経 営 関 連 情 報

2003年02月26日-001
名目で縮小、実質で拡大する日本経済

 ニッセイ基礎研究所が20日に発表した2003年度の改定経済見通しでは、2003年度の実質経済成長率は2年連続のプラスとなる0.4%と予測。ところが、名目経済成長率はマイナス1.2%で3年連続のマイナス成長を見込んでいる。どちらも日本経済の真実なのだ。実質では日本経済は拡大しているが、名目では縮小を続けている。この矛盾した二つの姿を指摘するのは同研究所チーフエコノミスト櫨浩一氏のレポートである。

 日銀は、今年の1月から様々な統計作成方法の改善を行い、これまでの卸売物価指数を企業物価指数と改めて公表した。このため、実質GDPのレベルが過去にさかのぼって上方に改定され、例えば、7~9月期の民間企業設備投資は、12月発表時点からは名目では0.2%だけ上方修正されたに過ぎないが、実質では2.8%も上方修正された。企業物価指数の導入で、設備投資に使われている金額は同じでも、実際には「もっと多くの」設備投資が行われていたことが明らかになったのだ。

 モノの値段が上がったからといって我々の生活が豊かになるわけではない。物価の変動分を調整した実質成長率こそが実体であって、名目経済成長率はうわべの姿に過ぎない。ところが現実はそう単純ではない。店頭に並んでいるパソコンは、4年前と値段はほぼ同じだが、性能は大幅にアップしている。こうした性能のアップをどのように物価統計に織り込むかは難しい問題だが、今回の企業物価指数はこういう点の改善も図られている。

 企業が今後買い換えようとする新しいパソコンは現在のものより安い値段だろう。すると、設備投資額は減るのだが、格段に性能はアップしているので価格は大きく下落していることになり、実質では大幅な設備投資の増額ということになる。パソコンは今も昔の1台だが、パソコンの値段は前よりも安く、会社の支出は減っている。会社の設備投資は増えたというのが実体なのか、減ったというのが真実なのか?

 

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