内閣のIT戦略本部が今年4月に決定した「デジタル新時代に向けた新たな戦略~三ヵ年緊急プラン」において、「国民電子私書箱(仮称)」の整備が盛り込まれ、注目されている。これは、引っ越し・退職・出産などライフイベントに関わる個人情報の入手・管理を希望する国民や企業を対象に、公的機関などが提供するネット上の専用口座である。この口座を通して、幅広い分野でのワンストップの行政サービスが提供される。
「国民電子私書箱(仮称)」では、行政情報共同支援センター(仮称)を設置し、行政情報に関する情報を集約し、ユーザーである国民がインターネットを介して接続する形態を取る。「国民電子私書箱(仮称)」の利用選択権は国民が保持。国民電子私書箱(仮称)ポータルは、政府機関などや民間の事業者が運営するホームページで、テレビ、パソコン、携帯電話、キオスク端末での利用が可能となる。
提供されるサービスは、(1)ライフイベントに関する手続きのワンストップサービス、(2)利用者が受けられる行政サービスの参照、(3)利用者が過去に手続きした履歴の参照、(4)各種情報保有期間が管理する利用者に関する情報の参照、(5)個人情報に関するアクセス履歴の参照などがある。情報の提供者は、行政機関やガス・電気などの公益事業者だ。引っ越しでは、転出先の自治体だけでなく、ガスや電気などの手続きも可能となる。
「国民電子私書箱(仮称)」の国民にとってのメリットは、(1)行政機関などが保有する個人情報を、いつでも簡単に入手・確認することができる、(2)引っ越し・退職・出産などのライフイベントで必要な手続きが、1回で完了し、また、行政手続きに必要な証明書(住民票など)の添付が不要となる、(3)各種の給付の情報が、役所から国民一人ひとりに連絡されるため、給付の存在を知らないことによる未受給を防げる、などがある。
一方、企業や行政のメリットは、従業員の源泉税の納付、年金など雇用関係の申請を電子的に行政情報支援センター(仮称)を通して送受信することで手続きを完了できるため、郵送事務の減少など事務処理の軽減によるコスト削減が可能になる。「国民電子私書箱(仮称)」の基本構想の決定はこれからだが、国民の視点に立ち、ライフイベントに対応したワンストップ型やプッシュ型の行政サービスを提供することが重要となる。