ゼイタックス

税務関連情報 (2005/09/07)

「サラリーマン増税」との批判に一言

 政府税制調査会が6月に個人所得課税の抜本改革の方向性を示す「論点整理」を公表して以降、マスコミを中心に「サラリーマン増税」との批判が渦巻いている。今にはじまったことではないが、このマスコミの薄っぺらな表面だけの“正義の味方”気取りにはうんざりするものがある。どうもマスコミは「サラリーマン」の代弁者であるらしいが、そもそも「サラリーマン」とはどのような国民層を指しているのであろうか。

 「サラリーマン増税」という場合のサラリーマンは、多分に「住宅ローンを抱え少ない小遣いでやりくりしている勤労者」がイメージされると思われる。確かに、平均像としては的を得ているかもしれないが、なかには節税のために法人を作り高額な役員報酬を得ているサラリーマンもいれば、先日の長者番付で全国1位となった収入が100億円を超えるサラリーマンもおり千差万別なのである。

 また、わが国の納税者は、9割以上をサラリーマンが占めている。就業者の8割を占める5千数百万のサラリーマンのうち4千万人強が納税者で、自営業など事業所得者の納税者は180万人、農業所得者の納税者は14万人しかいない。国・地方を合わせて700兆円を超える借金(2005年度末見込み)を後世代に残さないために財政再建を目指し、負担増を求める対象はおのずと納税者の大多数を占めるサラリーマンになるのは自明の理である。

 何も“サラリーマン狙い撃ち”でもなんでもないのだ。であればマスコミは「サラリーマン増税」などと批判する前に、なぜ増税が必要であるかを噛み砕いて説明し、また、増税と同時に実現しなければならない徹底した歳出削減に資する取材が本筋なのではないか。道路公団の談合や社会保険料収入の杜撰な使途などは氷山の一角で、国民はマスコミに対し税金のムダ遣いの実態を解明できる唯一の公器として期待しているのだ。

 一方、自民党のうろたえぶりもみっともない。論点整理公表後の記者会見における石会長の「サラリーマンに負担をお願いするしかない」という趣旨の発言を打ち消すのにやっきとなっている。今回の総選挙においても「政府税調の『サラリーマン増税』の考えは採らない」とマニフェストに明記。それでも財政再建が可能なのかを示していただきたい。一抹の疑問を感じる「サラリーマン増税」をめぐる動向である。