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税務関連情報 (2005/05/09)

国際比較でみて負担軽減効果大きい研究開発税制

 財務省が単純計算したわが国の法人所得課税の実効税率40.87%は、先進各国と比べ遜色ない水準まで引き下げられたとされる。しかし、法人所得課税負担を比較する場合、実効税率では、税額控除制度や損金算入項目など、税額計算方法の違いによる差の把握が難しい。そこで、まったく同一の企業が各国に立地したと仮定し、実際の各国税法に基づいて税負担を算出、国際比較したのが、このほど公表された経済産業省の調査だ。

 同調査はKPMG税理士法人に委託したものだが、調査結果によると、法人所得課税に係る税負担率(支払税額の税引前当期純利益に対する比率)を比較すると、政策減税による負担軽減効果がなければ、わが国はいずれの業種においても先進各国と比べ高い水準にある。しかし、2003年度に整備された研究開発促進税制やIT投資促進税制の効果によって、先進各国と比べても高くない水準となったとの結果を示している。

 例えば、研究開発促進税制(R&D税制)による税負担の軽減割合を比較すると、アメリカのR&D税制は税負担を自動車産業で10%、鉄鋼業で3%、情報サービス業で3%軽減するのに対し、日本のR&D税制は税負担を自動車産業で14%、鉄鋼業で8%、情報サービス業で10%軽減している。負担軽減効果は、どの業種においてもアメリカより日本のほうが大きくなっている。また、情報サービス業ではIT減税の影響が大きい。

 このように、わが国では政策減税による負担軽減効果が大きいのだが、IT投資促進税制は2006年3月末までの時限措置であり、また、試験研究費の総額に係る税額控除制度も2006年4月以降に開始する事業年度から税額控除割合が減額される。これらが予定通り廃止・縮減した場合の各業種への税負担率の影響を、自動車1.4%、小売0.8%、情報サービス5.5%、鉄鋼0.6%のプラスと試算している。

 もちろん、この調査結果は、わが国企業の国際競争力を弱めないために、来年度の税制改正におけるIT減税の廃止や研究開発税制の縮減が予定通り実施されることに対するけん制である。

 同調査の詳細は↓
 http://www.meti.go.jp/press/20050428007/050428tax.pdf