先般、国税庁が公表した2007年度租税滞納状況によると、年度末滞納残高は9年連続して減少したが、同庁では通常の滞納整理では処理が進展しない事案については、国が原告となり訴訟を提起する「原告訴訟」と財産の隠匿者に対する「滞納処分免脱罪」を積極的に活用して滞納整理を進めている。2007年度は201件の原告訴訟を提起し、169件が終結。このうち166件に勝訴した結果、勝訴率は98.2%となった。
原告訴訟の内訳は、「名義変更・詐害行為取消」が5件、「差押債権取立」が24件、「供託金還付請求権取立」が37件、債権届出など「その他」が135件。例えば、消費税等約5億円を滞納していた運送業社Aは、更正処分直前に所有していた評価額2億円の土地・建物の所有権をAが代表者の関連法人名義に変更したことが調査で判明したため、その所有権をAに戻す名義変更訴訟を提起し、A名義に戻ったその不動産を差し押えている。
また、滞納処分免脱罪は、国税徴収法違反事件として検察庁に告発し、財産を隠すなど悪質な滞納者を最高3年の懲役もしくは50万円以下の罰金で処罰するもの。バブル期に名を馳せた「桃源社」が同罪で告発された例があるが、あまり多くはなかった。しかし、2006年度には4件(人員8人)と大幅に増え、2007年度においても3件(同10人)告発され、人員数では2007年度は過去最高を記録している。
例えば、消費税約4500万円を滞納していたクラブ経営者Bが滞納処分免脱罪で告発されている。Bは、妻らと共謀して滞納処分の執行を免れる目的で、自己名義預金から1億数千万円の銀行振出小切手の発行を受けた上で、その小切手をクラブ店舗内にある紙粘土で製作したオブジェの中に隠すとともに、その小切手の一部約1000万円を換金し、知人名義の預金口座に入金するなどして財産を隠ぺいしていた。