経 営 関 連 情 報

2003年07月14日-003
費用削減による企業収益の改善にひそむ課題

 バブル崩壊後の資産価格の下落、売上低迷から企業収益(経常利益)は大きく下押しされてきたが、最近、企業収益に改善の動きが出てきた。その主因は、人件費をはじめとする固定費・変動費などの費用削減によるとの見方は一致している。これは、いわば縮小均衡によるもので、今後さらに収益力を高めるためには拡大均衡を目指す必要がある、とするのは三井トラスト・ホールディングスのレポートである。

 レポートは、バブル期ピークの1989年以降、当初は人件費の増加によって低迷した企業収益だが、94~97年には金融緩和策実施による支払利息の減少や人件費抑制によって、また、98年以降は人件費抑制と変動費圧縮により改善したと分析している。最近は、売上高が2001年7~9月期から直近の2003年1~3月期まで連続してマイナスする一方で、経常利益は、2002年4~6月期までマイナスが続いたものの、翌期にプラスに転じて以降2003年1~3月期まで3四半期連続して増益となっている。

 このような経常利益改善に大きく寄与したのは費用削減であることは間違いない。しかし、今後さらに収益力をつけるためには新しい事業の展開が必要だが、そのために必要な人的資本の増強や研究開発が現状は停滞している。この停滞は、これまでの企業の費用削減策実施の影響による面がある。

 失業が企業の人件費抑制策を背景に増加しており、特に若年層の完全失業率上昇が著しい。企業は、人件費抑制をまず新入社員の抑制により、次に既雇用者の抑制で図る場合が多い。これからの企業を担っていく若年者が、仕事をしながらの能力取得の機会を得られないことは、企業にとって大きなマイナスとなる。

 一方、研究費については、費用全体に占める割合は小さいものの、その性格から企業収益に対する影響度は大きいとみられる。1980年代は年に10%前後だった研究費の伸び率が、ここ10年間は平均1.7%にとどまっている。研究開発は、企業の競争力・収益力に対して長期間にわたって影響を及ぼすだけに、その停滞は今後問題を残す可能性があるとして、企業収益の改善にひそむ今後の課題を指摘している。

 

ホームへ戻る