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税務関連情報 (2006/06/07)

LLPへの出資は個人・法人のどちらが有利?

 5月の会社法施行以降、株式会社の設立が格段に容易となったが、事業形態の選択肢は株式会社だけに限らない。そのひとつに、2005年8月に施行されたLLP(有限責任事業組合)制度がある。法人格はないが、有限責任であり、出資額と無関係に利益配分や意思決定ができることから、映画製作や商品開発など、ハイリスク・ハイリターンのジョイントベンチャーに向いているといわれる。

 経済産業省の集計では、LLPの設立件数は昨年8月の施行から12月末までの5ヵ月間で300件を突破しているとみられる。LLPの大きな特徴のひとつに、組合員への直接課税がある。LLPに利益が出た場合、法人格のないLLPには課税されず、組合員個々の利益分配に応じて課税される。そこで問題となるのは、課税の影響である。それは、出資を法人で行うか、個人で行うかの選択にもつながる。

 LLPでの利益は、組合員である法人・個人の所得に上乗せされる。一般的には税金が増えることになるが、法人が赤字であったり、繰越欠損金があれば、LLPからの利益はそれらの損失と相殺できる。また、LLPに損失が出た場合も組合員に帰属する。ただし、組合員の所得と損益通算できる損失は、組合員の出資金額を元にして計算した調整出資金額の範囲内でしか認められない。

 仮に、LLPの損失が400万円で、調整出資金額が100万円のケースでは、組合員が他の所得と損益通算できるのは100万円だけということになる。残りの300万円の損失について、個人と法人とでは取扱いが異なる。組合員が法人の場合は、この300万円は繰り越されて、翌期以降の法人の利益と通算できるが、個人の場合は、繰越しできず、300万円の損失は切り捨てられてしまう。

 こうしてみると、LLPへの出資は、社長が個人として行うよりも会社として行ったほうが税務上は有利といえる。なお、LLP法では、組合員の損益分配の割合については、1)組合員の同意により、2)書面で分配の割合の定めを行い、3)その書面にその分配割合を定めた理由を記載することで、出資比率と異なる柔軟な損益分配を行うことができる。税務上も、それが合理的な範囲内であれば認められる可能性が高い。