先日公表された会計検査院の2005年度決算検査報告によると、税金の徴収額が不足していたものが173事項4億8559万円(1999年度~2005年度)、過大だったものが9事項3016万円(2000年度~2005年度)あった。税目別にみると、法人税がもっとも多く、徴収不足64事項1億8223万円、過大2事項1816万円の計66事項が報告されている。そのなかでほぼ3分の1の21事項を占めたのは、同族会社の留保金に関するものだった。
同族会社の留保金課税は、3人以下の株主等同族関係者が、発行済株式総数・出資金額の50%を超える株式数・出資金額を有する特定同族会社については、通常の法人税のほか、利益のうち社内に留保した金額が一定の金額を超える場合には、その超える部分の金額に対し、特別税率の法人税を課す制度である。50%を判定する際の分母となる発行済株式総数等には、その会社が有する自己株式数等は除くこととされている。
会計検査院の報告事例によると、A社は、2003年4月から2005年3月までの2事業年度分の申告にあたり、上位3人の株主とこれらの親族が発行済株式総数の42.3%及び42.6%所有しており、特定の同族会社には該当しないとして、利益のうち社内に留保した金額に対し特別税率の規定による税額計算をしていなかった。しかし、税務署は、A社が特定同族会社に該当することを見過ごしていたことが判明した。
それは、申告書等からA社が自己株式を所有していることが明らかなのに、税務署は、自己株式を除いたところで特定同族会社かどうかを判定し直すことをしなかったためだ。自己株式を発行済株式総数から除くと、上位3人の株主とこれらの親族が、発行済株式総数の54.5%及び51.6%を所有することになり、特定同族会社に該当するのに、税務署がこれを見落としたため、法人税額計1535万円が徴収不足となっていたものだ。