愛煙家を取り巻く環境は日増しに厳しくなっている。国を上げての禁煙運動推進に後押しされて嫌煙権を主張する声も高まる一方だ。肩身の狭い愛煙家諸氏に追い討ちをかけるように、7月1日からたばこ税が引き上げられる。国と地方合わせて1本あたり0.852円引き上げられることに伴い、たばこ1銘柄の小売定価が10~30円アップする。愛煙家にとっては、まるで“罰金”が上がったような気分ともいえる。
実を言えば、たばこはわが国でももっとも税負担率の重い商品のひとつである。たばこの価格には、国たばこ税、地方たばこ税のほか、たばこ特別税、消費税の4種類もの税金が含まれている。これらを合計すると税負担率は6割を超える。6割としても、300円のたばこを1箱吸う人は毎日180円、1ヵ月5500円前後の税負担をしている。1日2箱以上喫煙するヘビースモーカーの税負担は1ヵ月1万円を超える。
まさに超優良納税者ではないか。喫煙者の多くは無意識に納税しているが、そのような貢献は一顧だにされず、社会は喫煙者に厳しい目を向ける。たばこ税増税の背景の一つに、税負担を重くすることによって購買を抑制し、国民の健康維持に役立てるという考えがある。いっそのこと「もっと税金を引き上げて、庶民には買えないくらいにしてほしい」との腹立ちまぎれの愛煙家の要望にも一理ある。
さて、今回の増税を機に、禁煙を決意する人も少なくないと思われる。この4月から禁煙治療が公的医療保険の給付対象となったことでもある。「嗜好品なのに税金を使うのは納得できない」といった反対意見もあるが、これまで納税に貢献してきた愛煙家に少々税金をバックしてもいいではないか。禁煙治療の保険適用は、禁煙治療の費用が医療費控除の対象となることだ。禁煙にチャレンジする絶好の機会といえそうだ。