労働政策研究・研修機構が、比較的規模の大きな大手企業の人事担当者を対象に実施した「企業における人事機能の現状と課題に関する調査」結果(有効回答数924人)によると、正社員に対する長期安定雇用の方針については、「長期安定雇用は、今後もできるだけ多くの社員を対象に維持していきたい」との回答が79.1%と約8割に達し、「長期安定雇用は対象者を限定した上で維持していきたい」(15.6%)を大きく上回った。
こうした長期安定雇用志向は、2004年の前回調査(74.2%)と比べると、10ポイント近く上昇しており、この背景には企業の人手不足があるとみられている。5年前と比べて重要度が高まった人事施策では、トップが「人材確保(人手不足への対応)」(74.7%)、次いで「定年退職者の再雇用・勤務延長」(69.9%)が続き、「新卒者の定期採用」も55.5%と半数以上であり、人手不足を解消するための人事施策の重要度が高まっている。
ところで、人事部門には様々な苦情が寄せられるが、解決するのは難しいと考える苦情(複数回答)は、「職場内の人間関係」(52.5%)がトップで、本来人事部が立ち入ることができないような上司と部下、同僚間の人間関係上の苦情に多くの企業の人事部門が苦慮している。次いで「残業時間、休日、休暇等」(31.1%)で、多くの企業では人件費に対する制約が解決を難しくしているものとみられる。
他社の人事担当者との情報交換については、54.5%が「定期的に行っている」と回答。その内容は、「賃金制度や人事制度、社会保険などの労務管理情報」(82.5%)、「求人などの採用に関する情報」(61.2%)、「賃金の相場など労働市場に関する情報」(48.9%)などが上位だった。こうしたことから、人事担当者のネットワークを通じた他社の情報が、労働条件決定に影響を及ぼしている可能性が示唆される。
同調査結果の詳細は↓
http://www.jil.go.jp/press/documents/20080901.pdf