税 務 関 連 情 報 |
2003年04月25日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(47)
『所得税における水平的公平性について』(8)
ここからは、現行税制によって、給与所得者と事業所得者、さらにそれぞれの世帯間での税負担などの差異がどうなっているのか、つまり制度上の公平性が保たれているのかという観点からの分析と制度の妥当性を検討している。
★事業所得者は家族間で所得分割して節税しているのか?
給与所得者の持つ制度上の不公平感のひとつに、事業所得者が家族間で所得分割を行い税額を減少させているという批判がある。これは、青色事業専従者給与が、他の必要経費と違って身内に支払われる“痛みの伴わない経費”であり、かつ、その対価が市場原理によって決定されないため、事業主の恣意性が介入する恐れがあることからくる。
そこで、税務統計から専従者控除の実態を確認している。事業所得者本人の所得階級別に、青色事業専従者の平均給与額と本人の所得に対する比率をみると、事業所得者本人の所得の増加とほぼ正比例して専従者給与の額も比例している。次に、農業所得者・白色事業者を加えて事業所得者1人あたりの専従者数や専従者1人あたりの給与額をみてみる。
それによると、農業所得者世帯のほうが専従者数は多いが、1人あたりの専従者給与額は青色申告ではほぼ同じ動きを見せ、平均では200万円前後となっている。また。損金算入できる専従者給与が白色専従者控除(50、86万円)の範囲内に限られる白色事業者では、実際に支払う給与の平均も76万円となっている。
これらの給与額は、一般的な給与所得者のそれよりも大幅に低く、家族従業者としての地位、事業収益などからおおむね妥当との考えを示している。したがって、事業所得者は所得分割をいくらでも行え節税できる、という批判の根拠は、マクロ的な姿をみる限り、否定はできないものの、限定的ではないだろうか、というのが報告書の推察である。
(続く)
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