減価償却制度の見直しが来年度税制改正の大きな焦点となっているなか、その見直しの影響を分析したのは、第一生命経済研究所の長谷山則昭氏のレポートである。氏は、設備の全額損金算入化や法定耐用年数の区分の整理・短縮化など、1964年以来40年ぶりとなる減価償却制度の全面的な見直しは、設備投資の増加効果に加え、長期的な経済活性化も期待できると指摘し、見直しの確実な実施を求めている。
レポートは、全額損金算入が設備投資に与える影響として、1)減価償却費の増加による手元資金の増加、2)資本コストの低下、3)固定資産税の減少、の3つを挙げている。損金算入額が増えれば、法人税額の圧縮により企業の手元資金が増えて新規の設備投資がさらに活発化する。減価償却費の増加により減税規模が4471億円となり、設備投資を0.4ポイント押し上げる効果が期待できると試算している。
設備の償却を多く行うことができれば、投下資本を早期に回収できることになり、企業は資本コストの上昇を抑制できる。償却限度額を100%とした資本コストは、残存価額10%のときよりも4.5%低下すると試算し、設備投資を0.6ポイント押し上げる効果を見込んでいる。さらには、100%償却が認められれば、固定資産税の減少を通じて設備投資は0.1ポイントの押上げ効果が見込めると試算している。
こうした減価償却制度の見直しによる影響を合計すると、設備投資は1.1ポイント押し上げられ、設備投資の増加効果は小さくない。ただし、対象が新規投資分などに限られた場合は、この見直しによる効果は大きく減少することから、企業活動の活発化を促すためには既存設備も含めた見直しが必要だとみている。また、設備投資の促進によって設備ストックの質が向上すれば、生産性の向上にもつながる。
GDPギャップがほぼなくなってきた現在、今後は潜在成長力の引上げが課題だが、減価償却制度の見直しは長期の観点からも有効だと指摘。生産人口の増加が期待しにくい以上、長期的な成長を遂げる上では、資本の蓄積や技術の進歩がより重要なファクターとなってくる。レポートは、長期的な経済活性化という視点からも、設備投資の増加やビンテージの低下につながる減価償却制度の見直しは実施すべきだと結んでいる。
同レポートの全文は↓
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/rashinban/pdf/et06_191.pdf