わが国の中小企業の多くが経営者の高齢化などとともに世代交代期にさしかかっており、「事業承継問題」への対応の重要性が急速に高まっている。信金中央金庫総合研究所が7日に発表した「中小企業の事業承継問題の現状」と題したレポートでは、「後継者問題」の実情を探るとともに、解決策としてのM&Aの認知度向上の動きや行政サイドの最近の取組み、あるいは「第二創業」との関連などを概観している。
レポートによると、事業承継問題の重要性が高まっている一方で、その多くが次代を担う後継者の不在(「後継者難」)という、事業存続にも関わる極めて重大な経営問題に直面している。これまでは一般的だった“後継者=経営者の子ども”という構図は、厳しさを増す事業環境のなかで徐々に後退しつつある。経営者一族でない“番頭”的な立場の従業員への事業承継も珍しくないが、それはそれで困難を伴うことがある。
こうしたなかで、事業承継問題解決の最後の切り札として、いわゆるM&A(第三者への事業の売却・譲渡)という“第三の選択肢”の認知度が近年着実に高まっている。一方、2005年10月に中小企業庁が有識者や実務家などで構成される「事業承継協議会」を発足させるなど、事業承継をめぐる行政サイドの動きも一段と進展している。同協議会は、根元的な問題点として、事業承継に関する事前の取組み不足を指摘している。
事業承継問題は「先代経営者の死亡」や「健康上の理由」などを前提としたことが多いため、後継問題に言及すること自体が一種の“タブー視”されている面がある。このことが事業承継問題への対応を遅らせる原因のひとつとなっている。しかし、事業承継による世代交代は、既存事業の“強み”をベースにしながら、新たな目線で環境変化に対応した新事業開拓などで「第二の創業」を成し遂げていく好機でもある。
また、事業承継には“適切なタイミング”というものがある。中小企業白書(2004年版)においても、「承継者の年齢」という切り口から、適切な時期に承継することの重要性を指摘している。レポートは、世代交代期にさしかかる中小企業経営者が事業承継に正面から立ち向かい、「手遅れにならないように」さまざまな対策を先手を打って講じていくことが何より肝要だとして、事前準備に取り組むことを勧めている。
同レポートの全文は↓
http://www.scbri.jp/PDFsangyoukigyou/scb79h17F10.pdf