就職しながらも、その仕事や働くことに意義を見出せずにやる気を失っていく社員のことを“社内ニート”と呼ぶそうである。せっかく採用した社員のやる気が下がり“社内ニート”化しては、本人はもとより、会社にとっても大きな損失となる。そこで、心理学・教育心理学などの「動機付け」理論をもとに、会社が社員のやる気を高める施策を提示したのは、日本総研の荒木淳子氏のコラムである。
コラムは、働くためのやる気の動機付けとしては、報酬など何らかの他の欲求を満たすための手段として、ある行動をとろうとする「外発的動機付け」よりも、やっていること自体のおもしろさややりがいを感じる「内発的動機付け」のほうが重要だと考える。さらに、「内発的動機付け」は主観的であるがゆえに、それを高めることは難しいものの、これまでの研究を踏まえ、その高める要因を提示している。
まず、自分が選択しているという「自己決定感」があるほど人の内発的動機付けは強まり、逆に自分ではどうすることもできない状況に置かれるほど人はやる気を失うという、心理学者デシの説を示す。次に、自分はある行動を取れるはずだという自信(効力期待)があるときに人間のやる気は高まるというバンデュラの分析を示す。個人によって知覚された効力期待を「自己効力」と呼び、この高低が動機付けに大きく影響するという。
また、自分の能力は自分で変えられるという能力変化観を持つ人は、自分の有能さを他者に示すことよりも、自分の能力をどれぐらい自分で高めることができるかという「ラーニング目標」を持つことが多いというドゥエックの研究を示す。ラーニング目標を持つことにより、目標達成のプロセスに関心を持ち、他者の評価や成功・失敗にかかわりなく、目標達成に向けて持続的に努力していこうとする姿勢につながるという。
以上のことから、人間の内発的動機付けを高めるためには、「自己決定感」、「自己効力感」、「ラーニング目標」を持つこと、などが重要だとしている。これらの感覚や目標は、生得的というより、本人を取り巻く環境や成功体験、他者からの励ましなどによって変わっていくものだとして、コラムは、社内ニートがなぜ生まれるのか、いま一度、自社のマネジメントについて考える必要性を提起している。
同コラムの全文は↓
http://www.jri.co.jp/consul/column/data/PDF/column378-araki.pdf