建設不況といわれて久しいが、「民間建築」に限れば回復をみせている。住友生命総合研究所の副主席研究員・喜多村広作氏のレポートは、今後の民間建築受注についても、景気が回復しつつあることに加え、企業の設備投資意欲が依然として根強いものがあるため、伸びが鈍化する可能性はあるものの、しばらくは堅調に推移することが期待されるとしている。
国土交通省の建設工事受注動態統計調査(大手50社)によると、2003年の受注高は前年比▲3.5%で3年連続のマイナスだった。特に「土木」が公共事業の削減によって▲9.8%と8年連続で減少している。しかし、「民間建築」に限れば2.1%増と3年ぶりに増加に転じ、月別にみても2003年5月以降9ヵ月連続(3ヵ月移動平均)で前年比プラスになっている。
民間建築を工事種類別にみると、「工場・発電所」が製造業の設備投資の活発化を背景に大きく伸びている(2003年の前年比寄与度2.1%)。大型ショッピングセンターの進出が相次いでいることなどから「店舗」も増加が著しい(同1.5%)。2002年に大きく増加した「医療・福祉施設」は、伸びは鈍化も、依然として高水準。また、近年の大規模再開発の反動で低迷が続いていた「事務所・庁舎」は、直近ではプラスに転じている。
民間建設を業種別にみると、2003年は「製造業」が前年比11.3%増、「非製造業」が同1.4%増(日本建設業団体連合会調査)となっている。製造業は、2002年11月以降月別の前年比がおおむねプラスとなっており、最近伸び率が鈍化しているものの、民間建設のけん引役となっている。
製造業のなかでは、「化学」(寄与度7.5%)、「輸送用機械」(同2.7%)、「鉄鋼」(同2.1%)といった、大規模な生産装置を要する業種の増加が著しい。なお、積極的な設備投資が目立っている「電気機械」は伸び(前年比2.7%増)が小さいが、これは機械への投資が多く、建物への投資が比較的少なかったためとみられている。