自民党の財政改革研究会が財政再建のためには消費税の社会保障目的税化が必要との考えを示した。消費税率の引上げは、小泉内閣退陣後の2007年度をにらんで2006年度中には本格的な検討がはじまるが、この時期の具体的言及には、増税路線の目玉への納税者の拒否感をやわらげたい意図を感じる声もある。報告には具体的な税率は明記していないが、12~15%程度必要との試算も提示している。
財政改革研究会報告(中間とりまとめ)によると、一般歳出の4割を占める社会保障関係費が財政悪化の要因だと指摘。社会保障費については、まず徹底した給付面の見直しや制度改革を行うことで「給付の伸びを合理的な範囲に抑制する」とした。一方、負担面では、社会保険方式と公費負担方式の併用の堅持を前提とし、公費分の財源すべてを消費税の社会保障目的税化で確保することを明記した。
膨張する社会保障費の財源を確保するためであれば消費税率引上げに対する反発がやわらげるとのねらいがある。加えて、社会保障費の財源を保険料と消費税に限定することで、国民が手厚い給付を望むのであれば、より高い消費税率が必要ということになり、社会保障を抑制することができる。消費税の自然増収は基本的には経済成長と同じと考えられるから、社会保障給付は、これと離れて大きく膨張することは困難だと釘をさしている。
増税はこれだけではない。政府が目標とする2010年代初頭での基礎的財政支出(プライマリーバランス)黒字化のためには、ひとえに社会保障以外の分野の財政収支が所要の幅の黒字を確保できるかにかかっている。そのために必要となる財政収支の改善措置としては、国・地方を通じた歳出削減が主体となるとしているが、補完的増税や税体系上の必要から行われる増収策も容認している。
ところで、報告では、具体的に必要な税率は明記していないが、柳沢政調会長代理が財政制度審議会の試算などをもとに例示したところによると、経済成長率の伸びにあわせて社会保障費の伸びを抑制した場合は2015年度で12%、抑制しなければ同15%程度が必要という(日経10月25日付け朝刊)。つまり、今後10年かけて7~10%の消費税率の引上げが必要ということになる。