税務調査は年々、高額・悪質なものを選定して重点的に行われているのは周知のとおり。譲渡所得調査も、不動産等の売買情報など、あらゆる機会を利用して収集した各種資料情報を活用して、高額・悪質と見込まれるものを優先して行われる。国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間(2007事務年度)の譲渡所得調査は7万9440件に対して行われ、うち65.2%にあたる5万1810件から3339億円の申告漏れを把握した。
前年度に比べると、調査件数は2.2%減少したものの申告漏れ件数は4.3%増加、申告漏れ所得金額は0.1%の減少となった。申告漏れ割合は4.1ポイント上昇と、調査した約3件に2件から申告漏れを見つけたことになる。調査1件あたりの申告漏れ額は420万円(前年度411万円)となるが、この額は、同事務年度の所得税調査における実地調査で把握された1件あたり平均の申告漏れ額390万円を上回る。
調査の内訳をみると、株式等譲渡所得については、前年度比9.2%増の3万3409件の調査を実施。うち70.9%にあたる2万3683件(前年度比15.9%増)から総額1171億円(同5.7%減)の申告漏れ所得を把握した。また、土地建物等については、前年度比9.1%減の4万6031件の調査を実施し、うち61.1%にあたる2万8127件(同3.9%減)から総額2168億円(同3.2%増)の申告漏れ所得を把握している。
申告漏れ事案では、近年目立っている海外での資産を申告から除外するケースが今回も把握されており、例えば、不動産貸付業を営むAについては、他税目の調査に際し、海外の金融機関との取引が把握された。調査したところ、Aは海外の金融機関にペーパーカンパニー名義の口座を開設し、株式の売買を行い、多額の利益を上げていたにもかかわらず、9300万円を申告から除外していたことが判明している。