税務上、使用人兼務役員は一般の役員とは異なり、例えば、使用人兼務役員の使用人分の賞与は、事前届出をせずに損金算入が認められる。そこで、株式の50%超を保有する代表取締役の妻が同社の取締役経理部長に就任して、常時使用人としての職務に従事した場合、その妻は使用人兼務役員として認められるのだろうか。妻は同社の株式をまったく所有していない。このケースでは、妻は使用人兼務役員にはなれない。
同族会社の役員のうち、その役員の所有割合やその役員の属する株主グループの所有割合などが一定の状況にある者は、経営の中枢の地位にあると認められることから、妻に持株がなく、平取締役であったとしても、使用人兼務役員とは認められないのだ。税法上、同族会社の役員のうち、次の要件をすべて満たしている者は使用人兼務役員になれないとされている。
それは、その会社の株主グループにつき、その所有割合が大きいものから順位をつけ、第1順位の所有割合が50%超である場合のその第1順位の株主グループや、第1順位と第2順位または第1順位から第3順位までの所有割合を合計した場合にその所有割合が初めて50%超となるときのそれぞれの株主グループに属している者で、かつ、1)その役員の属する株主グループの所有割合が10%超、2)その役員及びその役員の配偶者の所有割合が5%を超えていることである。
上記の例では、配偶者である代表取締役と妻の所有割合が5%を超えており、かつ、代表取締役と妻の属する株主グループとしての所有割合が50%を超えていることから、妻は使用人兼務役員にはなれないことになる。なお、使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する人をいう。