税 務 関 連 情 報

2002年10月30日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(4)

 今回は、課税の公平を確保するための方法として、職員増以外の手立てを考える余地はないのかを探ってみたい。ここでも、税務職員約4万人で構成する労働組合、国税労組の「税制に関する提言」を参考にする。提言では、税務職員の定員増を要望する一方で、課税の公平確保の見地から様々な提案を行っている。

 まずは記帳義務の強化である。昭和59年に導入された記帳義務は、不動産所得、事業所得等の金額の合計額が300万円を超える者は帳簿を備え付け、総収入金額や必要経費に関する事項を簡単な方法で記録し保存することを義務付けた制度だ。提言は、記帳義務が一定以上の納税者に限られ、罰則規定が何もないことから実効性に乏しいという。

 そこで、所得金額基準を廃止し、全ての納税者に記帳を義務付け、また、罰則制度も設けることを提言している。確かに、申告納税制度にとって記帳は不可欠な要素だ。だからといって、年間所得が300万円以下の零細事業者にまで厳密に記帳義務を求めて、大きな成果が期待できるのかは疑問があるところだ。仮に、納税者が記帳しないことで、大雑把な所得での申告しかできなければ、その不利益を甘んじて受ければいいのだ。

 また、記帳義務を強化して罰則規定を設けたとしても、それこそ何百万もの納税者がちゃんと帳簿をつけていることを誰が監視するのだ。ただでさえ、少ない職員に新たな事務量を増やすだけである。理想を描いても仕方がないではないか。それに、罰則を設ければ実効性が上がるとの考え方にも賛成しかねるものがある。

(以下次回に続く)

 

 

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