企業が社員に対してその誕生日に結婚祝金を贈ることは、社会的な慣習とは認められないのだろうか。企業が毎年、すべての社員に対しその誕生月に支給していた誕生祝金について、国税不服審判所は、支給形態が広く一般に社会的な慣習として行われているとは認められないため、給与所得にあたると判断、福利厚生費として損金処理していた納税者の主張を斥けた事案がある。
この事案は、ある同族会社が、誕生日実施要領に基づき、毎年、各社員の誕生日に独身者1万円、既婚者1万5千円の誕生日祝金を支給し、その費用を福利厚生費として損金処理していたが、税務署が認めず給与所得と認定したため、それを不服とした同族会社が国税不服審判所に審査請求したもの。同族会社は、結婚祝金は、給与として課税しなくても差し支えない結婚祝金等の類に該当すると主張していた。
税法(所得税法基本通達)では、例外的に、雇用契約等に基づいて支給される結婚・出産などの祝金で「その金額が社会通念上相当と認められるもの」については課税しなくて差し支えないものと定めている。同族会社は、誕生日祝金を贈ることは、親子間などで何ら違和感なく広く一般的に行われており、この誕生日祝金も、使用者と使用人の間で一般的かどうかを問うまでもなく、税法が例示する結婚祝金等に含まれる、と主張した。
これに対し、国税不服審判所は、この誕生日祝金は、すべての社員が雇用されている限り、毎年誕生月に支給されるものであって、その支給形態等が広く一般に社会的な慣習として行われているものとは認められないと指摘し、税務署の処分を支持した。結婚祝金が、社員の企業への帰属意識を高め雇用確保にもなるなどを考えれば、必要経費として認めてもよさそうだが、誕生祝はケーキや花束などにとどめるべきということか。