銀行から「○○税理士を紹介したいのですが」などと言われたことはないだろうか。融資を受けている銀行からの頼みは断りずらいもの。税理士会はこのような行為を業務侵害行為と捉えて毎年その実態を調査しているが、東京税理士会がこのほど発表したのは、法人や団体からの侵害行為を対象とした実態調査結果である(2003年11月実施、回答数1945会員)。
調査結果によると、2001年10月から2003年9月までの2年間に関与先が法人・団体から業務侵害行為を受けたことが「ある」と回答したのは65人(関与先数97件)で全体の3.3%だった。2001年の前回調査(138人、関与先数191件)に比べ半数近く減少、割合も2.5ポイント減少した。
侵害行為を行った相手先(重複可)については、「金融機関・証券会社」が27.8%で最も多く、以下、「記帳代行会社」(17.5%)、「青色申告会・法人会」(10.3%)が高い割合を占めている。特に金融機関は、前回調査から2.1ポイント増えており、関与先に対する貸付や相続が発生したときに関係税理士を紹介するケースが目立つ。
記帳代行会社の場合は「報酬が安いから」といって他の税理士を紹介する形。また、「税理士法人・税理士」の低価格による誘因行為が14.4%を占め、実質的には記帳代行会社の次にランクされたのも今回の特徴だ。全体的には、侵害行為のうたい文句は報酬が低廉であることを強調するケースが最も多くなっている。
その結果、侵害行為を受けた関与先の41%に「顧問契約を解約」され、9%が「顧問先と気まずくなった」と回答。規制緩和により税理士も厳しい自由競争にさらされていることがうかがえる。業務侵害行為を防ぐためには「税理士個人が関与先と強い信頼関係を結ぶ」という、税理士自身の自助努力を重視する意見が多いようだ。