国際化のなかで、日本に居住する外国籍の事業者が増えている。このような事業者がわが国で所得税の申告をするときには、二重課税を防ぐため、外国で納めた税金相当額を控除できるのが外国税額控除である。ところで、アメリカでは、個人事業所得者については所得税以外に「自営業者税(セルフ・エンプロイメント・タックス)」が課税されているが、これは外国税額控除の対象となるのだろうか。
アメリカでは、従業員については社会保険税が課されており、自営業者については社会保険税に代えて自営業者税が課されている。この自営業者税は、事業所得の金額を基準として課されているが、わが国の社会保険料に相当するもので、その税額の2分の1はアメリカの所得税の申告において所得控除されている。
米国国籍で日本に居住し病院を経営しているAは、アメリカでも所得税の申告書を提出しているが、この自営業者税が、わが国の所得税の計算上、外国税額控除の対象となるのかを税務署に問い合わせたところ、アメリカの自営業者税は社会保険料に該当するものだから、外国税額控除の対象とはならないとの回答が返ってきた。
税務署の回答によると、アメリカの自営業者税は、事業所得の金額を基準に課税されるが、社会保険制度の原資として徴収されるものであり、税という名称がついていても、わが国の税体系からみて所得税に相当する税とはいえず、社会保険料に相当するものであると説明している。つまり、自営業者税は、外国の法令に基づいて課される所得税に相当する税には該当しないことから、外国税額控除の対象とはならないことになる。