2004年度税制改正で物議をかもした、今年1月にさかのぼって適用された不動産の譲渡所得の損益通算と繰越控除の廃止。思い出すだけでも頭に血が上る納税者も多いことと思われるが、なかには運良く昨年中に土地などを売却して通算し切れなかった譲渡損失を繰り越した方もいよう。この繰越損失は改正前のものだから当然3年間繰り越せる。ただし、不動産の譲渡損失とは損益通算できなくなるので注意したい。
今回の改正では、不動産の譲渡損失が生じた場合、他の所得との損益通算はできなくなったものの、不動産の譲渡所得間の損益通算は認められるため、当然、繰越損失も通算できると誤解している納税者がいるようだ。ところが、この損益通算の規制は、不動産の売却損は、他の所得との損益通算はできず、ほかの不動産の売却益に限って通算できるが、通算し切れなかった売却損はなかったものとみなすというものなのだ。
つまり、昨年までの繰越損失は、不動産の譲渡所得以外の所得との通算は認められるが、改正後の損益通算の規制の対象外となるため、今年の1月以降に生じた不動産の譲渡所得との通算は認められなくなったのだ。
例えば、昨年土地を譲渡して通算し切れなかった売却損2000万円を繰り越して、2004年に給与所得が1500万円、不動産の譲渡所得が2500万円生じた場合、この繰越損失の2000万円は給与所得1500万円との損益通算はできるが、不動産の譲渡所得2500万円は損益通算の対象とはならないため認められない。不動産の譲渡所得2500万円については、500万円(所得税15%・住民税5%の計20%の譲渡税率)が課税されることになる。