預貸率とは、預金残高に対する貸出金残高の割合をいう。信金中央金庫は、信用金庫業界における2008年度末の預貸率が前年同月比で0.4ポイント上昇し、56.2%となったと発表した。年度末ベースで上昇したのは1995年度末以来13年ぶり。預金の伸び率が前年同月比1.5%増と2007年度(2.1%増)からわずかながら低下したことに加え、貸出金が同2.3%増と高い伸びを示したことが寄与したとみられている。
この預貸率は比率が高いほど融資に積極的だったことを示す。貸出金については、年度当初は中小企業向け、個人向けとも低調だった。その後、個人向けについてはいまだに水面下で推移しているものの、中小企業向けについては、2008年10月の緊急保証制度導入以降に急速に伸びを高め、2008年12月末の増加率は1.7%となった。また、財政状況の厳しい地方公共団体向け貸出は、前年同月比で20%以上の高い伸びが続いている。
預金については、預金全体の8割程度を占める個人預金の伸びが低下した影響を受けた。個人預金の増加率は、2008年度初頭の3%台半ばから、2009年2月末には2.4%にまで低下している。また、全体に及ぼす寄与度合いは限定的ながら、公金預金や金融機関預金も減少傾向にある。金庫別にみると、約3分の2で預貸率が上昇。預金、貸出金とも規模や地域を問わず総じて堅調な伸びをみせ、それぞれ約8割の金庫で増加した。
今後は、預貸金とも厳しさが見込まれる。預金については、家計全体の預貯金は長らくほぼ横ばい傾向にある上、他業態ではゆうちょ銀行の貯金流出が急激に細っている。同銀行の前年同月比の貯金減少額は、ピーク時の15兆円前後から2008年12月時点では6兆円台にまで縮小。また、貸出金については、地方公共団体向けは今後も高い伸びが見込まれようが、企業向けについては緊急保証制度の反動減の怖れがあるとみられている。