近年の所得税調査の特徴は、実地調査は件数を犠牲にしても高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による“簡易な接触”で済ます調査方針にある。2005事務年度の調査でも、調査件数では約4分の1の実地調査で、申告漏れ所得金額全体の9割弱を把握しており、実地調査を中心とした効率的な所得税調査の姿が鮮明となった。
国税庁が18日に公表した2005事務年度の個人事業者に対する所得税調査状況によると、今年6月までの1年間の所得税調査は、前年度に比べ3.3%増の80万7千件に対して行われ、うち70.3%にあたる56万7千件から前年度とほぼ同額の8957億円の申告漏れ所得を見つけた。追徴税額は1.5%減の1144億円だった。1件あたりの平均では111万円の申告漏れに対し14万円を追徴している。
実地調査における特別調査・一般調査は、5万4千件に対して行われ、うち88.9%にあたる4万8千件から総額4543億円の申告漏れ所得を見つけ、907億円を追徴した。特別調査・一般調査は、件数では全体の6.7%に過ぎないが、申告漏れ所得金額全体の50.7%とほぼ半数を占めた。調査1件あたりの申告漏れは、前年度(過去最高の899万円)から7.1%減少したものの、835万円と、全体の平均111万円を大きく上回る。
一方、実地調査に含まれる昨年から導入された着眼調査(特別調査・一般調査と簡易な接触の中間的なもの)は、調査件数全体の20.9%の16万9千件行われ、うち82.2%の13万9千件から3361億円の申告漏れを見つけ159億円を追徴した。1件あたり平均申告漏れは198万円。また、簡易な接触は、58万3千件行われ、うち65.4%の38万1千件から1053億円の申告漏れを見つけ77億円を追徴。1件あたりの平均申告漏れは18万円だった。
このように、実地調査では、全体の3割弱の調査件数で申告漏れ所得全体の9割弱を把握しており、高額・悪質な事案を優先した深度ある調査を実施する一方、簡易な調査によって短期間で申告漏れ等の把握を行う効率的な所得税調査が実施されている。なお、業種別1件あたりの申告漏れ所得金額ワースト業種は、「貸金業」が3407万円で5年連続のトップ、以下、「風俗業」(2497万円)、「病院」(2370万円)までがワースト3。