2004年度税制改正で土地・建物などの分離譲渡所得と他の所得との損益通算が1月にさかのぼって廃止されたことは記憶に新しい。年末の与党税制大綱で急浮上した抜き打ち的な措置だっただけに腹立たしく思った方々も少なくないだろう。そして当時、次のターゲットは「ゴルフ会員権」とする見方が広がっていたが、15日に決定された2005年度税制改正大綱には盛り込まれず、どうやら来年度改正では見送られたようだ。
土地・建物などの譲渡の損益通算が廃止された背景には、ゴルフ会員権の譲渡とは違う所得税法上の課税方法がある。土地・建物の譲渡所得は分離課税とされ、譲渡益は総合課税と区別されているにもかかわらず、譲渡損は総合課税に取り込まれて他の所得との損益通算が認められるという、他の先進諸国にはみられない、歪んだ課税方法を是正したものだとされている。
この点では、ゴルフ会員権は総合課税の対象だから問題はないわけだ。では、なぜゴルフ会員権がターゲットになるかというと、そもそも、2000年7月の政府税調中期答申において「譲渡所得の起因となる資産のうち、ゴルフ会員権など一般に生活に通常必要でないと認められる資産に係る損益通算のあり方については、実態を踏まえつつ検討を加えることが必要」との指摘がされた経緯があるからだ。
つまり、ゴルフ会員権は「生活に通常必要でない資産」かどうかの議論なのだが、現行の所得税法では、ゴルフ会員権は「生活に通常必要でない資産」を限定列挙したなかに含まれていない。だから、現行法上、何ら問題はないのだが、客観的にみれば、ゴルフ会員権が“生活に通常必要な資産”とは誰も考えないわけだし、議論される余地は大いにあることは否めない。いつ損益通算の対象から外れてもおかしくはないのだ。