税 務 関 連 情 報

2003年04月21日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(46)

『所得税における水平的公平性について』(7)

★クロヨン批判に対応した給与所得控除の拡充

 73年12月の税制調査会答申では、勤務先からの給与が明確に把握、課税されていることや、給与所得者の増加が著しいことなどによる給与所得者の負担感を認めている。翌74年には、それまで最高限度額の制限があった給与所得控除に、逆に最低保証額を設け上限をなくすという最大の変更が行われた。この時期は、大島サラリーマン税金訴訟が問題になるなど、クロヨン論議が世論でも大きな話題となった。

 大島サラリーマン税金訴訟の説明は省略するが、最高裁判決(85年)において、給与所得者に実額控除を認めず給与所得控除を採用していることは違憲ではないとの判断が下されたものの、87年には、給与所得者にも申告への道を拓く特定支出控除が創設された。給与所得者に対し通勤費や引っ越し費用など特定5項目の合計額が給与所得控除を上回る場合は申告できる制度である。

 以上が、業種間の水平的公平性を議論していく上での、現行制度の内容と、そこに至る歴史的経緯とその背景についての概要である。各業種に適用される控除項目のバランスは、控除の拡充によって調整されてきたこと、事業所得の給与所得化とそれに配慮した形での配偶者控除等の拡充、クロヨン批判に対応した給与所得控除の拡充などの歴史的経緯が見て取れる。

 次回からは、現行の所得税制度の下で、どの程度の税負担の差異が業種間・世帯間にあるのかを試算によって検証し、また、その前提となる給与所得控除や必要経費の妥当性などについて考えていくことになる。

(続く)

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