税 務 関 連 情 報

2003年04月02日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(41)

『所得税における水平的公平性について』(2)

 わが国における個人所得課税の業種間における水平的公平性の実態について、主に制度上の負担の格差、クロヨン問題と称される所得捕捉の格差の2つの面から、その実態について検証している内閣府が公表した「所得税における水平的公平性について」と題する報告書の紹介である。前回(3月28日)の「制度上の水平的公平性」の要約に続いて、今回は「税務執行上の水平的公平性」についてである。

 制度上の不公平とは別の問題として、申告納税制度によって生じる脱税(申告ミスなども含む)から生じる業種間の所得捕捉率の格差という、税務執行上の水平的公平性に焦点を当てる。その要因となる税務執行の現状について整理した上で、統計データを用いた推計によって、その実態と時系列での変化について検証している。

★クロヨンはかなり解消された

 その結果、申告所得税において所得の申告漏れがあることは間違いないが、統計上現れる数値ではクロヨンを裏付けるような額には至らず、税務執行においても、情報の蓄積やシステム管理によって改善されているとする。また、給与所得、自営業所得、農業所得の間の所得捕捉率の格差を、マクロデータを用いて時系列で推計した結果、格差はいまだ存在するものの、その差はここ20年でかなり減少してきたことが示されたという。

 このように、制度上と税務執行上の両面から分析を行った結果、控除額の根拠が不明確な多額の給与所得控除の存在が要因となって、事業所得者に比べ給与所得者のほうが有利となっていること、給与所得者の不公平感の原因となっている申告納税によって生じる所得捕捉率の格差は、ここ20年間で縮小していること、が明らかになったというのが結論である。

 したがって、「広く薄い」課税体系が模索されている今、所得税については、水平的公平性の観点から制度を改めて見直すべき時期にきている、というのが報告書の指摘である。意外な結果である。制度上は給与所得者のほうが有利、クロヨンはかなり解消されたといっても、肝心の推計・検証方法をここでは省略しているので、納得できない方も多いだろう。ただ報告書の要約を紹介しただけなので当然だが…。

 そこで、次回からは、推計・検証方法も含め報告書をもう少し詳しく眺めてみたい。

(続く)

 

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