社会経済生産性本部はこのほど2008年版「産業人メンタルヘルス白書」を発表した。同白書は、「心の病」が増加傾向にあるなかで、産業界におけるメンタルヘルスへの取組みの促進を図るため、2001年から毎年発表しているもの。今年の調査研究では、メンタルヘルスの取組みは良い組織を作るという視点から組織に働きかけることが有効であることを明らかにしている。
同白書では、心の健康診断の通常質問項目に加えて、職場のメンタルヘルス向上に効果的と考えられる職場運営に関する質問項目「声かけ」、「あいさつ」、「方針目標」、「仕事範囲」、「進捗管理」、「自己成長」を加え、相関関係を個人と組織について求めた結果、個人の相関より組織の相関が明らかに高かった。この結果から、メンタルヘルスの取組みは、組織を対象に働きかけていくことが有効であることが示されたとみている。
「方針目標」、「声かけ」、「あいさつ」の3項目は、全社分析も個別企業4社ごとの分析でも例外なく組織サンプルの相関が有意に大きかった。このことから、組織のメンタルヘルス対策として有効とみている。組織存在の第一条件として「方針目標」の理解があり、「声かけ」という形で上司のマネジメントがあり、気持ちの良い「あいさつ」はコミュニケーションとして組織の存在を確認できる。
つまり、「始め」(方針目標)と「プロセス」(声かけ)と「結果」(あいさつ)がそろうことになる。「方針目標」の理解は、組織の目標が何であって、そのために一人ひとりが何をすればよいか、よく認識されていることを示し、「声かけ」は柔らかい情報収集、進捗管理、部下指導につながる。「あいさつ」は、あいさつが交わされている状況に在るというよりも、あいさつが交わされている職場に在るということがメンタルヘルスに寄与する。
社会経済生産性本部は、これらは、短期的な問題解決技法ではなく、リーダーの業務指向と経営理念を一致させ、職場独自の価値をつくり出す創発点であると理解すべきだと指摘。職場のリーダーがそのような意味における「方針目標」、「声かけ」、「あいさつ」の3つの方向で組織の構築に向かえば、メンタルヘルスの向上が期待されるとみている。
同白書についての概要は↓
http://activity.jpc-sed.or.jp/detail/mhr/activity000875/attached.pdf