経済社会のボーダレス化の進展に伴い、国際的な課税問題は企業のみならず個人の富裕層にも広がりを見せている。2005事務年度における所得税調査においては、今年6月までの1年間に海外取引を行っている者を対象に2177件の調査が行われ、総額373億円、1件平均1715万円にのぼる申告漏れ所得が把握された。この金額は、同期間における所得税の特別・一般調査での1件平均835万円をはるかに上回る。
海外取引調査2177件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の30%を占める647件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同28%の612件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同12%の258件となっている。
そのほか、上記の取引に該当しない、金銭授受や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係る取引の「その他」が30%の660件となっている。これらの海外取引調査の結果、1件あたりの申告漏れ所得が1715万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で1329万円、「輸出入」で965万円、「役務提供」で3524万円、「その他」で2081万円が、それぞれ把握されている。
調査事例をみると、会社役員Aのケースでは、Aは外資系銀行のプライベート部門を通じて海外での資産運用を行っていたことから、その資金出所を確認するため金融機関への反面調査が行われている。その結果、原資は、多額の外貨預金を円預金に交換したものであること、さらに外貨預金の取得について調査したところ、Aは、売却時に約8千万円の為替差益が生じていたが、意図的に申告から除外していたことが判明している。