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税務関連情報 (2006/02/10)

会社の行為と同一視される従業員の不正経理行為

 仮装・隠ぺいなどして不正に所得をごまかせば重加算税が課される。しかし、会社の気づかないところで、従業員が、横領が発覚しないように行った不正経理についても、会社の行為とされるのか。歯科材料の卸売業A社は、4事業年度分の法人税・消費税に課せられた重加算税について、従業員が行った不正経理に基づくもので、A社の隠ぺいや仮装行為に該当しないと処分の取消しを国税不服審判所に求めた。

 A社は、不正経理について、1)従業員が自己の窃盗または横領行為の発覚を防止するために行った不正行為である、2)A社が通常の調査をしても発見できない方法で売上や期末棚卸金額の圧縮が行われており、また、記帳や現金管理を任せ切りにした事実もない、3)A社の取締役が従業員に対し棚卸圧縮行為を指示した事実はないことから、A社に結果責任を課すべきでなく、A社の隠ぺい・仮装行為に該当しないと主張した。

 しかし、審判所は、隠ぺい・仮装の行為は、納税義務者である法人の代表者に限定されるものではなく、従業員を手足として経済活動をしている納税者においては、隠ぺい・仮装行為が代表者の知らない間に従業員によって行われている場合であっても、その従業員の行為を納税者の行為と同一視できる場合には、法人自身がその行為を行ったものとして重加算税を賦課できるとの解釈を示した。

 そのうえで、A社のケースは、1)従業員はA社の経理事務を担う重要な地位にいたこと、2)不正経理行為はA社の課税申告に直接反映していること、3)不正経理行為は長期に及び、現金出納帳などの確認をすれば容易に把握できたと認められるところ、4)A社はそれらの確認を行っていないことを総合勘案すれば、この不正行為はA社の行為と同一視すべきだとして、A社の主張を斥けている。

 結局のところ、会社には、従業員の仕事を十分に管理・監督する責任があるということだろう。