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法定相続分課税から遺産課税への転換が実現か

税務関連情報 - 2009年11月20日

 民主党が新政権となったことで税制にも大きな影響があるが、その一つとして、現行の相続税の課税方式である法定相続分課税方式から「遺産課税方式」への転換が実現しそうだ。民主党が推進する相続税改革では、「富の一部を社会に還元する考え方に立つ“遺産課税方式”への転換を検討する」としている。同方式の検討においては、基礎控除の方式や額、相続税率なども見直される可能性が強く、相続税の大幅な見直しが予想される。

 わが国の相続税の課税方式は、明治38年の相続税法創設以来、遺産課税方式とされていたが、昭和25年に遺産取得課税方式に改められ、昭和33年には法定相続分課税方式を導入した遺産取得課税方式が採用され今日に至っている。法定相続分課税方式は、各人の課税価格を合計した相続財産総額を基にいったん法定相続分で相続税総額を算出した後、その総額を各相続人の実際の相続割合で按分して個々の負担税額を決定する。

 法定相続分課税方式は、累進税率の緩和を狙った仮装分割への対応や、分割困難な資産相続への配慮といった観点に立っているが、(1)他の相続人が取得したすべての財産を把握しなければ税額計算できない、(2)取得した財産が同額でも相続人数によって税額が異なる場合がある、(3)居住や事業の継続に配慮した特例措置により無関係な共同相続人の税負担まで緩和される、などといった不合理な点も多い。

 一方、「遺産課税方式」は、被相続人の遺産総額そのものに課税するという方式。英米系の国で採用されており、人は生存中に蓄積した富の一部を死亡にあたって社会に還元すべきである、という考えに基づいている。死亡した人の所得税を補完する意義があり、作為的な仮装の遺産分割による租税の回避を防止しやすく、また、遺産分割のいかんに関係なく遺産の総額によって相続税の税額が定まるため、税務の執行が容易になる。

 民主党は、相続税の課税方式の見直しとともに、課税ベースの拡大や税率構造の見直しも視野に入れており、税収は社会保障の財源とすることも明確に打ち出している。どこを動かしても税負担に大きく影響するため、議論の行方に資産家層の注目が集まる。