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税務関連情報 (2005/08/12)

「使途秘匿金」と「使途不明金」には天と地の差

 企業活動には、たとえ合法的な範囲内のこととしても杓子定規にはいかないことが少なくない。例えば、取引でお世話になった個人にリベートを渡したことについて、個人所得課税されないように支出先を明らかにしない場合がある。税務上、「使途が明らかでないもの、または法人が使途を明らかにしないもの」は、使途不明金として損金算入できないこととされている。もし企業が赤字申告であれば、痛くも痒くもない。

 ところが、1990年代の一連のゼネコン汚職事件が発端となって、使途不明金はヤミ献金や贈賄の温床との批判が高まり、1994(平成6)年度税制改正で導入されたのが「使途秘匿金」課税である。使途秘匿金と認定された支出に対しては、通常の法人税率30%に加え40%が追加課税され、住民税率まで含めると、追加課税後の実効税率は90%近くまでなる。まさに、不明朗支出の抑制を狙った制裁的な重課課税である。

 使途不明金は、処理科目のいかんを問わず「支出」に対して課税されることから、赤字法人であっても課税される厳しい取扱いとなっている。また、損金経理したものに限らないため、仮払金や貸付金などとして資産計上した場合でも安心はできない。税法上、使途秘匿金は、「相当の理由がなくその支出先や支出目的等を帳簿上に記載していないもの」とされている。

 使途秘匿金と使途不明金では課税上、天と地ほどの差があるわけだが、企業が前もって「使途は明らかにできない」と自己申告すれば税務署が使途不明金としてくれるかというと、そうはいかない。企業が自ら支出しておいて使途が不明とは考えづらいため、使途が明らかでない場合は、使途秘匿金と認定される可能性が高いと考えて間違いない。それなりの理由があっても、不明朗支出には覚悟が必要ということになる。