最高裁第三小法廷は1月23日、小規模宅地等の評価減特例を適用した相続財産の更地の土地について、実際に被相続人が居住していたが、土地区画整理事業のために借換地指定されたことに伴い、やむを得ず相続開始時に更地となっていたのだから、そのような場合でも、特例の適用があるとの判断を示した。特例の適用は認められないとした原審の福岡高裁の判決を破棄し、差戻しを命じる判決を下している。
この事件の土地は、土地区画整理事業の敷地内にあり、市が借換地を指定するとともに土地の使用収益を禁止したことから、被相続人らは仮設住宅に転居し、土地の上の建物は取り壊され更地となっていたもの。相続後、借換地が使用収益できることになって、相続人は、この土地の上にビルを建てて入居し、相続税の申告にあたっては、小規模宅地等の評価減特例を適用して申告をした。
ところが、税務署が特例の適用を否認、過少申告加算税の賦課決定処分をしてきたため訴訟となったものだ。原審の福岡高裁は、同特例の適用にあたっては相続開始直前に被相続人らが現に居住していたか、少なくとも相続開始時に居住用建物の建築工事が着工され、居住用建物の敷地として使用されることが外形的、客観的に明らかな状態にあるべきだとの判断を示し、納税者の主張を認めなかった。
これに対して最高裁は、土地区画整理事業による仮換地指定によって使用収益が禁止されたため、仮設住宅への転居や建物の取壊しを余儀なくされ、建物建築も不可能な状況のまま相続が発生したという事情を考慮し、特段の事情のない限り、居住の用に供されていた土地にあたると解釈するのが相当と判断した。その結果、原審の判断には明らかな法令の違反があるとして、福岡高裁に差戻しを命じる判決を下した。