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厳しさ増す中小企業の資金繰り~日本公庫総研

経営関連情報 - 2008年12月15日

 中小企業の資金繰り動向を分析するのは日本政策金融公庫総合研究所のレポート。レポートは、米国発の金融危機の影響による世界的な景気低迷の動きのなかで、わが国中小企業の資金繰りも悪化する傾向にあると指摘する。資金繰りの余裕具合を表すといわれる手元流動性比率をみると、大企業では90年以降、一貫してその比率を低下させていることに対して、中小企業はおおむね一定の比率を保っている。

 手元流動性が一定している中小企業だが、大企業とともにこれまで借入金の返済を進めて債務の負担を軽減させてきていることから、この10年間でみると借入金対年商比の資金繰りDIを5ポイント前後押し上げる効果がみられる。また大企業は金融機関の貸出態度の影響度合いが薄れている一方で、中小企業にあっては、金融機関の貸出態度の変動が資金繰りに大きな影響を与えていると分析している。

 必要な運転資金をどれだけキャッシュフローで賄っているかを考えると、大企業、中小企業ともにキャッシュフローでの調達割合を増やしつつあるが、足元で大企業では必要運転資金の約6割をキャッシュフローによって賄っているのに対して、中小企業では約3割弱にとどまる。つまり、中小企業は必要運転資金の約7割を外部調達に依存しているため、その資金繰りを金融機関の貸出姿勢に依存させている程度が高いといえる。

 今後の金融機関の貸出姿勢は慎重化の度合いを強めている。貸出先の信用リスク評価をみると、前回景気後退局面ほどはまだ低下していないが、大企業よりも中小企業に対してより厳格化する動きがみられる。また、貸出先に対する信用枠は、大企業向け、中小企業向けともに、これまでの拡大傾向が転じて縮小する方向に向かっており、特に中小企業向けにおいては2四半期連続でマイナス(「縮小超」)となっている。

 レポートは、金融機関の貸出態度以外にも、業績悪化に伴う売上や利益水準の低下などから中小企業の債務負担割合は一層高まると考えられ、そのことも資金繰りの窮屈化要因となるとみており、今後の中小企業の資金繰りについては、より一層注視していく必要があると結んでいる。

 同レポートの全文は↓
 http://www.jfc.go.jp/common/pdf/topics_no3.pdf