税 務 関 連 情 報

2001年11月14日-002
みなし譲渡所得課税の特例の不承認処分の適否で初めて司法判断

 公益法人への寄附に対するみなし譲渡所得課税の特例に係る不承認処分の適否が争われた裁判で、最高裁が初の司法判断を示し注目されている。納税者らは、相続した株式を公益法人に贈与したが、その後、公益法人は、その株式を売却し定期預金とし、その利息を公益事業の用に供していた。このことから、納税者らは、その贈与が非課税となる特例の承認申請をしたが、国税当局は、株式が売却されて相続財産そのものが公益事業の用に供されていないなどとして不承認処分をしたことから、処分の取消しを求めて訴訟を提起、東京地裁(平成12年5月22日棄却)、東京高裁(平成12年12月21日棄却)を経て最高裁に上告、争われていたもの。

 個人が法人に対して土地や家屋を贈与した場合は、時価で譲渡されたものとみなして譲渡所得が課税されるが、その贈与を受けた法人が公益法人等の場合には、その資産が直接公益事業の用に供されるなど一定の要件を満たすことについて、国税庁長官の承認を受けた場合はその贈与はなかったものとみなす特例がある(措置法40条1項)。その要件としては、寄附財産が贈与された日以後2年以内に公益事業の用に供される等を前提に、寄附財産が譲渡された場合に、収用など譲渡することにやむを得ない理由があり、その譲渡収入全額で減価償却資産や土地等を取得したときは、代替資産であっても事業供用要件を満たす旨の規定がある。

 納税者らは、寄附財産を譲渡した場合の事業供用要件の規定は、寄附財産が減価償却資産や土地等である場合に注意的、確定的に定めたものに過ぎず、寄附財産が株式であるときの要件とはならないと主張。つまり、特例を合目的的に解釈すれば、株式を売却し定期預金としても特例の要件は満たすとして、処分の取消しを求めたわけだ。しかし、最高裁は、事業供用要件が減価償却資産等を寄附財産とする場合に限定していないこと、非課税規定はみだりに拡張して解釈適用すべきものではないことからして、その要件を満たさない場合に、寄附財産の種類、性質等を考慮して事業供用要件があると解する余地はないと判示して、上告を棄却している(最高裁平成13年7月17日判決)。

 

 

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