専門家でも即答しかねることが多いのが医療費控除の対象となる費用だ。医療に関係する費用は範囲が広いので判断が難しい。特に悩むのは「間接費用」であろうか。例えば、病院などに通うための電車代やバス代などだが、これらは当然医療費控除の対象となる。しかし、自家用車で通院するためのガソリン代や駐車場代などは除かれる。子供の車で通院しても他人への支払いとはならないからだ。
それでは、病院までタクシーを使った場合はどうだろうか。基本的にタクシー代は医療費控除の対象とはならないが、臨月のお腹を抱えている場合とか、骨折していて歩けない、突然の発作が起こったなど、やむを得ない事情があれば認められる。タクシーを使わなければ通院できないというそれなりの事情が必要だ。だから、例えば、心臓疾患のため“大事をとって”乗るタクシー代などは対象とはならないだろう。
医療費控除の対象となる代表的なものに「治療または療養に必要な医薬品の購入費」がある。病院の薬代だけでなく、市販のかぜ薬や下痢止め薬などの購入費も医療費となる。その際、注意が必要なのは、薬店の領収書に金額・日付だけでなくその薬の名前も書いておいてもらうことである。薬店では化粧品や日用雑貨も売っていることが多いので、領収書の金額を示しただけでは本当にかぜ薬を買ったのか分からないからだ。
また、医薬品といっても、疲労回復や健康増進、病気予防などのために購入・服用する費用は医療費には該当しない。ビタミン剤などは、医師の指示によって療養上の必要から服用しているのではない限り認められない。なお、保険がきかない金歯や金冠などの装てん費用や未成年者の歯列矯正費用も対象となる。このように、意外と見落としがちな医療費が多いので、改めて1年間の領収書を点検してみることもムダではないようだ。