東京商工リサーチがこのほど発表した病院・医院の倒産状況によると、2009年1月~10月の病院・医院の倒産件数は前年同期(28件)に比べ倍増の56件に達した。年次ベースでは、すでに10月時点で2007年(52件)を上回り平成最多を更新している。また、負債総額は、前年同期比128.7%増の250億6000万円にのぼった。これは、負債10億円以上の大型倒産が同倍増の6件発生したことが要因となっている。
原因別では、「業績不振」が前年同期比150.0%増の25件でもっとも多く、次いで「放漫経営」、「既往のシワ寄せ」、「設備投資過大」が各8件で続く。形態別では、「破産」が同66.6%増の35件でもっとも多く、次いで「民事再生法」が同250.0%増の14件、「銀行取引停止処分」が同100.0%増の6件だった。都道府県別では、「東京」の11件を筆頭に、「大阪」10件、「兵庫」6件、「埼玉」4件と続く。
また、地区別では、9地区のうち7地区で前年同期を上回った。「近畿」が前年同期比10件増(9→19件)、「関東」が同8件増(11→19件)、「東北」が同3件増(0→3件)、「中部」が同3件増(0→3件)、「中国」が同2件増(0→2件)、「九州」が同1件増(5→6件)、「北海道」が同1件増(2→3件)の順。こほのか「北陸」が前年同期と同数の1件、「四国」は発生なし(0→0件)だった。
病院・医院倒産の増加背景には、診療報酬の引下げや過大な設備投資、医師不足などがある。これまでの倒産原因別では、放漫経営と業績不振が肩を並べてきたが、2009年は業績不振の増加が目立つ。前回2008年度の診療報酬改定は、5年間で1.1兆円の社会保障費を削減する政府の厳しい医療費抑制方針に沿って、診療報酬本体部分は8年ぶりのプラス改定となったものの、薬価が低下し全体としては4回連続のマイナス改定だった。
関係者の間では病院経営の安定のためには本体部分の更なるアップを望む声が大きい。また、地方の医師不足は深刻で、患者減少を招き、医師の確保が人件費増につながって業績不振に拍車をかける悪循環を引き起こしている。このほか、リーマン・ショック以降の外来患者の受診抑制の広がりも見逃せない。こうしたことから、病院・医院の経営は、さまざまな医療改革が進むなかで、当面は厳しい状況が続くとみられる。