法人減税を求める声が強い。法人減税は、法人税の限界税率(所得が増加したとき、その増加分に適用される税率)と平均税率(企業収益に対する法人納税額の割合)を引き下げて、企業行動に好影響を及ぼすが、法人減税はその手法によって限界税率と平均税率への影響が異なり、同じ額の減税を行っても企業行動への影響が異なる。そこで、法人減税として何を選択すべきかを探ったのは、みずほ総研のレポートだ。
レポートは、まず法人減税の手段は法人税率引下げに限られるわけではないことに注意を促している。企業の設備投資を促すという目的からは、投資減税によって限界税率を引き下げるほうが、法人税率引下げよりも効率的に減税を行うことができる。一方で、国際的な資本移動の対応として国内への資本誘致を目的とするならば、法人税率引下げによる平均税率の引下げが必要だとしている。
国際比較データによると、日本の法人税は限界税率(28%)がOECD諸国のなかで2番目に高く、平均税率(16.4%)はOECD諸国のほぼ平均に位置する。こうした事情を踏まえて限界税率引下げを狙うのであれば、投資減税が効率的な減税手段となる。現行税制における投資減税(研究開発減税、設備投資減税等)はいずれも来年3月末に期限切れとなることから、これらの延長または拡充が適当な減税手段との考えを示している。
一方で、国内企業立地の増加を目的とするならば、投資減税の延長よりも法人税率引下げが延長される。この場合には、投資減税の廃止に伴う投資インセンティブの低下に加え、法人税率引下げは、新しい資本のみならず古い資本に対しても減税を行うことになるから、既存株主に対して“たなぼた的利益”をもたらす効果があることに注意を払わなければならないとしている。
レポートは、法人税率引下げは個人増税によって賄われる必要があり、そうした財源の手当てなしに投資減税効果の小さい法人税率引下げを実施することは適切ではないと指摘。現在の経済・財政状況を考慮すると、減税による財政負担をできるだけ抑えつつ、企業の投資活動を支援する目的としては、現行の投資減税の延長・拡充が望ましいとの結論を示している。
同レポートの全文は↓
http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/policy-insight/MSI070905.pdf