ゼイタックス

税務関連情報 (2004/03/15)

消費者に“分かりやすく”ならない総額表示

 4月1日からの総額表示の義務付けは、「消費者に分かりやすくするため」(財務省)の改正だったはずだが、どうも雲行きは怪しそうだ。その元凶は、財務省が、1)「総額表示のみ」、2)「総額表示(税込)」、3)「総額(本体価格)」、4)「総額(うち消費税額)」、5)「総額(本体価格+消費税額)」、6)「本体価格(総額)」と6つもの表示方式を認めてしまったことにある。

 なかでも最悪なのは1)の「総額表示のみ」。今までの「外税表示」と外見上では違いが分からない。おまけに消費税額は水面下に潜り込んでしまっている。それは月日がたてば「総額表示のみ」でも、このなかに消費税が含まれていることが常識になるだろうが、当面は当然外税表示も混在するだろうし混乱は避けられない。総額表示の義務化を知らない消費者も大勢いる。

 分かりやすいとの観点から行けば、消費者は5)の「総額(本体価格+消費税額)」を望んでいるが、小売店は圧倒的に「総額表示のみ」が多くなりそうだ。これこそ、将来の消費税率引上げの布石として“痛税感”を和らげる財務省の思惑通りなのだろう。しかし、税率が10%台となれば、裏に隠れようが、痛税感が消えることはない。

 それなら、消費税率が分かるように表示して正々堂々と負担を求めるべきではないか。今回の総額表示を義務付けた理由である「消費者に分かりやすく」という理由も、お仕着せがましさ一杯である。そもそも、消費者の「分かりにくい」という不平不満が改正を促すほどあったのであろうか。実体のない消費者、国民といった言葉を持ち出すのは為政者の常套手段だが、騙されてはいけない。

 外税・内税の表示が混在していたものの、それはそれですっかり定着し、誰も生活上そんなに不便を感じていなかったはず。「消費者のために」という美名の下に、結局のところ消費税率の負担を分かりづらくするための“姑息な手段”ととられても仕方がない改正だ。総額表示は、少なくとも、消費税率がはっきりと見えるような方法のみに限るべきだと強く思う。