大阪府立産業開発研究所が発表した中小企業金融の方向に関する調査結果(有効回答数347社)によると、中小企業がメインバンクに対して提出している資料(複数回答)は、「貸借対照表・損益計算書」(81.0%)、「税務申告書の写し」(60.2%)など税務関連資料が多く、資金管理において重要となる「資金繰り表」は17.9%にとどまった。「事業計画書」(13.0%)など自社の事業に関する情報提供には消極的な様子がうかがえた。
また経営者は、資金調達に支障が生じた原因(複数回答)として「自社の決算内容が悪かった」(47.1%)、「すでに借入過多だった」(41.3%)と自社の財務体質に問題があると認識する一方で、「金融機関が担保や保証人に固執していた」(40.4%)、「金融機関の都合が優先された」(33.7%)など、金融機関の審査姿勢も原因として挙げた。金融円滑化のためには、企業と金融機関の双方が解決すべき課題を抱えている。
今回の調査結果と、中小企業庁が実施した「金融機関の融資審査での重視項目」についての調査結果を比較すると、「債務償還能力」、「信用保証協会の保証」では、中小企業経営者(各44.4%、41.6%)が思っている以上に金融機関(各64.7%、58.2%)が重視している。逆に「個人保証」については、中小企業経営者(35.5%)が思うほど、金融機関(8.3%)では重視していないなど、両者の意識にギャップがみられる。
また、中小企業経営者が融資審査に際して評価を望む項目は、「担保や保証人」(31.7%)ではなく、「技術力・ノウハウ」(72.4%)、「顧客基盤や供給体制」(70.8%)、「経営者の資質」(70.0%)、「金融機関との過去の取引実績」(68.5%)などが上位に挙げられ、定性要因の評価ウエイトの引上げを望んでいることがわかった。
以上の調査結果から、同研究所では、中小企業が取り組む課題として、「経営者自身の財務及び金融に関する理解」、「財務諸表の信頼性の向上」、「定性情報の適正開示」の3点を挙げている。また、中小企業と金融機関との意識の乖離を埋め、リレーションバンキングを具現するために、金融機関が取り組むべき課題として、「定性情報評価システムの構築」と「担保・保証人に依存しない融資制度の充実」の2点を求めている。
調査結果の概要は↓
http://www.pref.osaka.jp/aid/chosa/siryo/04-92.pdf