税 務 関 連 情 報

2003年04月07日-002
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(43)

『所得税における水平的公平性について』(4)

 業種間での所得税負担の差異については、例えば、実際に働いていない配偶者や子供などを従業員として雇って、給料の形で過大な額を支払うことで、所得税の累進性が弱められたり、給与所得控除が彼らの給与にも適用されることで、世帯内で所得分割が行われているという批判がある。また、給与所得者には認められない租税特別措置や広く認められる必要経費が不公平だとの批判も多い。

 しかし、実際に業種間での所得税負担の差異を数値で示した例はほとんど見受けられないことから、内閣府の報告書では、マクロデータやモデルケースなどによる比較を行い、税制度の妥当性について検証することにより、制度上の水平的公平性の実態について検討しているのだ。

 一方、クロヨン問題については、上記の85年の世論調査において「クロヨンという言葉を聞いたことがある」との回答者が約3割いて、うち7割近くが「多かれ少なかれ所得捕捉率の格差は存在する」と考えていたことが明らかになった。当時と比べると最近はあまりクロヨン問題が話題にならないが、この問題がすでに解決したとの共通認識もない。

 ただし、クロヨンについて定量的な分析をした事例については、70~80年代のデータに基づくものがほとんどであることから、報告書では、近年における所得捕捉率の業種間の格差についても検証している。次回は、所得税制における業種間の差異の現状とそれぞれの制度の背景や歴史的経緯について確認することになる。

(続く)

 

ホームへ戻る