わが国の雇用環境は改善傾向にあるが、若年者の失業率は10%近い水準に高止まりし、フリーターは200万人に達するなど、若年者の失業問題は依然として深刻である。日本商工会議所は9日、「若年者を中心とする雇用促進・人材育成に向けて」と題した提言を公表し、eラーニングなどを取り入れた新たな人材育成システムの整備などを求めたが、税制面では「人材投資促進税制」の創設を要望した。
提言書によると、バブル経済の崩壊以降、長引く不況により企業はリストラを余儀なくされ、労働費用に占める教育訓練費の割合が低下するとともに、雇用の流動化の進展もあり、積極的な人材投資を行うことが困難な状況にあると指摘。人材投資の縮小は、わが国企業の活力を低下させ、長期的に産業競争力の低下をもたらしかねないとの危惧を示している。
人材育成投資は研修費用や代替人員の確保などの短期的コストを伴うが、競争力の維持・増進を図るためには、長期的視点に立った人材の育成が不可欠である。特に厳しい経営環境にさらされている中小企業は、人材こそが企業活力の源泉だが、大企業と比べて資本力に乏しく、人材育成に関するコスト面などでの制約が大きいとの現状を分析している。
このため、研修など企業が行う人材育成費用について税額控除する「人材投資促進税制」の創設を求めたわけだ。それによって、企業に十分な投資インセンティブを与え、人材投資の促進を期待するのだが、その際、中小企業にとって使いやすい制度とすることが重要だとの考えも示している。少子高齢化の進展に伴い2015年には若年層の労働力人口が340万人も減少するとの予測もある。人材育成が重大な課題となりつつある。