経 営 関 連 情 報 |
2003年05月09日-003
デフレ下で進む企業の人件費削減
長引くデフレと不況による売上高の減少を背景に、企業は収益を確保するために人件費等のコスト削減に取り組まざるを得ない状況にある。企業の人件費削減の手段として、賃金と雇用者数の削減、パート等の非正規雇用への雇用シフト、さらに従来型の賃金・雇用制度の見直しが本格化すると指摘するのは、ニッセイ基礎研究所の分析レポートである。
レポートによると、企業は業績に連動する賞与等を削減することで人件費を調整しているが、さらに注目されるのは、本来、月給制等で固定されているはずの所定内給与の減少である。その原因としては、職務給・職能給・能率給などの導入、定昇・ベースアップの減少などにより、所定内給与抑制の動きが進んでいること、加えて、パートや派遣労働者などの雇用拡大に代表される就業形態の変化がある。
総務省の労働力調査によると、雇用者数は2002年で減少に転じ、雇用者総数の減少による人件費削減の進行がうかがえるが、注目すべき点は、雇用者総数が減少に転じても、パートや派遣労働者などの非正規雇用者数は一貫して増加を続けていることだ。ここから、企業が雇用コストの高い正規雇用者を減らし、代わりに非正規雇用へと雇用シフトを勧めていることが分かる。
当面企業の売上が本格的な回復に至ることは考えにくく、このような企業の人件費削減の動きをしばらくは継続せざるを得ない。ただ、現在のようなデフレ下では、たとえ名目人件費が一定の場合でも、実質的な企業の人件費に対する負担は増加してしまう。そのため、デフレの進行は企業の人件費削減圧力をさらに高めることになり、その手段として、従来型の賃金・雇用制度の見直しに着手する企業が増えてくると予測される。
従来の年功序列型から成果重視型への賃金制度の移行や、終身雇用制度の撤廃に代表される、わが国の賃金・雇用制度改正に向けた動きは、景気低迷とデフレの長期化により、今後益々本格化してくるとの分析結果を示している。
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