来年度税制改正に向けて政府税制調査会の総会が21日に開かれ、審議がいよいよスタートした。金融所得課税の一体化や消費税をめぐる議論が注目されるが、最大の焦点は定率減税の廃止・縮減がどうなるかにある。昨年度の与党税制改正大綱で、基礎年金の国庫負担割合引上げの財源として、2005~2006年度にかけての縮減・廃止が盛り込まれたことから、本当に実施されるのか気になる向きも多い。
減税規模が大きいだけに、定率減税が廃止・縮減となると個人消費への悪影響が懸念される。問題は景気の動向なのだが、政府税調の石弘光会長は総会後の記者会見で「景気の問題とは切り離して今後、定率減税の議論をしたい」と明言している。仮に定率減税が来年度税制改正案に盛り込まれたとしても、実施は2006年1月からとなる可能性が高い。1年3ヵ月後の景気を今から前提にしても始まらないという考えだ。
また、定率減税が導入された1999年当時の日本経済の動向と現在を比較すれば、はるかに今のほうがいい。景気の問題はおいても、社会保障を含めた国民負担増という問題がある。年金・医療をはじめとする社会保険料の財源の確保や国家の財政破綻をどう阻止するかという視点だ。そういう意味で、将来の景気うんぬん以前に、「定率減税は当然議論しなければならない」(石会長)ということだ。
そもそも、「定率減税は所得税体系を無視した減税であって、本格的な所得税改革を目指すためには、定率減税を見直さないと、本格的な税の議論はできない」(石会長)という。どうやら、11月下旬にまとめられる予定の政府税調の来年度税制改正に関する答申では、定率減税は半減され2006年1月から実施という案が盛り込まれそうだが、最終的には政治的判断に委ねられるということになろう。