同族会社の留保金課税とは、同族会社(3人以下の株主等で、持株割合が50%超の会社)が内部留保した金額に対して、特別税率で追加的に課税される制度である。課税留保金額は、留保金額から留保控除金額を控除して計算するので、最低でも1500万円以上の留保所得がなければ課税されない。これまではあまり意識がなかった企業も、業績が上向き留保所得が発生するにつれ、留保金課税に留意しなければならないわけだ。
留保金課税では、2000年度税制改正で一定要件を満たす中小企業に対する停止措置の特例が創設されている。その後、適用事業年度の延長や適用対象の拡大が行われ、2003年度税制改正においては、自己資本比率50%以下の中小法人が新たに対象に加えられた。つまり、留保金課税制度では、どんなに留保所得があろうとも停止措置の対象に該当すれば税金を払わなくていいことになる。
ところが、この停止措置を忘れてしまったり、自己資本比率50%要件の計算誤りで、本来停止措置の対象になれるにもかかわらず、留保所得に特別税率を適用して申告するといったミスが少なくないようだ。特に会計ソフトを使用しているケースでは課税停止の特例に対応していないものが多く、自己チェックが働かないと、自動的に留保金課税を選択してしまうことになるので要注意だ。
ちなみに、留保金課税が停止される場合とは、青色申告を提出する同族会社で、1)自己資本比率50%以下の中小法人(資本金1億円以下)、2)設立後10年以内の中小企業者、3)「新事業創出促進法」の認定を受けた事業者、4)前事業年度の損金の額に算入される試験研究費及び開発費の合計額が、収入金額の3%を超えている中小企業者、のいずれかに該当する場合とされている。
1)~3)については2006年3月31日までの、4)については2005年4月13日までの間に開始する各事業年度に適用される。また、2)と3)については、2005年度税制改正において中小企業支援3法の統合に伴う改正が行われており、2006年4月決算法人から新法に基づく新たな手続きを事業年度開始までに行う必要がある。いずれにせよ、留保金課税を判断するにあたっては税理士など専門家の助言を仰ぎたい。