国税庁はこのほど、大工、左官、とび等が受ける報酬に係る所得税の取扱いを示した通達を見直すことを明らかにした。1953(昭和28)年に規定された同通達を廃止し、新たな取扱いを定める。現行の取扱いは、個々の収入の性質に応じ請負契約に基づくものは事業所得とし、雇用契約に基づくものは給与所得とする基本に問題はないが、特殊なのはその区分が明らかでない者が受ける報酬の取扱いである。
それは、常時使用人その他の従業員がおらず、また職人として一定の親方に所属もしていないいわゆる一人親方の受ける報酬については、その年収(報酬)が450万円以下であるときは、原則として、その年収額にその金額の多寡に応じて、一定割合を乗じた金額を給与所得とし、その残額を事業所得とするものだ。例えば、年収が400万円の場合は、10%の40万円が給与所得、残りの360万円が事業所得とされる。
所得税法に定める一般的な給与と報酬の所得区分では、区分が明らかでないときは一定事項を総合勘案して給与所得か報酬(事業所得または雑所得)かを判定するが、これまで一人親方の場合は、一般的には給与所得とされる他の親方との指揮・命令の元に働いたケースでも、年収に応じた一定割合を機械的に事業所得とされてきたわけだ。新たな取扱いは、その区分が明らかでないときは、以下の事項を総合勘案して判定するものとされる。
(1)他人が代替して業務を遂行又は役務を提供することが認められるかどうか、(2)報酬の支払者から作業時間を指定されるなど時間的な拘束を受けるかどうか、(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督を受けるかどうか、(4)まだ引き渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払いを請求できるかどうか。
さらに、(5)材料又は用具等(釘材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く)を報酬の支払者から供与されているかどうか、などが判定要素として示されている。これらの事項を総合勘案し、個々の実情に即して給与所得であるか事業所得であるかを判定するわけだから、所得税法における一般的な給与と報酬の所得区分と同様の明確な取扱いとなるといえる。