現在、参院で審議中の経済危機対策関連法案には、中小企業の交際費の損金算入特例の拡充が盛り込まれている。法案が成立すれば、今年4月1日以後に終了する事業年度分の法人税から適用される。資本金1億円以下の法人の交際費に係る定額控除限度額が、現行の400万円から「600万円」に引き上げられる。中小法人は、定額控除限度額のうち90%部分が損金算入できるので、改正後は最大540万円まで損金算入が可能となる。
ただ、「400万円超の交際費を支出できる企業は全体の1.3%程度に過ぎない」(民主党の階議員)との指摘や、今回の措置は「交際費支出を拡大できる余力のある中小企業が適用を受ける仕組み」との加藤主税局長の答弁などから、中小企業がどれくらい恩恵を得られるかは未知数だ。とはいえ、交際費の損金算入を一切認められていない大企業(資本金1億円以上の法人)にとってはうらやましい限りだろう。
そこで、大企業である親会社と中小企業である子会社が一緒に取引先を接待する場合に、子会社が交際費を全額負担するようなケースが散見されるようだ。なかには、親会社から子会社に対して、あらかじめ外注費などとして交際費相当額を渡しておき、親会社はその金額を全額損金算入する一方で、子会社においても、その金額の90%を損金算入するといった悪質なケースもあるという。
しかし、このような共同接待であれば、通常は親会社と子会社で交際費を折半するのが筋であって、親会社が負担した交際費は損金算入できず、子会社が負担した交際費は限度額の枠内であれば損金算入できることになる。仮に、法人税の損金算入枠を念頭に、親会社が元々持つべき交際費まで子会社が負担したとなれば、交際費課税を回避する意図があったものとして、課税当局の指摘を受ける可能性が高いので要注意となろう。