税理士の公的団体である日本税理士会連合会(森金次郎会長)は、会長の諮問機関である税制審議会において毎年度、1年間かけて税制上の諸問題を検討し、その結果を報告している。納税者の代理人としてプロの立場から税制の見直しを行っているのだが、今年度のテーマは「所得税制における所得区分と課税方式のあり方」であることが分かった。
わが国の所得税法は、所得の発生形態とその性質などに応じた10種類の所得区分を設け、それぞれについて所得計算方法を定めている。これは、所得の種類によって担税力が異なるためといわれている。また、課税方式は、いわゆる総合課税を建て前としながら、譲渡所得などには分離課税方式が採用されている。
一方、少子高齢化の進行、男女共同参画社会の推進、雇用慣行やライフスタイルの多様化など、わが国の経済社会構造は大きく変わりつつある。また、長期の不況と資産デフレを基因とした個人の破産・再生のための債務免除や資産整理など、かつてのわが国では経験しなかった事象も多発している。
このような状況の下、現行の所得税制の仕組みや適用について、さまざまな問題や疑問が生じている。例えば、ストック・オプションに係る利益の所得区分について税務の現場で混乱が生じている。また、2004年度税制改正では土地等の譲渡損失に係る損益通算の廃止に衝撃が走ったが、これは、譲渡所得が分離課税とされているにもかかわらず、譲渡損失を総合課税の所得から控除することに基因する問題との指摘がある。
これらの問題をみると、現行の所得税制がすでに時代に即応しないものになっているのではないかという見方もできる。そこで、雇用形態や所得の稼得形態が多様化するなかで所得区分はどうあるべきか、また、課税方式として総合課税と分離課税はこのままでいいのか、といった点について検討していくこととなったわけだ。税制審議会では、今年度末(来年3月末)を目処に検討結果を報告する予定。