1947~1949年生まれの“団塊世代”と呼ばれている人々が定年退職を迎え始めているなか、技能承継の途絶や労働力の減少などが懸念されている。一方で、その定年退職には今後3年間で50兆円の退職金が支払われるともいわれており、今後大きな購買力になるものと期待されている。こうした団塊の世代の大量退職の影響について検証したのは、内閣府のレポートである。
レポートによると、05年の国勢調査を基にした団塊世代の就業者数と若年世代(20~22歳)の人口比較では、沖縄を除く全地域で団塊世代の就業者数が上回っている。これは、若年世代のすべてが就業しても、団塊世代の大量退職によって生じる欠員をカバーできないことを意味する。一方で、近年の労働力人口の動きを年齢別にみると、高齢者の労働市場への参入が進み、55~64歳と65歳以上の人々が増加に寄与している。
また、団塊世代のアンケート調査(野村総研)によると、「仕事を持ち続けたく、その目途もある」が23%、「仕事を持ち続けたいが、未定」が55%と、約8割の人が60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けたいと希望している。同時に、06年4月に施行された改定高年齢者雇用安定法では、事業主に定年引上げ実施などが義務付けられており、高齢者労働力の活用が法律面でも後押しされている。
消費面では、団塊世代退職に伴う大きな購買力が見込まれる。景気ウォッチャー調査では、余暇を楽しむ客が増え、市場が活性化するというコメントがみられる。企業にとっては、団塊世代の取込みがビジネスチャンスとなる。以上の検証を踏まえ、レポートは、熟練した技術や様々な経験を持つ団塊世代には、新たな労働力としても、また、新たな消費市場としても、各方面から期待が持たれていると指摘している。