国税の電子申告・納付システム(e-Tax)や地方税の電子申告(eLTAX:エルタックス)の普及の切り札は、来年度税制改正において導入が検討されそうな電子申告控除とみられている。国税庁は、普及促進に向けて、評判の悪い電子申告用のパソコンソフトCD-ROMの改善や添付書類・電子署名の省略など様々な取組みをしているが、何といっても電子申告を利用すれば税金が安くなるというインセンティブは効果が大きい。
例えば韓国では、電子申告システムによる納付比率が、法人税約97%、個人所得税約75%、付加価値税約72%と高水準だが、利用者には、法人税と所得税で各2万ウォン(約2400円)、付加価値税で1万ウォン(約1200円)の割引があるという。こうした実例をみれば、電子申告控除の導入が、電子申告利用促進の大きな推進力となることは間違いない。納税者は税金が安くなれば動くのである。
実を言えば、電子申告普及のカギを握るのは納税者の代理人である税理士である。法人税申告の税理士関与割合は86.6%(2005年度)と9割近い。これまでは、税理士に申告を委託している納税者にとって、申告は紙であろうがインターネットであろうが構わなかったのだが、税金が安くなるとなれば、顧問税理士に対し電子申告することを求めるのは想像に難くない。
電子申告控除が導入されても電子申告を利用しない税理士事務所は、納税者の利益を損なうことになるので、納税者が離れていく事態も考えられる。国税庁は、所得税や法人税などの申告のオンライン利用率を2010年度までに50%とする目標を掲げているが、来年度税制改正で電子申告控除が導入されれば、利用率は大幅に上昇する。税理士事務所にとって、電子申告利用の準備は最重要課題といっても過言ではない。