中小企業庁事業環境部金融課長の私的研究会である「新しい中小企業金融研究会」は25日、中小企業金融について、今後1~3年程度で取り組むべき政策課題を抽出し、議論・検討していく考えを示した報告書を公表した。報告書は、景気は停滞期を脱し、回復基調がより鮮明になるなどの経済環境を背景に、多くの金融機関では中小企業金融を積極化しているが、依然として中小企業向け金融が抱える問題点が存在すると指摘する。
問題点とは、1)創業時や新規事業への展開時、あるいは再生時など、リスクが高いステージにある企業に対して、資金供給を行う者が限定的、2)事業規模の小ささや自己資本が少ないことなどを要因として信用度が劣ることが多い中小企業は、担保や保証を求められるなどの制約を受けることが多く、成長時には、こうした制約がボトルネックとなる可能性があることである
さらに、3)短期資金の借り換えによって根雪のようになった借入金を擬似資本のように扱うことで、中小企業の脆弱な財務基盤が補われてきたが、昨今のリスク管理意識の高まりなどからこうした融資慣行を維持することが難しくなり、中小企業の財務体質の脆弱性(自己資本の不足)が大きな問題の一つとなっていること。また、情報開示が質・量ともに不足しているという問題も同時に指摘している。
同研究会では、これらの問題意識に基づき、今後1~3年程度で取り組むべき政策課題を抽出し、議論・検討していく考えだ。具体的な検討課題としては、企業ステージ別の資金調達として、1)創業・成長局面での資金調達、2)再生局面での資金調達、3)再挑戦の支援、4)事業承継への対応、を掲げている。例えば、再挑戦の支援では、一度経営に失敗しても再挑戦できるような融資を金融機関に促す制度の構築を検討する。
また、経済・金融環境に左右されにくい資金調達として、1)不動産担保・人的保証に過度に依存しない金融、2)貸出債権証券化の推進、3)担い手の多様化、4)コミットメントラインを挙げている。同研究会は、今後、同報告書の方向性に沿って、「複線的な資金仲介チャネル」の実現に向けた政策が、個々の課題が有する経緯や性格などを充分に勘案しつつ、適切なタイミングで実施されることを期待している。
同報告書の詳細は↓
http://www.meti.go.jp/press/20060725004/houkokusho-hontai.pdf