バブル崩壊以降、なかなか下げ止まらない地価が、今後はどうなっていくのかを分析したのは農林中金総研のレポート。わが国の土地総額はピーク時の1990年末には名目国内総生産(GDP)の5.5倍あったが、2002年末には2.7倍まで低下した。ただし、土地総額の対名目国内総生産比率が80年代水準に戻ってきており、バブル期の地価高騰の調整がかなり進展してきたとみている。
そこでレポートは、今後の地価について注目される点を2つ指摘する。第一に少子高齢化。少子化が進んでいることで、住宅や宅地に対する需要は頭打ちになる可能性があることを、今後の地価下落要因として挙げている。人口は2006年から、世帯数は2016年から減少する見通しだ。
第二に地価の動向は、今まで以上に個々の土地の特性を反映したものとなると予想する。ここ数年、利便性のいい地域において地価の下落から値ごろ感が増し、「都心回帰」と呼ばれる現象が起きている。大都市を抱える地域で地価下落幅が小幅になっている。このような動きは住宅需要における構造変化の兆しとも考えられ、利便性の悪い地域の地価下落を招く可能性もあることから、今後の動向を注視していく必要性を示している。
また最近では「収益還元法」を用いたREIT(不動産投資信託証券)という商品が登場し注目された。その土地が将来にわたって生み出すであろう収益を現時点の価値に割り戻して土地の価値を評価する方法を導入したものだ。このような新たな不動産投資の動きが地価の下げ止まりを抑制する可能性も考えられる。そのほか、定期借地権の創設や企業の保有する固定資産の時価評価が導入されるなどの動きもある。
以上のように、個別の土地の収益性や利便性をより重視した土地の価格形成の考え方が広がれば、土地の有効利用の度合いが地価決定に大きな影響をもつようになるだろう、というのがレポートの地価に対する見方である。