個別労働紛争処理制度は、個々の労働者と事業主の紛争を、裁判に持ち込まず紛争当事者間で自主的かつ迅速な解決を図る制度。厚生労働省が23日に発表した2007年度における同制度の施行状況によると、民事上の個別労働紛争に係る相談件数が19万件を超え、過去最多となった。同制度は2001年10月発足以降依然として増加を続けているが、この背景には、個人での紛争解決を迫られるパートや派遣労働者の増加などがある。
全国約300ヵ所に設けられた総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談は、2007年度1年間で前年度比5.2%増の99万5061件だった。このうち、労働関係法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げなどのいわゆる民事上の個別労働紛争に関するものは5.5%増の19万7637件と過去最多となった。内容別では、「解雇」が22.8%でトップ、「いじめ・嫌がらせ」と「労働条件の引下げ」がともに12.5%で続いた。
また、自主的な紛争解決が難しい場合は、弁護士などの有識者で構成された紛争調整委員会にあっせんを申請できるが、2007年度のあっせん申請受理件数は前年度比13.3%増の7844件だった。一方、処理状況をみると、手続きを終了した7744件のうち、「合意が成立」したものが38.4%、申請者の都合による「申請取下げ」が7.3%、紛争当事者の一方が手続きに参加しないなどの理由による「あっせんの打ち切り」が53.8%だった。
処理期間は、「1ヵ月以内」が57.1%、「1ヵ月超2ヵ月以内」が35.0%とおおむね迅速に処理されている。申請者は、労働者が98.2%(7705件)と大半を占めるが、事業主からの申請も1.7%(133件)、労使双方からの申請も6件あった。労働者のうち57.1%は正社員だが、パート・アルバイトや派遣労働者等も37.7%を占める。事業所の規模は、「10~49人」が31.1%、「10人未満」が19.4%、「300人以上」が12.1%の順。
あっせん例では、解雇にかかるものがある。申請人は、会社から「営業成績が悪い」として解雇されたが、会社の解雇回避の努力もなく、雇用契約期間の途中に解雇されたことに納得できないとして、解雇の撤回または精神的苦痛・経済的損害に対する補償を求めて、あっせん申請を行った。その結果、早期解決を双方が望んだため、解決金を支払うことで双方の合意が成立している。
2007年度個別労働紛争解決制度施行状況の詳細は↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/05/h0523-3.html