税 務 関 連 情 報 |
2002年06月24日-002
税制改革が与える個人消費への悪影響に注意!
政府税制改革の基本方針は、所得税の各種控除の廃止・圧縮、外形標準課税導入による法人実効税率の引下げ、研究開発投資減税、消費税の「益税」解消、相続税最高税率の引下げや贈与税の一体化による生前贈与の促進などが柱となる。これらの一連の基本方針が、GDPに大きな影響を及ぼす民間個人消費に悪影響を与えては日本経済の活性化などおぼつかない。そんな懸念を示したのは、三菱総合研究所主任研究員の伊藤彰一氏のレポートである。
伊藤氏によると、増税となるのは所得控除の圧縮による扶養家族の多い世帯や、年商3,000万円未満の自営業者など消費性向の高い層だが、増税で可処分所得が減少すると、その分個人消費は減少しやすい。一方、相続税の最高税率の引下げで減税となる資産家層は、増税となる世帯数よりずっと少ない上、おそらく消費性向も低く、減税で増えた可処分所得は消費よりも貯蓄に回ってしまう公算が大きいと指摘。増税世帯で減った消費が減税世帯でカバーできなければ、個人消費の減少を誘発、ひいては景気の低迷やデフレの促進にさえなりかねないとの考えを示している。
また、法人実効税率の引下げや研究開発投資の優遇が、落込みが激しい企業設備投資を誘発するか疑わしいという。というのも、設備投資が増えるには今後期待される需要の増加が不可欠だが、一部の製造業など外需型の産業にとっては研究開発投資の優遇などは確かにプラス要因だが、サービス業などの内需型の産業にとっては、税制での優遇よりも、個人消費の増加がカギとなるからだ。つまり、税制改正が個人消費の減少を誘発してしまえば、企業の設備投資もあまり上向かないとの懸念を示している。
したがって、基本方針に沿った税制改革論議を進めていく上で、このような懸念が生じない配慮を求め、間違っても、税の公平性とか広く薄く負担すべきだといった“あるべき”論からの改革は行うべきではないというのが伊藤氏の主張である。
【ホームへ戻る】