匿名組合契約とは、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業によって生じた利益を分配することを約した契約だ。航空機リースなどを利用した匿名組合契約による節税策が問題視されていたが、国税庁はこのほど所得税基本通達の一部改正を公表し、匿名組合契約に基づく利益の分配は雑所得とすると定めた。この改正によって、航空機リースなどを利用した節税は封じられたことになる。
航空機のリース取引は、リース期間の初めから7割くらいの期間は、航空機の減価償却費や利息の合計額がリース収入よりも多くなり、その赤字が他の所得の黒字と通算できて節税できるが、リースの終わりごろに黒字に転換して、最後に航空機の売却で大きく黒字となる取引だ。つまりは、当初は赤字で節税できるが、最終的には売却益を計上することになり、全体でみれば当初は課税の繰延べに過ぎないのだ。
投資家が法人の場合は、最後の航空機の売却益はそのまま他の所得と合算されるので、単なる課税の繰延べである。ところが、個人の場合は、航空機の所有期間が5年を超えて長期譲渡所得となり、売却益の2分の1のみが他の所得と合算されて課税され、節税効果が大きかった。これは、以前は匿名組合の組合員がその組合の営業者から受ける利益の分配は、事業所得またはその他の各種所得とされていたからだ。
しかし、匿名組合の組合員がその組合の営業者から受ける利益の分配は、雑所得と改められたことから、当初の赤字も損益通算できず、最後の売却益もまるまる課税されることになり、税制上のメリットはなくなる。改正通達では、匿名組合契約において出資者は営業者の事業に関与しておらず、事業内容にかかわらず支払われる出資相当分の利益配当は雑所得と整理されたのだ。
匿名組合契約に基づく営業者から受ける利益の分配とは、匿名組合員がその営業者から支払いを受けるものをいう(出資の払戻しとして支払いを受けるものを除く)。また、営業者から受ける利益の分配が、その営業の利益の有無にかかわらず一定額または出資額に対する一定割合によるものである場合には、その分配は金銭の貸付けから生じる所得となると定められている。