税 務 関 連 情 報

2003年05月26日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(54)

『所得税における水平的公平性について』(15)

★70年代前後は実際にあった所得捕捉率の格差

 所得捕捉率の格差についての実証的な分析を行った先行研究については、「課税所得捕捉率の業種間格差-クロヨンの一つの推計」(石弘光:1981)、「租税政策の計量分析-家計間・地域間の負担配分」(林宏昭:1995)、「所得税負担の業種間格差の実態-ミクロ的アプローチ」(本間正明など4人の共著:1984)、「所得税負担の業種間格差の実態再論」(本間正明・跡田直澄:1985)などがある。

 ここでは、その内容を紹介することはできないが、これらの先行研究の実証的な分析結果はどうだったのか。これらの先行研究のほとんどは70年代前後のデータを対象としたものであるが、それぞれの推計結果からは、おおむね9対6対4に近い所得捕捉率の格差が認められている。つまり、昭和40年代から50年代は、クロヨンと称される所得捕捉率の格差があったことが実証されたということである。

 そこで、現在もその所得捕捉率の格差があるのかという実証分析に入るわけだが、所得捕捉率の格差とは、税法上認められる本来の所得と実際に捕捉されている所得の格差と定義している。さらに、クロヨン問題の本質が、源泉徴収と給与所得控除によって捕捉が完全になされる給与所得と、所得の自主申告と実額控除をとる事業所得の違いであることを勘案すれば、「各種所得の把握漏れの割合」があるかどうかを分析することになる。

(続く)

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