税 務 関 連 情 報

2003年08月08日-003
ドイツ、所得税減税前倒しの効果は一時的か

 内閣府のホームページに「今週の指標」というコーナーがある。最近公表された指標についての解説や注目される経済トピックスなどが紹介されるのだが、標題の記事は4日に公表されたものである。要約すれば所得税減税の効果はあまり期待できないということになるが、内閣府の発表記事だけにその意図を考えると、わが国で行われている定率減税をそろそろ止めるための布石とも勘繰れるが…。

 ドイツ政府は、2005年から予定されていた所得税減税を1年前倒しして2004年1月から実施することを決定した。現行の最高税率48.5%を42%に、最低税率19.9%を15%にそれぞれ引き下げる。国民一人あたり平均10%程度の所得税負担が軽減されるという。この減税により、消費や投資を拡大させることが期待されるが、初期の効果を実現できるかどうかは不透明だと指摘する。

 その理由は、第一に、2001年に減税を実施したときは、一時的な消費拡大に終わっている。2001年後半以降、景気低迷により可処分所得は伸びが低下しており、消費者は、家具・家電製品などを買い控え、文化・余暇への支出や外食費を節約する傾向がうかがえる。第二に、失業率が高まっているなかで雇用不安も増しており、家計貯蓄率は増加傾向にある。このため、冷え込んだ消費意欲は早急には回復せず、減税分は貯蓄に回るおそれがある。

 結局、消費が持続的に増加するためには、景気回復とともに、労働市場を含む構造改革の実施によって着実に雇用が増加することが必要だ、という分析である。所得税減税の効果に懐疑的なのである。ひるがえって、99年度に負担軽減措置法によって実施されたわが国の定率減税は、99年以降の各年分の所得税額の20%相当額(最高25万円)を控除しているが、法律では期限がなく永久に続く。内閣府の記事が定率減税を止めるための布石でなければいいが……。

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