自動車や航空機、テレビ、家具、電気製品など耐久財の消費に及ぼす諸要因を分析したのは内閣府のレポートである。それによると、耐久財の消費に及ぼす要因は多々あるが、代表的なものとして、1)所得、2)金融資産残高、3)相対価格、4)耐久財ストック、5)実質金利、6)住宅投資等を挙げている。これらの要因は、過去30年程度を振り返ってみると、耐久財消費と安定的な相関関係が確認できるとしている。
ただし、05年以降についてはこの安定的な関係に変化がみられ、実績値が推計値よりも下振れ、両者の乖離が拡大している。ちなみに、当てはまりの良かった03~04年と、乖離の拡がった05~06年を比較してみると、その大きな違いは、05年以降、所得要因と金融資産要因が推計値では大きくプラス要因に寄与しているにもかかわらず、実績値では耐久財消費の押上げにつながっていないとみられる点を挙げている。
この背景として、所得については、その増加が雇用者数の増加を主体とするものであり、賃金の寄与が小さいことを指摘。耐久財消費は賃金に対する弾力性が高いため、雇用者数中心の所得増では、耐久財消費増につながりにくい。また、金融資産のこのところの増加が、主として株式の評価益にあるものであり、株式相場に応じて変動しやすいことから恒常所得と捉えられていないため、耐久財消費増加につながりにくい可能性があると分析している。
したがって、今後、耐久財の消費がかつてのように増加していくためには、所得については1人あたり賃金の安定的な増加、金融資産については預貯金等を含めて残高が簿価ベースで安定的に増加することを期待している。なお、耐久財消費を先行き押し下げる要因として、6月の建築基準法改正の影響などから7月以降、住宅着工件数が急速に減少している点を挙げている。民間住宅投資は7~9月期以降、着工の減少に伴い減少に向かう可能性が高いとみている。
その場合、GDP押下げの要因になるだけでなく、家電、家具、自動車などの民間住宅投資と関連の深い耐久財消費の減少も加わり、影響が増幅するリスクもあると予測している(ただし、耐久財消費の民間住宅投資に対する弾力性は0.14程度)。レポートは、耐久財消費は個人消費の1割程度を占め、変動の大きさから個人消費の方向性にも影響を及ぼすため、今後その動向を注意深く見守っていく必要があるとの考えを示している。