政府税制調査会が6月に今後の所得課税抜本改革の方向性を示して以降、「サラリーマン大増税」として大きな話題となっている。定率減税の廃止や給与所得控除をはじめとする諸控除の廃止・縮減など複数項目が4~5年かけて見直されていくことになるが、ほとんどの納税者にとって、具体的な負担増を想定することは不可能だろう。漠然とした将来への不安が広がるばかりでは、増税路線への理解は到底得られまい。
ニッセイ基礎研究所がこのほど公表した「家計負担の将来像」と題したレポートでは、2012年における給与所得世帯の所得税・住民税・社会保険料の負担額を試算している。ここでは、年収500万円の専業主婦世帯(有業の世帯主に専業主婦と子ども2人の標準的な4人世帯)について、厚生年金保険料の毎年0.354%づつの引上げを共通要件に、3パターンにおける負担額を試算している。
例えばパターン(1)は、定率減税の全廃、配偶者控除・特定扶養控除の廃止、所得税率の変更(10%→5%)、住民税の税率変更(5%→10%)を前提とすると、この世帯の年間負担額は2005年の78.3万円から2012年は96.3万円まで、18.0万円程度増加する。パターン(2)は、(1)に加え、給与所得控除が3分の2に縮小された場合、パターン(3)では、(2)において所得税の税率が5%に軽減されたかった場合を想定して試算している。
この結果、2012年における世帯の税・保険料負担は、2005年時点に比べ18~36万円ほど増加する可能性がある。もちろん、この試算結果は家計負担増の一例を示したものに過ぎないが、今後数年で、世帯あたりの負担が相当規模増加していく可能性は非常に高い。さらには、試算では対象としなかった消費税率の引上げや医療費の自己負担額の見直しなども加えた世帯の負担規模は、さらに膨らむ可能性がある。
レポートは、政府に対し、今後本格化する税・社会保障制度改正に際しては、世帯ベースの負担規模の将来像についても、ある程度の姿を示していくことを求めている。さらには、負担水準だけでなく、税・社会保障負担が増加する結果、財政赤字の改善はもちろん、社会保障給付の水準などに対する影響についても言及することで、国民の制度改正に対する理解を得ていくことも必要だとしている。
レポートの全文は↓
http://www.nli-research.co.jp/doc/we050729.pdf