2006年5月施行の会社法によって、相続人等に対する売渡請求制度や多種多様な種類株式の発行が可能となり、中小企業の事業承継においての活用が期待されているが、中小企業における認知度はいまだ低いようだ。中小企業庁が今年2月~3月に実施した「2008年度中小企業経営者の会計に関する実態調査」結果(有効回答数5064社)によると、種類株式、売渡請求制度を「知らなかった」が各42.2%、46.9%で最多だった。
種類株式の導入状況については、「すでに発行している」が3.9%、「発行予定」(0.4%)を含めてもわずか4%強にとどまっている。34.5%は「発行は考えていない」としており、その理由については、「現状で問題がない」が75.8%と大半を占める。発行済み(予定)の種類株式等は、「議決権制限株式」が27.4%でもっとも多く、次いで「拒否権付株式(黄金株)」が24.7%、「一部の株式のみ譲渡制限株式」が16.4%などだった。
一方、相続人等に対する売渡請求は、株式に譲渡制限のある非公開会社が利用できる制度だが、あらかじめ定款に定めておくことで、株主総会の特別決議により、一定の相続人から強制的に株式を取得することができる。定款変更にも特別決議を必要とするが、調査結果では、「すでに導入」は5.3%だった。「今後導入する予定」(3.6%)や「周囲の状況をみて考える」(15.2%)を含めた前向き派は全体の約4分の1となる。
導入した理由は、「事業承継時の株式の分散を防止したい」(71.8%)、「株式の保有者を限定したい」(67.9%)の2つの理由が大半で、トラブルの未然防止の意向が強い。一方、「導入を考えていない」との回答は19.3%だったが、その理由では、種類株式と同様に「現状で問題がない」が78.8%と大半を占めた。結局のところ、種類株式・売渡請求ともに、認知度は低いとはいえ、積極的に取り組んでいる経営者は少数のようだ。