昨年、個人投資家の申告漏れが目立ち話題となったFX取引(外国為替証拠金取引)の申告漏れ防止策が施される。2008年度税制改正案には、円滑・適正な納税のための環境整備の一環として、課税の適正化を図る観点から、FX取引等の金融先物取引に関する調書制度の整備が盛り込まれる。具体的には、金融先物取引に関する支払調書の提出義務を、現行の商品取引所を介した取引のみから、店頭取引まで拡充する。
FX取引とは、円とドルなど通貨の為替相場の変動や金利差で利益を出す金融商品だが、国税庁によると、昨年6月までの1年間にFX取引に係る実地調査を1030件行った結果、総額224億円の申告漏れ所得金額(1件あたり2176万円)が見つかっている。この背景には、FX取引は一般の株式売買と違って、取引記録が税務当局に提出されないケースがあることから、申告しない個人投資家が多かったことがある。
FX取引は、業者に預けた保証金の数倍から数十倍の外国為替取引ができるので、少額の資産で多額の利益を得る可能性もある。FX取引による利益は、一定のFX取引(東京金融先物取引所を通じた取引)を除き、店頭取引業者を通じた取引により生じた所得は雑所得として申告する必要があるが、店頭取引業者は顧客の取引記録の税務署への提出義務がないので、税務当局も個人投資家の所得を把握しにくい状況にあった。
そこで、2008年度税制改正では、先物取引に関する調書制度について、現行の支払調書の提出義務は商品取引所を介した取引のみだが、店頭取引についても、差金等決済があった日の翌月末日までまたは差金等決済があった日の属する年の翌年1月末までに一定の支払調書を税務署に提出することを金融取引業者に義務付ける。これらの改正は、2009年1月1日以後に行われる差金等決済について適用される予定だ。