同族会社の留保金課税制度については、内部留保の充実などの観点から中小企業団体を中心に廃止を求める声が強い。2006年度税制改正大綱では、廃止とはならないものの、大幅な見直しが行われた。まず、課税対象となる法人を同族関係者1グループ(現行3グループ)で株式等50%超保有する会社のみに限定し、残る同族性の強い対象法人についても、内部留保に対する控除額を大幅に引き上げる。
留保控除は選択肢のなかのもっとも多い額となるが、そのひとつである所得基準が「所得等×50%(現行35%)」に引き上げられる(大企業は「所得等×40%」)。定額基準も2000万円(現行1500万円)に引き上げられ、積立金基準(「資本金×25%-利益積立金」)は変更がないものの、新たに中小法人に限って自己資本比率基準(自己資本比率30%到達までの額)が選択肢に加わる。
経済産業省では、この所得基準の引上げなどの見直しにより、平均並みの配当を行えば課税されなくなるとみている。留保金課税は、「所得等-(法人税等+支払配当)-留保控除」×税率(10~20%)で算出された金額が税額となるが、法人税等(44.6%)に平均並みの支払配当4.8%を加えれば、内部留保は50.6%となり、留保控除が50%となるとほとんど課税されなくなる計算だ。
このように留保控除を大幅に引き上げる一方で、これまで留保金課税を適用しないとしてきた「設立後10年以内の中小企業者」と「自己資本比率50%以下の中小法人」を不適用要件からはずし、「中小企業新事業活動促進法の経営革新計画承認企業」だけが残り、2年間延長される。大幅に課税対象が増えると予想されるが、留保控除の大幅な引上げにより、実際にはほとんどの企業が課税されないことになろう。
留保金課税の目的は、個人形態と法人形態の税負担の格差の是正といわれるが、現在では所得税と法人税の税率格差は大幅に縮小しており、存在意義は大きく低下しているとの指摘が多い。また、同族会社の不当な内部留保に対する間接的な配当促進にしても、国税庁の「税務統計からみた法人企業の実態」によると、同族会社の内部留保率は、非同族会社に比べてわずかに高くなっているだけ。留保金課税が存続する理由は薄れている。