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税務関連情報 (2004/01/23)
財務省、損益通算廃止・遡及適用の理由

 実務家の間で波紋を呼んでいる不動産譲渡の損益通算廃止だが、立法当局である財務省の主張が分かった。それは、「株式と同様に、資産から生ずる所得を給与・事業など他の所得と分離して課税するもの」、さらに「損益通算の廃止は、土地本来の使用収益目的とは離れた損益操作、節税目的での土地の売却を防止するもの」との考えである。

 また、譲渡損失は過去からの含み損の顕在化に過ぎず、譲渡代金というキャッシュフローが確実にあることから、担税力の見地からみても他の所得との損益通算を認めることは適当ではないことが廃止の理由だ。主要諸外国においても損益通算を無制限に認めている例はないことも指摘している。

 遡及適用については、損益通算を経過的に存続するということになれば、それまでの間にあえて損を出すための安売りを誘発する可能性があり、土地市場をかく乱するおそれがあるという。これが、今回の批判の的となっている、経過措置を設けず遡及適用して駆け込みでの適用を封じ込める理由である。

 これらが財務省の損益通算を廃止する理由だが、あまりにも建て前論過ぎないだろうか。損益通産というものは土地取引のリスクを減らす目的で講じられたもので、納税者が編み出した節税策では決してない。結局のところ、譲渡税率引下げの効果は少なく、隠れた増税となる改正であれば、遡及適用は誰もが納得できない“改悪”であろう。