雇用情勢は改善傾向を強めており、長期にわたり減少が続いていた正社員も2006年1~3月期以降は増加している。しかし、パートタイム労働者、派遣社員などの非正社員がそれを上回るペースで増えているため、非正規雇用比率は上昇を続けている。こうした雇用の非正規化には労働者側の要因もあり、非正規雇用比率の上昇には歯止めがかかりにくいと予測するのは、ニッセイ基礎研究所のレポートである。
同レポートによると、雇用の非正規化が続いている一因として、正社員に比べ賃金水準が低く、景気変動に応じて雇用調整が行いやすい非正規雇用の活用を積極的に進めてきた90年代後半以降の企業側の経営施策を挙げている。しかし、ここにきて企業は、景気回復の長期化に伴い人手不足感が強まるなか、新卒採用を大きく増やしていることからも分かるように、正社員の採用にも積極的な姿勢を見せ始めている。
一方、労働者側が非正規雇用を志向する傾向が強まっている可能性を指摘する。「就業形態の多様化に関する総合実態調査(2003年)」によると、非正社員を選んだ理由として、「正社員として働ける会社がなかったから」が25.8%を占める一方で、「自分の都合のよい時間に働けるから」(30.9%)や「通勤時間が短いから」(28.1%)、「勤務時間や労働日数が短いから」(23.2%)など、自ら非正規雇用を選択した回答も多かった。
この調査は、失業率が過去最悪の5.5%に達する雇用情勢がもっとも厳しい時期のものなので、足元では自発的な非正規雇用選択者はさらに増えている可能性がある。このように、最近の非正規雇用比率の上昇には、企業側の要因に加えて、ライフスタイルや就業に対する価値観の多様化といった労働者側の要因も大きく影響しているとみられ、労働需給の改善が続いても、非正規雇用比率の上昇には歯止めがかかりにくいと予測している。
同レポートの全文は↓
http://www.nli-research.co.jp/report/econo_letter/2007/we070921.pdf