外資系生命保険などが節税をうたい文句に販売してきた「長期傷害保険」を巡り、波紋が広がっている。この長期傷害保険に係る保険料は全額一時の損金算入が可能なはずだったが、国税庁が「支払保険料の3/4は資産計上すべきだ」との見解を明らかにしたためだ。法人が支払った保険料を一時に損金算入できるのか、それとも一部を資産計上しなければならないのかでは節税効果が大きく異なってくる。
企業が定期保険や養老保険などの保険料を支払った場合の税務上の取扱いは法人税基本通達で定められている。一方、最近販売されている、企業が役員や従業員を被保険者とした長期傷害保険(終身保障タイプ)は、災害や病気による死亡、災害による障害への保障だけでなく、契約の解約等の際には払込期間に応じた返戻金が支払われる。こうした長期傷害保険の保険料を支払った場合の税務上の取扱いは具体的な定めがなかった。
こうした長期傷害保険(終身タイプ)について、国税庁は5月、保険加入時の年齢から105歳までの期間の70%に相当する期間にあっては、毎年の支払保険料のうち4分の3を前払金として資産計上し、残額を損金算入すれば問題ないことを明らかにした。これは、その保険期間の前半において支払う保険料のなかに相当多額の前払保険料が含まれており、また、解約返戻率が高いことから、事実上、貯蓄型の保険であると判断したためだ。
こうしたことから、上記の外資系生命保険が販売する長期傷害保険は、満期を95歳や100歳に設定して終身タイプではないとして、「全額損金算入できる」との節税効果をPRしていたものの、保険の仕組みは終身タイプと変わらないことから、保険料を全額損金に算入すると税務当局に否認される可能性が大きくなった。生保の販売姿勢も問題だが、企業側にも専門家に相談するなどの慎重な検討が求められるようだ。