所得税の抜本改革、国から地方への税源以上のなかで個人住民税の役割が重要となる。個人住民税の所得割は、現行では5、10、13%と3段階の税率を10%に一本化することが確実だが、他方で、住民税の課税方式を国税の所得税と同様に現年課税する案が浮上している。そうなると、地方自治体も国税と同様にその年に獲得した所得を把握する必要があり、徴税体制の強化が重要課題となる。
ところが、現行の地方の税務職員は、国税と違って税務専門で長く勤務する職員は少なく、税務執行体制に大きな不安を抱えている。政府税制調査会に提出された資料によると、地方の税務職員の経験年数は、都道府県の場合、「10年以上」の経験のあるベテラン職員が45.6%を占め、「5年以上」の中堅・ベテラン職員は64.4%にのぼる。平均年齢は43.9歳で累積の税務経験年数は12.6年となる。
同様に政令指定都市(14団体)の場合では、「10年以上」が36.2%、「5年以上」が60.4%、平均年齢42.5歳、累積の経験年数が9.2年と、都道府県に比べやや見劣りはするもののある程度経験年数はある。これに対して、無作為抽出した47町村の場合では、「10年以上」は12.5%と1割強に過ぎず、「5年以上」が35.8%、平均年齢40.0歳、累積の経験年数は4.1年と、都道府県や政令指定都市に比べ経験年数に大きな差がみられる。
つまり、地方の税務職員は、国税職員と違って、ずっと地方税担当に従事するわけでなく、定期的に地方行政の各分野に異動していることを意味する。特に、小規模の自治体においては累積の税務経験年数が4年に過ぎず、わずか2.2%しかいない経験年数「15年以上20年未満」の少数のベテランに頼った税務行政を行っていることがうかがえる。このような状況では、専門性の確保などは望むべくもないだろう。
一方、去る3月25日、政府は地方税の徴収に関する民間開放を閣議決定した。これを受けて総務省も、賦課や滞納処分などの権力的な事務以外のコンビニ収納や納税通知書・督促状の印刷・作成・封入等の業務は民間委託が可能との見解を4月1日付けで全国に通知した。このように「民でできるものは民へ」任せて、どのように税務執行での専門性を高めるかが、地方の大きな課題となっている。