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老人福祉・介護事業の倒産は過去最多ペースで推移

経営関連情報 - 2008年07月23日

 東京商工リサーチがこのほど発表した老人福祉・介護事業の倒産状況によると、2008年上半期(1月~6月)の倒産件数は、前年同期比13.0%(3件)増の26件となった。最近の老人福祉・介護事業倒産は、年間ベースで2000年3件、2001年3件、2002年8件、2003年4件、2004年11件、2005年15件、2006年23件、2007年35件と推移。2008年は、介護保険法が施行された2000年以降では過去最多ペースで推移している。

 さらに、負債総額は前年同期比275.0%増の118億700万円にのぼり、すでに上半期時点で2006年の114億7900万円を上回り、2000年以降では過去最大規模に達している。倒産の内訳をみると、2008年上半期の施設系の老人福祉・介護事業が前年同期比3件増の17件となり、2000年以降で年間で最多だった2007年(17件)に上半期時点ですでに並び、今後の動向が注目される。訪問介護事業は前年同期と同数の9件だった。

 一方、訪問介護事業大手の介護報酬の不正請求を契機に、不正再発防止を目的とした「改正介護保険法」が今年5月に成立。さらに、介護事業での人手不足が深刻化しているなかで、2009年4月までに介護従事者の賃金引上げを検討すること等を定めた「介護従事者処遇改善法」も議員立法で成立した。しかし、待遇改善の要となる介護報酬の引上げは、税金と保険料の上昇、利用者負担の増加に直結するため一筋縄ではいかない現状がある。

 介護保険制度は、2006年の法改正によって給付抑制のため事業者へ支払う報酬単価が引き下げられた。これに伴い、訪問介護事業者や老人ホームなど施設介護事業者の経営は大きな影響を受けた。訪問介護事業所数は毎年増加を続けてきたが、今年3月末では減少に転じており、倒産集計にはカウントされない事業所の閉鎖・廃業、統廃合も増えている。このため、来年度の介護報酬改定を踏まえて今後の動向が注目されている。