老人福祉事業者の倒産件数が過去最悪のペースで推移していることが、帝国データバンクがこのほど発表した「老人福祉事業者・医療機関の倒産(法的整理のみを対象)動向調査」結果で分かった。老人福祉事業者の倒産は、2001年から2006年までは一ケタ台の低水準で推移したが、2007年になると前年比約3.3倍となる23件に急増、さらに2008年は10月までにすでに22件発生し、過去最悪の水準で推移している。
介護関連事業は、2000年4月に介護保険法が施行されたことに伴い、新規参入する企業が相次ぎ、市場は拡大に向かったが、異業種からの参入が多かったこともあり、徐々に同業者間の競争が激化した。さらに、2006年4月に改正介護保険法が施行されたことから、介護報酬の引下げや人件費増加などの負担が業界全般に影響を及ぼし、2007年以降、体力のない企業が急激に淘汰されているとみられている。
一方、医療機関の倒産件数は、「病院」の倒産急増が要因となって、2007年に48件に達したものの、2008年は10月までに27件と、2006年以前の30件前後の水準にとどまった。これは、医療法人制度の改革に伴い、2008年3月期分から医療法人の決算書などを含む届出資料が各都道府県庁や厚生局で閲覧できるようになったことなどから、各病院における経営改善意識が高まったことなどが要因とみられている。
倒産態様をみると、老人福祉事業者は、2001年~2008年10月までの調査対象期間に発生した66件のうち、「破産」が55件と全体の86.4%を占め、「民事再生法」と「特別清算」は各4件、「会社更生法」は1件となっている。老人福祉事業者は、設立間もなく事業規模が小さい企業が多いこともあり、事業継続しながら再建を図る民事再生法を選択できる条件にかなった企業が少ないことが分かる。
また、医療機関の倒産態様をみると、民事再生法の構成比は、「病院」が56.1%、「診療所」が17.4%、「歯科医院」が16.9%となっており、病院が突出して高くなっている。診療所や歯科医院は、個人経営が多く、事業規模が小さく、設備、ノウハウ、人材などが豊富ではないことから、スポンサーが現れにくく、事業の立て直しが困難で破産を選択せざるを得ないのが現状といえる。