「社長は御社の事業を愛していますか?」と問いかけるのは三菱総研研究員の大西規和氏のコラムである。自社の商品やサービスが好きというだけで業績を上げることはできないだろうが、社長が自社の商品やサービスが好きで愛着があると、それへのこだわりが強いため、経営判断の軸がぶれず、簡単に流行に飛びつくことはないだろうという。
また、事業再生のために、商品競争力の向上といった事業の本丸で成果を出すことに執着するから、組織改革・品質向上制度・成果型人事制度など「とりあえず形にできる」マネジメントに逃げて満足したりしない。社長が自社の製品を本当に好きだと、それが社員に伝わり、従業員との心の絆が築かれる。仮に、このような社長がリストラをする際でも、従業員が納得したうえでのリストラが可能だろう。
何より、こんな社長がいれば会社は楽しいはずだ、というのが大西氏の主張だ。この見方は必ずしも当っていないかもしれないが、大西氏は、自分の会社の事業に愛着を感じない社長に「自分に正直になろうよ。(愛着がないままでは)多分うまくいかないし、社員や株主に迷惑を帰るから」と言いたい。そして、「次の社長を選ぶ要素のひとつに、その会社の事業を愛していることを加えてみてね」と提案している。