ゼイタックス

税務関連情報 (2006/05/19)

「税額控除」と「特別償却」はどちらが有利?

 企業が設備投資を行った場合の税制上の優遇措置では代表的なものに中小企業投資促進税制や中小企業等基盤強化税制などがあるが、これらの税制を活用すると、中小企業者が取得(リース)した対象設備の金額に基づいて30%の「特別償却」か7%の「税額控除」の選択適用が認められる。いずれも税負担を軽減されるが、ここで悩むのはどちらを選んだほうが有利かということである。活用例で比べてみよう。

 昨年12月に1000万円の機械を取得した3月決算法人A社のケース。機械は法定耐用年数5年、償却方法は定率法(36.9%/年)、課税所得は800万円(機械の減価償却費計上前の金額)とする。普通償却は1000万円×0.369×4/12(12月~3月)=123万円。特別償却を選択した場合は、1000万円×30%=300万円となり、課税所得は、800万円-123万円-300万円=377万円となる。

 法人税額(22%)は、通常149万円(800万円×22%)のところ83万円(377万円×22%)に軽減され66万円の節税となる。特別償却は、初年度に普通償却に特別償却を上乗せして減価償却が行えるので、初年度の税負担は軽減できる。しかし、その後の減価償却費は、特別償却として先取りした分だけ減少するので、結果として通算すれば、全体の償却できる額は同じとなる。

 一方、税額控除を選択したケースでは、税額控除額は、1000万円×7%=70万円だが、法人税額の20%が限度なので149万円(800万円×22%)×20%=30万円が軽減される。控除し切れなかった40万円(70万円-30万円)は、翌事業年度に繰り越して税額控除の対象となる。この結果、この活用例では税額控除よりも特別償却のほうが税負担が軽減されるが、個々の企業の個別事情で結論は変わるので注意が必要だ。

 税額控除は税負担がまるまる軽減されるのに対して、特別償却は初年度こそ大きく税負担は軽減されるが、実は先々の費用計上分を先取りした結果であり、トータルすれば税負担は変わらない。だから、一般的には税額控除のほうが長い目でみれば有利といわれている。しかし、会社の資金繰りを考えて、その期の内部資金を厚くしたいなど、会社の財務内容に応じた選択もある。最終的には税理士などの専門家に相談する必要がある。