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経営関連情報 (2003/12/15)
中小企業も決算書を公開する時代(10)

~たな卸資産は、どのように取り扱うか?(続)

 前回はたな卸資産の評価基準や評価方法をみてきたが、今回はその続編としてたな卸資産の取得原価について解説し、さらに財務診断のポイントについて考えてみたい。まず、たな卸資産の取得原価は、購入代価または製造原価に引取費用などの付随費用を加算する。付随費用とは、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・検収費・関税などが該当する。次は、財務診断のポイントである。

 会社経営において、期末における在庫評価は非常に重要になる。利益の確定の観点からみると、損益計算書においては、たな卸資産の評価の如何で売上総利益が変わる。例えば、期末在庫を過大に評価すると売上原価が減少して売上総利益が過大となる。反対に、期末在庫を過少に評価すると、売上原価が増加し、売上総利益が過少となる。このため、会社の経営成績を表す売上総利益を正しく認識するためには、たな卸資産を真実に基づいて適正に評価することが必要となる。

 また、資金繰りの観点からも、たな卸資産の評価は重要となる。会社経営では、受注したらすぐ納品できるように、必要十分なたな卸資産を保有しなければならない。しかしながら、在庫が多ければ多いほど、それに伴う必要資金が増加する。「適正な在庫数量の水準」を見極めることが経営者の重要な意思決定といえる。つまり、「適正な在庫水準の決定」は、「受注に対応する在庫の確保」と「資金繰りの観点からの在庫の圧縮」という両面から判断されることになる。

(続く)