健康志向の高まりなどから拡大基調をたどっていた健康食品市場だが、2006年度は初めて縮小したことが、矢野経済研究所が発表した健康食品市場動向調査で明らかになった。2006年度市場規模は6892億円、前年度比2.1%減と同調査開始以来初の縮小に転じた。大ヒット素材の不在や行政指導・監視強化などが影響する一方、健康・美容に対する消費者の選択肢が食品からサービス・アミューズメントへと分散化している。
健康食品市場が縮小した要因として、コエンザイムQ10やα-リポ酸ブームの反動、ヒット素材の不在に加え、人気素材だった大豆イソフラボンやコエンザイムQ10の上限摂取量問題、2006年2月の厚生労働省によるアガリスク製品の安全性に関する食品健康影響評価の発表などによる消費者心理の冷え込み、行政の業界に対する規制・監視強化により、ビジネス環境が厳しさを増したことなどを挙げている。
また、流通ルート別にみると、2006年度は唯一、通信販売のみが拡大し、前年度比3.5%増の2050億円と、2000億円の大台を突破した。ただし、参入企業の増加による新規顧客のレスポンス低下など、競合激化による売上の明暗が鮮明になっている。同市場の最大チャネルである訪問販売は、同1.6%減の2790億円と縮小に転じた。市場縮小幅は小さかったものの、近年の傾向である販売員の高齢化や新規会員獲得の苦戦が鮮明となった。
健康食品素材をみると、2006年度はヒット素材に乏しく、加えて免疫賦活素材として人気の高かったアガリスク市場がピーク時の3分の1以下に大きく縮小。一方、引き続きコラーゲンなどの美容・アンチエイジング素材や、関節対策として拡大しているグルコミサンなどの中高年対策素材、若年層から中・高年齢層まで幅広い年代のニーズを獲得しているブルーベリーなどのアイケア素材・商品が堅調に推移している。
矢野経済研究所では、踊り場を迎えた健康食品市場だが、2008年4月から予定されている特定健康診断・特定保健指導の実施による生活習慣病予防意識のさらなる向上など、健康を取り巻く産業はさらに活発化するとみている。健康食品を取り巻く各種法制・制度の整備、行政の監視・指導強化が進むなかで、消費者の健康・美容をサポートする手段の一つとして、健康食品市場は新たなステージを迎えるものと予想している。