電気機器メーカーをはじめ、低廉な労働力を求めて工場のアジア移転を進めてきた日本企業のアジア進出は、90年代前半をピークに減少に転じた。ハイテク産業を中心に製造業の国内回帰の流れが進むなかで、素材メーカーの中国を中心としたアジア進出が話題に上るようになってきた。活発化する素材メーカーのアジア進出の動向を分析するのは第一生命経済研究所(浅井孝明氏)のレポートである。
それによると、鉄鋼はこれまで、アジアへの生産拠点設立には消極的だった。それは、アジアが、かつては単に廉価な労働力と資本が得られる加工組立て中心の生産拠点に過ぎなかったため、人件費負担が少なく輸送コストの大きい素材産業は進出メリットが小さかったからだ。しかし、足元では、中国市場の急拡大で、単なる生産拠点から最終需要地へと変化を遂げつつあり、鉄鋼メーカーにとっても進出メリットが拡大してきた。
鉄鋼以上に内需型産業の性格が強い製紙メーカーにおいても中国進出が始まっている。紙は一般に、GDP成長プラスマイナスαのペースで需要が増加するといわれるが、年率二ケタ近い経済成長を続ける中国は、規模・成長性の両面から世界でもっとも期待できる紙市場であるといえる。消費国立地が求められるなかで、中国進出を表明した大手製紙メーカーは、その需要を取り込みにいくことを宣言したことにほかならない。
中国が経済の高成長によって、単なる生産拠点から巨大な最終需要地へと変遷を遂げたことで、日本企業の中国進出への流れが大きく変わろうとしている。少子高齢化が進み人口も減少に転じる見通しのわが国にとって、世界一の人口を抱えながら年率二ケタ近いペースで成長を続ける中国は、今や日本や米国に劣らない重要なマーケットになったといえる、との見方をレポートは示している。
同レポートの全文は↓
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/monthly/pdf/0502_b.pdf