経 営 関 連 情 報 |
2002年04月08日-003
国内産業構造の高付加価値化が「空洞化」回避のカギ
生産の海外シフトによる国内産業の「空洞化」が懸念されているが、それを回避するカギは産業構造を高付加価値化できる体制を早期に実現できるかどうかにかかっている、との研究レポートを富士総合研究所が公表した。
対外直接投資の拡大等によって、生産の海外シフトが進んでおり、アジアの現地法人の規模(従業員数)は、過去10年間でASEAN4は4倍、中国は約24倍に増加した。中国は工業製品の輸入相手国でみても、2001年には米国に代わり最大となるまでその地位が高まっており、日本の輸入を構造的に増加させる主因となっている。このため、「国内産業空洞化」懸念や「中国脅威論」が台頭している。
ただ、中国との貿易収支を品目別にみると、輸入は衣服や履物、家電等の低付加価値品が多く、一般機械や電子部品等の高付加価値品の輸出は中国の生産力拡大に伴って図化している。中国からの輸入が増加し、その分だけ国内生産が減少を余儀なくされるという見方は、マクロ的な観点で現状を判断する限り、片側だけに着目した議論といえる。現段階では、日中間で国際分業が成り立っていると考えられる。
中国を始めとする途上国から今後さらに輸入が増加すると、短期的には国内生産が代替され、雇用者数の減少を招く恐れはある。一定の条件下で、こうした輸入増加のインパクトを試算したところ、足下の輸入急増が2000~2005年まで続いたケースを考えると、国内生産に対して▲2.4%、国内雇用に対しては▲2.7%(▲183万人)の圧力がかかるとの結果が得られた。
しかし、真に懸念しなければならないのは、高付加価値産業の生産、研究開発がともに海外へ流出することだ。国内の製造技術が低下すれば、国内経済の成長力低下と大幅な円安を招き、イノベーションが停滞し、長期的に成長力が低下する「空洞化」が生じる。これを防ぐには、研究開発支援方法の改善や民間の自助努力によって、高付加価値な生産が国内で行われるようにするしかない。幸い、今後数年間の貿易のインパクトは限られていると予測される。長期的に懸念される「空洞化」を回避できるか否かは、「産業構造を高付加価値化できる体制を早期に実現できるかどうかにかかっている」というのが富士総研の研究レポートの結論である。
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