個別労働紛争処理制度は、個々の労働者と事業主の紛争を、裁判に持ち込まず紛争当事者間で自主的かつ迅速な解決を図る制度。厚生労働省が22日に発表した2008年度における同制度の施行状況によると、民事上の個別労働紛争に係る相談件数が約24万件となり、過去最多となった。同制度は2001年10月発足以降依然として増加を続けているが、この背景には、個人での紛争解決を迫られるパートや派遣労働者の増加などがある。
全国約300ヵ所に設けられた総合労働相談コーナーに寄せられた労働相談は、2008年度1年間で前年度比7.8%増の107万5021件。このうち、労働関係法上の違反を伴わない解雇、労働条件の引下げなどの民事上の個別労働紛争に関するものは19.8%増の23万6993件と過去最多となった。内容別では、「解雇」が25.0%でトップ、「労働条件の引下げ」が13.1%、「いじめ・嫌がらせ」が12.0%で続き、「退職勧奨等」(8.4%)が特に増加した。
また、自主的な紛争解決が難しい場合は、弁護士などの有識者で構成された紛争調整委員会にあっせんを申請できるが、2008年度のあっせん申請受理件数は前年度比18.3%増の8457件だった。一方、処理状況をみると、手続きを終了した7920件のうち、「合意が成立」したものが33.4%、申請者の都合による「申請取下げ」が7.4%、紛争当事者の一方が手続きに参加しないなどの理由による「あっせんの打ち切り」が58.8%だった。
処理期間は、「1ヵ月以内」が54.1%、「1ヵ月超2ヵ月以内」が38.1%とおおむね迅速に処理されている。申請者は、労働者が98.4%(8320件)と大半を占めるが、事業主からの申請も1.5%(128件)、労使双方からの申請も9件あった。労働者のうち55.2%は正社員だが、パート・アルバイトや期間契約社員等も39.1%を占める。事業所の規模は、「10~49人」が30.5%、「10人未満」が18.7%、「100~299人」が11.9%の順。
あっせん例では、申請人は上司から退職募集に応募するよう度重なる勧奨を受けたが、退職募集に応募する意思がない旨回答したところ、「応じないのであれば仕事はない」と通告され、退職を余儀なくされたものがある。上司の過度な退職勧奨により勤務の継続が困難になって生じた精神的苦痛や経済的損失に対する補償を求め、あっせん申請を行った。当事者間の調整を行った結果、解決金○○円を支払うことで双方の合意が成立している。
2008年度個別労働紛争解決制度施行状況の詳細は↓
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/h0522-4.html