平均寿命が年々伸びているが、今の世の中は何歳ぐらいからを老人というのだろうか。もちろん実人生では心のもち方や健康状態などによって一概に線引きはできないが、税金の世界では「65歳」を超えると老年者として何らかの優遇をされてきた。代表的なものに、納税者本人が65歳以上で合計所得金額が1000万円以下であれば50万円を所得控除する老年者控除がある。
しかし、老年者控除は2005年分の所得税から廃止されることが今年度の税制改正で決まった。公的年金等控除についても、65歳以上の高齢者に対する優遇措置が大幅に圧縮される。高齢者に対する課税強化の背景には、高齢者と現役世代との世代間の税負担のバランスの確保、所得に格差のある高齢者間の世代内の税負担の公平を図るということがある。とはいえ、「65歳」は高齢者の目安であることに変わりはない。
厚生労働省が5月28日に公表した2003年国民生活基礎調査によると、わが国の世帯総数4580万世帯(2003年6月5日現在)のうち、65歳以上の者がいる世帯は37.7%にあたる1727万3千世帯だ。このうち、「夫婦のみの世帯」が484万5千世帯(28.1%)で最も多く、「単独世帯」も341万1千世帯(19.7%)にのぼる。この割合は、今後ますます高くなることは確実だ。
それなのに、税の世界では「65歳」以上の老年者ということが意味をなさなくなりつつある。年金制度の抜本改革や破綻寸前の財政事情などがご老人を優遇する余裕すらも失わせているのである。一方で、親から子への生前贈与促進策の相続時清算課税制度には65歳以上(住宅取得の場合はないが)というしばりがある。いっそのこと、こちらの要件もなくしたらどうか。お上の都合で老人にされたくないと考える高齢者も多いだろう。