移転価格税制とは、海外の関連企業(国外関連者)との取引を通じる所得の海外移転を防止するため、その移転価格を通常の取引価格(独立企業間価格)に引き直して所得を再計算し、課税する制度だ。経済産業省の移転価格税制研究会がこのほど発表した中間報告書では、地方税(法人住民税、事業税)における相互協議中の納税猶予制度を早急に創設することが要望された。
2007年度税制改正においては、国税の納税猶予制度の創設や移転価格事務運営要領の改正等が行われ、移転価格税制の大幅な改善が進んでいる。納税猶予制度は、納税者からの申請に基づき、移転価格課税時から相互協議を経て納税額が確定するまでの間、わが国課税当局に支払うべき課税額について納税を猶予するものだが、2007年度改正では、国税(法人税)については創設されたが、地方税は制度設計上の理由から見送られた。
中間報告書によると、移転価格税制の適用状況は、経済のグローバル化を背景とするわが国企業の海外事業展開の進展に伴い、近年、移転価格税制による更正処分件数及び更正所得金額が急増しており、ここ3年間(2004年6月末~2006年6月末)で、更正処分件数は1.9倍、その更正処分金額は2.6倍の増加となっている。こうした背景には、海外現地法人の利益の増大や無形資産取引の増大などがある。
こうしたなか、報告書は、2007年度改正における納税猶予制度の創設等の意義を評価した上で、国外関連者要件の適正化など、その他の課題については、その多くが移転価格税制の根幹に関わる非常に重要な問題であることから、引き続き改善に向けた検討が必要との考えを示した。また、喫緊の課題と思われる事項については早急な措置が必要として、地方税における相互協議中の納税猶予制度の創設を例示している。
同中間報告書の詳細は↓
http://www.meti.go.jp/press/20070907002/itenkakaku-hontai.pdf