日本政策金融公庫が、全国の食品関連企業を対象に7月1日時点で実施した「2009年上半期の食品産業動向特別調査」結果(有効回答数2782社)によると、製造業や卸売業、小売業、飲食店などの食品産業は、消費者の節約志向の高まりや食の安全・安心へのこだわりなどを強く意識し、商品に関して「低価格」や「安全」を一段と優先させる傾向を強めていることが明らかになった。
具体的には、「食品商品は何を目指すか」という質問に、「低価格」と回答した企業の割合が、前回2008年下半期調査の38.3%から、今回調査では43.4%にまで上昇。さらに、「今後はどうかと」との質問に対しても47.9%にまで一段と上昇している。同じく「安全」志向に関しても、前回調査34.0%、今回調査43.3%となっており、さらに今後についても46.9%と、同じく右肩上がりの傾向を示している。
一方で、これまで安定して高かった「国産」、「地元産」、「味」志向が今回調査では20%台前半にとどまり、今後は低下傾向を示した。また、「健康」志向については、今回調査では13.6%にとどまっているが、今後は25.2%に急上昇しており、消費者の「健康」意識も無視できない、との判断とも見受けられる。食品産業の今後の志向意識は、「低価格」と「安全」を一段と優先しつつ、「健康」も重視していくということになろうか。
一方、原材料価格などの変動によるコストの増減については、コスト増加が続いていた前回調査に比べ、今回調査では「コスト増」と回答した企業割合が45.1ポイントも低下して34.6%と大幅に縮小した。逆に「コスト減」は15.7ポイント増の20.1%となった。平均コスト増加率は、前回調査の11.6%から2.8%へと大きく低下。コスト圧縮の企業努力に加え、原材料価格の高騰が一服したことなどが要因とみられる。
コストの大幅な縮小を背景に、販売価格も「下がった」とする企業割合が前回調査に比べ12.9ポイント増加の18.1%となり、「上がった」とする企業割合(13.3%)を上回った。価格が「下がった」との回答が多かったのは、「油脂」、「精穀・製粉」、「糖類」、「食肉加工品」などで、コスト縮小が反映したものとなっている。今後も9割強の企業が「下げる」(11.9%)、「変えない」(79.5%)としている。