2004年分所得税の確定申告が今月16日から始まるが、配偶者特別控除の廃止など税制改正の影響で留意すべき事項も少なくない。そのひとつに、昨年1月にさかのぼって適用された土地建物等不動産の譲渡所得における損益通算や繰越控除の廃止がある。国税庁はこのほど、同庁ホームページ上に、分離課税の土地建物等の譲渡所得がある場合の損益通算及び繰越控除を行う場合の確定申告書への記載要領を掲載した。
改正の内容をおさらいしてみると、不動産の譲渡損失は、原則、他の不動産の譲渡所得の黒字から控除し、控除しきれない金額はなかったものとみなされ、他の所得との損益通算はできなくなった。控除しきれない金額はなかったものとみなすわけだから、譲渡損失の翌年以降への繰越控除も廃止となる。
一方で、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除」制度が拡充され、譲渡資産に係る住宅ローンがない場合を適用対象とした上で適用期限が3年延長されている。さらに、「特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除」制度が創設され、居住用財産の譲渡損失のうち、譲渡資産に係る住宅ローンの残高が譲渡価額を超える場合のその差額を限度として、譲渡損失の損益通算及び繰越控除が認められることになった。
ところで、前年以前に土地などを売却して通算し切れなかった譲渡損失は、改正前のものだから当然3年間は繰り越せる。ただし、不動産の譲渡益とは通算できなくなるので注意が必要だ。この点、誤解している納税者が多い。改正によって、他の所得との損益通算はできなくなったものの、不動産の譲渡所得間の損益通算は認められるため、当然、繰越損失も通算できるものと思い込んでいるのだ。
ところが、前年までの繰越損失は、不動産の譲渡所得以外の所得との通算は認められるが、改正後の損益通算の規制の対象外となるため、16年1月以降生じた不動産の譲渡所得との損益通算は認められなくなったのだ。ただし、前年から繰り越された「居住用財産の譲渡損失」や「特定居住用財産の譲渡損失」に係る通算後譲渡損失額は、不動産の譲渡所得の黒字から控除することができる。
これらに係る確定申告書への記載要領の詳細は↓
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/syotoku/2981/01.htm