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経営関連情報 (2004/01/30)

高止まる中小企業の労働分配率

 労働分配率とは付加価値額(人件費+経常利益+減価償却+金融費用)に占める人件費の割合である。割合が低いほど企業収益が高いといえる。商工中金がこのほど公表した中小企業の動向(2004年冬号)では、労働分配率から中小企業の収益改善の動きを分析している。それによると、大企業に比べ、中小企業の企業収益の回復は遅いようだ。

 財務省の「法人企業統計季報」をもとに企業規模別の労働分配率をみると、中小企業はバブル崩壊以降上昇しており、景気が回復した2000年には一時低下したものの再び上昇し足元では高止まっている。一方大企業は、バブル崩壊以降、中小企業と同様な推移をたどるものの、足元では低下の兆しがうかがわれる。

 直近の水準も、大企業の57.8%に対し中小企業は77.3%である。労働分配率の低下は企業収益の回復を意味することから、中小企業の収益改善は大企業に比べ遅れていることが分かる。中小企業の人件費削減の動きをみるために、1人あたりの人件費をみると、中小企業のほうが大企業に比べより以前から低下しており、人件費の削減姿勢が強い。

 しかし、雇用者数の推移をみると、大企業は90年代に一貫して抑制していたのに対し、中小企業は足元の急減少を除くとおおむね増加基調で推移している。つまり、バブル崩壊以降、大企業は人員削減を常時行ってきたが、中小企業は人員削減より給与削減で対応しており、これが回復度合いの差となっているとも考えられる。

 足元の売上高経常利益率(売上高に占める経常利益の割合)は、大企業は90年水準にまで上昇しているものの、中小企業は90年時点の約6割にとどまっている。商工中金では、中小企業のさらなる収益回復には、人件費抑制に加え、生産性の向上が望まれるとしている。