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税務関連情報 (2007/11/07)

2006年度の国の原告訴訟は163件発生

 滞納残高は8年連続で減少してきているが、なお、高水準にある。国税庁は、納税者の個々の実情に即した厳正・的確な滞納整理を実施し、長期滞納事案や財産を隠ぺいするなどの悪質滞納事案については、法律知識や訴訟を活用した滞納整理を積極的に行っている。また、差し押さえた債権の回収を図るため、債権取立のための民事訴訟を積極的に提起。このように原告訴訟を、滞納整理の重要な手法として積極的に活用している。

 国税庁がこのほど発表した2006年度原告訴訟の状況によると、2001年度までは年間100件前後で推移していた原告訴訟事件の発生件数は、2002年度以降増加傾向となり、近年は200件前後で推移。2006年度は前年度比12.4%減の163件発生した。また、同年度中に158件の原告訴訟事件が終結したが、うち約96%にあたる152件について勝訴判決を受け、給付を受けた金銭を租税債権に充てている。

 徴収関係(原告)訴訟事件の類型別発生件数をみると、「その他(債権届出・相続財産管理人選任)」が79件のほか、「債権取立・支払督促」が37件、「供託金取立」が33件、「強制執行」が7件など。差押債権取立訴訟は、滞納者が有する売掛金や貸付金、ゴルフ会員権などを税務署長が国税を徴収するために差し押さえ、弁済期が来ているにもかかわらず第三債務者が弁済しない場合に、民事訴訟(支払督促を含む)を提起するものだ。

 例えば、グレーゾーン金利に係る不当利得返還請求権を差し押さえ、取立訴訟を提起した初の原告訴訟として注目されるものがある。建築業を営んでいた滞納者Aは、営業不振で、運転資金調達のため金融業者から借入と返済を繰り返していたが、事業を廃止せざるを得なくなった。Aは、銀行や金融業者に借入金を返すため所有不動産をすべて売却し、返済し、現在では借家に住み、病気のため働けない状況にある。

 徴収職員が、Aやその金融業者を調査したところ、利息制限法を超える2倍以上の利率で貸し付けられ、利息は天引きされていたため、利息の引き直し計算をしたところ、滞納国税を超える過払いがあることが判明。そこで税務署長は、過払い金の返還請求権の差押さえの可否について慎重に検討した結果、その不当利得返還請求権を差し押さえ、さらに法務局と協議の上、取立訴訟を提起することとしたものだ。