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経営関連情報 (2004/10/18)

低下傾向にあるユニット・レーバー・コスト

 ユニット・レーバー・コスト(Unit Labor Cost:ULC)とは、生産一単位あたりの労働コストを表す指標。マクロベースでみる場合は国民経済計算を用いて算出するが、内閣府は今回、わが国のULCの動向を業種別に分析するために、生産統計等を用いた推計を行った。それによると、両者の動きは98年後半以降はおおむねマイナスが続いており、特に今回の景気回復局面では、過去と比較して下落ベースが大きくなっている。

 これを、生産統計等ベースで業種別にみると、今回の景気回復局面において、初期の02年から03年前半には製造業のULCの低下が、03年後半から最近にかけては、非製造業におけるULCの低下が、全体のULCを押し下げているとみられている。

 製造業のULCについては、02年には生産性の大幅な上昇によって前年同期比10%近い下落を示した局面もあったが、03年以降、賃金が増加に転じたことからULCの下落幅は02年に比べ縮小している。非製造業のULCについては、景気回復初期の02年前半においては、主に賃金の下落からULCが低下しているが、その後は賃金の下落幅が縮まらないなか、生産性の上昇も加わって、ULCの下落幅が拡大している。

 直近(4~6月期)のULCは若干マイナス幅が縮小しているものの、ULCの低下傾向に当面大きな変化はないものと見込まれる。製造業は、生産性向上がこれまで続いてきたことにより、生産性要因のULC押下げ要因が縮小する可能性があるものの、これまでの賃金要因の押上げペースが生産性の上昇に比べて鈍いものにとどまっていることから、こうした賃金面の動きが続く場合、ULCが直ちに上昇に転じるとは想定しにくい。

 一方、非製造業は、賃金が相対的に低いパート労働者比率が引き続き増加することが見込まれることから、賃金が下押し要因となって、ULCは引き続き前年同期比で低下を続ける可能性が高いと分析している。ULCは、コスト面から物価動向に影響を与える要因のひとつであり、今後も注視していく必要があるとの見方を示している。