経 営 関 連 情 報

2003年11月21日-004
鮮明となる輸出・設備投資主導の景気回復軌道

 野村総研が18日に公表した2003年度~2004年度の経済見通しである。日本経済は、典型的な輸出主導型の回復軌道に入ってきた。7~9月期の実質GDP(1次速報)は前期比プラス0.6%と、堅調な回復基調を裏付けた。特に実質輸出が前期比プラス2.8%と増勢を強めた点が特徴的。外部環境変化の日本経済への影響については、米国が中心の海外景気情勢の改善というプラス効果が、円高進行というマイナス効果を凌駕している。

 国内需要に注目すると、個人消費が低位安定を続けるなか、設備投資主導色が強まっている。分配面もこれに対応する動きを示しており、7~9月期の実質雇用者報酬が季節済前期比マイナス1.3%と大幅に減少するなど、企業優位の分配環境が続いている。90年代以降の過去の景気回復局面と比較しても、雇用者所得の回復力が弱いのが目立つ。

 今後は輸出回復が設備投資をさらに刺激し、輸出・設備投資主導の景気回復傾向が強まろう。成長ペースは来年1~3月期にかけて一段と高まり、2003年度実質GDP成長率はプラス2.9%と3%近い高成長を予想する。名目GDP成長率もプラス0.3%と3年ぶりのプラスを見込む。

 しかし、日本経済が一気にデフレ脱却に向かう可能性は限られるようだ。現在の構造的回復力は依然弱い一方、海外景気情勢の変化を主因に、来年後半には循環的な回復力は弱まる可能性が見込まれる。その結果、2004年度実質GDP成長率はプラス2.2%と2003年度を下回り、名目GDP成長率はマイナス0.3%と再度マイナス成長が見込まれる。

 貯蓄率低下に支えられた個人消費の安定と企業の人件費削減努力が結び付くことで企業の収益性が高まり、これが企業主導での構造的回復を支えている。しかし、債務・設備・雇用の過剰問題は依然深刻な形で残されており、回復力は限定的だ、というのが野村総研の経済見通しである。

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