同族会社においては、社長の妻や子ども、両親などの親族を非常勤取締りにして役員報酬を支払っていることは珍しくないが、勤務実態などに照らして過大であれば税務署から否認される。社長Aのケースは、母である非常勤取締役へ支払った年間約3000万円の役員報酬が税務署で否認され、適正額はわずか130万円と算定されたことから、国税不服審判所に審査請求し、その判断を仰いだものだ。
Aは、1)母である非常勤取締役は、法人の設立に際して、資本金額の決定や株主・取締役・監査役の選定・依頼、従業員の採用などを行い、その尽力は大である、2)会社設立後は、社長Aのよき相談相手として経営に参画していることを挙げて、税務署の処分に反論した。しかし、年間3000万円の役員報酬は自ら法外と認識していたようで、その適正額は従業員への年間給与である550万円程度が妥当と主張した。
しかし、国税不服審判所は、1)よき相談相手というのも客観性・具体性に欠け、その裏づけとなる確たる証拠資料はないこと、また、この勤取締役には決められた仕事がないこと、2)従業員の給与の支給額に照らすことについては、その従業員の職務の内容や勤務の状況等を明らかにしないこと及び取締役の職務の内容からして、従業員の給与額をもってその根拠とはならないことを指摘した。
その上で、税務署が、Aの会社と業種・事業規模などが類似し、Aの会社がある地域の非常勤取締役がいる法人を選定したこと、その類似法人の非常勤取締役に支給された年間報酬額の平均額をもって、Aの会社の非常勤取締役に対する適正報酬額を算出した方法は妥当なものと認められるとの判断を示している。今後、勤務実態があいまいな親族への役員報酬は130万円がひとつの目安となりそうな注目すべき裁決である。