法人事業概況説明書とは、法人税申告書だけでは分からない法人の事業内容や取引状況、経理状況、売上高の状況などを把握し、税務調査・指導などの効率化を図るものだ。これまでは法定外文書として提出は任意だったが、2006年度税制改正において法人税確定申告書の添付書類として提出が義務づけられた。2006年4月1日以後に開始する事業年度の確定申告等からは必ず提出しなければならなくなった。
国税庁は、9月に公表した「法人課税関係の申請・届出等の様式の一部改正について(法令解釈通達)」のなかで、法人事業概況説明書の様式を明らかにした。記載事項は、事業内容や支店・海外取引状況、期末従業員等の状況、電子計算機の利用状況、経理の状況、代表者に対する報酬等の金額、主な設備等の状況、税理士の関与状況、月別の売上高等の状況など16項目にのぼる。
法人事業概況説明書は、税務調査などの際に、調査官が事前に会社の概要を把握するための基礎資料として利用されるものだから、当然に詳細な内容の記載を求める項目もある。例えば、電子計算機の利用状況では、コンピュータの適用業務を始め、機種名、リースの場合はリース料の月額、市販会計ソフトの名称などを記載する。もちろん、これらはIT化に対応した調査の基礎資料とする狙いだろう。
また、代表者に対する報酬等の金額では、「同族会社の場合には」とわざわざ限定して報酬等の金額の明細の記載を求めている。今年度税制改正で導入された実質一人会社規制を想定した要求だと思われる。具体的には、代表者に対する「報酬」だけでなく、「賃借料」や「支払利息」、「貸付金」、「仮払金」のほか、代表者からの「借入金」、「借受金」の額を千円単位で記載することを求めている。
これまで、法人事業概況説明書の提出は任意とされていたことから、提出の是非については不明確なところがあり、税の公平性・透明性の観点から疑問視する意見も多かった。今回、提出が義務づけられたことにより、そのような面での問題点は解消したわけだが、記載内容からみると、“概況説明”とはとてもいえないものとなっており、税務署の納税者管理が厳しくなったという印象は否めない。
「法人課税関係の申請・届出等の様式の一部改正」は↓
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/kobetu/houzin/060628/index.htm