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経営関連情報 (2004/03/19)

加速する食品産業の農業参入

 農業生産に参入する食品産業(加工、外食・中食流通業)が増えている。2002年農業白書によれば、食品製造業の39%が国内農業者と提携している。参入の目的はこれまでの経営効率化から食品の安全性や環境問題に変わり、フードシステムの川上(生産)から川中(加工)、川下(流通・小売)の統合が始まっている。日本経済研究センターの研究員リポート(金子弘道氏)を紹介する。

 リポートによると、最近の農業参入の特徴は目的が大きく変化したことだという。例えば、外食企業が有機野菜など食材の品質へのこだわりを消費者にアピールするために生産者と提携する。食品リサイクル法で食品廃棄物処理を義務づけられた食品企業が農家と提携し、食品廃棄物を引き取った農家がたい肥に加工し、それを使って生産した農産物を企業が販売するといった資源循環システムを構築している。

 いずれも川上から川中、川下までのフードシステムを統合して農業資源を活用しようという戦略だ。栽培契約から一歩進めて、直営農場の経営に乗り出す企業も目立つ。「畑から店舗」まで安全なシステムを消費者に示して安全な食材をアピールする戦略だ。問題点も少なくないが、農業参入の効果は大きい。参入を契機に地域内に新たなビジネスが誕生しているからだ。

 例えば、糞尿処理のために畜産農家と連携した食品企業が、新たに農業生産法人を設立、周辺農家をネットワーク化して自社製のたい肥を使った野菜栽培をはじめるといった事例が目立ってきた。一方、加工や流通に進出する農業生産法人も増えており、川上―川中―川下の統合の動きは農業側からも起きている。流通や加工部門に進出することで、農産物の付加価値を高めようというねらいである。

 リポートは「問題は、通常の農業生産法人に比べ、参入企業の農政上の位置づけが不明確なことだ」という。特に、構造改革特区に進出した企業は補助金などの利用が難しい。原因は、農水省がこれまで農政と食品産業行政を事実上切り離してきたことにある。農業と食品産業など政策の一体化が必要になっている、とリポートは指摘している。