2004年4月から改正消費税法が施行され免税点は1千万円に引き下げられた。消費税の免税事業者にあたるかどうかを判断する基準は、前々事業年度の「課税売上高」で判定する。そこで問題となるのは、事業者が以前に免税事業者であれば、当然納税義務を免除された消費税相当額があるが、これを含めたところで「課税売上高」を算定するかどうかということだ。
最高裁の第三小法廷(濱田邦夫裁判長)はこのほど、「課税売上高」を算定するにあたっては、納税額を免除された消費税相当額は、譲渡資産等の対価の額から控除しない、との判決を下し、納税者の上告を棄却した。この事案は免税点が改正前の3千万円のもので、納税者は、実際の売上高は約3052万円だったが、消費税相当額は控除されるべきだとの見解を採って、課税売上高が3千万円以下になることから申告しなかった。
ところが、国税当局は、免税事業者に該当しないとして、消費税額約40万円及び無申告加算税約6万円の賦課決定をしたため、納税者が訴訟を起こしていたもの。第三小法廷は、消費税法上、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額であって、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税相当額は含まないと規定していると指摘する。
この趣旨は、課税資産の譲渡等の対価として収受された金銭等のなかには、その資産の譲渡等の相手方に転嫁された消費税に相当するものが含まれていることから、課税標準を定めるにあたってこれを控除することが相当だというものだ。したがって、消費税の納税義務を負わず、消費税相当額を転嫁する立場にない免税事業者については、消費税相当額を控除することは法の予定しないところというべきだとしている。
以上のように、「基準期間」における「課税売上高」を算定するにあたり、課税資産の譲渡等の対価の額に含まないものとされる「課されるべき消費税に相当する額」とは、基準期間にあたる課税期間について事業者に現実に課されることとなる消費税の額をいい、事業者が免税業者に該当するとして納税義務を免除された消費税の額を含まないとするのが相当である、との判断を示している。