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経営関連情報 (2004/03/08)

フリーターが社会全体に及ぼす経済的損失

 1990年代半ば以降、就職難や若者の意識の変化を背景にフリーターが急増。2001年時点で417万人に達し、若者の5人に1人がフリーターといわれ、平均的に所得が低いフリーターの増加が社会全体に及ぼす影響は無視できないものになってきている。UFJ総研が4日に発表した「フリーター人口の長期予測とその経済的影響の試算」では、フリーターが正社員になれないことによって生じている社会全体の経済的損失を試算している。

 フリーターは、単純作業が多いパート・アルバイトなど専門能力をあまり必要としない仕事に就いているため、賃金水準が低く、厚生労働省の賃金構造統計基本調査によると、15~34歳のパート労働者の平均年収が約105.8万円で、15~34歳の正社員の平均年収約387.4万円に比べ、約281.6万円少なく、27%と約3割弱の年収でしかない。

 また、生涯賃金では、正社員の2億1500万円(高卒なら19~60歳までの生涯賃金)に対し、フリーターは約5200万円と、生涯賃金格差は約4.2倍、約1億6000万円の差がつくことになる。これらの賃金格差は、個々人の所得に応じて徴収される納税額の格差をもたらす。試算結果によると、住民税・所得税・消費税を合わせた年間の平均納税額は、フリーターの約6万8000円に対し、正社員は約33万円となった。

 賃金格差はさらに可処分所得の差となって消費の格差をもたらす。試算結果では、フリーターの年間消費支出が約103.9万円であるのに対し、正社員は約282.9万円となる。また、年金受給額も試算して、正社員が月額14万6000円(夫婦では21万2000円)、フリーターが月額6万6000円(同13万2000円)としているが、フリーターが40年間保険料を納付したと仮定した場合であることはいうまでもない。

 この結果、社会全体に及ぼす経済的損失は、税収が1.2兆円の減少、消費額が8.8兆円の減少、貯蓄が3.8兆円の減少となった。このうち、GDPに直接影響を与えるのは消費だが、フリーターが正社員として働けるなら可能であった消費をあきらめることで、名目GDPが1.7%押し下げられたとしている。ただ現在は、親からの所得移転などがあるため、こうした消費損失によるマイナス効果は顕在化していないが、今後もフリーターの増加が続くことになれば、日本経済の先行きにも大きな影響を与えることになる。