2008年の春闘は、景気の先行きに不安感が高まるなか、主要業種で3年連続の賃上げが実現するかが焦点だとして、今年の春闘賃上げ率を予測するのは第一生命経済研究所のレポートである。レポートは、昨年を振り返り、業種・企業間の業績格差が大きく、以前のような横並びの賃上げとはならなかった背景として、日本企業がグローバル化のなかで国際競争力を高める必要性があることを挙げている。
今年の春闘を展望して、組合側は業績拡大や人手不足を背景に企業利益の労働者への配分増による賃金改善を求めているが、経営側は賃金改善に慎重姿勢を崩していないとみている。背景には、(1)安価な労働力を大量に供給する新興国の参入により世界的に賃金低下圧力がかかっている、(2)外国人株主比率の上昇によって資本効率の高い経営や配当政策に対する株主の厳しい要請に応えることが重大課題となっている、ことなどを挙げている。
さらに、今年の春闘は、原油高やサブプライム問題など企業業績への不安材料が相次いでおり、昨年よりも賃金改善に応じる企業割合が減少する可能性があるとみている。足元の賃上げ率に関する指標をみると、景気の減速等を背景に労働需給の改善も足踏みしており、こうした状況を踏まえれば、2008年の春闘賃上げ率は+1.91%と2007年の1.87%から+0.04%ポイント程度の改善にとどまると予測している。
また、完全雇用の水準まで失業率が到達するのが来年以降であることを前提とすれば、労働需給と相互依存の関係にある賃金上昇率やインフレ率の加速も来年以降となる。生活水準(実質購買力)維持の観点から物価上昇分に見合った賃上げが実施されるのは来年以降の春闘になると予想。ただし、賃上げ率は業種間や企業間で大きくばらつくことになり、賃金格差はさらなる拡大が見込まれるとみている。