養鶏業は、主に鶏卵の生産及び食鶏の飼育を行う事業所をいう。東京商工リサーチが発表した養鶏業の倒産状況によると、2007年1~7月の養鶏業倒産は、前年同期比8件(160%)増の13件と急増した。最近の養鶏業倒産は、2000年3件、2001年5件、2002年7件、2003年10件、2004年4件、2005年3件、2006年7件と推移してきた。2007年はすでに7月末時点で前年を大幅に上回っている。
こうした養鶏業倒産急増の背景には、飼料用輸入穀物の高騰がある。トウモロコシを主原料とする配合飼料の価格が、今年になって1996年以来11年ぶりの高値となった。価格高騰の一要因として、米国のバイオエタノールの需要急増がある。バイオエタノールが環境に優しい自動車燃料として脚光を浴びたことで、原料となるトウモロコシの値上がりに拍車をかけ、畜産農家に影響が及んだとみられている。
鳥インフルエンザの影響については、その発生地域では充実した公的保証制度があるため、風評被害による倒産は発生していない。むしろ着目したいのは、鶏卵価格の推移だ。農家販売価格・卸売価格と小売価格間の利幅が縮まり、低い収益構造に変化したことが大きい。一方で、5万羽以上飼養する業者が全体の2割以上にのぼるなど、経営の大規模化が進み、小規模な養鶏業者の廃業が増えている。
また、規模の拡大を目指して積極的な投資を行ったものの十分な収益が得られず、その負担に耐え切れずに経営に行き詰まるケースがみられる。他方、スーパーなどでは、鶏卵が客寄せ商品となり、低価格で販売されている。数多くの品目を販売するスーパーにとっては、赤字覚悟で販売しても他の商品で全体収益の補てんは可能だが、ほぼ単品経営に近い養鶏業者にとって買取価格の低下傾向は死活問題になっている。