税務独特の用語に「使用人兼務役員」という言葉があるが、これは役員であると同時に、使用人として、例えば営業部長や経理部長、工場長といった職務に常時従事している者をいう。法人税法上、役員の賞与は損金不算入となるが、使用人兼務役員に支給した賞与は、使用人分として認められる部分の金額は損金算入することができる。そこで問題となるのは使用人兼務役員の範囲である。
使用人兼務役員から除かれる役員として、税法では、社長、副社長、代表取締役、専務、常務、合名・合資会社の業務執行社員、監査役を列挙し、加えて同族会社の役員のうち一定の要件に該当する者を挙げている。こうしてみると、使用人兼務役員の範囲は明確だが、唯一判断が難しそうなのは、判定が複雑な同族会社における使用人兼務役員の範囲である。
同族会社において使用人兼務役員と認められないのは、1)同族会社の判定の基礎となる上位株主グループに属している役員、2)その役員の属する株主グループの持株割合が発行済株式総数の10%を超える場合、3)その役員と配偶者の持株割合が5%を超える場合、との要件のすべてに該当する役員とされている。1)に該当していても、その役員(配偶者を含め)の持株割合が5%以下であれば使用人兼務役員として認められる。
なお、専務や常務などの名称を名乗っていても、総会決議や定款などで正式に職制上の地位が付与されたものでなく、外部向けの名目的な名称に過ぎない場合などは、使用人兼務役員として認められる場合がある。また、使用人兼務役員の使用人分賞与を損金算入とするためには、他の使用人と比べ賞与として相当と認められる金額であって、支給時期も同一時期であることが厳格に求められるので、注意が必要だ。