国税庁がこのほど発表した2007事務年度分の相続税調査事績によると、今年6月までの1年間に2005年分及び2006年分の申告事案を中心に1万3845件の調査を実施し、うち98.5%にあたる1万1884件から総額4119億円の申告漏れ課税価格を把握した。前年度に比べ、調査件数、申告漏れ件数ともに1.5%減少したが、申告漏れ課税価格は1.0%増加し、1件あたりの申告漏れ課税価格では2.5%増加の3466万円となった。
また、加算税134億円を含めた追徴税額は941億円(対前年度比0.2%増)で、申告漏れ1件あたりでは792万円(同1.7%増)となる。仮装・隠ぺいなど意図的な不正を行ったとして重加算税を賦課された件数は、申告漏れ件数の16.1%にあたる1914件(同5.2%増)で、その不正申告漏れ課税価格は782億円(同16.1%増)にのぼった。申告漏れのあった相続財産の金額の内訳は、「現金・預貯金等」が1517億円と36.8%を占め最多。
調査事例では、自営業を営んでいた被相続人に係る調査を実施したところ、生前に債券発行銀行と取引を行っていたことを把握。さらに、調査を進めると相続開始時点において多額の無記名現物割引債券及び現金を住所から遠隔地にある銀行の貸金庫に隠していたことが判明した。相続人は、これらの財産が相続財産だと認識しながら容易に把握されないと考え、申告から除外していたケースが報告されている。
一方、海外の相続財産が増加傾向にあることから、国税当局では国際税務専門官等を中心に海外資産の実態把握や的確な調査を実施。同事務年度は407件(対前事務年度比11.8%増)の調査を実施した結果、334件(同14.4%増)から実に前事務年度から108.0%増とほぼ倍増の308億円の申告漏れ課税価格を把握した。1件当たりの申告漏れは9227万円(同81.8%増)と全体の申告漏れ課税価格の平均3466万円の2.66倍にのぼる。
大口事案が多いことや“海外財産なら見つからない”と安易に考える相続人がいかに多いかがうかがわれる。例えば、元会社役員の被相続人に係る調査を実施したところ、被相続人は生前に海外で保有していたコンドミニマムの売却代金を海外の銀行で相続人と共同名義で運用していたことを把握。相続人は、その預金が相続財産だと認識しながら、財産の所在が海外であることなどから、税務署に把握されないと考え申告から除外していた。