わが国の財政改革に向けて、今、取り組まなければならない課題は、歳出の徹底的な削減と同時に、民間活力の増強に向けた税制の再構築である。関西経済連合会はこのほど、「抜本的税制改革に向けて」と題した報告書を公表し、税制改革が様々な側面に与える影響を考慮した抜本改革のあり方を議論したなかで、法人課税の実効負担分析に基づき税制が企業の投資行動に与える影響を明らかにした上で、減税の必要性に言及した。
報告書は、「法人企業統計年報」(金融保険を除く営利法人の財務データ)を使って資本コストを計算し、それを用いた投資関数の推計を行い、法人税は資本コストを通じて投資に影響を与えることを計量分析により示した。その結果、実効税率の引下げとなる法人税改革は投資に影響を与え、さらにマクロの経済成長に影響を与える可能性があることを明らかにし、法人税減税の必要性を主張している。
また、所得格差の実態を計測し、その原因は高齢化と単身世帯の増加にあることを示した上で、女性の就労や子育てを支援する税制として、配偶者控除や扶養控除の縮減とともに、基礎控除の引上げや扶養控除の税額控除化などの必要性を、さらに、高すぎる給与所得控除の実態を示しながら、その意味を明確にする必要性も指摘した。今後の課題として、配偶者控除等の縮減や基礎控除の引上げなどがもたらす影響分析を挙げている。
消費税については、その増税根拠の再検討を踏まえて、増税のタイミングは2010年代半ばでも十分であるとした。また、増税手段として、消費税は有力ではあるが、それに議論を限定する必要はなく、相続税、資産課税、年金課税の強化なども検討課題に加えることを要望した。そのほか、基礎的財政収支の黒字化という目標達成後も巨額の財政赤字(約25兆円)が残ることから、次なる改革目標を議論する必要性を強く主張している。
同報告書の全文は↓
http://www.kiser.or.jp/column/data/080424_zeiseikaikaku.pdf