中小企業庁は、2006年度税制改正意見のなかで同族会社の留保金課税の廃止を含めた抜本的な見直しを求めている。同庁は、厳しい競争環境のなか、新たな発展をめざす中小企業にとって、設備投資・研究開発などを行うための資金の確保、信用力向上を図るための財務基盤の強化といった経営課題に対処するためには、利益の内部留保が必要不可欠との考えだ。
中小企業の自己資本比率は、大企業と比べて依然として低い。財務省の法人企業統計によると、大企業の自己資本比率は33.5%に対して、中小企業は20.3%とかなりの差がある(2003年の数値)。このように、財務基盤の強化が必要である一方、留保金課税の目的は、個人形態と法人形態の税負担の格差の是正といわれるが、現在では所得税と法人税の税率格差は大幅に縮小しており、存在意義は大きく低下していると指摘する。
また、留保金課税の機能としては、同族会社の不当な内部留保に対する間接的な配当促進が掲げられているが、国税庁の「税務統計からみた法人企業の実態」によると、多くの中小企業が該当する同族会社の内部留保率は、非同族会社に比べてわずかに高くなっているだけである。中小企業の資金調達面での制約などを考えれば、不当に高い水準ではないとして、留保金課税の機能に疑問を呈している。
さらに、中企庁の「中小企業税制に関するアンケート」(2005年3月)によると、留保金課税の支払いのあった中小企業のうち、配当を実施せずに内部留保を厚くしている企業にその理由を聞いたところ、「財務体質を改善させるため」(79.3%)、「設備投資に備えるため」(62.1%)という回答が多数を占めていることを挙げ、中小同族会社における内部留保の重要性を強調している。
現行の留保金課税は、1)設立後10年以内の中小企業、2)自己資本比率50%以下の中小企業(資本金1億円以下)、3)中小企業新事業活動促進法の経営革新計画承認事業者に対しては適用されない。しかし、この措置は2005年度末まで。以前から経済団体からの要望も多い留保金課税の廃止だが、来年度改正において単なる延長措置に終わるのか、それとも廃止となるのか注目されるところだ。