ゼイタックス

税務関連情報 (2005/11/02)

譲渡所得調査では887億円の申告漏れを把握

 税務調査は年々、高額・悪質なものを選定して重点的に行われているのは周知のとおり。譲渡所得調査も、不動産等の売買情報など、あらゆる機会を利用して収集した各種資料情報を活用して、高額・悪質と見込まれるものを優先して行われる。国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間(2004事務年度)の譲渡所得調査は1万1619件に対して行われ、うち66.8%にあたる7760件から887億円の申告漏れを把握した。

 前年度に比べると、調査件数や申告漏れ件数は減少したが、申告漏れ割合は1.2ポイント上昇しており、収集した資料情報の活用により深度ある調査が展開されたことがうかがえる。調査1件あたりの申告漏れは763万円(前年度784万円)となるが、この額は、同事務年度の所得税調査において特別調査・一般調査(実地調査)で把握された1件あたり平均の申告漏れ899万円と比較しても遜色ない数字だ。

 不正の手口は、架空の中間譲渡人を介在させるものや架空経費の計上など従来と変わりないものが多い。例えば、アパート経営者のAは、Xに土地を譲渡したとして申告していたが、登記簿上はAからWに所有権移転登記がされており、取引内容に疑いがもたれた。調査したところ、Aは、実際はWに譲渡していたのに、Xと共謀して中間にWが介在したかのような虚偽の売買契約書を作成し、譲渡所得を圧縮していたことが判明した。

 また、海外の不動産や有価証券などといった海外関連資産に対する調査も強化されており、2004事務年度は約58億円の申告漏れが把握された。例えば、会社役員のBのケースでは、Bに係る資料情報によると、国外から多額の送金を受けていたが、その内容が不明だったため調査が行われた。その結果、Bは、海外の所有不動産を譲渡して譲渡代金の送金を受けていたのに、その譲渡所得を申告していないことが判明している。