政府の年金制度改革案がすこぶる評判が悪い。今後100年間を見通して、厚生年金保険料の上限を18.30%に固定し、50%以上の給付水準を維持するというものだが、これで将来的に不安のない持続可能で抜本的な制度改革ができたとは誰も思わないだろう。そんな折、経済同友会が2月26日、安心で充実した老後生活を支える新しい年金体系の構築に向けた提言を公表した。
それは、全国民共通の基礎年金部分を、保険料徴収をやめて税率9%の目的消費税を導入することによって老後の生活基礎の安定を保証する“新基礎年金”とし、所得水準に基づいて保険料や給付が決まる報酬比例部分は、民間が運営する拠出建ての年金である“新拠出建年金”を創設することで年金制度を再構築するというものだ。
新基礎年金の給付に必要な目的消費税の水準は、現在の国民年金積立金10兆円を給付原資に充てることを前提に試算すると、新制度に移行する2010年度は9%となる。ピークの2020年度では12%が目処になる。すべての国民は、65歳に達すれば、原則、1人あたり月額7万円の給付を受ける。
報酬比例部分は、現行の厚生年金に換えて、企業と個人の掛け金からなる私的な“新拠出建年金”とする。掛け金は非課税扱いとし、従業員の拠出は任意だが、限度額は現行の厚生年金保険料13.58%の1/2である6.79%(最高額は66万円/年)。企業は、事業主負担分として半分の6.79%(同)を従業員の年金口座に直接拠出する。年金資産の運用は、民間の金融機関等に委託し加入者自身の判断と責任において実施する。
政府の改革案では、18.30%まで増大する保険料や基礎年金の国庫負担割合を1/2に引き上げる財源も国民の大きな負担増となる。これに対して、同友会案では、新基礎年金の導入によって年金目的消費税9%を負担することになるが、一方で、現行の公的年金保険料を負担する必要がなくなり、また、新拠出建年金は、従業員の掛け金拠出は任意であり、消費税による負担増を吸収する余地もあるとして、負担面での優位性を指摘している。