税 務 関 連 情 報

2003年06月04日-001
所得捕捉率の是正に“怒れ全国のサラリーマン”(57)

『所得税における水平的公平性について』(18)

★地下経済が抜け落ちている国民所得統計

 所得捕捉率の格差についての業種間比較の推計では税務統計と国民所得統計を用いて比較したが、国民所得統計は果たして「真の所得」を表しているのか。それは、報告書自体も認めているように、国民所得統計にも現れてこない「地下経済」の存在を考えると疑問ではあるまいか。

 報告書は、「地下経済の存在が懸念される」と断った上で、「推計に用いたデータや所得の定義や調整項目は統一されており、所得捕捉率の業種間格差が縮小しているという結論は間違いがないものと考えられる」と押し切っている。

 しかし、大前提である国民所得統計が正しくなければ、当然、結論も信用できまい。報告書は、国民所得統計には「地下経済」の存在が現れてこないことを肯定している。しかし、我々がここで問題にしているのは、所得捕捉率なのである。税務署の所得捕捉の網の目から逃れるのは、単純な申告ミスや勘違いによるものもあろうが、ほとんどが意図的な租税回避、脱税である。

 ところで、「地下経済」と聞くと、麻薬や博打などの非合法な商売を思い浮かべるが、なんとその7割以上が脱税によるものなのである。第一生命経済研究所の門倉貴史氏の推計によると、日本の地下経済の規模は19兆円から21兆円であり、その7割超の14兆円前後が脱税によるものだという(2001年の推計値)。

 このような脱税がすっぽりと抜け落ちた国民経済統計を「真の所得」として推計した報告書の結論が正しいかどうかは、言うまでもあるまい。税務当局の目を逃れた所得を考慮しないで、捕捉率を算出しても意味のないことである。そもそも、所得捕捉率の格差の検証を学問的に行うことに無理があるのであって、ほとんどの人が過去の知識や経験に基づいて感じている不公平感のほうが正しいのではあるまいか。

(続く)

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