民主党政権が掲げる「高速道路無料化」政策に、国内フェリー業界が揺れている。今後、無料化が実現すれば、高速道路と競合する航路を持つ業者を中心に、業界全体に大打撃を与える可能性もある。帝国データバンクが、主に国内に航路を持つ旅客フェリー会社を中心に2008年度の収入高が判明した141社の経営実態調査を実施した結果、2008年度決算は過半数が赤字、4社に1社が2期連続赤字だったことが分かった。
国内フェリー会社141社の本社所在地をみると、社数トップは、瀬戸内海の離島や四国内の航路が多数存在する「広島県」で21社、次いで、隣県の広島、山口、大分を始め、福岡を結ぶ航路もある「愛媛県」(18社)、五島列島を始め離島間の航路が点在する「長崎県」(16社)の順。地域別では、「九州」が43社でトップ、以下、「中国」37社、「四国」24社が続き、3地域だけで全体の73.8%を占めた。
国内フェリー会社141社のうち、2007年度及び2008年度の収入高が判明した103社について2期間を比較すると、2008年度は「増収」48社に対し、「減収」は55社と過半を占めた。このうち全体の4社に1社(26.2%)が「2期連続減収」だった。総じて、一定の固定利用者がいるため収入高の大幅な増減はなかったが、大手企業の多くが増収となる一方、比較的規模の小さい企業では減収が目立った。
141社のうち2008年度の当期純損益が判明した82社をみると、「黒字」が40社、「赤字」が42社となり、赤字企業が半数を超えた。このうちの20社、4社に1社(24.4%)が「2期連続赤字」という厳しい損益状況だった。82社のうち2007年度と比較可能な72社をみると、「増益」が25社に対し、「減益」が47社に達するなど、6割強の企業が利益水準を落としている。減益企業47社のうち、29社が「減収減益」となった。
最近5年間の倒産件数の推移をみると、フェリー会社の倒産は年に1~2件の発生にとどまっている。しかし、2009年9月、10月と“高速道路料金1000円”の割引制度のあおりを受け業績が悪化したフェリー会社の倒産が発生しており、今後は、高速道路と競合する航路を持つ業者を中心に影響拡大が懸念されている。
同経営実態調査結果の詳細は↓
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p091004.pdf