工事契約に関する会計基準の変更に伴い、2008年度税制改正では、工事進行基準が見直された。主な改正点は、(1)長期大規模工事要件を、工期1年以上かつ請負金額10億円以上に引下げ、 (2)工事進行基準を任意適用できる範囲に、損失が生ずると見込まれる工事を追加、(3)工事進行基準の対象にソフトウェア受注制作を追加、(4)工事進行基準の適用により計上した未収金は、金銭債権として貸倒引当金制度等を適用する、などだ。
昨年12月に企業会計基準委員会が公表した「工事契約に関する会計基準」及び同指針では、請負工事に関して認められていた工事進行基準または工事完成基準の選択適用が廃止された。2009年4月1日以後開始事業年度に着手する工事契約から(早期適用も容認)、成果が確実な場合は工事進行基準、そうでない場合は工事完成基準を適用することになった。また、受注制作ソフトウェアにも同会計基準が適用される。
こうした会計基準の変更に伴い、税制上も工事進行基準を見直したわけだ。工事進行基準が強制適用される長期大規模工事の要件は、改正前の工期2年以上かつ請負金額50億円以上を上記のように大幅に引き下げた。工事会計基準に関する会計基準は、中小企業では強制適用されるわけではないが、同会計基準を適用した場合、請負工事やソフトウェアの受注制作を行っている企業では、精度の高い原価見積もりと進捗度管理が求められる。
特にソフトウェアの受注制作の場合、進捗度が目に見えないため、書類上の進捗度把握資料が重要となり、管理費用の増大が予想される。また、工事完成基準の場合、途中入金は前受金だったが、工事進行基準では、進捗度に応じて売掛金が発生するので、実際に入金がある前受金と、実際に入金がない売掛金とを区分する資金管理が必要になるほか、入金がなくても売上が計上されるため、納税資金や配当資金の確保が必要となろう。