中小企業投資育成会社とは、株式などの引受けにより、経営権の安定や、事業承継で威力を発揮する「投資」、豊富な経験と投資先ネットワークを活かし、中立的な立場で支援する「育成」、この2つの両面から中小企業の成長を支援している公的機関である。この投資育成会社を利用した安定株主対策、事業承継対策、長期安定資金の調達について紹介するのは、日本政策金融公庫の経営情報だ。
それによると、投資対象企業は、原則として資本金3億円以下の企業、安定的な配当を維持できる企業、先端的・独創的な技術・サービス等を持ち、上場を志向する企業である。また、投資育成会社の利用でメリットがある中小企業の主なケースは、(1)株主が分散しており、経営権の確保に不安がある会社、(2) 自社株の評価額が高く、後継者への株式の譲渡が難しい会社、(3) 株式公開を志向しているが、信用力が低いベンチャー企業だ。
ケース(1)では、投資育成会社の安定株主としての議決権行使は、原則会社側の立場に賛同し、配当期待株主として一部無議決権株での資本参加も可能だ。ケース(2)では、投資育成会社から出資を受けることによって株価が下がるケースがあるとともに、後継者にとって安定株主となる。ケース(3)では、公的機関が株主に加わることで対外信用力が増し、無担保・無保証の長期安定資金の調達が可能となる。
ケース(2)を具体例をみると、A社は、社長長男を後継者とする方針であり、事業を任せる際には経営権を安定させるべく株式(総株式数3万株)を集中したい考えだが、A社の株式が高く(株式評価額3万2千円)、長男への譲渡が難しい状況になっていた。特に高齢の社長母の保有株式の移動が喫緊の課題だった。そこで、自己資本の充実と対外信用力向上の観点から、投資育成会社を引受先とする1万3千株の第三者割当増資を実施した。
この結果、長男を支える株主として投資育成会社が加わるとともに、株価も結果的に約30%低下することになった。今後、計画的に長男へ社長母の株式を譲渡していく方針だ。
同経営情報の詳細は↓
http://www.c.jfc.go.jp/jpn/publish/info/pdf/366.pdf