偽造キャッシュカードによる預金引出しの被害が急増している。全国銀行協会のまとめでは、昨年4~6月に53件、金額で1億8800万円、7~9月に68件、2億7100万円だったものが、10~12月には186件、被害総額3億4800万円となった。同10~12月には盗難通帳による不正払出しも80件、1億6600万円報告されている。国税庁は、これらの被害は確定申告において雑損控除の対象となるとの見解を示している。
雑損控除は、災害や盗難などによって生じた損失やそれに関連した支出を基に一定額を所得控除するものだ。雑損控除額の計算は、1)(損失額-保険金などでの補てん金額)-総所得金額×10%、2){(損失額-保険金などでの補てん金額)のうち災害関連支出の金額}-5万円、のうちいずれか多い金額だ。その年の所得金額から控除しきれない場合は、3年間を限度に翌年以降に繰り越すことができる。
偽造キャッシュカードによる預金引出しなどによる被害を受けた場合、確定申告時に被害届出証明書を添付すれば、雑損控除の適用を受けることができる。ここで問題なのは、偽造キャッシュカードによる被害の場合は、ATM(現金自動支払機)の管理銀行が被害者とみなされるため、その銀行が警察に被害届出を提出し、被害届出証明書を受け取っていることだ。
つまり、被害者である預金者が直接被害届出証明書の請求をできないため時間がかかる。全国銀行協会では、警察が発行する被害届出証明書が被害を受けた預金者により早く渡せるようにルールづくりを行って対応しているが、どうしても時間がかかることは否めない。このため、昨年被害を受けた預金者が雑損控除の適用を受ける場合は、15日の申告期限に間に合わせるためには早めの対応が必要になろう。