酒類業界は厳しい販売競争のなか、販売コストを無視した価格設定による廉価販売や不公正なリベートの支出などが行われがちな業界だ。国税庁では、酒類の公正な取引環境を整備するため、毎年酒類の取引状況などの実態調査を行っている。今年6月までの1年間においては、約20万4千場の酒類販売場等のうち、著しく廉価で継続的に販売しているなど問題がありそうな1319場を対象に一般調査が行われた。
10日に公表された調査結果によると、調査した酒類販売場等(小売業者・卸売業者・製造業者)のうち97.1%にあたる1281場において、総販売原価を下回る価格で販売するなど「合理的な価格設定」がされていないと認められる取引があった。ほとんどが小売業者(1089場)だが、177場では仕入価格割れでの販売が認められた。
例えば、地域においてトップシェアを占める量販店A社は、近隣競合他社の販売価格に対抗するため、会社全体として最終的に利益が確保されればいいと考えて、個々の商品については仕入コストや利益を度外視して販売価格を設定していた。その結果、発泡酒が常態的に総販売原価割れ販売、特売時には仕入価格割れ販売となっており、合理的な価格設定をしていないと認められた。
調査ではその他、特定の取引先へ不透明なリベートを支払うなど「取引先等の公正な取扱い」が行われていないと思われる取引があった卸売業者・製造業者131場(全体の9.9%)、「公正な取引条件の設定」がされていない取引があった卸売業者・製造業者27場(同2.0%)が把握された。これらの調査結果を踏まえ国税庁は、独禁法違反が想定される業者を公取委に報告し、酒類販売業者4社が不当廉売で警告を受けている。