ゼイタックス

経営関連情報 (2004/01/16)
「デジタル家電バブル」の落とし穴

 昨年暮れのボーナス商戦の主役は「デジタル家電」だったが、特に人気を集めたのが、液晶テレビ・DVDレコーダー・デジタルカメラの「三種の神器」だ。家電業界は、これらの三種の神器に、昔の家電製品(テレビ・冷蔵庫・洗濯機)のように日本経済の成長への原動力を期待するが、そこには落とし穴があると指摘するのは経済産業研究所の主席研究員・池田信夫氏のコラムである。

 池田氏は、まず、今度の三種の神器が昔と違うのは、その中味が家電製品というよりもコンピュータだということを挙げる。その産業構造も、家電よりもパソコンや半導体に近付いていく。ところが、パソコンや半導体は、日本が世界市場で競争に敗れた分野だ。1980年代、IBM-PCによって世界のパソコンが標準化され、低価格のPC互換機が世界中に登場したとき、日本のメーカーだけは独自規格にこだわり、世界に通用しないローカル商品を作り続けた。

 また、デジタル家電のもう一つの特徴は、国境や業界の壁を越えて競争が始まっていることである。かつてのIBM-PC互換機と同じような競争が起こっているのだが、これに対して、一部で唱えられているように「日本発の標準」で市場を囲い込もうとするのは、パソコンでの失敗を繰り返すもとになる。重要なのは要素技術ではなく、それを組み合わせる設計思想の競争である。多くのアプリケーションやコンテンツが出てくる仕組みを作った者が勝つということである。

 幸い日本には、ゲーム・アニメなど水準の高いコンテンツ産業と、世界一になったブロードバンドのインフラがある。ところが、コンテンツを持つテレビ局やレコード会社は既得権を守ろうとしているため、液晶テレビで見られるのは「地上デジタル放送」だけで、その番組はブロードバンド配信が禁止されている。おまけに政府も、著作権法を改正してCDの輸入を制限する「レコード輸入権」などの政策で囲い込みを推進している

 このような状況に対し池田氏は「このままではコンテンツがボトルネックとなって、デジタル家電が日用品化したらバブルは終わるだろう」と危惧する。日本がアジアでリーダーシップをとるためには、このような「鎖国」政策ではなく、アジアのクリエーターに門戸を開放し、コンテンツをブロードバンドで世界に流通させる「ハブ」になることだとの考えを示している。