2005年度与党税制改正大綱では「2007年度を目処に消費税を含む税体系の抜本的改革を実現する」ことが明記された。早ければ、小泉首相の任期終了後の2007~08年ごろにも、消費税率の引上げが実施される可能性が高まってきている。消費税率の引上げは避けられないが、その際は経済状況を慎重に見極めながら、引上げ幅や引上げ時期を検討すべきだとの主張は、ニッセイ基礎研究所の篠原哲氏のレポートである。
消費税率引上げの背景には、破綻寸前の国家財政の再建と社会保障制度の財源確保がある。大規模な増税が避けられないが、少子高齢化が進展するなかでは、所得税など直接税による税収拡大や保険料の引上げでは、現役世代の負担は過大なものとなる。このため、世代間の負担に配慮し、かつ安定的に税収を拡大させていくためには、国民全員が“広く薄く”負担する、消費税に代表される間接税の増税が求められる。
消費税率の引上げは不可避だが、引上げのタイミングと規模が問題となってくる。消費税率を1%引き上げると税収は約2.5兆円増加するとされる。仮に、2005年度における約15.9兆円もの国のプライマリーバランス赤字を消費税の引上げで賄おうとすると、単純計算では7%弱もの引上げが必要になる。財政再建のみを最優先すると、急激な景気やデフレの悪化を招き、かえって財政再建を難しくしてしまう危険性がある。
そこで、消費税率の引上げに際しては、他の制度改正による影響も踏まえつつ、経済状況を見極めながら、景気やデフレを大幅に悪化させないように、その引上げ幅や引上げ時期を考えていくことが求められる。税制改正は通常、決定から実行までにタイムラグがある。消費税率引上げの影響の大きさを勘案すれば、景気の現状だけでなく、先行きに対してもより慎重な見極めが必要になる、というのが篠原氏の主張の概要だ。
レポートの全文は↓
http://www.nli-research.co.jp/doc/we050513.pdf