サブプライム問題の発生を契機とした金融市場の不安定化や、原油を始めとする一次産品価格の高騰を背景に、わが国企業の景況感が悪化、特に中小企業の落込みが大きい。日本総研がこのほど発表した「中小企業活性化の課題」と題したレポートは、中小企業の景況悪化、大企業との業況格差拡大の要因を明らかにした上で、「海外」、「価格」、「人材」戦略の再構築が急務との方向性を示し、自助努力を支援する政策プランを提言した。
レポートは、大企業との業況格差拡大の背景として、中小企業の海外市場への対応の遅れが重要ファクターとしてあると指摘。輸出や海外生産比率が低い中小企業は、有望な海外市場での収益機会を逸している可能性があり、さらに、一般的に大企業に比べて価格転嫁のバーゲニング・パワーが弱い中小企業は、原材料費の高騰を価格転嫁できず、収益圧迫に拍車がかかっていると分析している。
このような状況のもとで中小企業が取り組むべき課題として、経営戦略の重点を「コストダウン・財務スリム化」から「付加価値創造力強化・販路拡大」へシフトすることを挙げている。そのためには、(1)グローバルな視点に基づく販売市場の拡大、(2)販売価格の維持・引上げに向けた差別化路線の明確化、(3)最終的に付加価値創造力を左右する人材育成への注力、の3点をポイントとして示した。
中小企業に自助努力が求められる一方で、レポートは、政府に対し、厳しい財政事情に配慮しつつ、メリハリの利いた政策資源の配分を求めた。具体的には、上記の3つの戦略を実行しやすい、(1)現地即戦力人材のあっ旋など海外市場開拓の支援、(2)高付加価値製品の開発など販売価格の維持・引上げに向けた取組みの支援、(3)人材投資の促進など人材育成の支援、のための事業環境の整備を要望している。