国税庁はこのほど、経済産業省の照会に文書回答する形で、無議決権株式などの種類株式の評価方法を公表した。昨年5月施行の会社法によって、多種多様な種類株式の発行が可能となり、中小企業の事業承継においての活用が期待されている。しかし、相続税法上の評価方法が不明確との指摘があったことから、1)配当優先の無議決権株式、2)社債類似株式、3)拒否権付株式の種類株式3類型の評価方法を明確化したもの。
配当優先の無議決権株式は、普通株式と同様に評価することが原則(純資産価額方式の場合には、配当優先の度合いにかかわらず普通株式と同額評価)だが、相続時の納税者の選択によって、普通株式評価額から5%を評価減することを可能とする。その際、無議決権株式の評価減分を議決権株式に加算(調整計算)して、相続人全体の相続税評価総額が変わらないように申告する。
また、一定条件を満たす社債類似株式(一定期間後に償還される特定の無議決権+配当優先株式)については、社債に準じて発行価額と配当に基づく評価を行うが、株式であることから、既経過利息に相当する配当金の加算は行わない。一定条件は、1)配当金は優先して分配、2)残余財産分配は発行価額を上限、3)一定期日後に発行会社が全株式を発行価額で取得、4)無議決権、5)普通株式への転換権はなし。
拒否権付株式(普通株式+拒否権)については、拒否権を考慮せずに、加算評価しないで普通株式と同様に評価する。取締役の選任などで拒否権を発揮できる拒否権付株式、いわゆる“黄金株”の典型的活用方法は、中小オーナー経営者が、事業承継後の経営安定のため、一定期間は後継者の独断専行を防ぎたい場合に、この株式を発行し、後継者への権限委譲後一定期間は保有することなどが想定される。