消費税法において、出張旅費や宿泊費、日当は、事業者が事業遂行のために必要な費用を旅行をした者を通じて支出しているものと判断し、その旅行に通常必要であると認められる金額は、課税仕入れに係る支払対価に該当するものとして取り扱われている。ところで、企業では、従業員のうち単身赴任者に対し、単身赴任手当として毎月一定額を支給することや、帰宅するための旅費として月・年毎に支給することがある。
こうした単身赴任者に支給する金銭は、出張旅費等と違って、仕入税額控除の対象とはならないので注意が必要だ。それは、例えば単身赴任手当の場合、家族と離れて生活することに伴い、そうでない従業員と比べ生活費などの負担が大きくなることに配慮した、その単身赴任者に対する給与等の補てんと考えられ、所得税上も非課税所得とはならず、給与所得として所得税額を源泉徴収すべきものとされていることによる。
したがって、その事業者における単身赴任手当の支払は、給与等を対価とする役務の提供に対する支払であることから、消費税の課税仕入れに係る支払対価には該当しないことになる。
また、単身赴任者が帰宅するための旅費として月または年を単位として支給する場合であっても、職務の遂行に必要な旅行の費用として支給されるものとは認められず、その旅費は給与に該当するものであることからすると、単身赴任手当と同様の性格のものと考えられることから、これを支払う事業者においては、課税仕入れに係る支払対価に該当しないことになる。