近年の所得税調査の特徴は、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。2008事務年度の調査でも、調査件数では約14%の実地調査で、申告漏れ所得金額全体の約7割を把握しており、近年は実地調査を中心とした効率的な所得税調査が続いている。
国税庁が21日に公表した2008事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前年度に比べ11.4%減の73万3千件に対して行われ、うち66.3%にあたる48万6千件から前年度より5.0%減の9155億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は8.0%減の1216億円だった。1件あたりの平均では125万円の申告漏れに対し17万円を追徴している。
実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度比横ばいの6万件だったが、うち87.9%にあたる5万3千件から同8.2%減の総額5349億円の申告漏れ所得を見つけ、1005億円を追徴。件数では全体の8.2%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体の約6割を占めた。調査1件あたりの申告漏れは、887万円と、全体の平均125万円を大きく上回る。
また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、調査件数全体の6.0%の4万4千件行われ、うち70.5%の3万1千件から958億円の申告漏れを見つけ、61億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは216万円。一方、簡易な接触は、62万8千件行われ、うち64.0%の40万2千件から2848億円の申告漏れを見つけ150億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは45万円だった。
このように、実地調査では、全体の1割強の調査件数で申告漏れ全体の約7割を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施する一方、短期間で申告漏れ所得等の把握を行う効率的・効果的な所得税調査が実施されている。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得高額業種は、「貸金業」が4842万円でトップ、「キャバレー」(2725万円)、「風俗業」(2520万円)がワースト3。