事業再生が脚光を浴びているが、活発なのはあくまでも大企業の場合であり、中小企業にとって事業再生は厳しいことに変わりはない。そこで、事業再生に取り組む中小企業経営者のためにも、事業再生を担う人材として「事業再生士」資格の導入による人的基盤拡大を要望するのは、三菱総研・阪本大介氏のコラムである。
同氏のコラムによると、発足から1年半経った産業再生機構(RIC)は、10兆円という資金枠を背景に24社への支援を決定している。IRCやファンド・金融機関は、資金(債権放棄を含む)・人材(事業を再生できる経営陣)の供給源となることで「事業再生市場」の整備に大きく貢献し、大企業を対象とした事業再生市場の盛況を生んでいる。
一方、中小企業を再生支援する中小企業再生支援協議会に寄せられた相談4294件(7/26現在)に対し、再生計画策定に着手したのは433件、うち策定完了したのは175件と4%に過ぎない。大半の中小企業は資金・人材ともに得られていないのが実情だ。
こうした状況に対し、「事業再生士」といった資格制度を挿入しようという動きがある。国際的にみると、事業再生に関する一種の世界的標準資格として「CTP」が米国など世界8ヵ国で導入されている。こうした資格制度があれば、事業再生を図る中小企業経営者にとって、「まず誰に相談すればいいか」が明確になる。また、事業再生の専門家を目指す人材の裾野が広がる効果も期待できる。
日本でも現在、CTPの導入を準備する民間での動きがあるという。CTPは、事業再生に係る金融機関との交渉を含めた資金調達や債務再構築のノウハウがないと取得できないため、経営者が資金・人材の両面でCTP取得者に相談するなどの支援が期待される。一刻も早い日本でのCTP導入による事業再生専門家の人的基盤拡大を願う所以である。