2006年度税制改正においては法人の役員給与に関して大幅な見直しが行われ、これまで損金不算入とされていた役員賞与が一定の要件に該当するものであれば損金算入が認められるなどで、経営者や実務家の注目を集めているが、取扱いにあたっては疑問点も少なくない。そこで国税庁はこのほど、その改正内容を周知するため、これまでに寄せられた主な質問に対する回答をQ&A形式にまとめ公表した。
同Q&Aでは、役員給与の損金算入に関する制度の基本的な概要の説明から始まり、1)定期同額給与、2)事前確定届出給与、3)利益連動給与として役員給与を整理した3支給形態について、それぞれの疑問に答えている。このなかで特に関心を集めているのは、役員賞与の損金算入を認める2)の事前確定届出給与であるが、分かりづらいのは「その給与に係る職務の執行を開始する日」である。
これに関してQ&Aでは、会社法においては、役員の選任や職務執行の対価の決定が株主総会の決議により行われることなどと規定されていることから、役員給与は定時総会から次の定時総会までの間の職務執行の対価と解するのが相当だと説明。事前確定届出給与も役員の職務執行の対価であることは変わりがないから、一般的には、「職務執行を開始する日とは、定時株主総会の開催日ということになる」との解釈を示している。
ただし、実務上は、例えば月末に定時株主総会を開催し、翌月初めから開始する職務に対して役員給与を定めるケースも多いことから、「職務の執行を開始する日」を定時株主総会の日以外と定めた場合であっても、その日が株主総会の翌月初であり、かつ、定時株主総会の日に近接する日であれば、税務上も、企業実務の観点から是認しうるものであるとの考えを示している。
こうした考え方からすると、この事前確定届出給与は、これから開始される事業年度の職務に対応して支払われる役員給与について認められることになる。一部の実務家は、例えば3月決算法人が経過措置により6月末までに税務署に事前届出をすれば、7月支給の役員賞与の損金算入が認められると考えているようだが、このケースでは前年の株主総会で7月に確定額を支給する旨の定めがない限り認められる公算は少ないだろう。
同Q&Aは↓
http://www.nta.go.jp/category/tutatu/sonota/houzin/5126/5126.pdf