経済社会の国際化に伴い、国際的な課税問題は企業のみならず個人の富裕層にも広がりを見せている。国税庁は、今年6月までの1年間(2008事務年度)に海外取引を行っている者を対象に前年度比24%増の3858件の実地調査を実施し、13%減の総額約610億円、30%減の1件平均1580万円の申告漏れ所得を把握した。前年度より減少したとはいえ、この金額は、実地調査(特別・一般調査)全体での1件平均887万円の1.8倍にのぼる。
海外取引調査3858件を取引区分別にみると、「海外投資」(預貯金等の蓄財を含む海外の不動産や証券などに対する投資)が全体の34%を占める1300件、「輸出入」(事業での売上や原価に係る取引で、海外の輸出(入)業者との契約による取引)が同19%の736件、「役務提供」(工事請負やプログラム設計など海外において行う、労力・技術等の第三者に対するサービスの提供)が同10%の369件となっている。
そのほか、金銭授受や贈与(親族に対する海外送金等)など海外取引に係るもので上記の取引に該当しない「その他」が全体の38%を占める1453件だった。これらの海外取引調査の結果、1件あたりの申告漏れ所得が1580万円見つかったわけだが、取引区分別では、「海外投資」で2006万円、「輸出入」で915万円、「役務提供」で1850万円、「その他」で1467万円が、それぞれ把握された。
調査事例をみると、会社役員Aのケースでは、海外に居住する取引関係者Bと通謀して、(Bに対する)コミッション料の支払いとして仮装し、その資金を海外の金融機関の本人名義の口座に送金させ、プールしていた。このようにして不正に捻出した資金を元手に外国債券などを購入し、これに係る所得約1億4300万円の資産運用益をすべて除外していたことが判明した。Aに対しては2500万円が追徴されている。