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税務関連情報 (2006/10/20)

複数の滞在地がある場合の居住者・非居住者の判定

 今年の7月、東京国税局が、ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの翻訳者に対し35億円の申告漏れを指摘して話題となった。翻訳者は税率が日本よりも10%低いスイスに移住しており、スイスに納税していたが、国税局は「実質的に日本で活動していたのだから、日本に税金を納めるべきだ」として日本とスイスとの税率の差額分の支払いを求めたものだ。税法上、「居住者」と「非居住者」の判定はどうなるのか。

 所得税法上、「居住者」とは、国内に住所があり、または現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人をいう。居住者は、その人のすべての所得について、わが国において所得税を納める義務がある。「住所」とは、「各人の生活の本拠」をいい、国内に「生活の本拠」があるかどうかは、客観的事実によって判断する。また、「居所」とは、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされている。

 ある人の滞在地が2ヵ国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判断するためには、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍などの客観的事実によって判断することになる。滞在日数によってのみ判断するものではないことから、外国に1年の半分(183日)以上滞在している場合であっても、わが国の居住者となる場合がある。

 外国の居住者となるかどうかは、その国の法令によって決まることになる。その国で居住者と判定され、わが国でも居住者と判定される場合、租税条約では、二重課税を防止するため、居住者の判定方法を定めている。一般的には、個人については「恒久的住居」や「利害関係の中心的場所」、「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、どちらの国の「居住者」とみられるかを決める。

 また、必要に応じ、両国当局による相互協議が行われることもあり、上記の「ハリー・ポッター」の翻訳者のケースでは、スイスとわが国との相互協議等が行われ、その結果、翻訳者がわが国の居住者ということになれば、当然、スイスとの税率の差額分などの納税義務が生ずる。なお、「非居住者」とは、居住者以外の個人をいい、日本国内で生じた所得に限って所得税を納める義務がある。