少子高齢化・人口減少社会における中小企業の課題のひとつは「事業承継」である。中小企業庁がこのほど公表した2006年版中小企業白書では、その対応の方向性を分析し、後継者難に悩む中小企業経営者の姿が浮き彫りとなっている。経営者の平均年齢は2004年時点で58.5歳。1950年代半ばから1970年代初頭の高度成長期に大量に創業した世代が現在一斉に引退時期を迎えている。
55歳以上の経営者が引退したいと考えている年齢の平均は65.1歳となっている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「事業承継に関するアンケート調査」(2005年12月)によると、55歳以上の中小企業経営者のうち、96.4%は「事業を自分の後も引き継がせたい」と考えているが、「後継者が決まっていない」企業が49.4%と半数にのぼり、12.8%が「M&A等による事業承継を検討」、4.8%が「廃業を検討」している。
また同調査において、「自分の代で廃業したい」との回答が3.6%だった。その理由は、「市場の先行きが不透明」(40.7%)や「会社の経営状況が厳しい」(27.9%)だったが、「適切な後継者が見当たらない」との理由が24.4%あった。このことから、年間廃業者29万社(2001~2004年平均)のうち少なくとも約25%、7万社強の企業は事業承継を理由に廃業し、それによって20~35万人の雇用機会が失われている推測している。
さらに上記調査によると、他社に事業承継したい経営者(約30%)でも「誰にも相談していない」経営者は、55歳以上で過半数(53.6%)にのぼり、その理由として33.1%が「深く検討していない」としている。一方、後継者が決まっている場合、その7割以上が子息だが、その準備は後継者教育などが主であり、相続対策などに取り組んでいる企業は少ない。このように、全般的に事業承継への取組みは遅れがちのようだ。