功績倍率法を用いて算出した役員退職給与について過大とされたA社が、その取消しを求めた事案で、国税不服審判所は、比較法人の平均功績倍率が、裁判事例や裁決事例による功績倍率よりも低いことのみをもって相当性を欠くものではないとして、A社の主張を斥けた。A社は、創業者である代表取締役の功績倍率を3.6、その妻である創業以来の取締役の功績倍率を3.3とするのが相当であると主張していた。
A社は、税務署が類似比較法人として選定した会社は不明であり、その数も4社と少ないこと、代表取締役と取締役の功績倍率が同じというのは不自然であり、社会通念上もあまりに低率であること、創業以来の代表取締役及び創業者の妻で創業以来の取締役であること、裁判事例や裁決事例でも功績倍率が3.3~3.6倍というのは定着していることなどからすると、A社が用いた功績倍率は高くないと主張していた。
これに対し国税不服審判所は、税務署がA社の類似比較法人として選定した4社の選定基準はA社の事業内容や事業規模などを反映させたものであって合理的なものと認められるとした上で、ただし、比較法人のうち1社については、特殊な事業から実際の支給額が他の3社に比べて大幅に低いことから、同社を除外した3社を比較法人として功績倍率を算定すると、平均功績倍率は1.9となるとの判断を示した。
また、功績倍率を算出するにあたっては、代表取締役か取締役か、創業以来の役員であるかどうかなどの名目だけでなく、会社への実際の貢献度などの実質も考慮されるべきであるところ、同審判所の調査によっても、上記の平均功績倍率をA社に当てはめることが相当性を欠くと認められるほどに、創業者とその妻のA社への貢献度が高かったことを裏付ける事情は認められないと指摘し、税務署の処分を認めている。