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税務関連情報 (2004/10/04)

非課税枠に一定の上限など見直すべき退職所得控除

 配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止、老年者控除の廃止、公的年金等控除額の縮小など、個人所得課税の強化が急速に進められつつあるが、次のターゲットは退職所得控除だという意見は衆目一致するところ。ニッセイ基礎研究所が発行する「年金ストラテジー」の巻頭言では、退職所得控除は非課税枠に一定の上限を設けるなどの見直すべき時期にあると主張している。

 その背景には、現行の退職所得控除が長期勤続を優遇しすぎることがある。勤続20年目まで1年につき40万円、それ以降70万円という控除額の段差が優遇度合を高めている。巻頭言では、もっと大きな問題として、ひとつは退職所得というだけで、老後の貯蓄に宛てられない場合でも、控除が受けられる点を指摘する。消費されても控除が受けられるのでは、「老後の生活費」という優遇のお題目に反するというのだ。

 もうひとつの問題点として、退職所得が、退職所得控除後の受取額の2分の1、半分にしか課税されない点を挙げている。高額の退職金を何度受け取ろうと、このルールによって実質的な税率が半分になる。その一方で、確定給付企業年金から受け取った脱退一時金については、今般の税制改正でポータビリティが認められたが、その後、勤続年数が少ない間に2回目の転職をすると、控除を受けられなくなる懸念がある。

 これらの問題の解決策として、退職所得全体への控除ではなく、年金など老後の貯蓄に拠出する分だけを非課税とし、その非課税枠に一定の上限を設ける統一的な税制とすることを提案している。退職金・年金税制にも制度疲労が蓄積されており、そろそろ思い切った改革をすべき時期だ、というのが巻頭言の主張だ。確かに、わが国の就業形態は終身(長期継続)雇用が崩壊しつつある。退職所得控除も見直される方向にあるようだ。