経 営 関 連 情 報 |
2003年04月25日-001
健康診断で入院リスクは1/10引下げ
会社などでの健康診断は、病気の早期発見・早期治療によって、従業員の病気による稼働率の低下を防ぐことを目的としている。わが国の健康診断体制には約1兆円の費用が投入されているが、その経済的効果は必ずしも定かではない。そこで、健康診断を受けたかどうかが翌年の入院リスクをどれほど引き下げるのかを分析したのは、日本経済研究センターの研究レポートである。
レポートでは、大規模パネル推計によって大企業の健保加入者の健診効果を検証したところ、健診は入院リスクを1/10程度引き下げることが明らかになった。分析には、業種の異なる4つの健康保険組合の加入者の6年分(1996~2001年度)のデータを用いている。同データに収録されたうちの6年間継続加入者5万4057人を分析対象としたパネルデータによって推計が行われた。
その結果、分析対象者全員が仮に検診を受けた場合には、まったく受診しない場合に比べて翌年の平均入院確率が0.47%低下することが推計できた。サンプルの平均の入院確率は4.23%だったので、健診の効果は約1/10ということになる。
レポートは、健診効果の金額換算は難しいとしながらも、健保加入者の入院リスクが1/10引き下げられることから、仮にこの効果が健保以外の健康保険や若年者・高齢者でも同様で、かつ入院費用も1/10引き下げられるとすれば、国民医療費30兆円のうち入院医療費は12兆円(40.7%)であるから、1.2兆円の医療費節約が可能だとしている。
健診費用はおよそ1兆円であるから、これを上回る効果が得られ、加えて、入院によって失われる労働日数や入院による生活の質の低下を考慮すれば、健診の効果はさらに大きいと指摘している。健診の目的のひとつは病気の早期発見・早期治療である。健診の経済効果はさておくとしても、従業員の病気は本人はもとより会社への影響も大きい。定期的な健康診断の実施をお勧めする次第である。
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