近年の所得税調査の特徴は、実地調査は件数を犠牲にしても高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らない電話や来署依頼で済ます“簡易な接触”で調査件数を保っていることにある。このような構図の中に、2004事務年度の調査では、資料情報や事業実態の解明を通じて申告漏れ所得の把握を短期間で行う「着眼調査」が導入された。
国税庁が24日に公表した2004事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前年度に比べ2.3%減の78万1千件に対して行われ、うち72.7%にあたる56万8千件から1.4%減の8963億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は11.1%減の1162億円だった。1件あたりの平均では115万円の申告漏れに対し15万円を追徴している。
実地調査における特別調査・一般調査は、前年度より22.7%少ない4万8千件に対して行われ、うち88.3%にあたる4万3千件(前年度比22.4%減)から総額4349億円(同10.8%減)の申告漏れ所得を見つけ、912億円を追徴した。調査1件あたりの申告漏れは、前年度を15.4%上回る899万円となり、ここ10年間では最高の数字となっている。調査件数は減少しているものの、対象を的確に絞った実地調査の効果が表れている。
特別調査・一般調査が減少したのは、同じく実地調査に位置づけられる着眼調査を導入したため。着眼調査は19万1千件行われ、うち81.7%の15万6千件から3510億円の申告漏れを見つけ177億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは183万円。また、簡易な接触は、前年度比25.7%減の54万1千件行われ、うち68.1%の36万9千件から1103億円の申告漏れを見つけ72億円を追徴した。1件あたりの平均申告漏れは20万円。
このように、着眼調査は、実地調査ではあるが、特別調査・一般調査と簡易な接触の中間に位置づけられる税務調査ということになろうか。実地調査の対象としては不正度が少ないが、簡易な接触で済ますことはできない程度のものが対象となろう。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得金額ワースト業種は、「貸金業」が4329万円で4年連続のトップ、以下、「キャバレー」(2512万円)、「風俗業」(2166万円)までがワースト3。