ゴルフ会員権の譲渡所得と給与など他の所得との損益通算廃止が実現する可能性が高まっている。実現時期は明らかではないものの、昨年の土地・建物の分離譲渡所得の損益通算廃止のように猶予期間がまったくなかったケースもあることから、含み損を抱えた会員権の売却を考え始めた向きも多いと思われる。そこで、ここでは、ゴルフ会員権の譲渡所得の計算上控除する取得費や譲渡費用について、改めて確認したい。
ゴルフ会員権の取得費といえば、今年2月の最高裁において「親から贈与されたゴルフ会員権の譲渡に伴い子が支払った名義書換手数料は取得費にあたる」との、これまでの取扱いを全面的に否定する判決が下されたことが思い出される。これを受けて国税庁は、贈与や相続で取得したゴルフ会員権を譲渡した場合には、名義書換手数料も取得費に含めて計算するように取扱いを改めている。
会員権を譲渡した場合の取得費は、原則、ゴルフクラブの会員となるために支出した費用などをいう。例えば、1)ゴルフクラブへの入会にあたって支出した入会金、預託金、株式払込金、2)第三者から会員権を取得した場合の購入価額、名義書換料、会員権業者に支払う手数料、3)会員権を取得するために借り入れた借入金の利子のうち、その資金の借入れの日から使用開始の日までの期間に対応する部分の利子などがある。
この場合の「使用開始の日」は、ア.オープン前の会員権を取得した場合には、そのゴルフ場がオープンした日(オープン前に譲渡した場合には譲渡の日)、ロ.オープン後の会員権を取得した場合には、会員権(会員資格)を取得した日、のように会員としての権利の行使が可能となった日をいう。
また、ゴルフ会員権を譲渡した場合の譲渡費用は、譲渡のために直接要した費用をいい、ゴルフ会員権業者に支払う手数料などがこれに該当する。なお、年会費は、会員権を保有することに伴う維持管理費用であるから、取得費及び譲渡費用のいずれにも該当しないので留意したい。