ゼイタックス

税務関連情報 (2004/09/22)

消費税は現状の単一税率の維持が望ましい

 将来的な消費税率の引上げは不可避との方向性は国民的な合意になりつつある。誰も負担増は望まないが、膨れ上がる社会保障費用の財源や破綻寸前の財政改善の切り札として受け入れざるを得ない状況にある。だが、消費税率の引上げに際しては、所得に対する逆進性や世代間の公平性など、多くの問題点を改めて検討する必要がある。税金を考えるうえで消費税というものを改めて考える必要がある。

 そこで紹介したいのは、三菱総研がこのほど発表した「消費税引上げのあり方」と題した研究レポートである。ここでは、その要旨しかお伝えできないが、諸外国におけるVAT(付加価値税)課税の現状を示したうえで、複数税率やインボイス方式など消費税改革の論点を考察し、家計の負担増に関する試算を踏まえて消費税における公平性を分かりやすく分析している。

 消費税率の引上げに際しては、食料品や交通費、上下水道など日常必需品を低税率とする複数税率を適用すべきだとの考えがある。しかし、レポートの試算結果では、わが国では年収に対する消費税負担の逆進性が緩和されることはほとんどなく、むしろ、税制の複雑化による事業者・徴税側の事務負担増や税収減があることから、複数税率の採用は極力回避すべきで、現状の単一税率を維持することが望ましいとしている。

 さらに、企業負担を増加させる非課税や、課税ベースの蚕食をまねくゼロ税率は極力回避すべきであって、世界的にみても広範なわが国の課税ベースこそが維持されるべきだとする。むしろ、非課税の縮小や、インボイス方式の導入によって―納税者側に徴税協力コストの上昇をもたらすが、消費税制の透明性・信頼性、税収力を高める方向を目指すべきだとの考えを示している。

 三菱総研のレポートは、消費税に関する諸外国の現状や消費税率引上げに伴う問題点を分かりやすく解説している。この20ページ強のレポートを一読することをぜひお勧めしたい。↓
http://www.mri.co.jp/REPORT/ECONOMY/2004/mr040900.pdf