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税務関連情報 (2005/05/30)

退職金課税の乱用防止策を検討~政府税調

 政府税制調査会は、優遇されている退職所得課税を乱用した租税回避の防止策を検討する。これは、一部の外資系企業が、従業員を短期間雇用して、給与よりも退職金にウエイトを移し、退職金2分の1課税を乱用して税金を免れている、との指摘があることから、早急にその対策を図ろうというもの。また、終身雇用を前提とした雇用形態の変化に伴う退職所得課税の見直しは、時間をかけて行うことを明らかにしている。

 退職所得は、給与所得など他の所得と分離して「(収入金額-退職所得控除額)×1/2」で算出した所得に対して課税する。勤続年数20年まで1年につき40万円、20年を超えると同70万円を控除したうえで、半分にしか課税しないのだから、給与所得に比べはるかに有利だ。主に長期間働いた後の老後資金を確保するための税負担の軽減であって、実質は給与所得であるものまで適用するのは趣旨に反する。

 そこで、政府税調は、早急に退職金課税の乱用防止策を定める考えだ。例えば、退職金課税を適用できる要件として、10年とか15年とかの最低勤続年数を定め、3年や5年の短期間雇用者は締め出す考えがある。

 一方で、退職金課税制度は終身雇用を前提としたものであって、中途退職や転職の増加など雇用形態が多様化してきた現状では、20年を超えるとさらに有利となる現行制度は見直しが必要との指摘がある。だが、退職金制度は日本の慣行として根強く残っている部分もあり、バブル崩壊後の急激な変化をそのまま受け止めずに、推移を見極める必要がある、との慎重な意見もある。

 政府税調としては、「今の雇用形態がどうなるのかということを見極める必要がある」(石弘光会長)ことから、中長期的な課題として退職金制度そのものの見直しを、時間をかけて検討していくという慎重な態度を明らかにした。いずれにしろ、「退職金制度は外国にはない日本独特の制度であるから、このまま温存するわけにはいかない」ということで一致しており、当面の乱用防止策を経て大幅な見直しが図られるようだ。