景気回復を受けて若年の雇用環境が改善している。しかし、その一方で、フリーターからなかなか抜け出せずにそのまま中高年になってしまう者や、就業意欲を失ってフリーターからニートになってしまう者が増えているという。雇用改善の陰で二極化が進行しているのだが、中高年フリーターの増加は、少子化の隠れた一因となる、と警告するのはUFJ総研の調査レポートである。
レポートによると、若年フリーターが2001年(417万人)以降横ばいで推移すると仮定して、35歳以上になってもフリーターのままでいる“中高年フリーター”の数は、2001年には46万人だったが、10年後の2011年には132万人に増え、さらに2021年には200万人を超える見込と試算している。中高年フリーターが100万人以上もいる社会とは、一体どのような姿なのかをレポートは描いている。平均的に低所得である中高年フリーターが納める税金や社会保険料、手元に残る可処分所得は正社員より少ない。
このため、2021年に200万人を超える中高年フリーターが正社員になれないことによって、税収が▲1兆1400億円、社会保険料が▲1兆900億円、可処分所得が▲5兆8000億円、それぞれ減少し、GDP成長率を1.2%ポイント下押しする可能性があると試算する。中高年フリーターの増大は、本人が暮らしに困るだけでなく、経済全体にも無視できない影響を及ぼすことになる。
また、経済力の弱いフリーターが結婚する割合は正社員より低い。結婚適齢期を迎えるフリーターの増加は、婚姻率を押し下げ、結婚率の低下は出生率を押し下げる。フリーターが正社員になれないことによって減少する(先延ばしにされる)婚姻数は年間5.8万組~11.6万組となり、婚姻率を年間0.05%~0.09%ポイント押し下げている。
さらに、婚姻数に有配偶女性が一生の間に生む子供の数を掛け合わせると、フリーターが結婚しないことにより、毎年生まれる子供の数が13万人~16万人下押しされる計算となる。これは、出生率を年間1.0%~2.1%ポイント押し下げていることになり、結婚適齢期を迎えるフリーターの増加は、少子化の隠れた一因となる、というのが本レポートの結論である。フリーターの高齢化対策が少子化対策ともなるわけだ。
レポートの全文は↓
http://www.ufji.co.jp/publication/report/2005/0502.pdf