税務上、長らく損金不算入とされてきた役員賞与の取扱いが見直される可能性が現実味をおびてきた。これまで役員賞与は一般に利益の処分と考えられることから損金不算入とされてきたわけだが、来年5月施行予定の新会社法では、役員報酬・役員賞与の区別なくともに職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益として整理されたこと、また、会計基準も発生した期間の費用処理と定めたことが見直しの背景にある。
来年度税制改正に向けた政府税制調査会の答申では、役員賞与の見直しは文面にはないものの、「新しい会社法制に対応して整備する必要がある」とされ、同税調の公式資料のなかにも新会社法への対応の一環として役員給与の取扱いが掲載された。さらに、バトンタッチを受けた与党税制調査会が役員賞与の損金算入を検討中であることが、新聞報道で明らかになって、にわかに役員賞与の見直しに現実性が出てきたわけだ。
もっとも、新聞報道によると、上場企業で増えている業績連動型の役員賞与や報酬を対象に損金算入を認めるが、業績連動の基準があいまいな企業が多いという問題もあり、具体的な算定基準の透明性を担保するなどの適用基準を設ける方向で検討されているという(日経1日付朝刊)。役員賞与の損金算入は法人税収の減少につながるだけに、無条件には認めないという姿勢である。
特に中小企業の場合には、決算賞与の支払いによって法人の利益を比較的容易に調整することが可能になる、との指摘が以前から政府税調などからあった。だから、仮に役員賞与の損金算入を認めるにしても、現行で過大な役員賞与や退職給与の損金算入を認めないのと同様な条件が必要になる。一定の制限がつくことは仕方がないにしても、役員賞与が損金算入とされるメリットは大きい。与党税調の判断が注目される。