中国政府は、国内における模倣品・海賊版被害の状況を踏まえ、自らのイニシアチブで知的財産保護に向けた取組みを強化しているが、依然として中国での知的財産権の侵害は少なくない。経済産業省が、中国に進出等している日本企業を対象に実施した「2006年中国における知的財産権侵害実態調査」では、行政処罰において製造設備の廃棄や没収などの相対的に重い処罰が科される事例はわずかであることが分かった。
同調査は、書面による調査を行ったところ115社から回答があったが、そのうち「知的財産権侵害の事実がない」と回答した企業は28社で、残りの87社(75.7%)が知的財産権侵害を受けていると考えられる。これら87社のうち、行政、刑罰または民事による救済手続きを利用した企業は52社(59.8%)だった。救済手続きを利用していない企業の理由は、「被害実態が把握できず手続きがとれない」(20社)が多い。
中国において知的財産権侵害の際にもっとも利用されている救済手続きが行政機関による処罰だが、2005年に侵害事業者の摘発を要請した件数は、対前年比で41.8%増の2314件だった。うち95.6%にあたる2213件が実際に摘発された。その行政処罰の内容をみると、「模倣品の没収・廃棄」が383件(前年比38.3%増)、「製造・販売行為の停止」が219件(同72.4%増)、「過料(罰金)」が191件(同55.3%増)だった。
いずれの処罰も前年に比べ大幅に増えているが、これらの処罰よりも相対的に重い処罰である「違法所得の没収」は11件、「製造設備の廃棄没収」は19件にとどまっている。一方、わが国の警察に相当する公安による刑罰手続きはあまり実施されおらず、2005年の刑事告発件数は57件(前年比26件増)だった。また、行政機関から公安へ移送された事件数は42件(同25件増)、うち公安により立件されたものは27件だった。
2005年に結審した刑事訴訟事件30件のうち28件で有罪とされ、このうち懲役刑の実刑及び罰金が科されている事件がそれぞれ18件となっている。なお、民事手続きによる救済は、刑事手続きと同様にあまり利用されておらず、2005年に民事訴訟を提起した事案は、わずか9件だった。2005年中に判決に至った全12件で勝訴しているが、損害賠償の支払いまたは差止めが執行されなかった事案が3件ある。
同調査結果の詳細は↓
http://www.meti.go.jp/press/20060613005/pressatama.pdf