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税務関連情報 (2006/08/09)

相続税納税に備えた金融資産比率の検討が必要

 最新データからみた相続税の納付状況を分析し、長期的な観点から納税に備えて金融資産の比率を検討を勧めるのは、農林中金総研の田口さつき氏のレポートである。用いた最新データ、国税庁統計年報書(04年度版)によると、2004年中に亡くなった被相続人1人あたりでは、財産額は2億5177万円、財産額から葬式費用などを除いた純資産価額は2億2521万円、相続税の対象となる課税価格は2億2653万円だった。

 財産の構成をみると、「土地」(宅地、田・畑・山林、その他の土地)が約5割(53.3%)、「現金・預貯金等」が約2割(19.9%)、「有価証券」が約1割(11.4%)などとなっている。財産を金融資産(有価証券、現金・預貯金、生命保険など)と実物資産(土地、家屋・構築物、事業用資産、家庭用財産など)に二分すると、金融資産が約35%であるのに対し、実物資産は約65%である。

 そこで、被相続人1人あたりの純資産額を利用して相続税額を計算すると、法定相続人の構成を配偶者と子ども2人の場合、相続税額は、配偶者が1478万円、子ども1人あたり526万円となる。ただし、納付税額は、配偶者は税額軽減によりゼロとなり、子ども2人分の1052万円となる。この相続税額に対し、現金・預貯金は被相続人1人あたり5006万円であるから、相続税を払うのに十分な現金・預貯金が存在したことになる。

 ただし、資産の構成が実物資産に傾斜している場合や相続税の法定相続人の1人に実物資産が集中するような相続の場合などは、相続税の納付にあたって、実物資産の取崩しなどの事態が発生する。また、地価が急激に上昇する場合も相続税が増え、納税において同様の問題が生じる可能性がある。実際、地価が上昇した90年代初めには、土地の評価額が高騰したため、土地を物納する事例が急増した。

 レポートは、基本的には相続税の納税において問題が発生する傾向は少ないものの、長期的な観点から納税に備えて金融資産の比率を見直すべきだとしている。特に、実物資産が多いケースでは、金融資産の比率を高めるような相続対策を早めに検討・実施することが求められよう。