国税庁は、財産評価基本通達を改正し、2007年1月1日以後に相続等で取得した財産の評価について適用することを予定している。そのなかで、取引相場のない株式を類似業種比準方式により評価する場合の取扱いについて、1)「資本金50円換算」方式の改正、2)自己株式の取扱いの改正、3)比準要素である配当金額の改正などを検討している。これらの改正案について、現在、10月4日まで意見を募集している。
改正の内容は、まず、類似業種の株価及び各比準要素の数値は、これまで「1株あたりの資本金の額を50円とした場合の株式数」を基に計算することとしていたが、会社法の施行を受けて「1株あたりの『資本金等』の額を50円とした場合の株式数」に改められる。会社法では最低資本金制度が廃止されたことから、資本金を資本準備金等に振り替え、資本金の額をゼロとすることも可能になったことから改正するもの。
また、会社が自己株式を保有している場合には、法人税法上、資産の部に計上することとしていたが、2006年度の法人税法の改正において、自己株式については、資産の部に計上せず、資本金等の額を減少させることとされた。これに伴い、類似業種比準方式の計算においても法人税法上の金額を基としている簿価純資産価額から自己株式を控除することとし、併せて発行済株式数からも自己株式数を控除することとする。
比準要素の一つである「1株あたりの配当金額」は、「直前期末以前2年間におけるその会社の利益の年配当金額」から「直前期末以前2年間における『剰余金』の配当金額」を基に計算することとなる。これは、会社法の規定では、「配当」はこれまでの各事業年度の決算で確定した「利益処分による配当」ではなく、「剰余金の分配」とされ、株主総会の決議があればいつでも何回でも株主に配当できるように変更されたことに伴うもの。
ただし、会社法の規定による「配当」は、株主に対する利益の配当だけではなく、資本の払戻しも「剰余金の配当」に含めることとされたため、「1株あたりの配当金額」を計算する場合には、剰余金の配当のうち資本の払戻しに該当するものを除くこととされる。