日本商工会議所はこのほど、事業承継税制の確実な制度化を盛り込んだ「2009年度税制改正に関する要望」を公表した。2009年度税制改正においては、10月1日から施行される中小企業経営承継円滑化法を踏まえた上で、「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」が創設されるが、日商は、同制度が中小企業経営者にとって使いやすい制度となり、事業承継の円滑化に向けた支援策が拡充されるように求めている。
要望では、まず猶予された相続税額が免除される場合の明確化を挙げた。納税猶予制度は、5年間の事業継続期間経過後、後継者が相続税の納税猶予の対象となった株式等を死亡時まで保有し続けた場合などの一定の場合には、猶予税額が免除されることになっているが、その「一定の場合」に、(1)会社が倒産した場合、(2)次の後継者に納税猶予対象株式を生前贈与して事業の継続を図る場合、を含めることを求めた。
次に、事業用宅地が円滑に後継者に承継されることは、事業承継にとって極めて重要との観点から、特定同族会社事業用宅地特例(400平方メートルまでの事業用宅地について相続税の課税価格を80%減額)と納税猶予制度の併用を認めることを要望。また、納税猶予制度における雇用要件の8割維持について、8割を下回った場合、即座に要件未達と判断することなく、一定の猶予期間を設けるなどの措置の検討を求めた。
そのほか、(1)中小企業における計画的な事業促進のため、納税猶予制度の適用対象に、相続時精算課税制度を利用して生前贈与した自社株式や今後生前贈与する自社株式を含めるなど、株式の生前贈与を促進するための税制措置、(2)事業承継手段の選択肢を増やす観点から、納税猶予制度の適用対象に、株式の信託を活用した場合などの措置を講ずること、(3)取引相場のない株式の評価方法の見直し、などが要望項目となっている。
(3)については、経営努力による企業価値の向上が株式の評価額を高くし、後継者の相続税負担が重くなって、事業者の意欲を阻害する要因となっている。納税猶予制度では、このような税負担を軽減するが、同制度施行後も、親族間等で分散した株式の後継者による買戻し、後継者以外に自社株式を相続する共同経営者の相続税負担など、過大な株式評価が支障となる場合があることから、引き続き評価方法の見直しを求めたものだ。