2003年10月01日-001
“見えない”消費の拡大、ネットオークションの活況
「個人消費市場が冷え込んでいる、モノが売れない」といわれて久しいが、実際には消費者は目に見える指標以上に“見えない”ところで消費しているのだ。とは、ネットオークション市場の活況を分析した三菱総研研究員の長谷川伸也氏の指摘である。
近年、オークション市場が活況を呈している。ネットのサイト上で出品から落札までの一連の取引が完結する手軽さに加え、出品の自由度の高さや容易さ、取引における“競り”というゲーム性などがこの市場の特徴。最近ではオンラインでの決済手段も整備され、手軽さが一層増している。
日本におけるこの市場の年間規模(落札金額総額)は5千億円を優に超えるという独自の試算結果もあり、大手のサイトでは常時数十万~数百万点の出品がなされているなど、慢性的な消費市場の冷え込みが謳われる昨今では稀有な市場である。本来、これほどの巨大市場に発展し、さらなる成長が期待される状況を考えれば、消費行動を測る一要素としてマクロ経済にとっても無視できないはずだが、この市場は現在のところ2つの意味で“水面下”の経済にとどまっている。
ひとつは、このような市場を適正に把握する手段が確立されていないこと。もうひとつは、この市場の成長は公の経済指標で示されるような“表”の経済の成長を直接的に意味するわけではないこと。ネットオークション市場で取引の大半を占めているのは個人消費者同士での中古品や未使用品の取引であり、消費者間で財とキャッシュが回っているに過ぎない。
長谷川氏は、このような水面下の経済と表の経済が、今後良好な循環関係を築いていくことに期待している。水面下の経済で消費者に戻ってくるキャッシュが、表の経済での新たな消費の呼び水となるような循環関係である。そのためには、企業は今以上に魅力ある新商品やサービスを世に出しつづけていく必要がある。そうでなければ、水面下の経済だけが成長し、表の経済はより一層縮小してしまいかねない、というのが長谷川氏の結論である。
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