日本税理士会連合会は、最近の消費税申告において、不動産所得や事業所得を有する個人事業者が業務の用に供していた建物等の譲渡収入を消費税の課税売上に加算し忘れたことによって、消費税が過少または無申告になっているケースが見受けられるとして、具体的な事例を示して注意を呼びかけている。事業者の申告に直接携わる税理士の集団である同連合会からの注意である。同様の事例が多いと思われるので留意したい。
事例では、貸付用建物の譲渡に係る消費税の申告漏れを紹介している。不動産賃貸業を営む消費税課税事業者のAは、複数保有する貸付用賃貸マンションのうちの1室を売却し、譲渡損失が生じていたが、その年分の消費税の確定申告にあたり、そのマンションの譲渡は損失が生じていたことから、建物相当金額を課税売上に計上する必要はないと判断し、消費税の申告を過少に行っていたケースである。
また、内装工事に係る個人事業を営んでいた消費税課税事業者だったBは、事業を法人成りさせるために、これまで事業の用に供していた土地や建物、事業用設備などを法人に対し現物出資した。Bは、その年分の事業所得及びその現物出資に係る譲渡所得等の確定申告を行っていたが、消費税の確定申告の際に現物出資を行った建物や事業用設備等相当額を課税売上に計上することを忘れていたというケースもある。
そのほか、消費税の課税事業者でない場合も注意が必要だ。不動産賃貸業を営むCは、複数のマンションや事務所の貸付を行っており、毎年900万円前後の家賃収入を得ていたが、各基準期間とも課税売上高が1000万円を超えなかったため、消費税の課税事業者に該当していなかった。しかし、一昨年に賃借人からの要請でマンションの1室を3000万円(建物:2000万円、土地:1000万円)で売却した。
この譲渡により、その基準期間に係る課税売上高が1000万円を超えていたにもかかわらず、譲渡収入部分は基準期間の課税売上高の算定には影響しないと判断していたことから、消費税の申告を行っていなかった。このように、消費税の課税事業者でなくても、譲渡収入のうち、業務の用に供していた建物や機械などの収入は基準期間の課税売上に加算する必要があるので要注意だ。