デフレとは物価が持続的に下落している状態を指すが、最近、デフレは脱却しつつあるという見方が広がっている。そのデフレ脱却についてわかりやすく解説しているのはUFJ総研の「けいざい早わかり」である。そこでは、デフレは脱却するのか、脱却すると日本経済はよくなるのか、脱却すると結局どうなるのかなど、デフレ脱却について全般的な展望を示しているので、その概要を紹介したい。
デフレ脱却という点で注目されているのは消費者物価の動向である。消費者物価は年末に向けて上昇に転じる可能性が高まっている。まず、原油価格が高止まりを続けると、ガソリンなど石油関連製品の価格も前年より高い水準で推移する。燃料コストが上昇するので電気料金も引上げが予想される。また、景気の回復につれ雇用が回復し、賃金も持ち直してくると、人件費の占める割合が高いサービスの価格が上昇してくる。
つまり、デフレ脱却の可能性は高く、何か明るい未来を感じさせる。確かに、景気がよくないときは需給が緩和してデフレ圧力が増す。また、デフレのときは企業や個人の実質的な債務負担が膨らむので、景気に悪影響を及ぼすといわれている。一方で、所得が一定ならばデフレのほうが実質購買力は拡大する。しかし、デフレが続けばいずれは賃金も減ってくるので問題だといわれたが、実際には景気も回復し賃金も下げ止まってきた。
こうしてみると、デフレが続くとデフレスパイラルに陥って景気が後退するという見方は幸いにして悲観的すぎたようだ。同時に、デフレが解消したら景気がさらによくなるというのは、少し楽観的すぎるのではないか。消費者物価が年末以降上昇に転じたとしても、その幅は小幅なものにとどまりそうだ。景気動向によっては、再び下落に転じる可能性も否定できない。
消費者物価への原材料価格上昇分の価格転嫁は難しいままであり、また、雇用や賃金が回復して人件費が拡大しても、労働力を投入して生み出されるサービスの価格は上昇余地が限られる。企業収益を改善しようと思えば、知恵を絞って性能や品質にまさる付加価値の高い商品を提供する必要がある。デフレを脱却した後は、競争力のある企業は売上を拡大し、そうでない企業は淘汰されるという企業間の格差が拡大する厳しい競争の時代になると予測している。
UFJ総研の「経済早わかり」の全文は↓
http://www.ufji.co.jp/publication/report/hayawakari/2005/20051021.pdf