総務省の「国勢調査報告」によると、減少傾向にあった東京都特別区(23区)の人口増加率が1995年ごろを境に上昇に転じた。1995~2000年にかけては2.1%増、2000~2005年にかけては4.3%増と上昇した。こうした首都圏における「都心回帰」現象は、ライフステージの変化を契機に、住宅取得・借換期を迎える若年世代において顕著との現状を分析するのは三菱総研のレポートである。
レポートはまず、「東京都住民基本台帳人口移動報告」を基に、特別区の人口の増加は、他県からの転入者増よりも、転出者の減少による影響が大きいと分析する。こうした都心回帰の影響を受けて急激に人口が増加しているのは、特別区のなかでも千代田・中央・港の都心3区である。2000~2005年の都心3区の人口増加率は21.5%増と特別区を大きく上回る。特に中央区は35.3%増と、全国市町村のなかでも最高値となっている。
また、特別区の「コーホート変化率」をみると、男女ともに20歳代後半、30歳代前半世代及び幼児世代において、年々値が高くなっている。一方、埼玉県や千葉県といった東京都周辺県における同世代のコーホート変化率は年々低下傾向にあり、特別区と反対の推移となっている。コーホートとは、同年(同期間)に出生した集団のことをいう。つまり、特別区は、住宅を取得し、幼児を連れて転入した若年世代が多いと解釈できる。
都心3区においては、若年世代が新たに転入・増加したことに伴い、出生数も増加した。特に中央区、港区においては、2000年以前は死亡数が出生数を上回る「自然減」の状態にあったが、都心回帰が確認された4~5年後にあたる2001年以降は、出生数が死亡数を上回る「自然増」となっている。こうした、若年世代を中心とした「都心回帰」現象は、2005年現在でも強まる傾向にあるとみている。
レポートは、今後、都心部においては増加する若年世代のライフスタイルに応じた公共サービスの提供や、彼らの生活や育児を支える環境整備が必要との考えを示している。特に、これまでの人口空洞化により需要が減少してきた、小中学校などの公共施設の確保・維持のあり方が問われるとみている。
同レポートの全文は↓
http://www.mri.co.jp/PRESS/2006/pr060712_rmc02.pdf