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生前贈与、改めて考える暦年課税の相続対策

税務関連情報 - 2008年12月08日

 2009年度税制改正では事業承継税制を中心に相続税の見直しが焦点となっているが、生前贈与による相続対策では、相続時精算課税と暦年課税の2つが考えられる。相続時精算課税制度は、親から子への贈与で、一定の要件を満たした場合、2500万円までは非課税となる。ただし、いったん同制度を選択すると、暦年課税は選択できない。そこで、今回は、改めて暦年課税を活用した相続対策を考えてみよう。

 暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の価額の合計額に対して課税されるが、年間110万円までの贈与は税金がかからない。この110万円は、贈与する側の合計額ではなく、1人あたりのもらう側の合計である。したがって、妻と子ども3人、孫5人に110万円ずつ贈与した場合、1年間で990万円を無税で贈与できることになる。これを10年間続ければ1億円近くが無税で贈与できる。

 ただし、贈与は、あげる人の意思をもらう人が分かっていなければ成立しない。よくあるケースは、相続対策のため贈与したいが、子どもにお金をあげると無駄遣いしてしまう怖れがあるので、子どもには知らせず本人名義の預金を作って毎年110万円ずつ貯金するというもの。こうしたケースでは、贈与が不成立とみなされれば、相続のときに相続財産に取り込まれて相続税が課税される可能性もある。

 税務調査で問題となるのは、贈与が成立していたかどうかなので、贈与の事実があったことを証明するため、毎年100万円を少し上回る贈与をして、贈与税を少し納めておくことも一つの方法だ。なお、子どもが生活費や教育費をもらった場合は、それが通常必要と認められる範囲であれば贈与税はかからない。ただし、生活費や教育費の名目でも、それを預貯金にしたり、株や不動産の購入資金に充てた場合は贈与税がかかる。