長らく減少基調にあった税収が2004年度にようやく増加に転じ、2005年度は当初予算の約44兆円から最終的には49兆円を超える見込みである。特に法人税は3年連続で増加しており、寄与度が高い。わが国の重要課題である財政再建においても、今後の法人税収の動向が気になるところだ。そこで、「税収はなぜ増加したのか」と題した三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートから法人税の税収動向の分析を紹介する。
レポートによると、法人税の対名目GDP比の動きは、88年度をピークに低下傾向が続き、2003年度にようやく底を打って上昇に転じている。一方、足元の企業業績は好調を維持しており、経常利益ベースではすでにバブル期の水準を上回り過去最高を更新している。ところが、課税対象となる所得の増加は小幅にとどまっている。その法人税が減少する要因として、特別損益や税制改正などによる構造要因を指摘している。
構造要因の大きな部分を占めるのが、バブル崩壊後、企業の特別損失が拡大し、課税対象となる所得が減少したことだが、特別損失の発生はすでにピークアウトしている。しかし、構造要因のマイナス幅が小さくならないのは、欠損金の繰越控除制度が毎年度の税収に影響を及ぼすためだ。実際に、最近では毎年10兆円程度の企業利益が法人税の支払いを免除されている。法人税率を考慮すると、毎年3兆円程度税収を押し下げている。
つまり、今後の法人税の動向をみる上で重要なのは、一つは欠損金の繰越控除制度の適用企業数がどう変化するかである。もう一つは、黒字法人の所得額がどの程度上乗せされるかである。レポートは、かなり大まかな目途と断った上で、税収を落ち込ませていた構造要因が最近は毎年1兆円ずつ減少しているとみている。繰越欠損金の残高が減ってくれば、黒字法人に転じる企業数も増えてくる。
一方、黒字法人の所得率(課税所得を営業収入で割ったもの)の水準はすでにバブル期並にまで上昇している。足元でも売上高経常利益率の上昇が続いていることから、黒字法人の収益率の改善は続くとみるが、すでにかなりの水準に達していることから、上昇するとしても今後は緩やかなペースとなる可能性が高い。このため、黒字法人の所得の上乗せよりも、黒字法人の数の増加が、今後の法人税収の動向のカギを握るとみている。
同レポート(「日本経済ウォッチ(2006年7月号)」)の詳細は↓
http://www.murc.jp/report/research/watch/2006/200607.pdf