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税務関連情報 (2005/09/21)

事前確認による移転価格課税の未然回避が拡大方向

 企業が、海外の関連企業との取引価格(移転価格)が問題ないことを前もって国税当局に確認し、移転価格課税による追徴課税を回避する動きが拡大している。国税庁が15日に発表した「事前確認の状況」によると、今年6月までの1年間(2004事務年度)において二国間事前確認制度により国税当局の確認を受けた件数は、過去最高の49件だったことがわかった。確認申請件数も63件と過去2番目の高水準となっている。

 日本企業の国際進出が進展するなかで問題となるのは、例えば、海外の子会社が通常よりも安い価格で日本の親企業から商品を仕入れれば、本来の国内利益が海外子会社に移転してしまうことにある。このような海外の関連企業との間の取引を通じた所得の海外移転を防止するため、その移転価格を通常の取引価格(「独立企業間価格」)に引き直して課税するのが移転価格税制である。

 同税制は、わが国では1986年に導入され翌87年に執行が始まったが、同時に世界に先駆けて事前確認制度が導入された。これは、企業が採用するもっとも合理的と認められる独立企業間価格の算定方法などについて、税務当局に事前に確認する制度である。国税庁は、特に、海外子会社がある国の税務当局との二国間相互協議を通じた事前確認を積極的に推進してきており、企業の利用件数も増加傾向にある。

 二国間(多国間)事前確認制度では、独立企業間価格の算定方法について、その取引の当事者を所轄する税務当局間で相互協議を行い、移転価格課税についての予測可能性を確保すると同時に、二重課税のリスクを回避できる。移転価格課税においては、双方の国が自国での課税を主張し相互協議で解決する時代から、事前確認制度によって移転価格に関する二重課税のリスクを未然に回避する方向に移行しつつあるようだ。