REIT(不動産投信)(※1)や不動産私募ファンド(※2)への資金流入が続いている。拡大基調にある不動産証券化市場を分析するのは内閣府のレポートである。それによると、J-REITは2001年9月に東証に2銘柄が上場されて以来、2005年2月末までに15銘柄が上場され、純資産額は約1兆3千億円、時価評価額では約2兆2千億円にのぼる。また、不動産私募ファンド市場規模は昨年末で約2兆2千億円と推計される。
この背景には、資金運用難で新たな投資先を求める投資家や金融機関の動きがある。TOPIXと東証REIT指数を比較してみると、REIT市場の好需要により、特にこの1年ほどの間に大きく乖離がみられ、2004年4月から2005年3月の期間でTOPIXが0.3%の上昇にとどまったのに対し、東証REIT指数は9.1%も上昇している(東京証券取引所資料)。
このようななか、REITなど不動産ファンドの投資対象である信託不動産の状況をみると、受託残高及び件数ともに、REIT市場や不動産私募ファンド市場と歩調を合わせ急拡大している。一方で、1件あたりの金額については明らかに低下してきており、投資対象不動産の多様化、あるいは小口化の可能性がうかがえる(信託協会「信託統計便覧」)。
今後の見通しとしては、資金運用ニーズ(ファンド・オブ・ファンズ型の投資残高も増加しており、3月末現在で8450億円)や不動産私募ファンドからの移行などを受け、引き続きJ-REIT市場は拡大していくと見込まれている。しかし、不動産仕入価格の上昇による利回り低下や投資対象不動産の多様化によって起こりうるREITファンド間の利回り格差などに留意が必要だ、とレポートは指摘している。
※1 REITとは、たくさんの投資家から資金を集めて「不動産」を購入し、そこから生じる賃料や売却益を投資家に配当(正確には分配)する商品。
※2 不動産私募ファンドとは、特定の投資家から募った資金に借入金を加えた基金(ファンド)で不動産を購入し、運用期間中の賃料収入を分配するとともに、運用終了後に不動産を売却して投資資金を回収する不動産投資スキーム。運用は5年前後が一般的。