昨年12月、84年ぶりの抜本的な改正となる新信託法が成立・公布されたことを受けて、2007年度税制改正において、新信託法制定に伴う信託税制の所要の整備が行われた。新信託法に新たに規定された信託の類型のひとつに、「信託行為に一定の場合に受益権が順次移転する定めのある信託」がある。これによって、中小企業の事業承継においては、跡継ぎ遺贈型の受益者連続型信託を活用した会社株式の承継が注目されている。
受益者連続型信託とは、受益者の死亡により、受益者が次々に移転する信託をいう。例えば、事業承継の活用例として、会社の全株式を所有するオーナー社長(A)が、全株式を確実に後継者である子どもに承継させるため、会社株式を信託財産として、自分が生存中は自分が受益者となり、自分が死亡した後は配偶者(B)が、配偶者が死亡した後は子ども(C)が受益者となる信託を設定することが考えられる。
この場合、受益者Bの死亡により受益権は受益者Cに移転するが、新信託法上は委託者Aから受益者Cに移転したものとして構成される。ところが、委託者Aはすでに死亡しているため、現行の相続税法では課税できないことになってしまう。そこで、今回の信託税制の改正では、このような場合、受益者Bから受益者Cが遺贈により受益権を取得したものとして相続税等が課税されることになる。
具体的には、適正な対価を負担せずに受益者連続型信託の受益者となる者があるときは、受益者となったときにおいてその受益者に対して、委託者(またはその受益者の直前の受益者)から受益権を遺贈・贈与により取得したものとみなして相続税・贈与税が課税される。なお、その受益者が法人の場合には、贈与により受益権に係る資産の移転が行われたものとして、その委託者(同)に対して所得税が課税されることになる。