2003年08月08日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(65)
『納税者番号制度』(6)
★資金シフト等の経済取引への影響
納税者番号制度が導入される場合、同種の取引についてはできる限り広く制度の対象にしないと、制度の対象取引から対象外の取引への資金シフトが起こるなど、経済取引へ影響を与えるおそれがある。したがって、国際化・電子化の進展を踏まえれば、制度の対象となる取引範囲については、経済取引の中立性の観点から、できる限り広くすることが求められる。しかし、その分、導入時のコスト増となることに留意すべきである。
国際的な資金シフトに対応するためには、国際的な取引についても資料情報の対象とすることや、情報交換をはじめとした税務執行の国際協力を一層推進することについて検討する必要がある。なお、電子取引については、「納税者番号制度では対応できないので、新しい記録義務付けの手法が必要」との意見がある(岩崎政明「金融ビックバンと納税者番号制度導入の動き」)。
★納税者番号制度導入のコスト
納税者番号制度は大掛かりな仕組みであるため、その導入時のコストは、民間・行政の双方において相当の規模となる。具体的なコストは、制度の対象となる資料情報の範囲をどのように設定するかによって大きく異なるが、民間において生じるコストとしては、例えば、以下のようなものが考えられる。
1)金融取引については、制度が導入された場合には、預金口座などを管理するソフトウェアの更新、顧客への利子支払額等の通知などを、新たに行わなければならなくなる。 2)一般の経済取引のうちで資料情報の提出義務が課される経済取引に関しては、個々の取引において、納税者番号を新たに追加した資料情報を提出しなければならなくなる。 3)給与などの支払に関しては、雇用主が従業員の給与等の管理に用いる個々の従業員の整理番号について一対一で納税者番号を新たに対応させる必要が生じ、コンピュータのソフトウェアなどについて変更・更新などを行わなければならなくなる。
これらのコストは、広範な法人や個人に発生することから、納税者番号制度の導入時の民間のコストは、行政のコストよりも相当程度大きくなることが予想される。また、個々の取引などの場において、納税者番号の告知を求めて本人確認をいちいち行わなければならない“わずらわしさ”についても、定量化されないものだが、制度の導入に係る負担のひとつとして無視できないものがあると考えられる。
(続く)
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