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税務関連情報 (2007/07/04)

自社株贈与の精算課税の特例に「使いづらい」の声

 2007年度税制改正において、中小企業の事業承継円滑化を目的に相続時精算課税制度を拡充した特定非上場株式贈与の特例が創設されたが、実務家の間からは「使いづらい」という声が聞こえている。自社株贈与の特例は、一定の要件を満たすときに限り、60歳以上の親からの贈与について相続時精算課税制度の適用を選択することができ、この場合の特別控除は500万円を加算し3000万円とするもの。

 この特例は、自社株を後継者に生前贈与することで円滑な事業承継を税制面から支援しようというものだが、「使いづらい」との声の背景には、要件の難しさがあるようだ。実務家は、そのひとつとして、「特例選択年の翌年3月15日から4年経過時点で、受贈者である子が、代表者かつ株式等50%超保有、50%超の議決権を有することのすべてを満たすこと、という要件を指摘している。

 つまり、自社株の贈与時点では親子間で事業承継の話がスムーズにまとまっていることから特例の適用を選択していても、上記の4年の歳月の間には親子間に何らかの確執が生じ、話がご破算となり要件をクリアーできない事態も起こりうる。例えば、4年経過時点でその会社の代表者として経営に従事していなければ、特例の適用が認められなくなり、修正申告する必要がある。

 ほかにも、特例の適用を受けるにあたっては、あらかじめ、贈与者である親の推定相続人のすべて(行方不明者を除く)の同意を得ていることが必要だが、これもハードルの一つとの指摘がある。この特例は2007年1月から2008年12月末までの贈与と期間が限定されているため、2年間で後継者に50%超の議決権のある株式を所有させるだけでなく、将来起こりうる事態も想定した計画的なスキームが必要というわけだ。