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税務関連情報 (2006/06/30)

定期同額給与も不定期な増減額は全額損金不算入

 事前確定届出給与(いわゆる役員賞与)において事前に届け出た額と実際の支給額が違っていた場合は多くても少なくても全額が損金不算入となることが明らかになっている。ところが、月給である定期同額給与についても、不定期にある月だけ増額・減額した場合は、増額部分だけでなく全額損金不算入となる可能性が高く、実務家の間で波紋を呼んでいる。減額した場合の残りの部分も損金不算入となってしまうのだ。

 2006年度税制改正で役員給与の損金算入の範囲が拡大されたが、一方で法律の定めから外れた支給形態は厳格に損金不算入とされるようだ。役員報酬は、改定前も改定後も不相当に高額な場合など一定の場合を除き、損金算入できる。同族会社の役員報酬の場合、その支給時期が1月以下の一定の期間ごと、かつその事業年度の各支給時期の支給額が同額の場合(「定期同額給与」)はその事業年度の損金算入が認められる。

 また、各支給時期の支給額が同額でない場合でも、その事業年度開始の日から3ヵ月以内に改定された場合で、1)その改定前の(その事業年度内の)各支給時期における支給額が同額である定期給与、2)その改定後の各支給時期における支給額が同額である定期給与は、損金算入できる。また、経営状況が著しく悪化したなどの理由で減額改定した場合も、1)、2)と同様に同額であれば損金経理できる。

 つまり、定期同額給与が損金算入されるためには、例えば月給であれば改定前も改定後も支給額が同額であることが要件となるのだ。そこで、ある月だけ一定額を上乗せ支給、または減額支給した場合は定期同額給与とはいえなくなることから、全額が損金不算入となるというのだ。したがって、ある月だけの増額・減額支給だけでなく、事業年度開始後3ヵ月を過ぎてから改訂しての支給は全額が損金不算入となってしまう。

 定期同額給与はいわゆる月給だけに、ずいぶんと厳しい取扱いに感じるが、法律を厳格に適用すればそうなるのだ。しかし、税務当局はそうした企業の役員報酬支給の実態をすべて把握することは不可能であろうから、現実的には調査などで指摘されるケースしかない。なんだか不公平な取扱いにもみえるが、万が一を考えて法律上の要件を満たす役員報酬の支給を心がけることが必要となろう。