パチンコ機器メーカーの元会長が自ら経営権を持つ有限会社に3000億円を超える無利息融資をしたことに対し、国税当局は利息を受け取らないことは不当であるとして、元会長に利息相当分の雑所得があると認定した事件で、最高裁は、過少申告加算税を取り消した高裁判決を棄却し、元会長の主張に正当な理由はないとの逆転判決を下した。
この事件は、元会長がその大半の出資持分を有する有限会社に多額の無利息融資をしたことに対し、国税当局が利息相当分の雑所得があるとして更正処分し、過少申告加算税の賦課決定処分をしたことが発端となったもの。それまでは無利息融資に対する所得認定はしないというのが一般的な認識だっただけに、所得税の基本原則に反するものとして話題を呼んでいた。
一審判決では国側の主張を認めたが、二審の東京高裁では、国税当局の職員が執筆した書籍の記載内容に個人から法人への無利息融資には所得税を課さない旨の見解があることから、元会長の申告には正当な理由が認められるとして、過少申告加算税を取り消し、元会長側の主張を認める判決を下していた。
これに対し最高裁では、解説書に盛られた内容はあくまで想定事例であって、「別段の定めがある場合を除き」などの留保があり、また、指導にあたった税理士も融資の事情や当時の判例等を考慮すれば課税の可能性があることを予測できたはずとして、元会長の申告に正当な理由は認められないと指摘したうえで、国側の主張を認めた。この結果、審査請求段階から10数年に及ぶ注目事件が幕を閉じたわけである。