ゼイタックス

税務関連情報 (2007/10/15)

いまだに苦情が多い住民税の負担増

 国から地方への3兆円の税源移譲に伴い、多くの給与所得者の所得税が今年1月から減少し、逆に住民税は6月から増えている。国や自治体は「税金の移し替えなので、個々の納税者の所得税と住民税を合わせた税負担は基本的には変わらない」と説明しているが、6月から負担増となって4ヵ月を過ぎた今も、「どうしてこんなに高いのか」という納税者の苦情や疑問が市町村に多く寄せられているようだ。

 総務省では、税源移譲前と税源移譲後とでの年間負担額は変わらないと説明しているが、 それでも、納得できない納税者が多い一因として、定率減税の廃止がある。試算では、年収500万円の夫婦子ども2人の世帯の場合、定率減税廃止による所得税・個人住民税の負担額は1万7600円と月々1500円程度に過ぎないが、税源移譲で負担額が増えた上に上乗せされれば、感覚的に負担増は強まる。

 何よりも、納税者の苦情が殺到している背景として、国や自治体が税源移譲に伴う改正の周知・説明が不十分だったことが挙げられよう。定率減税の廃止も、現実には知らなかった納税者が多かったようだ。住民税はボーナス徴収がないので、一般的には所得税より月々の負担感が強いのだが、そこへ、“寝耳に水”の税源移譲と定率減税の廃止による負担増があれば、納税者の驚きは想像に難くない。

 ところで、「トータルでの税負担は変わらない」との説明は、前年と所得が変わらないことを前提としている。ところが、2006年に比べ2007年の所得が減少した場合には税負担が増加する。所得税が所得のあった年に課税されるのに対し、住民税の所得割は前年の収入に基づいて計算することから、このタイムラグが税源移譲に伴う税負担増の原因となっているケースがある。

 例えば、2006年に700万円の年収があった夫婦子ども2人の世帯が、2007年は年収500万円となった場合、3万8000円税負担が増える可能性がある。各種の調査を総合すると、転職や離職、退職などによって前年よりも収入が減少する人の数は年間300万人を超えるとみられており、こうしたことも、相当数の人が税源移譲による住民税の負担増に驚いて市町村の窓口に苦情を寄せている一因となっているようだ。