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税務関連情報 (2004/04/23)

社会保障負担増は税収減につながるというが…

 社会保障負担の増加、危機的な状況にある財政収支改善のための税負担の増加と、この両面から国民の負担が高まっていくことは避けられない状況にある。ところが、社会保障制度と税制はこれまでバラバラに見直されてきたため、このままでは財政赤字をさらに深刻化させるおそれがあると指摘するのはニッセイ基礎研究所の経済レポート。

 そこでは、税と社会保障制度を一体として負担や給付のあり方を検討することを強く求めている。しかし、赤字解消にはもっと大きな視点が必要ではないのだろうか。レポートでは、財政赤字が大幅に拡大している要因のひとつとして、社会保障負担が増加することにより、社会保険料控除を通じ税収が低下する効果も無視できないことを挙げている。

 つまり、社会保険料の負担が増加していくと、所得税や住民税には社会保険料控除があるため、課税最低限度が上昇して納税者割合が低下し、所得税や住民税が減少していくことになるという。したがって、社会保障負担の増加は税収減から財政赤字問題をさらに深刻化させるおそれが大きいことから、税と社会保障制度の一体的な改革を要望しているわけだ。

 確かに、社会保障負担増が税収減を招くという指摘は間違ってはいない。しかし、将来的な国民の負担全体を考えた場合、あまりにミクロな見方ではないだろうか。例えば、避けられない社会保障の負担増を社会保険料控除というクッションで和らげることこそ必要なのであって、税収減はほかの方法で補えばいいだけのことである。

 そこで、消費税をはじめとする税制全体の見直しが必要になってくるのだ。それは、税と社会保障制度といった一部分の関係だけでなく、赤字財政を解消することを前提に、社会保障制度も含めた構造改革、活力ある経済社会の実現などを目指すために税制はどうあるべきかということになる。わが国有数のシンクタンクの提言としては、もっとマクロなものを期待したいのだが、いかがであろうか。

 ニッセイ基礎研究所の経済レポートは↓
 http://www.nli-research.co.jp/stp/keireport/ke0403.html