各種の調査結果によると、近年就労者のメンタルヘルスは悪化する状態にある。メンタルヘルスの悪化は、就労者の健康を脅かすだけでなく、企業のパフォーマンスにも影響を及ぼす。第一生命経済研究所(松田茂樹氏)が発表したレポートでは、就労者のメンタルヘルスの悪化の背景には、長時間労働と職場の人間関係の希薄化があると分析。職場における負の連鎖を断ち切ることが必要だと主張している。
レポートは、就労者のメンタルヘルスを悪化させている要因として、まず長時間労働の問題を挙げた。長時間の残業は、睡眠時間を減らし、疲労を蓄積させる。長時間労働化の背景には、企業が生産効率を高めるために、新卒採用の抑制と中高年のリストラをして人員削減を進めた結果、残った若手と中堅社員が多大な仕事量をこなさざるを得なくなっていることがあるとみている。
また、職場の人間関係の希薄化もメンタルヘルス悪化の大きな要因として挙げた。レポートは、実は職場において緊密な人間関係をはぐくむのは日本雇用の特徴である終身雇用であるとの考えだ。ところが、近年の不況下において人件費削減等のために終身雇用を見直す動きが広がり、それが職場ネットワークを弱体化させて、就労者のストレスを増大させるという結果をもたらしたと推察している。
以上のように、就労者のメンタルヘルスの悪化は、職場における要因から発生し、そのマイナス効果はパフォーマンスの低下という形で職場に戻ってくる。労働時間の問題については、長時間労働の是正と長時間労働者に対する面談等ケアの充実が、また、日本型雇用の見直しの過程で失った職場の人間関係を再構築することが、ストレス緩和の方策のひとつだとして、職場における負の連鎖を断ち切ることをレポートは求めている。
同レポートの全文は↓
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/ldi/watching/wt0603a.pdf