ゼイタックス

法人税額過大申告でも減額の更正の請求を認める~最高裁

税務関連情報 - 2009年07月24日

 確定申告に際し、所得税額控除額の計算を誤り控除税額を過少に記載した結果、納付すべき法人税額を過大に申告した場合でも、税額を減額する更正の請求が認められるか否かの判断が争われた事件で、最高裁はこのほど、国側の主張を認めた原審の福岡高裁判決(2006年10月24日判決)を変更し、納税者であるA社側の主張を認める判決を下した。一審の熊本地裁(2006年1月26日判決)ではA社側の主張を認めていた。

 この事件は、清涼飲料水の製造・販売などを行うA社が配当等に課された所得税額の控除額を過少に記載して申告した結果、法人税額が過大になったため更正の請求をしたのが発端。A社は、本来、配当等の計算の基礎となった期間の期末・期首の各時点における所有株式数を記載すべきところ、誤ってその事業年度の期末・期首の各時点における所有株式数を記載したため、配当等に係る控除所得税額を過少に記載して申告してしまった。

 これに対して、控訴審の福岡高裁は、納税者である法人が自由な意思と判断により控除を受ける金額を確定申告書に記載した以上、そこに法令解釈の誤りや計算の誤りがあったからといって、直ちに更正の請求の要件に該当するものではなく、法令解釈や計算の誤りがやむを得ない事情によるものと認められるときは例外的に更正の請求が認められるが、やむを得ない事情にもあたらないとして、逆転判断を下していた。

 最高裁は、所得税額控除について定めている法人税法に触れ、控除されるべき金額は記載された金額を限度とする旨規定しているとし、「法人が確定申告の際に配当等に係る所得税額控除制度の一部または全部につき、適用を受けることを選択しなかった以上、後になってこれを覆し、同制度の適用を受ける範囲を追加的に拡張する趣旨で更正の請求をすることを許されないことを規定したもの」であるとの解釈を示した。

 その上で、A社は、株式の一部について銘柄別簡便法の計算を誤り、控除を受ける所得税額を過少に記載したものと判断。過少に記載した部分に限って追加的に税額控除制度の適用を受けるつもりはなく、結局、法人が申告の際に控除所得税額を過少に記載したために法人税額を過大に申告したことが、更正の請求の要件に該当するのは明らかと判示、二審の福岡高裁の判決を退け、A社側の主張を認容する再逆転判決となった。