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経営関連情報 (2007/11/26)

弱含む中小企業の資金需要の背景~中小公庫総研

 景気回復に伴い、中小企業の収益性は改善し、設備投資も増加基調を続けてきたが、中小企業の資金需要については、いまひとつ盛り上がりに欠けるとの声が聞こえる。そうした中小企業の資金需要の背景を分析した中小公庫総研のレポートでは、1)日銀統計から、特殊要因を除いた実勢の中小企業向け貸出は弱い動き、2)法人企業統計から、財務健全化等の動きが、総資金需要の下押し要因となっていることが確認された。

 日銀統計から中小企業向け貸出をみると、約10年ぶりにプラスに転じた06年1~3月期以降、06年は3%台、07年は1%未満の弱い伸びだが、依然として前年比でのプラス基調をたどっている。しかしレポートは、同統計が中小企業を形式的に区分している点を注視し、実質大企業が多く含まれる金融・保険業と運輸業を除くと、貸出の伸び幅は大きく縮小し、ここ最近は前年比0.5%増前後の非常に緩やかな伸びとなると指摘している。

 次に「法人企業統計年報」(財務省)から、中小企業の資金需要動向をみると、地価の好転などから遊休物件を中心に土地の処分を進めていること、株式市場等の市場環境の好転などから、長期滞留していた有価証券類の売却、処分を進め、財政の健全化を図ってきたことなどを推察。また、中小企業の総資金需要はバブル期の5分の1程度と低水準にとどまり、外部調達については短期借入金を中心に削減を続けているとみている。

 このように、中小企業の資金需要の弱含みは、中小企業の活動の停滞を意味するのではなく、なるべく自助努力により、様々な環境に耐えうるための体力づくりに励んできた結果と捉えている。今後については、有利子負債とキャッシュフローとの比率はバブル期以前の水準以下まで低下しているなど、負債の整理が相当進んでいることから、新たな資金需要が発生すれば、借入金等の外部調達に依存する割合が高まることも予想する。

 一方で、今後の価格動向次第だが、足元の傾向である土地や積み増された有価証券の処分が、引き続き資金需要の下押し要因となるともみている。レポートは、足元では原材料価格の値上がりなど収益の下押し要因が台頭し、経済の先行きについては不透明感も漂いつつあるなかで、中小企業においては、一層バランスのとれた資金の運用と調達が求められるところだと結んでいる。

 同レポートの全文は↓
 http://www.jasme.go.jp/jpn/result/report/c3_0794.pdf