財務省は9日、マニラにおいて、日本とフィリピンの間で「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とフィリピン共和国との間の条約を改正する議定書」の署名が同日行われたことを明らかにした。現行の日比租税条約は、1980年に発効後およそ25年が経過していたもので、今年5月に正式交渉を開始、7月に基本合意に達し、このほど両国政府内における事務手続きを終えて正式署名に至った。
改正議定書の主な内容は、1)配当所得に対する限度税率を25%から15%に引下げ、2)10%の限度税率を適用する親子企業間配当の認定要件を緩和し、株式保有割合25%から10%以上に引下げ、3)債券利子に対する限度税率を15%(公社債等については10%)から10%に引下げ、4)映画フィルム等以外の使用料に対する限度税率を25%から10%に引下げ、4)みなし外国税額控除は10年間の供与期限を設ける。
みなし外国税額控除とは、開発途上国が減免した租税を、進出企業があたかも納付したものとみなして、進出企業の親会社がその本国で納付すべき租税額から控除するものだ。同規定については、課税の公平性や中立性の観点から、近年、締結・改正した条約においてはできる限り見直し・縮減を図ってきたところだが、今回の交渉において、10年間の供与期限を設けることで両国間の意見が一致した。
改正議定書は、両国において国内法の手続きに従って承認された後、両国間で外交上の公文の交換を行い、交換の日の翌日から30日の日に効力が生じる。改正議定書が来年中に発効した場合には、わが国においては、1)源泉徴収される租税に関しては、2008年1月1日以後に租税を課される額、2)源泉徴収されない所得に対する租税に関しては、2008年1月1日以後に開始する各課税年度の所得、に適用される。