昨年来の生活状況は、財布の紐を急激に引き締めざるを得ない経済危機だけではなく、環境・情報・格差・安全・アイデンティティ・政局など、様々な社会不安が合流し、大きな岐路に直面している。博報堂は4日、2009年のヒット商品・売れ筋情報に内在する生活者の志向や時代感を分析し、【「もっと」から「ちゃんと」へ】というキーワードで欲求のパラダイムを展望したレポート「ヒット因力2009-10」を発表した。
今年のヒット商品興味度ランキングでは、上位に「エコカー」、「地デジ対応家電」、「次世代エネルギー商品」、「新型インフルエンザ対応商品」など、社会不安の解消につながる商品が多数ランクされた。また、「ファストファッション」などの身の丈の快適を虚栄なくもたらす商品も健闘。生活者はいま、「従来のルール上での延長戦では、うまくいかない・変わらない」と感じ、欲望のあり方自体も大きくリセットし始めているようだ。
生活者は、従来の「もっと志向」生活線上にある機能のバージョンアップや、ブランドのバリエーションを求めるよりも、世界市民としての社会性・実のある達成感などを尺度として取り入れ、「ちゃんと志向」ともいえる次の生活標準探しを始めている。2008年後半から現在に至る状況は、単なる不況期ではなく、今までの生活観をリセットして新たな豊かさを探す、時代の大きな端境期とみられている。
レポートは、従来の「もっと志向」をリセットして、「ちゃんと志向」に転換する生活者から支持されるためのヒントとして(左の「もっと」志向から右の「ちゃんと」志向へ)、(1)「嗜好」→「未来の土台」交換、(2)「贅沢」→「身の丈快適」改新、(3)「所有」→「共有・清算」合理化、(4)「便利」→「労の達成感」再得、(5)「新規」→「感動史」総括、(6)「上昇」→「足元歴」構築、の6つのヒット因子を提示している。