戦後のベビーブームによって誕生した団塊の世代(1947~49年生まれ)は、高度成長期の日本において需給面のけん引役であった。それゆえ、2007年から始まる団塊世代の退職は、労働市場、消費・貯蓄市場、不動産市場、企業経営、年金問題に伴う国家財政など、日本経済に様々な影響を及ぼすとみられている。こうした、巨大な団塊マーケットの動向を分析したのはジェトロ(日本貿易振興機構)が発表したレポートである。
レポートによると、団塊の世代は、現時点においても豊富な金融資産を持っているが、今後の定年退職に伴う退職一時金により、数年後にはさらに大きな資産規模を持つ高齢層になるとみられる。また、高齢層は一般的に消費性向が他の世代と比べて大きいことから、団塊世代の高齢層への移行は、日本経済にプラスの、消費市場には無視できない影響を与えると予測される。
こうしたことから、団塊世代の取込みを進めるべく、団塊世代層の支出ニーズの強い保健医療、住宅修復、旅行マーケットでは、企業や国・地方自治体で種々の取組みや団塊マーケット開拓に関連する施策が行われ始めている。例えば、高齢層は、健康維持の観点から保険医療分野への支出を確実に増やすため、保険医療分野の市場規模は、団塊世代の退職に伴い、さらに膨らむと予想される。
一方、団塊世代は、時間ができる退職もしくは再雇用後は在宅時間が多くなることから、将来的に住宅修繕(リフォーム)への支出選好を高めるとみられる。旅行分野も団塊市場において特に有望なマーケットとなる可能性がある。旅行関係者によると、団塊世代が志向する旅行スタイルは少人数で行く特別な関心に基づく旅行とされ、なかでも夫婦旅行の割合がさらに高まるとみられている。
これらの3商品・サービスに加え、団塊世代は多趣味を特徴とすることから、衣料品、株式・投資信託などの金融資産、娯楽用家電製品、インターネットなどへの関心も高く、その支出が及ぼす経済へのプラス効果も小さくない。企業サイドからみれば、この巨大消費マーケットをビジネスチャンスと捉え、団塊世代層のニーズに合った商品やマーケティング戦略を展開する時期を迎えたといえる。
同レポートの全文は↓
http://www.jetro.go.jp/jpn/reports/05001237