税 務 関 連 情 報

2002年10月11日-002
三菱総研、新規開業に不利益となる資本課税の歪みを直せ!

 ベンチャー企業や新規開業企業の育成は日本経済活性化の重要課題のひとつだが、これらの企業は資金調達に新株発行に頼らなければいけないことから、現行税制では不利益を蒙っているとの指摘は、三菱総合研究所が「景気対策の中身を吟味する」と題したレポートで明らかにしたものである。

 レポートによると、企業の資金調達、したがって投資家の資金運用の形態には、1)金融機関借入や社債発行、2)企業利益の留保、3)新株発行の3形態がある。資金提供者である投資家が得る資本収益からみれば、1)は利子で受け取り、2)は保有株式のキャピタルゲイン、3)は配当での受取りということになる。ところが、今の資本課税制度は、借入をしたり社債を発行しての資金調達への課税が最も軽く、新株を発行して配当を支払う形での資金調達が最も重い。

 最終投資家が一定の税引き後利益を得るためには、企業が税引き前でどれだけ余分に収益率を上げなければならないか、という計算を、「税のクサビ(tax wedge)」という。OECDの推計によると、日本の場合、借入なら企業は0.3%余分に稼げばいいが、内部留保では3.5%余分に、新株発行では5.6%余分に儲けなければならない。日本は各国と比べ、これら3通りの調達方法の差が最も大きく、新株発行に頼らなければならない企業に不利になっている。

 銀行借入や社債発行で資金を安定的に調達できるのは、すでに地歩を確立した従来型企業であり、キャピタル型も、すでに多くの株式を発行済みの企業だ。これに対して、典型的には新規開業・ベンチャー企業である新株発行型は、現行税制では相対的に不利益を蒙っている。日本経済の停滞を打破するためには、ベンチャーを含め新たなビジネスチャンスが活用されなければならない。資本課税制度を、少なくとも資金調達にとって、イコール・フィッティングなものに変えていくことが必要という主張だ。

 

 

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