「株式譲渡制限会社」とは、定款に「株式の譲渡については会社の承認が必要である旨」を定めている会社である。株式譲渡制限によって、会社にとって好ましくない者に株式が渡ることを防いでいるわけだ。中小企業庁の「2005年中小企業実態基本調査」では、株式譲渡制限会社が中小企業に占める割合は56.7%だった。わが国の中小企業はほとんどが株式譲渡制限会社だと一般的に思われているが、意外に少ない割合だった。
同調査結果によると、中小企業の法人企業数は約142万社で、うち株式会社数は約70万社と中小法人企業全体の49.3%を占めた。また、株式会社のうち株式譲渡制限を定めている会社は約40万社で、中小企業の株式会社に占める割合は56.7%だった。業種別にみると、「情報通信業」(71.2%)や「不動産業」(64.7%)などが高く、「小売業」(42.4%)、「飲食店・宿泊業」(45.4%)が低い。
ところで、5月1日から施行された会社法では、中小企業の規模・実態に合った法改正がなされ、取締役人数要件や取締役会・監査役の設置義務などがなくなり、また、役員の任期が2年から最長10年に延ばせるなど、柔軟な会社運営が可能になった。しかし、これらの柔軟な機関設計が可能になるのは、株式譲渡制限会社に限られるのだ。中小企業とはいえ、1株でも譲渡自由な株式があれば該当しない。
これまで、自社が株式譲渡制限会社かどうかを意識した経営者は少なかったろうが、譲渡制限の有無を定款(登記簿謄本に記載)で確認して、仮に株式譲渡制限がないのであれば、公開会社(株式譲渡制限のない株式会社)である必要性があるのかを検討することをお勧めしたい。なにしろ、中企庁の調査では、43.3%の中小企業に株式譲渡制限がないのだ。現時点では、該当する中小企業は予想外に多いと思われる。