景気に明るい兆しがみえてきて、今まで後回しにしてきた社屋や店舗の修理を考える企業もあろう。修理というと、その費用が、一括損金算入できる修繕費となるのか、資産計上しなければならない資本的支出となるのかが問題となる。固定資産に手を加えたことによって、資産の価額を増加させたり、使用可能期間を延長させる場合は、資本的支出として、その資産の取得価額に加算して減価償却の対象としなければならない。
修繕費と資本的支出との区分は支出金額の多寡によるものではなく、その実質によって判定することとされているが、問題となるのは、ある程度規模の大きな修理の場合であって、少額な修理については、資本的支出であるかどうかを問わず、一括損金算入することができる。具体的には、一の修理・改良などのために要した費用で、1)20万円に満たない場合、2)おおむね3年以内の周期で行われることが明らかな場合である。
また、一の修理・改良などのために要した費用のうちに資本的支出か修繕費かが明らかでない場合において、1)その金額が60万円に満たない場合、2)その金額が修理・改良等に係る前期末における取得価額のおおむね10%相当額以下である場合は、修繕費として損金経理することができるという形式的区分基準がある。
いずれの場合も注意が必要なのは、金額の判定の単位が「一の修理・改良等」ということである。だから、例えば修理代を20万円未満にするために、外壁工事や屋根の工事など、一般的には一つの単位と考えられる工事を、あえて二つの業者に分けて依頼したとしても、合計の工事代金が20万円を超えるケースであれば、20万円未満という少額基準による一括損金算入は認められないことになる。