経 営 関 連 情 報

2003年09月17日-002
IT時代の新しい職人像

 「職人」という言葉には、長年の忍耐の末に努力して獲得した技術というものがイメージされる。一朝一夕にはなれない、忍耐強くない現代の若者には到底期待できないヒトなのである。ところが、職人になるための艱難刻苦をコンピュータ技術の進歩が変えてしまった一面があるというのだ。

 その辺の事情を語るのは「IT時代の新しい職人像」と題した三菱総研の内海和夫氏のエッセイである。同氏が紹介するあるベンチャーは多種少量の精密機械加工部品を手がけている。作業の流れは、まずCADで部品を設計し、それをNC工作機械で加工し、最後にそれを検査して納品するというもの。

 当初は、その工程ごとに人を配置する、いわゆる分業体制をとっていたが、歩留まりがなかなか上がらない状態が続いたため、ある時期に思い切って設計から加工・検査までを一人に任せる方法をとった。すると、歩留まりが上がっただけでなく、製作時間の短縮にもつながり、生産性・品質ともに大幅に向上したという。

 この成功の最大要因は、一人の担当者がNC工作機械の“くせ”を把握した上で設計できるようになったことである。そのベンチャーのユニークなところは、それを、技術的なバックグラウンドが必ずしもない高卒の若者にやらせたことだ。

 もちろん適性のない者も若干いるが、適正のある者は大卒にもできないような素晴らしい仕事をするそうである。CADとNC工作機械を駆使して超精密加工部品を作り上げるということは、達成感はもちろんのこと、ある種のかっこよさもあって、若い職人の定着率は非常に高いということだ。

 内海氏は「IT時代の新しい職人像を垣間見た感がある。ぜひこの流れが全国に広がってほしい」と願っている。進歩するコンピュータを駆使してモノを創ることも「職人」として誇れる技術である時代となっている。この辺の視点を持つことも今の経営者には求められるのではないか。

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