2003年11月07日-001
温暖化対策税は二重課税!
環境省では、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出を減らすため、ガソリンや重油・石炭などの化石燃料の使用量に応じて課税する炭素税(環境税)の2005年度導入を検討している。経済界には「企業体力を低下させる」との強い反発があるが、「温暖化対策税は二重課税だ」との観点から異を唱えるのは日本エネルギー経済研究所・主席研究員の十市勉氏である。
温暖化対策税の環境省案によると、課税対象者は化石燃料の消費者ではなく、輸入者や製油所などの製造者とする「上流課税」とする。税率は、炭素1トンあたり3400円(ガソリンで1リットル約2円)の低率。このような低率課税では、価格インセンティブ効果によって必要削減量全体の5分の1程度しか確保できないが、税収約9500億円を温暖化対策のための補助金や減税財源として活用することで、残りの5分の4を確保する。
このような温暖化対策税の最大の問題は、今年10月から新たに石炭に対して課税することとされ、石油税から改称された「石油石炭税」と完全に二重課税になる点である。エネルギーセキュリティ対策を大義名分に導入された石油税を、天然ガス(LNG)や石油ガス(LPG)の税率を引き上げ、新たに石炭に課税することで、事実上、環境税を先取りした。しかも、その税収の一部は温暖化対策に使うことになっている。
このような動きに対し、十市氏は「エネルギー対策と温暖化対策の多くが重なるなかで、異なる官庁が異なる名目で課税し、負担は同じ企業というのは不合理だ」と指摘。税の最終負担は、理屈の上では消費者だが、昨今の深刻なデフレ経済化では、価格転嫁は容易ではない。政府は、新税を導入する前に、現行の補助金など歳出面で徹底した効率化を図ると同時に、今後エネルギーと環境税制の一元化に取り組むべきだ、と主張している。
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