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税務関連情報 (2004/02/16)

波紋を呼ぶ少額配当所得に対する個人住民税の申告

 2003年度税制改正で年間10万円以下の少額配当申告不要制度が廃止されたが、それまで非課税だった個人住民税の申告を各市町村が要請して波紋を呼んでいる。昨年4月以降支払を受けた上場株式の配当については10%(3%分は住民税)の源泉徴収で課税関係は終わるが、昨年1~3月に受けた上場株式の少額配当と昨年中に非上場株式の少額配当を受けた人は個人住民税の申告が必要だとしている。

 確定申告をする人なら、確定申告書第二表の「住民税に関する事項」へ必要事項を記載すれば済むが、一般のサラリーマンのように年末調整すれば確定申告する必要がない人などは、個人住民税の申告のためにわざわざ市役所や区役所に足を運ばなければならない。法律的には、たとえ100円、200円の住民税でも申告義務があるが、そのために手間と時間を考えると納税者は困惑するばかりだろう。

 これまで少額配当に対する個人住民税が非課税だったのは、所得税が源泉徴収で済んでしまうため、市町村では誰が配当を受けたか把握しようがなかったからだ。それでは、今後はその把握ができるようになったのかといえば実情は変わらない。つまり、申告しなかった人を把握するだけの能力がないなかでの、納税者の良心に訴えるしかない申告要請なのである。

 また、突然降って湧いたような少額配当に対する住民税の申告義務を、果たしてどれぐらいの納税者が知っているのだろうか。該当者を把握し得ない市町村は一般向けのPRが精一杯。ほとんどの人は申告義務が生じた法改正を知らず、その結果、そもそも申告しようとする“良心的”な人も極めて限られてくることになる。

 一方で、配当所得に住民税を課税する根拠そのものに疑問を呈する声も多い。「配当と自治体の行政サービスに明確な負担と受益と関係があるのかは極めて疑問」(K大学教授)との意見は学識者の多くが指摘する。わが国の税制は段々個人負担増が増す方向に進んでいる。いくら地方財政が厳しいとはいえ、取れる人だけとるといった不公平になりかねない税制は直すべきだ。