2003年10月20日-001
肉うどんの「肉」は「牛肉」それとも「豚肉」?
たまには仕事の頭を休めて「ことばのゆれ」ということについて考えてみたい。単に「肉」といったらあなたは何の肉だと思うか。NHK放送文化研究所の調査結果(回答数1446人)によると、「牛肉」と答えた人の割合が62%で「豚肉」(32%)、「鶏肉」(5%)を上回った。
これを地域別にみると、「肉=牛肉派」の割合は、東日本(北海道から東海)では47%だったのに対し、西日本(関西から九州沖縄)では84%と圧倒的多数になっている。カレーライスや肉うどん、肉じゃがに入る「肉」は、東日本では豚肉、西日本では牛肉であるとよくいわれる。この傾向が改めて実証されたといえる。
このように、「単語」と「その単語が指し示すもの」とが必ずしも一対一の対応になっていない状態のことを「ことばのゆれ」というそうである。例えば、「ノート」と「帳面」は、ニュアンスの違いはあるが、実際には同じものを呼び表している。このようなものを「語彙(い)的なゆれがある」という。
これとは反対に、ある1つの言い方が、色々なものを指し示す場合がある。上記の「肉」の例がそうだが、このようなものを「意味のゆれがある」という。「ことばのゆれ」という現象は、日本語の「不安定な部分」に発生するものだ。
言葉の変化は「不安定な部分」から始まっていくので、こういったことを綿密に調査すると「今後の日本語はどうなっていくのか」ということを考えるにあたっての大変重要な基礎的作業といえる。さて、「税金」という言葉は「取られるもの」なのか、「払うもの」なのか…。「払うもの」と考える世代が増えることを祈りたい。
【ホームへ戻る】
|