仙台国税局はこのほど、ある合資会社の事前照会に回答して、「債務超過の状態にあるときに、無限責任社員のAが有限責任社員になり、同時に、有限責任社員のBが無限責任社員になった場合には、原則として、Aに対し贈与税や所得税の課税関係は生じない」ことを認めた。AはBの実父であり、同社は、既存社員の責任を交代することで、社員2名の合資会社のまま代表権を移行させたいと考えていた。
会社法に規定する無限責任社員の責任は、持分会社(合名会社、合資会社または合同会社)が会社財産による債務の完済が不能な場合に、その持分会社の債務を他の無限責任社員と連携して、債権者に対して負う責任とされている。この債務弁済責任は、無限責任社員が有限責任社員となったとしても、なお、社員変更登記後2年間は従前と同じ無限責任社員としての責任を負うこととされている。
したがって、無限責任社員Aが有限責任社員となったとしても、その時点でAの従前の無限責任社員としての責任である同社に係る債務弁済責任が消滅したとはいえないことから、原則としてAに対し債務の引受けなどによる利益を受けたとしての贈与税及び所得税の課税関係は生じないことになる。一方、有限責任となったAが負っている従前の無限責任社員としての責任は、社員変更登記後2年を経過したときに消滅する。
このことから、この時点で同社が債務超過の状態の場合には、Aは債務を弁済する責任を負わないとする経済的利益を受けることになることから、Aに対し所得税の課税が生じる。ただし、その経済的利益は、Aが他の無限責任社員であるBから与えられた利益である個人間の贈与であると認められるときには、相続税法に規定するみなし贈与の課税が生じることになる。こうした合資会社の見解を仙台局が認めたわけだ。