個人所得課税の抜本的な見直しのなかで、個人住民税の再構築が大きな焦点となっている。国と地方の税財政改革(三位一体改革)では、所得税から住民税に税源を委譲していく。そうなると、住民税の役割や課税方法、徴収体制など現行の住民税を再構築することが重要になる。これまでは、所得税と同じような諸控除を採用し“ミニ所得税”といわれた追従的な税体系から、独自のものを構築することが求められる。
住民税の再構築は、行政サービスの受益に応じた負担を求めるという「応益原則」に従って課税ベースを広げていくことが基本となる。個々の住民が等しく分担し、その責任を果たすという意味で、現行では5、10、13%と3段階の住民税所得割の税率を10%に一本化する。課税最低限の引上げとともに、現在自治体に納めている年間4000円の住民税均等割の引上げも検討課題となる。
このような見直しに伴って問題となるのは税務執行体制である。「国税のほうはそれなりに徴税機構はしっかりしているが、地方はどうか」(石弘光政府税調会長)との疑問がある。その一環として、前年課税を「現年課税」とする案も有力である。現在は、国税の前年分に基づいて課税しているが、「前年課税では本当の担税力はわからない。その年に獲得した所得をベースに納税すべき」(石会長)との考えだ。
住民税の再構築に伴い負担増となる納税者への配慮も必要になる。税源委譲のなかで、所得税と住民税の負担の変更があってもトータルでは変わらない形が原則だ。一方、肝心の税源委譲の議論が年末までお預けとなるとみられている。政府税調の住民税再構築の具体案提示もそれ以降となる。その前に、定率減税の廃止も残っており、さらに消費税率の引上げの議論が始まる。税制抜本改革の議論が大きな流れとなって動き始めている。