事業アイディアがひらめき、起業する際の最初のポイントは、スタートアップ資金の調達である。十分な資金調達ができないと資金繰りに忙殺され、商品やサービスの開発に集中できないことになる。特に開発型ベンチャーの場合は商品化するまでに時間がかかることから、給料100ヵ月分の準備が必要だとの目安を示すのは三菱総研の主任研究員・大西規和氏のコラムである。
氏のコラムによると、調達すべき資金の内訳として、まず生活費があり、起業時にかかる費用である事務所の保証金、事務機器、機械・設備、会社設立・登記などがあげられる。さらに、毎月の運転資金を固定費と変動費に分けて求め、これらを合計したものを起業時に調達する必要がある。調達すべき資金の総額は、業種・業態によって大きく違ってこよう。
研究開発投資の必要性が低く、人やOA機器、事務所さえあれば開業できるコンサルティングのような事業であれば、1年間売上がゼロでも資金ショートしない金額、また、研究開発や在庫投資が伴う開発型ベンチャーでは、3年間売上がゼロでも資金ショートしない程度の金額が調達できれば、磐石のスタートを切ることができる。氏の大雑把な目安は、コンサルティングで月収の40ヵ月分、開発ベンチャーでは同100ヵ月分だ。
次に、これらの資金をどのようにして調達するかが問題となる。氏が関与してきたベンチャーの事例をみてみると、基本は起業家自身の蓄えであり、なかには株式相場で起業資金のすべてを賄った強者もいるという。だが、ほとんどのベンチャーは、起業家自身の蓄えだけでなく、創業メンバーや親族、友人からの出資を仰いでいる。その担保となったのは、起業家が築いてきた信頼関係である、と指摘している。