中小企業は、「創業者世代の引退」という局面を迎えている。また近年は廃業率が上昇しており、そのうちの多くが後継者問題と推定されている。そこで、岐阜県産業経済センターは、特に最近増加している事業承継の手段としての「M&A」を中心に、中小企業の円滑な事業承継に役立てることを目的として調査研究を行い、その結果を「中堅・中小企業の事業承継とM&A報告書」として公表した。
親族内に後継者がいない企業が、M&Aにより他社に自分の会社を譲渡して企業を存続させる方法が近年増加しているという。報告書によると、中小企業のM&Aの多くに用いられる方法は「株式譲渡」である。株式譲渡は、売り手企業が自社株を買い手企業に譲渡することで、会社の経営権を買い手企業に売り渡すことである。会社の株主が替わるだけなので、売り手企業は存続する。
報告書は、株式譲渡における株価(企業の価値)の評価方法として「営業権を含めた時価純資産価額方式」を説明し、株式譲渡は、会社を精算するより税金の負担が少なく、売り手企業の社長の手取り額が増加すると指摘。さらにM&Aのメリット・デメリットを掲げた上で、M&Aの具体的な手順やM&Aによる事業承継の成功事例、最終契約に至らなかった事例、問題が生じた事例などを紹介している。
成功事例で総じて共通している点としては、売り手企業と買い手企業の企業文化や風土が似ていることや、お互いに相乗効果があることを挙げている。一方で、失敗事例における原因として、仲介業者等を立てないで直接売り手企業と買い手企業が交渉したこと、売り手企業の社長が最終契約の前にM&Aを話したため、中心社員が退職してしまったこと、企業文化や風土が異なる企業同士のM&Aだったことなどを挙げている。
同報告書の概要は↓
http://www.gpc.pref.gifu.jp/cyousa/houkoku/19/MandA_g.pdf