65歳以上の高齢者に対する少額貯蓄非課税制度、いわゆる老人等マル優は、2002年度税制改正で障害者等に対する少額貯蓄非課税制度へ改組された。65歳以上の高齢者については2003年1月から段階的に適用対象外となり、2006年1月1日以降は、郵便貯金の非課税制度の利用対象外となる。
この老人等マル優は元本350万円までの利子は非課税だが、以前から、非課税限度額を超えた分についても源泉徴収しなかったり、65歳以下の預金者をマル優扱いしたりなど管理運営の甘さが指摘されている。日本郵政公社は8日、本来マル優を適用できない預金者を非課税扱いしていたことから、総額151億6千万円の源泉徴収漏れがあったことを明らかにした。
これは、2001~2003年度の税務調査で指摘されたもの。マル優では、元本350万円を超えた場合はすべての利子が課税扱いとなるほか、預金者が死亡したときや転居したときは、死亡届出書や異動届出書の提出がないと非課税扱いとされないことになっている。
ところが、日本郵政公社ではこれらの届出がないまま非課税扱いにしたり、一部には65歳以下の適用対象外の預金の利子を非課税としていたことから、源泉徴収漏れとなっていたのだ。同公社では、延滞税などを含め170億8千万円を納付し、各預金者に税額相当分の支払いを求めるとしている。
この老人等マル優の管理体制のずさんさは郵政省時代からたびたび判明しているが、公社化してもその体質はあまり変わらないようだ。同公社では、2003年8月からは非課税貯金の払戻時に、住所などに変更がないことをチェックシートで確認しているというが、どうしてもっと早い時期に十分な確認体制がとれなかったのだろうか。
本来徴収すべき税金をとらなかったこと、また、徴収漏れとなっていた預金者に改めて税金を納めてもらうための事務量を考えると、二重での税金のムダ遣いといえる。深刻な税収不足に悩むわが国の財政にとって、行政側がこんな低い意識しかないのであれば財政再建は遠い夢といわざるを得ない。もっと厳しく責任の所在を追及してほしいものだ。