2003年08月18日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(66)
『納税者番号制度』(7)
★プライバシーの保護について
納税者番号制度の導入にあたって、最大の障壁となるのは「プライバシー」の問題だが、当連載においては第11回から第20回にかけて主張を十分に述べさせていただいた。住基ネットの導入に際しての反対論者の主張である「国民総背番号制」や「国家による一元管理」などへの危惧に対する反論である。ここでは再度議論を蒸し返すつもりはない。バックナンバーをお読みいただきたい。そこで、ここでは政府税制調査会の資料によって、「プライバシーの保護」に関する問題点が起こり得る3つの局面を紹介するにとどめる。
まずは、「納税者と税務当局間のプライバシー問題」である。税務当局は適正な税務執行のために納税者の経済取引等に係る情報を収集することが求められており、その限りでプライバシーは制限せざるを得ない。税務行政においては、一般の公務員の守秘義務に加え、税務職員についてより重い守秘義務が税法により課されている。したがって、納税者番号制度が導入された場合においても、基本的には、納税者と税務当局との間にプライバシーの問題が新たに生じるわけではない。
次に「税務当局が納税者番号を用いて収集した税務データへの他の行政当局からのアクセスの問題」がある。公務員の守秘義務のほか、個人情報保護法による行政機関の保有する個人情報ファイルの目的外使用に関する規制がなされている。他の行政当局が税務データにアクセスできるような仕組みを構築することは、基本的に税務職員の守秘義務違反にあたる。税務データへの不正アクセス防止の問題については、今後、技術的な方策を含め検討する必要性を指摘している。
最後に「取引等の際に納税者番号制度により本人確認を行うことで、資料情報提出義務者が知り得た情報を無断で第三者に売買する危険性」があることである。このような問題に対処するためには、現在、個人情報保護の基本法制の検討を含めた取組みがなされているところであり、今後の検討の推移を見守る必要がある。
以上のプライバシーの保護の問題が生じ得るケースを3つの局面に整理したうえで、納税者番号制度のような個人情報に関する大掛かりな制度においては、プライバシー保護に関してごくわずかでも問題が生じると、制度全体の信頼を著しく損ねるおそれがあり、プライバシー保護については、引き続き十分な検討を重ねていかなければならないとしている。
(続く)
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