政府の1月の月例経済報告では3年ぶりに景気回復宣言に踏み切ったが、それは一部の大手企業や特定の業種のみで、大企業の業績回復が産業の裾野である中小企業へ波及しない構造は変わっていないとの見方が強い。経済産業省が20日に発表した地域中小企業金融ヒアリング調査結果でも、中小企業の感じる景況感は、地域によっては改善の動きがみられるが、まだまだ景気回復の実感に乏しいとする声が多いと報告している。
同調査は、1月中旬から2月中旬にかけて中小企業庁の職員が道府県に出張して、中小企業者や地銀・信金などから聞き取り調査したもの。それによると、中小企業の景況は、業種間でも大きな温度差がみられ、鉄鋼や自動車などの製造業や、DVDなどのデジタル家電、携帯電話などIT関連業種については、生産の増加などにより関連・下請中小企業にも回復の傾向がみられる。
一方で、小売等については消費の低迷や競争の激化などにより、建設業は公共投資の減少傾向などもあり、総じて厳しい状況にあるとの声が多い。また、同一業種にあっても、企業間で二極化の傾向がはっきりしているとの見方が多い。今後の先行きについては、回復への期待感が強いものの、全体としては、国際競争の激化によるコストダウン要求の懸念や、内需が依然沈黙していることなどから、慎重な見方が大勢を占めたという。
なお、資金繰りについては、おおむね安定しているとの声が増えているが、引き続き厳しい状況にある中小企業が多い。中小企業側の資金需要については、一部に設備投資向けの貸出もあるが、基本的には既存設備の更新や運転資金向け貸出が多く、投資意欲は依然慎重だ。金融機関側の貸出状況については、優良中小企業に対する複数金融機関からの貸出攻勢が行われる一方、リスクのある企業に対する貸出姿勢は引き続き厳しい。