今年3月末で期限切れとなる「30万円未満の減価償却資産の即時償却」の特例は、2006年度税制改正において適用期限が2008年3月末まで2年間延長される。ただし、注意したいのは、単に適用期限が延長されるだけでなく、特例の適用対象となる損金算入額の上限が300万円とされたことだ。投資総額が300万円を超える部分が損金不算入となるのではなく、300万円を超える“減価償却資産”が適用外となる。
具体例で説明しよう。例えば、1台29万円のパソコンを11台購入した場合、総額は29万円×11台で319万円となるが、このケースでは、300万円を超える19万円が適用対象外となるのではなく、10台分の290万円のみが適用対象となって、残りの1台は即時償却ができないことになる。これまで、中小企業者が購入した減価償却資産が30万円未満であればすべて即時償却を認めていたが、そこに総額の上限規制を加えたのだ。
経済産業省によると、中小企業の約1割がこの特例を活用し、そのうち資本金1千万円以下の小規模企業が約7割を占めており、特例企業の約9割は年間損金算入額が300万円以下だという。したがって、ほとんどの中小企業にとっては、便利な制度の適用期限が延びただけということになろう。ただ、多額の設備投資をする企業にとっては、上限を超える額のすべてが減価償却の対象となるので、税金の前倒し発生の要因となる。
そこで、そのような企業は、4月以降は既存の「一括償却資産の損金算入(20万円未満の減価償却資産の3年償却)」や「少額の減価償却資産の取得価額の損金算入(10万円未満の減価償却資産の即時償却)」との使い分けや、さらには、新たに創設される「情報基盤強化税制」をはじめ「中小企業投資促進税制」などによる特別償却や税額控除の適用を検討することも必要となってこよう。