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経営関連情報 (2007/11/12)

最低賃金改定で2割弱の企業が給与見直し

 今年10月に最低賃金が改定された。今年度の改定では、最低賃金での収入が生活保護費を下回る逆転現象なども議論され、近年にない引上げ幅となったため、人件費上昇による企業収益の悪化が懸念される。帝国データバンクが実施した「最低賃金改定に対する企業の動向調査」結果(有効回答数9891社)によると、最低賃金改定後の給与体系について、「見直した(検討している)」とした企業は全体の16.2%(1607社)となった。

 給与体系を見直した企業を業界別にみると、「農・林・水産」(30.8%)、「小売」(26.1%)、「運輸・倉庫」(19.4%)、「製造」(18.2%)、「サービス」(17.5%)などで割合が高くなっているが、「金融」(7.4%)や「不動産」(8.3%)では一ケタ台になるなど、業界によって対応が分かれた。給与体系の見直しについて企業からは、「売上高人件費率が高い業界は労務倒産しかねない」(運輸)といった声が聞かれた。

 給与体系を見直した理由については、「最低賃金では採用していないが、他者の引上げに合わせて人材確保のため」とした企業が76.4%を占め、「最低賃金で採用しているため、給与体系を見直す」とした企業(16.7%)を大きく上回った。最低賃金での採用の有無にかかわらず人事評価も含めた給与体系の見直しが行われており、雇用環境のひっ迫で人手不足感が強まるなか、最低賃金改定は人材確保にも影響を与えている。

 給与体系見直しによる企業への影響については、「総人件費が増加するため、経営圧迫要因になる」とした企業が「見直した(検討している)」企業のうちの60.0%に達した。相対的に賃金の低い業界や非正規社員比率が高い業界で経営圧迫に対する懸念が広がっている。また、規模間格差が顕在化しているなか、最低賃金の引上げは総人件費の増加を通じて中小企業の経営に圧迫感を与え、一層の規模間格差の拡大が懸念される。

 従業員採用時の最低時給は、全体平均では約902円となり、改定後の最低賃金の全体平均687円を約215円上回った。都道府県別で比べると、改定された最低賃金と採用時の平均時給の差額が最大の「東京都」(約1033円、+294円)から最小の「青森県」(約732円、+113円)まで、すべての都道府県で100円以上最低賃金を上回った。実態との間で乖離がみられ、最低保証としての最低賃金の役割が改めて問われる結果となった。

 同動向調査結果の詳細は↓
 http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/keiki_w0710.pdf