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会計検査院が中小企業減税の適用範囲で意見表示

税務関連情報 - 2010年11月01日

 会計検査院は10月26日、中小企業減税の縮小に関する意見書を財務省と経済産業省に提出した。多額の利益を出しているにもかかわらず租税特別措置の適用を受けたり、資本金1億円以下という税法上の基準だけで軽減税率の適用を受ける中小企業が多いことを問題視している。2011度税制改正に向けて法人税の実効税率引下げが議論されているなかで、中小減税の縮小を求めた同院の意見は今後注目されそうだ。

 検査院は、1万1033社の2008年4月~2009年3月までの間に終了した事業年度に係る確定申告書から租税特別措置の適用状況を調べた。その結果、黒字法人5430社中、中小企業向け特別措置の適用を受けたのは1580社で、このなかには所得が5億円を超える中小企業が196社あった。税法上の大企業(資本金1億円超)の平均所得7億8000万円を超す中小企業は92法人あり、所得10億円超が63法人、50億円超が9法人だった。

 このような大企業並みの中小企業では所得が多いほど純資産額も多く、同時に過去3事業年度でも赤字を計上していない。検査院では「過去も利益を着実に上げ、利益剰余金の形で蓄積していったことが推測される」と指摘。財務体質が弱い中小企業を救う目的から外れているとして、特別措置の効果を検証し適用範囲を見直すべきだとした。法人税についても、必ずしも税が負担できないとは認められない中小企業がみられるとした。

 例えば、資本金2400万円で売上高約15億円の中小企業が現預金78億円、有価証券97億円を保有していたケースもある。他方、中小企業には法人税率を30%から22%に軽減し、さらに2008年度の経済対策で売上高800万円までは18%への税率が適用される。検査院は、財務状況が脆弱とは認められない中小企業者が特例の適用を受けるのは制度の趣旨に沿ったものとはいえないとして、適用範囲について検討するよう意見表示した。

「租税特別措置に対する意見」の全文は↓
 http://www.jbaudit.go.jp/pr/media/kensa/kensa22/pdf/221026_zenbun_4.pdf

「法人税率に対する意見」の全文は↓
 http://www.jbaudit.go.jp/pr/media/kensa/kensa22/pdf/221026_zenbun_5.pdf