産学官連携による共同研究が急増している。2002年度における国立大学等との共同研究件数は6767件に達し、1998年度対比で2.6倍、また、共同研究に参画する中小企業は2330社にのぼる(文部科学省調査)。中小企業金融公庫はこのほど、産学官連携の活用を通じた開発戦略のあり方を探るレポートを公表。そこでは、開発型中小企業10社13事例について開発・事業化プロセスの詳細な分析をしている。
10社13事例に共通するポイントをまとめると、まず、いずれも経営者に現業の将来性に対する不安と新規事業・新分野進出への旺盛な意欲が見受けられ、企業側からの主体的な行動・情報発信があってこそ接点ができたという点が共通している。そして、社内に蓄積された有能な人材、開発・製造・販売能力、技術・情報・ノウハウ・ネットワークなどの経営資源を活かした事業展開を企図している。
着想・発想をみると、事業計画の発想時点で「販売の見通しがある程度明確」「自社のコアコンピタンスが活用できる分野を選択している」事例が大半を占めている。新事業の企画立案・設計にあたっては、まず新事業のニーズ・需要見通し、事業化に必要な経営資源と資源配分、開発に必要な事項などを調査分析。そして、自社の研究開発リソースの現状を把握、研究テーマに最適な委託先をピンポイントで選び、役割分担や研究開発スケジュールを盛り込んだ開発戦略を設計している。
実際に産学官連携による共同開発を進めていく際には、企業側が主導権をとり、互いのコミュニケーションを緊密にしながら研究開発計画の実施を企業側がマネジメントしていくケースが多く見受けられる。また、事業化後において製品や技術に欠陥・不良が発生する、外部環境や市場ニーズが変化しさらなる品質・機能の向上が求められるといった場合には、社内に構築された「P(計画)→D(実効)→C(検証)→A(改善)」サイクルを着実に遂行し、課題・問題点に対し的確かつ迅速な改善・改良を実施している。
中小公庫レポートの詳細は↓
http://www.jfs.go.jp/jpn/publish/info/no318.html