日本企業の国際競争力を高める観点から、2008年度税制改正に向けて法人実効税率の引下げを検討する動きがあるが、わが国法人実効税率を少なくとも2008年以降のドイツやイギリスを目処に30%弱の水準まで引き下げることは喫緊の課題と主張するのは、日本総研のレポートだ。国際的にみて際立って高い法人税率は内外資本の流出傾向を加速させ、深刻なマイナス影響を及ぼす懸念が大きいと指摘する。
レポートによると、近年、欧州各国を中心に法人税率の引下げ競争が加速している。ドイツは08年に25%の連邦法人税率を15%に引き下げ、地方税率を併せた実効税率を現在の39.9%から29.9%に、また、イギリスも08年から30%を28%に引き下げる動きがある。こうした動きに注目すると、04年以降、資本流出が深刻化した国で、近年、あるいは今後数年の間に法人税率が大幅に引き下げられる。
ドイツでは資本流出が近年加速しているが、わが国でも、近年、内外資本の流出傾向が増大しており、直接投資全体では、従来の▲3兆円規模の流出超から、05年▲4.7兆円、06年▲6.6兆円へと流出に拍車がかかっている。今後、一層グローバル化が進行し、よりよい事業環境を求めて国際的視点から最適立地を目指す動きの拡がりは不可避だ。そうしたなか、際立って高いわが国の法人税率は、深刻なマイナス影響を及ぼす。
大幅な法人税率引下げは財政面から非現実的との批判があるが、法人税率の先送りは中長期的な経済停滞を招来する。法人税率引下げのために、さらなる歳出削減や歳入面での工夫など、新たな歳出歳入の一体改革に改めて取り組む姿勢を強く求めている。レポートは、税率引下げにとどまらず、諸外国に比べ負担が大きい法人地方税の見直しを含め税体系全体にわたる抜本改革の一環として、法人税制の見直しは愁眉の急だとしている。
同レポートの全文は↓
http://www.jri.co.jp/press/2007/jri_070531.pdf