労務行政研究所が昨年12月から1月にかけて実施した「賃上げに関するアンケート調査」結果によると、ベースアップを「実施しない予定」とする経営者が前年の37.9%から2009年は66.2%と大幅に増えたことが分かった。一方、「実施する予定」は前年からほぼ半減して10.4%にとどまった。同調査は、1974年から毎年実施しているもので、今回は東証1、2部上場企業の経営側154人、労働側172人、学識経験者118人から回答を得た。
経済・雇用環境が急速に悪化している状況下で動向が注目される2009年賃上げの見通しは、全回答者444人の平均(定昇分含む)で「5113円・1.6%」となった。厚生労働省の08年主要企業賃上げ実績(6149円・1.99%)との比較では、額・率で約1000円・0.4ポイント下回り、同調査としても03年(予測値1.5%)に次いで過去2番目に低い水準。ちなみに各調査では、大手企業の定期昇給率は平均値で1.6~1.8%程度とみられる。
労使別にみた平均値は、労働側5442円・1.7%に対して、経営側見通しも4900円・1.6%であり、賃上げ率でみた両者の差は0.1ポイントにとどまっている。また、定期昇給については経営側も81.2%が「実施予定」としているのに対し、ベースアップ実施については、物価上昇に応じた引上げを求める労働側で「実施すべき」が64.0%にのぼっている一方、経営側は「実施しない予定」が66.2%と全体の3分の2を占めている。
もっとも、労働側の「実施すべき」との回答割合は前年から7.2ポイント減少しており、労働側でも経営・雇用環境の現況から、ベア実施に対して厳しい見通しを抱いている様子がうかがえる。また、経営側は、経営環境の厳しさが増しているなかでも、実質的な賃金制度維持分にあたる定昇分の引上げについては、多くが実施意向を固めているが、「競争力維持、雇用確保を図るためには定昇分が限度」とする見方が強まっているとみられる。