いわゆるマルサと呼ばれる査察は、脱税でも特に大口・悪質なものは強制調査され検察当局に告発されて刑事罰の対象となる。近年は脱税額も小粒化傾向が続いているが、国税庁が19日に公表した今年3月までの1年間の2005年度査察白書によると、査察で摘発した脱税総額は前年度を8億円下回る274億円と小粒化がさらに鮮明となった。しかし、告発率は70%と高水準が続いている。
大口・悪質として検察庁に告発された件数は150件だが、2000年度以降最多だった前年度より2件少ないに過ぎない。2005年度1年間に全国の国税局が査察に着手した件数は217件(前年度210件)、継続事案を含む214件(同213件)を処理し、うち70.1%(同71.4%)にあたる150件を検察庁に告発した。つまり、査察の対象になると、約7割は実刑判決を含む刑事罰の対象となるおそれがあるということになる。
告発分1件あたりの脱税額は前年度より900万円少ない1億5300万円で、ここ5年間でみるともっとも少ない数字となっている。告発事件のうち、脱税額が3億円以上のものは前年度より1件少ない16件、5億円以上では同1件少ない5件と、大口事案が減少している。この結果、2005年度の脱税総額274億円は、ピークの1988年度(714億円)に比べ4割弱にまで減少している。
告発件数の多かった業種(5件以上)は、「キャバレー・飲食店」(11件)、「不動産業」(9件)、床下点検をして床下換気扇や耐震補強具の取付販売を行う点検商法関連が中心の「機械器具小売業」(8件)、「パチンコ」(〃)の順。脱税の手口では、キャバレー・飲食店では売上除外、不動産、パチンコでは売上除外や架空経費の計上のほか、人材派遣業では人件費を外注費に科目仮装することによる消費税の脱税が多くみられたという。
また、脱税で得た現金・割引債などや脱税工作に使った印鑑・金庫の鍵などの隠し場所は、プレハブ倉庫に置かれた流し台の収納スペースに、現金をスポーツバッグに入れて隠す、自宅書斎の本棚に並べられた書籍の後ろに、現金や定期預金を隠す、自宅台所の釣り戸棚内の土鍋に、預金通帳や定期預金証書を隠していたケースや、親族の家に預けた手提げ袋のなかに預金通帳や割引債券を隠していた事例も報告されている。