法務省は、今年5月施行予定の新会社法において類似商号規制が廃止されることに伴い、商業登記申請における「会社の目的」の審査のあり方に関し、従来、必要とされていた「具体性」の要件を問わないことを検討している。審査のあり方を見直すことで、会社の目的の具体性は当事会社の意思に委ねられることになり、会社が定款に定めれば、「商業」や「商取引」などの抽象的・包括的な目的の記載の登記も可能になる。
類似商号規制とは、同じ市町村において他人が登記した商号を同一の営業について登記することを禁止するものである。また、同一の営業かどうかは、登記事項である「会社の目的」の具体性(会社の事業の範囲を客観的に正確に確定できる程度に記載すること)の有無で判断している。類似商号規制の関係上、抽象的・包括的な目的を許容すると、先に登記された商号の登記独占力を過度に認めることになるからである。
しかし、類似商号規制については、実務上、定款の事業目的を必要以上に細分化し、同一の営業に該当しないことをもって類似商号規制に触れないようにする傾向があるなどの弊害や、規制の効力が同市町村内に限定され、企業活動が広範囲化するにつれ、規制の合理性が薄れているとの指摘が多いことから、登記手続きの簡素化の要請も踏まえ、会社法では、この規制が廃止される。
これに伴い、類似の判断基準となっていた「会社の目的」についても記載基準が緩和される。これまでは、登記事項である「会社の目的」で同一の営業を判断していたため、登記実務上、「会社の目的」に係る語句の使用が厳格で審査に時間と手間がかかっていたことから、「会社の目的」について包括的な記載を認める。そこで、会社法施行後は、会社の目的の審査においても目的の具体性の有無を問わないことを検討しているわけだ。