ゼイタックス

税務関連情報 (2005/01/26)

倒産で紙くずとなった株式も譲渡損とみなす特例

 2005年度税制改正の金融・証券課税関連では、特定口座で管理されていた株式の無価値化によるみなし譲渡損の特例というものがある。これは、会社が倒産して紙くず同様となった株式も損益通算の対象として認めようというもの。特定口座で管理されていた株式が、上場廃止となって、発行会社の清算結了などによる無価値化損失が生じた場合は、株式等の譲渡損失とみなす特例だ。2005年4月1日以後から適用される。

 この改正の背景には様々な議論があった。その年に稼いだ所得を物の購入にまわすか、貯蓄するか、あるいは株を購入するかといった所得の処分は自由である。所得税の基本的な考え方では、所得の処分によって買った物や株式などが無価値になっても、それは所得を計算する際に考慮するべきものではないというのが原則である。だから、これまでは、上場会社が倒産して紙くず同然となっても、その損失は損益通算できなかった。

 上場株式の場合は、紙くずになる前に市場で売却するチャンスがあるのだから、売らないでそのまま持っていて無価値化してしまうまで待たなくても投資家は対処できるはず。だから、特例的に認める必要はないという意見だ。他方、紙くず損失も譲渡損失と同様に、株式投資から生じた損失であり、株式譲渡損失と同様に損益通算とすべきではないかという意見もあった。

 結局のところ、決め手となったのは、貯蓄から投資へという政策的な要請であろう。今回の改正では先送りになった金融所得一体課税では、税率も納税方法も違う預貯金や株式、投資信託、債権などをひとまとめにして、このなかでの損益を通算できる制度を目指す。リスク資産への投資を促進する意図があるのだから、その投資から生じた損失は何らかの形で手当てすべきだという考え方が優先された改正といえよう。