2003年07月09日-001
個人所得課税強化で「富裕税」が復活する?
今後の税制改革は消費・所得課税を通じて“広く薄く”税負担を求めることが基本となる。当面は公的年金等控除をはじめ所得税の各種控除の見直しが焦点となるが、遺族年金や失業給付といった非課税給付にもメスが入れられるという。もちろん、低所得者層に配慮はあるわけで、一定額以上の所得・資産がある富裕層が相応の負担増となるようだ。それならいっそのこと「富裕税」を復活してはどうかとの意見もある。
富裕税は、資産の保有者ごとに総資産から総負債を差し引いた純資産の総額に課税する税金である。わが国では、シャウプ勧告を受けて1950(昭和25)年に導入されたが、資産の包括的な把握や評価など税務執行上の問題があったことから、3年で廃止されている。しかし、フランスやノルウェー、スウェーデンなどのヨーロッパ諸国では、おおむね1900年ごろに創設された長い歴史を持つ税金だ。
例えば、フランスでは、0.55~1.8%の6段階の税率で課税し、税収約2000億円は国税収入の0.7%を占めている(1999年)。富裕税の目的は、所得税を補完し、資産を持つ者と持たざる者のバランスを図ることや資産再分配にあるといわれている。多くの国で所得税に先立ち導入されているが、それは課税対象が有形であり当時の徴税技術から執行が比較的容易だったことが理由と思われる。
しかし、宝石や無記名債権など課税上把握が難しい資産があることや、資産の評価が難しいといった問題がある。わが国での導入を検討する場合の最大の課題もこの辺だろう。一方、今後のわが国の税制が所得・資産の保有の状況で線引きして負担増を求めるとなれば、その正確な把握の必要性は重要になる。いずれにせよ、所得や資産の正確な把握のために、納税者番号制度の導入を本格的に検討せざるを得ない時期にきているようだ。
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