政府税制調査会は、2010年度税制改正において、定期金に関する権利の評価方法を見直す方針だ。現行の定期金に関する権利の評価における割合・倍数は、1950(昭和25)年当時の金利水準・平均寿命などを勘案して定められており、その後の金利水準の低下や平均寿命の伸長、現行評価方法による算定額と年金受取額の現在価値とが大きく乖離していることなどを踏まえて見直しを行うとしている。
現行の年金保険の権利評価方法は、被保険者の死亡など給付事由が発生している場合、年金の受取期間が限定されている「有期定期金」は、(1)給付金額の総額×残存期間に応じた割合(20~70%)、(2)1年間に受けるべき金額×15倍、のいずれか低い額、受取期間が限定されていない「無期定期金」は、1年間に受けるべき金額×15倍、「終身定期金」は、1年間に受けるべき金額×受給権者の年齢に応じた倍数(1~11倍)とされている。
この「有期定期金」における割合や「終身定期金」における権利取得時における年齢は、昭和25年当時の金利水準(8.0%)と平均寿命(男58.0歳・女61.5歳)をベースに複利計算して相続税の評価額を算定している。この結果、現在の年金受取額の現在価値とは大きく乖離し、評価額との乖離に着目して定期金に関する権利の取得後に一時金受取への変更や解約ができる高額な一時払い個人年金も販売されていることが問題視されていた。
改正案によると、給付事由が発生している場合、「有期定期金」は、(1)解約返戻金相当額、(2)(定期金に代えて一時金の給付を受けられる場合)一時金相当額、(3)1年間に受けるべき金額×約定利率の複利年金現価率(残存期間に応ずるもの)、のいずれか高い額とされる。複利年金現価率とは、約定利率をrとしたときに、n年間にわたって受け取れる年金総額の現在価値を求める際に用いられる率である。
また、「無期定期金」は、上記と同じ(1)、(2)と(3)1年間に受けるべき金額÷約定利率、のいずれか高い額、「終身定期金」は、上記と同じ(1)、(2)と(3)1年間に受けるべき金額×約定利率の複利年金現価率(平均余命に応ずるもの)、のいずれか高い額とされる。なお、給付事由が発生していない定期金に関する権利の評価についても、上記に準じてその評価方法を見直す方針だ。