税務調査は年々、高額・悪質なものを選定して重点的に行われているのは周知のとおり。譲渡所得調査も、不動産等の売買情報など、あらゆる機会を利用して収集した各種資料情報を活用して、高額・悪質と見込まれるものを優先して行われる。国税庁のまとめによると、今年6月までの1年間(2006事務年度)の譲渡所得調査は8万1253件に対して行われ、うち61.2%にあたる4万9697件から3342億円の申告漏れを把握した。
前年度に比べると、調査件数は20.9%増、申告漏れ件数は34.7%増、申告漏れ所得金額も26.8%増といずれも大幅に増加した。収集した資料情報の活用により深度ある調査が展開されたことがうかがえる。調査1件あたりの申告漏れ額は411万円(前年度392万円)となるが、この額は、同事務年度の所得税調査における実地調査で把握された1件あたり平均の申告漏れ額351万円を上回る数字となっている。
特に株式等譲渡所得については、前年度比63.0%増の3万608件の調査を実施。うち66.8%にあたる2万431件(前年度比93.4%増)から総額1242億円(同61.2%増)の申告漏れ所得を把握した。調査1件あたりの申告漏れ所得は406万円。株式等譲渡所得調査については、05年ごろからの株価上昇も踏まえ、申告分離や無申告事案にも注力しており、大きな成果を上げている。
例えば、以前証券会社に勤務していた主婦Aのケースでは、株式譲渡益は課税されることや確定申告が必要なことを十分に認識していながら、多額の株式譲渡益を得ていたにもかかわらず、連年無申告だった。Aに係る資料情報により、高額な株式取引が想定されたことから、調査したところ、複数の証券会社の一般口座取引によって得た2億300万円にのぼる多額の利益を申告していなかったことが判明している。