国税庁が2月に公表した2007年度分法人企業の実態調査結果によると、貸倒引当金の利用法人数は45万4387社で、前年から約5万社増加し、利用割合は17.6%と同1.9ポイント上昇した。貸倒引当金の期末残高は、前年に比べて約19%減の7兆1575億円となり、法定繰入率による繰入限度額が、大企業で廃止された1999年分以来最低の水準となった。現実に、貸倒れが増加傾向にあるようだ。
ところで通常、法人は、貸金の貸倒れによる損失の見込み額として貸倒引当金の設定が認められている。貸倒引当金の対象となる貸金は、売掛金、貸付金その他これに準ずる債権で、具体的には、受取手形を始め、(1)譲渡代金、請負代金などのうち未収のもので益金の額に算入されたもの、(2)他人のために一時的に貸し付けた仮払金及び貸付金などとなっており、預貯金や保証金等はその対象から除かれる。
また、一括して評価する債権(一般売掛債権等)に係る貸倒引当金の繰入限度額は、1998年度税制改正において、法定繰入率が廃止(資本金等1億円以下の中小法人は特例あり)され、実績率のみとされた。実績率は、会社の過去3年間における実際の貸倒れの発生率のことで、金銭債権の帳簿価額の合計額に貸倒実績率を乗じて計算した金額が繰入限度額となり、この金額に達するまでの金額は、損金の額に算入できる。
中小企業の繰入限度額については、貸倒実績率に代えて法定繰入率により計算することができる。すなわち、「一般評価金銭債権の帳簿価額×法定繰入率」で計算した金額が繰入限度額となる。法定繰入率は、卸売業及び小売業が1000分の10、製造業が1000分の8、その他の事業が1000分の6などとされている。法人の営む事業がどの事業に該当するかは、原則として日本標準産業分類の分類を基準として判定する。